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Oracle Fusion Middleware Oracle SOA Suite開発者ガイド
11g リリース1(11.1.1)
B56238-02
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10 BPELプロセスでの条件分岐の使用

この章では、BPELプロセス・サービス・コンポーネントでの条件分岐の使用方法について説明します。条件分岐により、BPELプロセス・サービス・コンポーネントの実行フローを制御するための判断ができるようになります。

項目は次のとおりです。

SOAコンポジット・アプリケーションでの条件分岐の作成方法の詳細は、WebLogic Fusion Order Demoアプリケーションを参照してください。

10.1 条件分岐の概要

BPELは、条件分岐によって選択するロジックを利用します。次のいずれかのアクティビティを使用すると、条件分岐に基づいて異なるアクションを選択するコードを設計できます。

多数のブランチが設定され、各ブランチにはXPath式形式の条件が指定されます。

条件分岐には、タイムアウトを設定できます。つまり、指定の期間内にレスポンスを生成できない場合、BPELフローは待機を中止し、そのアクティビティを再開できます。この機能の詳細は、第14章「BPELプロセスでのイベントおよびタイムアウトの使用」で説明します。


注意:

条件分岐ロジックはビジネス・ルールを使用して定義することもできます。詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Business Rulesユーザーズ・ガイド』およびWebLogic Fusion Order Demoアプリケーションを参照してください。

10.2 switchアクティビティの作成による条件分岐の定義

2社からの融資提案が同時に収集されるBPELプロセス・サービス・コンポーネントのflowアクティビティを設計し、ここではいずれの条件も比較されていないと仮定します。各条件は、それぞれのグローバル変数に格納されています。2つの提案を比較し、その比較に基づいて決定するには、switchアクティビティを使用できます。

図10-1に、switchアクティビティに定義されたBPEL条件分岐プロセスの概観を示します。

10.2.1 switchアクティビティの作成方法

switchアクティビティを作成する手順は、次のとおりです。

  1. 例10-2に示すように、「コンポーネント・パレット」からデザイナにswitchアクティビティをドラッグします。

    switchアクティビティにはデフォルトで2つのswitch caseブランチがあり、各ブランチには機能要素を挿入するためのボックスがあります。ブランチを追加するには、switchアクティビティ全体を選択して右クリックし、メニューから「Switch Caseの追加」を選択します。

    図10-2 switchアクティビティ

    図10-2の説明は次にあります。
    「図10-2 switchアクティビティ」の説明

  2. 最初のブランチで、「Condition」ボックスをダブルクリックします。

    図10-3に示すように、条件を入力するためのダイアログが表示されます。

    図10-3 「Condition」ダイアログ

    図10-3の説明は次にあります。
    「図10-3 「Condition」ダイアログ」の説明

  3. 「ラベル」フィールドに、条件分岐の名前を入力します。完了すると、Oracle BPELデザイナにこの名前が表示されます。

  4. 「説明」フィールドに、この条件分岐の機能に関する説明を入力します。

  5. 「条件」フィールドで、「式ビルダー」アイコンをクリックして「式ビルダー」ダイアログにアクセスします。

  6. 式を作成します。この例では、例10-1に示す式が作成されています。

    例10-1 XPath式

    bpws:getVariableDate('loanOffer1','payload','/loanOffer/APR') >
    bpws:getVariableData('loanOffer2','payload','/loanOffer/APR')
    

    この例では、融資企業からの完成した2つの融資提案は、グローバル変数loanOffer1およびloanOffer2に格納されます。それぞれの融資提案変数には、融資提案のAPRが格納されます。BPELフローは、APRが最も低い融資を選択する必要があります。次のいずれかのswitchアクティビティを実行します。

    • loanOffer1のAPRのほうが高い場合、最初のブランチはloanOffer2のペイロードをselectedLoanOfferのペイロードに割り当てることで、loanOffer2を選択します。

    • loanOffer1loanOffer2よりも低いAPRがない場合は、otherwiseケースがloanOffer1のペイロードをselectedLoanOfferのペイロードに割り当てます。

  7. 「OK」をクリックします。

    式が表示されます。ダイアログの「ラベル」フィールドに入力した値は、条件分岐の名前になります。

    図10-4 完成した「Condition」ダイアログ

    図10-4の説明は次にあります。
    「図10-4 完成した「Condition」ダイアログ」の説明

  8. 「OK」をクリックします。

  9. 必要に応じて、その他のアクティビティを追加および構成します。図10-5に詳細を示します。

    図10-5 switchアクティビティの設計

    図10-5の説明は次にあります。
    「図10-5 switchアクティビティの設計」の説明

10.2.2 switchアクティビティ作成時の処理内容

flowアクティビティと同様に、switchアクティビティには複数のブランチがあります。例10-2では、2つのブランチのみが設計完了後の.bpelファイルに表示されています。最初のブランチは、United Loanという企業からの融資提案を選択するブランチであり、XPathブール式を含むcase条件が適合した場合に実行されます。適合しなかった場合は、Star Loanという企業からの融資提案を選択する2番目のブランチが実行されます。デフォルトでは、switchアクティビティに含まれるswitch caseは2つですが、必要に応じて追加できます。

例10-2 switchアクティビティ

<switch name="switch-1">
     <case condition="bpws:getVariableData('loanOffer1','payload',
     '/autoloan:loanOffer/autoloan:APR') >
     bpws:getVariableData('loanOffer2','payload','/autoloan:loanOffer/autoloan:APR
     ')">
" name="Choose_the_Loan_with_the_Lower_APR">
               <bpelx:annotation>
                   <bpelx:general>
                       <bpelx:property name="userLabel">Choose the Loan with
                        the Lower APR</bpelx:property>
                   </bpelx:general>
               </bpelx:annotation> 
          <assign name="selectUnitedLoan">
            <copy>
               <from variable="loanOffer1" part="payload">
               </from>
               <to variable="selectedLoanOffer" part="payload"/>
            </copy>
         </assign>
     </case>
     <otherwise>
         <assign name="selectStarLoan">
          <copy>
            <from variable="loanOffer2" part="payload">
            </from>
            <to variable="selectedLoanOffer" part="payload"/>
          </copy>
         </assign>
     </otherwise>
</switch>

10.3 whileアクティビティの作成による条件分岐の定義

複数のアクション間で選択を行うようにBPELコードを設計する別の方法としては、whileアクティビティを使用したwhileループの作成があります。whileループは、指定の条件が適合するまで、アクティビティを繰り返します。たとえば、重要なWebサービスでリクエストに対してサービス・ビジー・メッセージを返している場合、そのサービスが使用可能になるまで、whileアクティビティを使用してポーリングし続けることができます。このときのwhileアクティビティの条件はサービスから受け取った最新のメッセージがビジーであることで、whileアクティビティ内の操作はサービスを再チェックすることです。Webサービスからサービス・ビジー以外のメッセージが戻ると、whileアクティビティは終了し、理想的にはWebサービスからの有効なレスポンスを使用して、BPELプロセス・サービス・コンポーンネントが続行されます。

10.3.1 whileアクティビティの作成方法

whileアクティビティを作成する手順は、次のとおりです。

  1. 「コンポーネント・パレット」から、デザイナにwhileアクティビティをドラッグします。

  2. +記号をクリックしてwhileアクティビティを開きます。

    whileアクティビティには、条件式を作成するアイコンとwhile定義を検証するアイコンがあります。また、アクティビティをドラッグしてwhileループを定義する領域も用意されています。

  3. while条件を使用するための追加のアクティビティ(scopeアクティビティなど)をwhileアクティビティの「アクティビティをここにドロップ」領域にドラッグして定義します。

    このアクティビティとして、既存のアクティビティや新しいアクティビティを使用できます。

  4. [Ctrl]キーを押しながら[Space]キーを押してXPathビルディング・アシスタントを起動するか、「XPath式ビルダー」アイコンをクリックして「式ビルダー」ダイアログを開きます。

  5. 図10-6に示すように、繰り返し実行する式を入力します。このアクションは、指定したwhile条件のブール値がtrueでなくなるまで実行されます。この例のアクティビティは、5未満の場合に繰り返しループするように設定されています。

    図10-6 式が設定されているwhileアクティビティ

    図10-6の説明は次にあります。
    「図10-6 式が設定されているwhileアクティビティ」の説明

  6. 完了後に「OK」をクリックします。

10.3.2 whileアクティビティ作成時の処理内容

例10-3に、設計完了後の.bpelファイルの例を示します。whileアクティビティ内にscopeアクティビティがあります。scopeアクティビティ内にはinvoke、assignおよびwaitアクティビティがあります。データベース例外処理タスクは、ローカル変数を作成してscopeアクティビティ内にinvokeアクティビティを配置することで実行されます。ローカル変数はfalseに設定されます(0で表されます)。ローカル変数の条件が満たされる(1に設定される)まで、whileループ・アクティビティで外部パートナ・サービスのコールを試行します。whileアクティビティは、最大5回ループするように設定されています。例外の場合は、フラグをfalse(0)にリセットします。

例10-3 whileアクティビティ

<while name="While_1" condition="bpws:getVariableData('dbStatus') > 5">
      <scope name="Scope_1">
<faultHandlers>
          <catchAll>
            <sequence name="Sequence_2">
              <assign name="assign_DB_retry">
                <copy>
                  <from expression="bpws:getVariableData('dbStatus') + 1"/>
                  <to variable="dbStatus"/>
                </copy>
              </assign>
              <wait name="Wait_30_sec" for="'PT31S'"/>
            </sequence>
          </catchAll>
        </faultHandlers>
        <sequence name="Sequence_1">
          <invoke name="Write_DBWrite" partnerLink="WriteDBRecord"
                  portType="ns2:WriteDBRecord_ptt" operation="insert"
                  inputVariable="Invoke_DBWrite_merge_InputVariable"/>
          <assign name="Assign_dbComplete">
            <copy>
              <from expression="'10'"/>
              <to variable="dbStatus"/>
            </copy>
          </assign>
        </sequence>
      </scope>
    </while>

10.4 アクティビティの実行をバイパスするためのXPath式の指定

アクティビティにXPath式を指定して、trueと評価された場合に、そのアクティビティがスキップされるようにできます。この機能は、アクティビティを条件付きで実行するために使用するswitchアクティビティの代替手段として提供されています。アクティビティのスキップ条件は、次のように指定します。

<activity bpelx:skipCondition="boolean-expr"/>

bpelx:skipCondition属性により、アクティビティ・インスタンスが作成されるとすぐに、XPath式が評価されます。スキップ式でfalseのブール値が返された場合は、アクティビティが実行されます。スキップ式でtrueのブール値が返された場合、アクティビティは即時に完了となり、そのアクティビティの直後のアクティビティに実行が移動します。

このコンストラクトは、スキップ条件とは反対の条件が指定された単一のcase要素が含まれるswitch/case構造化アクティビティに相当します。

例10-4に、bpelx:skipCondition属性の使用例を示します。myvalue0の場合、式はtrueと評価され、assignアクティビティがスキップされます。myvalue10の場合、式はfalseと評価され、assignアクティビティのコピー操作が実行されます。

例10-4 bpelx:skipCondition属性の使用

<assign bpelx:skipCondition="bpws:getVariableData('input',
 'payload','/tns:inputMsg/tns:myvalue') <= 0">
    <copy>
        <from expression="'Value is greater than zero'"/>
        <to variable="output" part="payload"
 query="/tns:resultMsg/tns:valueResult"/>
    </copy>
</assign>

例10-5に、switchアクティビティを使用した同等の機能を示します。

例10-5 switchアクティビティを使用した同等の機能

<switch>
    <case condition="bpws:getVariableData('input',
 'payload','/tns:inputMsg/tns:value') > 0">
        <assign>
            <copy>
                <from expression="'Value is greater than zero'"/>
                <to variable="output" part="payload"
 query="/tns:resultMsg/tns:valueResult"/>
            </copy>
        </assign>
    </case>
</switch>

スキップ条件式には、組込みおよびカスタムのXPath関数と$variable参照も使用できます。例10-6に、いくつかの例を示します。

例10-6 組込みおよびカスタムのXPath関数と$variable参照

<assign bpelx:skipCondition="bpws:getVariableData( 'crOutput', 'payload',
 '/tns:rating' ) > 0">

<assign bpelx:skipCondition="custom:validateRating()" ... />

<assign xmlns:fn='http://www.w3.org/2005/xpath-functions'
 bpelx:skipCondition="fn:false()" ... />

XPath式の評価でエラーがスローされると、そのエラーはBPELフォルトにラップされて、アクティビティからスローされます。

イベントは、trueと評価しているスキップ条件式によってバイパスされるアクティビティのBPELインスタンス監査証跡に追加されます。スキップ条件がfalseと評価された(アクティビティが実行されることを意味する)場合も、スキップ条件式が評価されたという事実が、デバッグのために監査証跡に記録されます。

XPathエンジンがブール値の評価に失敗した場合は、bpws:subLanguageFaultがスローされます。これは、switch/case条件がブール値に評価されない場合にスローされるフォルトと同じです。このフォルトも、デバッグのために監査証跡に記録されます。

10.4.1 アクティビティの実行をバイパスするためのXPath式の指定方法

アクティビティの実行をバイパスするためのXPath式を指定する手順は、次のとおりです。

  1. 「コンポーネント・パレット」からデザイナに、スキップ条件を作成するアクティビティをドラッグします。

  2. 「スキップ条件」タブをクリックします。

  3. trueと評価された場合にアクティビティをスキップさせるXPath式を指定します。図10-7に詳細を示します。

    図10-7 スキップ条件XPath式

    図10-7の説明は次にあります。
    「図10-7 スキップ条件XPath式」の説明

  4. 「適用」「OK」の順にクリックします。

10.4.2 アクティビティの実行をバイパスするためのXPath式指定時の処理内容

.bpelファイルのコード・セグメントは、特定の操作に対する設計完了後の定義を示しています。

たとえば、例10-7に記載されているXPath式は、trueと評価された場合に(たとえば、input20)、assignアクティビティをスキップさせます。

例10-7 アクティビティの実行をバイパスするためのskipCondition属性

<sequence name="main">
. . .
. . .
<assign name="Assign_1"
                bpelx:skipCondition="number(bpws:getVariableData('inputVariable','payload','/client:
 process/client:input')) > 10">
    <copy>
       <from expression="'Assign Block is not Skipped'"/>
          <to variable="inputVariable" part="payload"
             query="/client:process/client:input"/>
    </copy>
</assign>
. . .
. . .
</sequence>