次の項では、Oracle WebLogic SIP Container (OWLSC)の紹介、およびOracle WebLogic Server SIP Containerデプロイメントの構成と管理方法について説明しています。
Oracle WebLogic Server SIP Container 11g (OWLSC)は、通信サービスをエンタープライズ・サービスおよびアプリケーションと統合するために設計されている包括的なプラットフォームです。これには、キー通信チャネルとの相互作用をサポートするために使用する簡単なサービスが含まれます。
表1-1では、Oracle WebLogic Server SIP Containerの簡単な概要を示します。その詳細は、次の章で説明されています。
OWLSCは、JSR 289準拠のSIPコンテナを持つコアWebLogic Serverプラットフォームを拡張します。これにより、拡張された通信アプリケーションのために、HTTPとともにSIPを処理するJ2EEアプリケーションの開発ができます。プラットフォームでは、SIPベースのIP-PBX、および標準SIPクライアントなど他のSIP要素と統合する補足的な通信サービスの開発ができます。
即時利用可能なOWLSCは、SIPベースのネットワークをビルドするキー・インフラストラクチャ・アプリケーションを提供します。
次の項では、Oracle WebLogic SIP ContainerとOracle WebLogic Serverで共通の構成タスクについて概要を説明します。次のトピックがあります。
Oracle WebLogic Server SIP Containerは、Oracle WebLogic Server 10g リリース3アプリケーション・サーバーに基づいており、システム・レベルの構成タスクの多くは両製品で共通しています。このガイドでは、Oracle WebLogic Server SIP Containerに一意のシステム・レベルの構成タスクのみを指定します。たとえば、ネットワークとセキュリティの構成や、エンジン層とSIPデータ層のクラスタ構成用のタスクなどです。
HTTPサーバーの構成や、その他の基本的な構成タスク(サーバー・ロギングなど)は、Oracle WebLogic Serverドキュメントを参照してください。開始方法は、『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverインストレーション・スタート・ガイド』を参照してください。
Oracle WebLogic Server SIP ContainerのSIPサーブレット・コンテナ、SIPデータ層のレプリケーション、およびDiameterプロトコル機能はカスタム・リソースとしてOracle WebLogic Server 10g リリース3製品に実装されています。カスタム・リソースのsipserver
とdatatier
のペアは、エンジン層のSIPサーブレット・コンテナ機能とSIPデータ層のレプリケーション機能を実装します。本番デプロイメントには通常、両方のリソースがインストールされています。特化デプロイメントでは、SIP対応ロード・バランサとともにsipserver
リソースのみが使用できます。
別のカスタム・リソースdiameter
は、Diameterベース・プロトコル機能を提供します。1つ以上のDiameterプロトコル・アプリケーションを利用するデプロイメントにのみ必要です。
Oracle WebLogic SIP Containerのカスタム・リソースの割当ては、ドメイン構成ファイルconfig.xml
で表示できますが、変更はできません。各リソースの定義を、例1-1に示します。sipserver
とdatatier
リソースは、それぞれ同じサーバーとクラスタに割り当てる必要があります。リソースはエンジン層とSIPデータ層の両方のクラスタにデプロイされます。
例1-1 Oracle WebLogic Server SIP Containerのカスタム・リソース
<custom-resource> <name>sipserver</name> <target>ORA_DATA_TIER_CLUST,ORA_ENGINE_TIER_CLUST</target> <descriptor-file-name>custom/sipserver.xml</descriptor-file-name> <resource-class>com.bea.wcp.sip.management.descriptor.resource.SipServerResource</resource-class> <descriptor-bean-class>com.bea.wcp.sip.management.descriptor.beans.SipServerBean</descriptor-bean-class> </custom-resource> <custom-resource> <name>datatier</name> <target>ORA_DATA_TIER_CLUST,ORA_ENGINE_TIER_CLUST</target> <descriptor-file-name>custom/datatier.xml</descriptor-file-name> <resource-class>com.bea.wcp.sip.management.descriptor.resource.DataTierResource</resource-class> <descriptor-bean-class>com.bea.wcp.sip.management.descriptor.beans.DataTierBean</descriptor-bean-class> </custom-resource> <custom-resource> <name>diameter</name> <target>ORA_ENGINE_TIER_CLUST</target> <deployment-order>200</deployment-order> <descriptor-file-name>custom/diameter.xml</descriptor-file-name> <resource-class>com.bea.wcp.diameter.DiameterResource</resource-class> <descriptor-bean-class>com.bea.wcp.diameter.management.descriptor.beans.ConfigurationBean</descriptor-bean-class> </custom-resource>
Oracle WebLogic Server SIP Containerのカスタム・リソースは、config.xml
に定義されたネットワーク・チャネル、クラスタおよびサーバー構成、Java EEリソースのような基本的なドメイン・リソースを利用します。ただし、Oracle WebLogic Server SIP Containerの特定のリソースは、機能ベースの別々の構成ファイルで設定されます。
sipserver.xml
は、SIPコンテナ・プロパティと一般的なOracle WebLogic Server SIP Containerエンジン層の機能を設定します。
datatier.xml
は、SIPデータ層にレプリカとして属するサーバーを識別し、SIPデータ層パーティションの数とレイアウトも定義します。
diameter.xml
は、Diameterノードおよびドメインで使用するDiameterプロトコル・アプリケーションを設定します。
approuter.xml
は、デフォルト・アプリケーション・ルーターを構成します。DARの構成の詳細は、『Oracle WebLogic Serverインストレーション・ガイド』を参照してください。
ドメイン構成ファイルconfig.xml
は、ドメインで使用可能なすべての管理対象サーバーを定義することに注意してください。sipserver
アプリケーションに含まれるsipserver.xml
、datatier.xml
、およびdiameter.xml
構成ファイルは、SIPデータ層レプリカ、エンジン層ノード、Diameterクライアント・ノードとして動作するかどうかなど、各サーバー・インスタンスのロールを決定します。
SIPサーブレット・コンテナ・プロパティの構成の変更は、管理コンソールまたはWLSTユーティリティのコマンドラインを使用して、実行中のサーバーに対して動的に適用できます(一部のSIPサーブレット・コンテナのプロパティでは、変更後の再起動が必要であることを示す「再起動が必要な場合があります」アイコンが表示されます)。SIPデータ層ノードの構成は動的に変更できないので、パーティションやレプリカの数を変更するには、SIPデータ層サーバーを再起動する必要があります。
Diameterプロトコルの実装は、SIPサーブレット・コンテナ機能とは別に、カスタム・リソースとして行われます。Diameter構成ファイルは、Diameterノード機能を提供するように1つ以上のDiameterプロトコル・アプリケーションを構成します。Oracle WebLogic Server SIP ContainerはDiameterプロトコル・アプリケーションを提供し、次のノード・タイプをサポートします。
Diameter Shインタフェース・クライアント・ノード(ホーム・サブスクライバ・サービスの問合せ用)
Diameter Rfインタフェース・クライアント・ノード(オフラインでのチャージ用)
Diameter Roインタフェース・クライアント・ノード(オンラインでのチャージ用)
Diameterリレー・ノード
HSSシミュレータ・ノード(テストおよび開発にのみ適しており、本番デプロイメントには適しません)
Diameterカスタム・リソースは、Diameterクライアント・ノードまたはリレー・エージェントとして機能する必要があるサーバーを持つドメイン、またはHSSシミュレーション機能を提供するサーバーにのみデプロイされます。サーバー・インスタンスの実際の機能は、diameter.xml
ファイルで定義される構成によって異なります。
Oracle WebLogic Server SIP ContainerドメインでDiameter Webアプリケーションを構成する手順は、第6章「Diameterクライアント・ノードとリレー・エージェントの構成」を参照してください。Diameterアプリケーションの開発の詳細は、『Oracle WebLogic Server SIP Container開発者ガイド』を参照してください。
Oracle WebLogic Server SIP Containerには、SIPサーブレット・コンテナの構成を変更するためのメカニズムが用意されています。
Oracle WebLogic Server SIP Containerには、変更可能な管理コンソールの拡張、SIPサーブレット・コンテナ、SIPサーブレット・ドメイン、グラフィカル・ユーザー・インタフェースを使用するDiameter構成プロパティが用意されています。Oracle WebLogic Server SIP Containerの管理コンソールの拡張は、Oracle WebLogic Server 10g リリース3で利用できるコア・コンソールと似ています。すべてのOracle WebLogic Server SIP Container構成と監視は、コンソールの左ペインにあるこれらのノードを介して提供されます。
SipServer - SIPサーブレット・コンテナのプロパティとその他のエンジン層の機能を構成します。この拡張を使用して、新規のパーティションの作成、およびSIPデータ層のパーティションとレプリカの表示(変更は不可)もできます。管理コンソールを使用したSIPサーブレット・コンテナの構成の詳細は、第2章「SIPサーブレット・コンテナ・プロパティの構成」を参照してください。
Diameter - Diameterノードとアプリケーションの構成を行います。
注意: Oracle WebLogic Server管理コンソールの詳細は、『Oracle Fusion Middleware管理者ガイド』のOracle WebLogic Server管理コンソール・スタート・ガイドの項を参照してください。 |
WebLogic Scripting Tool (WLST)では、コマンドライン・インタフェースを使用して、対話型または自動化された(バッチ)構成操作を実行できます。WLSTは実行中のOracle WebLogic Server SIP Containerドメインで利用可能なMBeanの表示や操作ができるJMXツールです。詳細は、第2章「SIPサーブレット・コンテナ・プロパティの構成」では、WLSTを使用してSIPサーブレット・コンテナのプロパティを変更する手順を説明します。
注意: WLSTの使用方法の詳細は、『Oracle Fusion Middleware WebLogic Scripting Toolコマンド・リファレンス』を参照してください。 |
Oracle WebLogic Server SIP Container構成の多くは、管理コンソールまたはWLSTを使用して実行されます。構成タスクによっては、次の項に記述されている方法も使用できます。
sipserver.xml
、datatier.xml
、diameter.xml
、およびapprouter.xmlを手動で編集することもできます。構成ファイルを手動で編集する場合は、構成の変更を適用するために、すべてのサーバーを再起動する必要があります。
Oracle WebLogic Server SIP Containerプロパティは、JMX準拠のMBeanで表されます。したがって、適切なOracle WebLogic Server SIP Container MBeanを使用して、SIPコンテナ・プロパティを構成するJMXアプリケーションをプログラムできます。
JMXを使用してOracle WebLogic Server SIP ContainerMBeanプロパティを変更する一般的な手順は、第2章「SIPサーブレット・コンテナ・プロパティの構成」で説明されています(WLST自体はJMXベースのアプリケーションです)。SIPコンテナ・プロパティの処理に使用する個々のMbeanの詳細は、Oracle Fusion Middleware Communication Services Java APIリファレンスを参照してください。
Oracle WebLogic Server SIP Containerの開始スクリプトでは、パフォーマンスに影響する多くのJVMパラメータにデフォルト値が使用されています。たとえば、JVMのガベージ・コレクションやヒープ・サイズのパラメータが省略されていることや、評価や開発以外の目的には適切でない値を使用していることがあります。本番システムでは、十分なパフォーマンスを実現するために、様々なヒープ・サイズやガベージ・コレクションの設定でアプリケーションのプロファイリングを厳密に行う必要があります。
注意: 複数のエンジン層サーバーおよびSIPデータ層サーバーでドメインを構成するときには、SIPプロトコル・スタックを正しく機能させるために、すべてのシステムの時間を共通のタイム・ソースにあわせて、(1または2ミリ秒以下の精度で)正確に同期する必要があります。 |
通常のOracle WebLogic Server SIP Containerドメインには、多数のエンジン層サーバーおよびSIPデータ層サーバーがあり、異なるタイプのサーバー間に依存関係があるためです。したがって、ドメインを起動するときには、通常、次の手順に従う必要があります。
ドメインの管理サーバーを起動します。ドメインでエンジンおよびSIPデータ層サーバーに初期の構成を提供するには、管理サーバーを起動します。管理サーバーは、各管理対象サーバーの起動/停止のステータスを監視する目的にも使用します。通常、管理サーバーの起動には構成ウィザードでインストールされたstartWebLogic.cmd
スクリプトを使用するか、またはカスタムの起動スクリプトを使用します。
各パーティションのSIPデータ層サーバーを起動します。SIPデータ層のサーバーで呼出し状態データを処理できるようにならないと、エンジン層は機能しません。リクエストの処理を開始するためには、各パーティションのレプリカがすべて利用できる状態になっている必要はありませんが、同時呼出し状態を処理するためには、構成された各パーティションで少なくとも1つのレプリカを利用できる必要があります。本番ネットワーク・トラフィックに対してシステムを開く前に、すべてのレプリカが起動して利用可能な状態になっている必要があります。
通常、各SIPデータ層サーバーの起動には構成ウィザードでインストールされたstartManagedWebLogic.cmd
スクリプトを使用するか、またはカスタムの起動スクリプトを使用します。startManagedWebLogic.cmd
では、起動するサーバーの名前と、ドメインの管理サーバーのURLを指定する必要があります。たとえば、次のように指定します。
startManagedWebLogic.cmd datanode0-0 t3://adminhost:7001
エンジン層サーバーを起動します。SIPデータ層サーバーを起動したら、エンジン層でサーバーを起動して、クライアント・リクエストの処理を開始できます。エンジン層サーバーも、SIPデータ層サーバーと同様に、通常はstartManagedWebLogic.cmd
スクリプトまたはカスタムの起動スクリプトを使用して起動します。
以上の起動シーケンスに従うと、すべての管理対象サーバーで、最新のSIPサーブレット・コンテナとSIPデータ層の構成が確実に使用されます。また、この起動シーケンスなら、SIPデータ層のサーバーを利用できないときに生成されるエンジン層のエラー・メッセージも回避できます。
サービスおよびアプリケーションの構成、デプロイ、および監視のために、Oracle WebLogic Server SIP Containerインストールで管理サーバーが必要です。
注意: ハードウェア、ソフトウェア、またはネットワークの問題によって管理サーバーで障害が発生した場合に、その影響が及ぶのは、管理、デプロイメント、およびモニターの処理に対してのみです。管理対象サーバーが稼働を続けるうえでは、管理サーバーは必要ありません。つまり、管理サーバーで障害が発生した場合でも、管理対象サーバー・インスタンスで実行中のJava EEアプリケーションとSIP機能は引続き動作します。 |
Oracle WebLogic Server SIP Containerドメインの管理サーバーと管理対象サーバーのインスタンスを構成するには、次のベスト・プラクティスをお薦めします。
管理サーバーのインスタンスは、専用のマシンで稼働させます。管理サーバー・マシンには管理対象サーバー・マシンと同程度のメモリー容量が必要ですが、管理という目的のうえでは、通常は単一のCPUで問題ありません。
管理対象サーバーの独立性を使用するように管理対象サーバーのすべてのインスタンスを構成します。管理対象サーバーの独立性とは、ネットワーク、ハードウェア、またはソフトウェアの障害によって管理サーバーにアクセスできない場合でも管理対象サーバーを再起動できる機能です。詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverサーバーの起動と停止の管理』を参照してください。
Oracle WebLogic Server SIP Containerドメインのすべての管理対象サーバーを自動的に再起動するようにノード・マネージャ・ユーティリティを構成します。詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Scripting Tool』を参照してください。
管理サーバーのインスタンスまたはマシンで障害が発生した場合でも、その影響が及ぶのは、構成、デプロイメント、およびモニターの各機能のみであり、管理対象サーバーは引続き動作して、クライアント・リクエストの処理を続けます。管理サーバーの障害によって次の喪失が生じる可能性があります:
進行中の管理およびデプロイメントの処理の喪失。
進行中のロギング機能の喪失。
(Oracle WebLogic Server SIP Containerインスタンスのトラップ生成ではなく)WebLogic ServerインスタンスのSNMPトラップ生成の喪失。管理対象サーバーでは、Oracle WebLogic Server SIP Containerトラップは管理サーバーがなくても生成されます。
通常の運用を再開するために、障害が発生した管理サーバー・インスタンスはできるだけ早く再起動してください。
Oracle WebLogic Server SIP Containerの一般的な管理とメンテナンスでは、WebLogic Serverの構成プロパティとOracle WebLogic Server SIP Containerのコンテナ・プロパティの両方を管理することが必要です。これらの一般的な構成タスクを表1-1に要約します。
表1-1 Oracle WebLogic Server SIP Containerの一般的な構成タスク
タスク | 説明 |
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