Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.2 配備計画ガイド

SPOF の軽減

冗長性」を使用することにより、単一コンポーネントの障害によってディレクトリサービス全体が障害に陥ることのないように保証できます。冗長性には、冗長性のあるソフトウェアコンポーネント、ハードウェアコンポーネント、またはその両方の提供が含まれます。この例には、個別のホストへの Directory Server の複数のレプリケートされたインスタンスの配備や、Directory Server データベースのストレージでの RAID (Redundant Arrays of Independent Disks) の使用などがあります。レプリケートされた Directory Server による冗長性は、高可用性を実現するためのもっとも効率的な方法です。

また、クラスタリングを使用して高可用性サービスを提供することもできます。クラスタリングには、パッケージ化済みの高可用性ハードウェアおよびソフトウェアの提供が含まれます。この例として、Sun Cluster ハードウェアおよびソフトウェアの配備があります。

冗長性とクラスタリングのどちらを使用するかの決定

この章の残りでは、高可用性を確保するための冗長性とクラスタリングの使用についてさらに詳細に説明します。この節では、各ソリューションの利点と欠点の概要について説明します。

冗長性の利点と欠点

高可用性ディレクトリサービスを提供するためのより一般的なアプローチは、冗長性のあるサーバーコンポーネントとレプリケーションの使用です。冗長ソリューションは通常、クラスタリングソリューションより安価であり、実装もより簡単です。また、これらのソリューションは一般に、管理も容易です。冗長ソリューションの一部としてのレプリケーションには、可用性以外にも多くの機能があることに注意してください。レプリケーションの主な利点は読み取り負荷を複数のサーバーにわたって分割できることですが、サーバー管理の点から見ると、この利点のためにオーバーヘッドが増えます。レプリケーションではまた、読み取り操作に関するスケーラビリティーと、正しく設計されている場合は、一定の制限内で書き込み操作に関するスケーラビリティーも提供されます。レプリケーションの概念の概要については、『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.2 Reference』の第 4 章「Directory Server Replication」を参照してください。

障害の間に冗長システムが提供する可用性は、クラスタリングソリューションより劣る可能性があります。たとえば、負荷が 2 つの冗長性のあるサーバーコンポーネント間で共有されている環境を考えてみます。1 つのサーバーコンポーネントの障害によってもう一方のサーバーに過剰な負荷がかかり、それによって、クライアント要求へのこのサーバーの応答が遅くなることがあります。応答の遅さは、すばやい応答時間に依存しているクライアントには障害と見られる場合があります。つまり、サービスの可用性が (そのサービスが運用に入っているにもかかわらず)、クライアントの可用性の要件を満足しない可能性があります。

クラスタリングの利点と欠点

クラスタ化されたソリューションの主な利点は、障害からの自動復旧、つまりユーザーの介入を必要としない復旧です。クラスタリングの欠点は、複雑さと、データベース破壊からは回復できない点です。

クラスタ化された環境では、どのクラスタノードが実際にサービスを実行しているかには関係なく、クラスタは Directory Server と Directory Proxy Server に同じ IP アドレスを使用します。つまり、IP アドレスは、クライアントアプリケーションには影響がありません。レプリケートされた環境では、トポロジ内の各マシンに独自の IP アドレスが割り当てられます。この場合は、Directory Proxy Server を使用して、ディレクトリトポロジへのシングルポイントアクセスを提供できます。したがって、レプリケーショントポロジは、クライアントアプリケーションからは実質的に隠されます。この透過性を向上させるために、Directory Proxy Server を、リフェラルと検索参照を自動的に処理するように設定できます。Directory Proxy Server ではまた、負荷分散や、1 台に障害が発生した場合に別のマシンに切り替える機能も提供されます。

冗長性とクラスタリングでの SPOF の処理方法

この章の最初に説明した SPOF の点から見ると、冗長性とクラスタリングは、障害を次の方法で処理します。

ハードウェアレベルでの冗長性

ここでは、ハードウェア冗長性に関する基本的な情報について説明します。多くの刊行物が、高可用性を実現するためのハードウェア冗長性の使用に関する包括的な情報を提供しています。特に、John Wiley & Sons, Inc. によって発行された『Blueprints for High Availability』を参照してください。

ハードウェア SPOF は、次のように広範囲に分類できます。

ネットワークレベルでの障害は、冗長性のあるネットワークコンポーネントを配置することによって軽減できます。配備を設計する場合は、次の冗長性のあるコンポーネントを配置することを検討してください。

冗長性のあるロードバランサをアーキテクチャーに追加することによって、SPOF としてのロードバランサを軽減できます。

データベース破壊の発生については、可用性を確保するためのデータベースフェイルオーバー手法を確立するようにしてください。冗長性のあるサーバーコントローラを使用することにより、ストレージサブシステム内の SPOF を軽減できます。また、コントローラとストレージサブシステムの間の冗長性のある配線、冗長性のあるストレージサブシステムコントローラ、または RAID を使用することもできます。

電源装置が 1 つしかない場合は、この電源がなくなるとサービス全体が使用不可になる可能性があります。この状況を回避するには、ハードウェアへの冗長電源装置の供給 (可能な場合) や、電源の分散化を考慮してください。電源装置内の SPOF を軽減するためのその他の方法には、サージプロテクタ、複数の電源供給元、およびローカルバッテリバックアップの使用や、ローカルでの電源の生成などがあります。

データセンター全体の障害は、たとえば、自然災害が特定の地域を襲った場合に発生します。この場合は、適切に設計された複数データセンターレプリケーショントポロジにより、分散ディレクトリサービス全体が使用不可になることを回避できます。詳細については、「高可用性を実現するためのレプリケーションと冗長性の使用」を参照してください。

ソフトウェアレベルでの冗長性

Directory Server または Directory Proxy Server の障害には、次のものが含まれる可能性があります。

これらの SPOF は、Directory Server と Directory Proxy Server の冗長性のあるインスタンスを配置することによって軽減できます。ソフトウェアレベルでの冗長性には、レプリケーションの使用が含まれます。レプリケーションによって、冗長性のあるサーバーの同期が維持されること、および要求を停止時間なく再経路指定できることが保証されます。詳細については、「高可用性を実現するためのレプリケーションと冗長性の使用」を参照してください。