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Oracle Fusion Middleware Oracle SOA Suite開発者ガイド
11g リリース1(11.1.1)
B56238-02
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23 Oracle Mediatorにおける再順序付けのサポート

この章では、Oracle Mediatorにおけるメッセージの再順序付けのサポートについて説明します。

項目は次のとおりです。

23.1 再シーケンサの概要

再シーケンサは、関連はしているが順不同な一連のメッセージを適切な順序に再編成します。ランダムな順序で届く着信メッセージを順序付けし、ターゲット・サービスに正しい順序で送信します。順序付けは、選択した順序付け方法に基づいて処理されます。

23.1.1 グループおよび順序ID

再シーケンサでは、グループと順序IDの2つの中心的な概念が使用されます。順序IDはメッセージの識別子の部分で、メッセージはこれに基づいて再編成されます。再順序付けのために着信したメッセージは、複数のグループに分割され、各グループ内のメッセージは順序IDに従って順序付けされます。グループ内の順序付けは、他のグループのメッセージとは独立して実行されます。グループ自体は相互に依存していないため、独立して処理できます。

特定のグループに添付されているメッセージは、次の順序でOracle Mediatorに着信します。

msg9(a)、msg8(b)、msg7(a)、msg6(c)、msg5(a)、msg4(b)、msg3(c)、msg2(b)、msg1(a)

表23-1に、Oracle Mediatorがメッセージを複数のグループにソートする方法を示します。各グループ内のメッセージの順序は、使用している再シーケンサのタイプによって異なります。

表23-1 複数のグループにソートされるメッセージ

グループc グループb グループa

msg6(c)、msg3(c)

msg8(b)、msg4(b)、msg2(b)

msg9(a)、msg7(a)、msg5(a)、msg1(a)


すべてのグループは相互に独立して処理され、いずれかのグループで発生したエラーが、他のグループの処理に影響を与えることはありません。

23.1.2 グループIDと順序IDの識別

グループIDと順序IDは、ペイロードのXPath式を介して識別されます。次のメッセージに対して、メッセージ・ペイロードの要素を指し示すXPath式を指定します。

  • グループ化の対象

  • 順序付けの対象

Figure 23-1に示すメッセージ・ペイロードでは、CustomerIdがインスタンス順序付けのベースとなるフィールドで、CustomerNameがグループ化のベースとなるフィールドです。

図23-1 メッセージ・ペイロード

図23-1の説明は次にあります。
「図23-1 メッセージ・ペイロード」の説明


注意:

再順序付けは、WSDLファイルでリクエスト操作タイプおよびリクエスト・コールバック操作タイプのOracle Mediatorに対してのみサポートされています。つまり、WSDL操作に同期リプライ要素がある場合、再順序付けはユーザー・インタフェースでは使用できません。これらの操作タイプの詳細は、第24章「Oracle Mediatorのメッセージ交換パターンの理解」を参照してください。

23.2 再順序付けの順序

Oracle Mediatorでは、ユーザーが指定した順序で着信メッセージを再順序付けできます。この実装によって、3種類の再順序付けの順序を指定できます。

23.2.1 標準再シーケンサ

この項では、標準再シーケンサについて説明します。

23.2.1.1 標準再シーケンサの概要

標準再シーケンサは、標準再シーケンサ・パターンをサポートしており、メッセージ内の単純な識別子の連番から識別子を使用するアプリケーションに関連しています。標準再シーケンサは一連のメッセージを受信しますが、これらのメッセージは順序に従って着信しない可能性があります。この場合、sequenceIDに基づいた完全な順序を取得するまで、メッセージは順不同で格納されます。正しい順序のメッセージは、そのメッセージのsequenceIDに基づいて非同期で処理されます。

標準再シーケンサであるOracle Mediatorサービス・コンポーネントのアウトバウンド・サービスへのメッセージは、順番に着信することが保証されている点に注意してください。標準再シーケンサでは、メッセージの順序のみが変更され、内容は変更されません。

23.2.1.2 標準の再順序付けに必要な情報

標準のOracle Mediator再シーケンサを使用する場合は、常にグループXPath式とsequenceID XPath式を指定する必要があります。これらのXPath式は、Oracle Mediator再シーケンサがメッセージでグループおよび順序IDを検索する場所を指定する際に使用されます。また、開始sequenceIDsequenceIDの増分デルタに関して順序番号を指定する必要があります。この番号付けは、各グループを形成する際に使用されます。

23.2.1.3 標準再シーケンサの例

表23-2に、複数のグループが、増分デルタの2つの異なる値に対してどのように形成されるかを示します。

表23-2 2つの異なる値に対する複数グループの形成

開始順序ID 増分デルタ グループ1 グループ2 ... グループn

1

1

1、2、3、4、5、...

1、2、3、4、5、...

...

1、2、3、4、5、...n

1

5

1、5、10、15、...

1、5、10、15、...

...

1、5、10、15、...



注意:

  • 様々なグループで順序番号が異なり(たとえば、各グループに同じ増分デルタまたは開始sequenceIDがない場合)、メッセージも正しい順序で着信しない場合は、ベスト・エフォート再シーケンサを使用できます。

  • Oracle Mediatorの標準再シーケンサでは、様々なグループに対して適切な順序を作成できるようになるまで、Oracle Mediatorの再シーケンサ・データベースにメッセージが保持されます。これは、指定のグループについて、特定のsequenceIDのメッセージがタイムアウト期間脚注1内に着信しない場合は、そのグループの連続するメッセージが永久に保持されることを意味します。このような場合は、Oracle Enterprise Manager Fusion Middleware Controlコンソールを介してグループのロックを手動で解除して次のメッセージに進み、保留中のメッセージをスキップする必要があります。


脚注1タイムアウト期間とは、予期されているメッセージを待機する期間(秒単位)です。

23.2.2 FIFO再シーケンサ

この項では、FIFO再シーケンサについて説明します。

23.2.2.1 FIFO再シーケンサの概要

FIFO再シーケンサは、FIFOパターンをサポートしています。このパターンは、Oracle Mediatorへのメッセージの着信時刻に基づいてメッセージを順序付けする必要があるアプリケーションに関連しています。FIFO再シーケンサは、順序に従って一連のメッセージを受信し、Oracle Mediatorへの着信時刻に基づいて、すべてのグループのメッセージを順に処理します。

FIFO再シーケンサとして機能するOracle Mediatorのアウトバウンド・サービスへのメッセージは、着信時刻に基づいて順に着信することが保証されている点に注意してください。したがって、メッセージは、再シーケンサ・データ・ストアに格納された順に配信されます。

23.2.2.2 FIFO再順序付けに必要な情報

FIFO再シーケンサを使用する場合は、常にグループXPath式を指定する必要があります。ただし、メッセージはFIFO再シーケンサとして構成されているOracle Mediatorへの着信時刻に従って処理されるため、順序IDを指定する必要はありません。グループXPath式は、FIFO再シーケンサがメッセージのグループ化のために、メッセージ内のグループ情報を検索する場所を指定する際に使用されます。FIFOパターンに必要な構成は他にはありません。

23.2.2.3 FIFO再シーケンサの例

表23-3に、FIFO再シーケンサの動作を示します。msgX(Y,Z)は、メッセージがOracle Mediatorサービス・コンポーネントへのメッセージ番号Xとして着信し、そのメッセージにsequenceID YとグループZが格納されていることを意味します。

表23-3 FIFO 再シーケンサの動作

着信メッセージ 順序付けされたメッセージ

msg03(2,c)

msg06(1,c)

msg07(5,a)

msg10(3,a)

msg10(3,c)

msg02(7,a)

msg05(9,a)

msg12(4,c)

msg12(4,c)、msg10(3,c)、msg06(1,c)、msg03(2,c)

msg05(9,a)、msg02(7,a)、msg10(3,a)、msg07(5,a)


表23-3に示すように、メッセージは着信時刻に基づいて順序付けされ、sequenceIDは順序付けに使用されません。


注意:

FIFO再シーケンサを使用する場合は、シングル・スレッドのインバウンド・アダプタを使用して不測の結果を回避してください。たとえば、再シーケンサとして構成されているOracle Mediatorサービス・コンポーネントの前で、ファイル/FTPアダプタ、データベース・アダプタまたはAQアダプタを使用する場合、処理ではこれらのアダプタをシングル・スレッドとして構成してください。シングル・スレッドとして構成しないと、メッセージの着信時刻がOracle Mediatorサービス・コンポーネントへのメッセージ着信時には計算されますが、アダプタ・サービスへの着信時には計算されないため、不測の結果が発生します。

23.2.3 ベスト・エフォート再シーケンサ

この項では、ベスト・エフォート再シーケンサについて説明します。

23.2.3.1 ベスト・エフォート再シーケンサの概要

この再シーケンサは、ベスト・エフォート・パターンをサポートしています。このパターンは、短時間に多数のメッセージを生成するため、順序付けに使用する識別子を再シーケンサに伝達できないアプリケーションに関連しています。通常、このようなシナリオの順序付けに使用される識別子は、dateTimeタイプまたは数値タイプの識別子です。dateTimeフィールドを順序ID XPathとして使用すると、順序付けを制御できます。メッセージはアプリケーションによって順に従って送信されることが期待されています。Oracle Mediatorでは、メッセージが順に従って配信されるように最善の努力をします。

ベスト・エフォート再シーケンサは、順に従った一連のメッセージまたはわずかに順から逸脱した一連のメッセージを受信できます。この再シーケンサでは、順序IDの増分に関する認識に基づくことなくメッセージの順序を並べ替えることもできます。これは、標準再シーケンサとは異なり、ベスト・エフォート再シーケンサには、順序IDの増分を事前に定義する必要がないことを意味します。メッセージの処理時には、本来の順序を取得できるかできないかに関係なく、メッセージは指定した順序IDとその時点で着信したメッセージに基づいて順に処理されます。順序IDは、数値またはdateTimeのいずれかです。したがって、順序付けは、順序IDの数値またはdateTimeの順に発生します。

ベスト・エフォート再シーケンサは、メッセージを非同期で処理します。新しいメッセージが再シーケンサ・データベースで使用可能な場合は常に、ベスト・エフォート再シーケンサが、指定された順序IDに従って新しいメッセージを順序付けし、その順序付けからmaxRowsRetrievedパラメータの値と等しいメッセージをロックして取得し、再シーケンサ独自のトランザクションでメッセージを1つずつ順に処理します。

ベスト・エフォート再シーケンサとして機能するOracle Mediatorサービス・コンポーネントのアウトバウンド・サービスへのメッセージは、sequenceIDに基づいて順に着信することが保証されていない点に注意してください。任意の時点で、使用可能なメッセージのスナップショットが保存され、それらのメッセージのみを対象として順序付けが実行されます。したがって、標準再シーケンサとは異なり、先に着信した大きい順序ID値のメッセージより前に、小さい順序ID値のメッセージが送信される保証はありません。後に到着した小さい順序ID値のメッセージは、使用可能なメッセージのスナップショットの保存とメッセージの順序付けが再度行われる次のサイクルで取得され、処理されます。

23.2.3.2 ベスト・エフォート再順序付けに必要な情報

ベスト・エフォート再シーケンサを使用する場合は、グループXPath式と順序ID XPath式を指定する必要があります。これらのXPath式は、再シーケンサがメッセージでグループおよび順序IDを検索する場所を指定する際に使用されます。標準再シーケンサとは異なり、ベスト・エフォート再シーケンサには、順序の作成方法に関する認識はありません。ベスト・エフォート再シーケンサでの処理に使用される情報は他にはありません。

23.2.3.3 ベスト・エフォート再順序付けの例

表23-4に、ベスト・エフォート再シーケンサの動作を示します。msgX(Y,Z)は、メッセージがOracle Mediatorサービス・コンポーネントへのメッセージ番号Xとして着信し、そのメッセージにsequenceID YとグループZが格納されていることを意味します。

表23-4 ベスト・エフォート再シーケンサの動作

グループC 順序付けされたメッセージ

msg03(1,c)

msg06(2,c)

msg10(3,c)

msg12(4,c)

msg12(4,c)、msg10(3,c)、msg06(2,c)、msg03(1,c)



注意:

ベスト・エフォート再シーケンサが正しく機能するには、メッセージが完全に、またはほとんど同期している必要があります。同期していない場合は、正しく順序付けされません。メッセージが相互に短い間隔で着信しない場合は、maxRowsRetrievedパラメータの値を1に設定してください。これによって、次の順番のメッセージには、着信する実際のメッセージを配信するための余裕ができるため、次の処理ループでワーカー・スレッドによってフェッチされ、順に配信されます。

23.3 再シーケンサの構成

再シーケンサは、Oracle JDeveloperを使用して構成できます。この項では、Oracle JDeveloperでの再シーケンサの構成方法について説明します。

23.3.1 再順序レベルの決定方法

最初に、再順序付けの定義が必要なレベルを決定する必要があります。1つの操作のみが指定されているOracle Mediatorサービス・コンポーネントの場合は、操作またはサービス・コンポーネントのレベルで再順序付けを構成すると、結果は同じ動作になります。複数の操作が指定されているOracle Mediatorの場合、サービス・コンポーネント・レベルでの再順序付けの指定は、再順序付けがすべての操作に適用されることを意味します。したがって、あらゆる操作で着信するメッセージが再順序付けされます。デフォルトの再順序レベルは「操作」です。

再順序レベルを設定する手順は、次のとおりです。

  1. 図23-2に示すように、メディエータ・エディタの「再順序レベル」ドロップダウン・リストから再順序レベルを選択します。

    図23-2 メディエータ・エディタと「再順序レベル」フィールド

    メディエータ・エディタの再シーケンサ・レベル・フィールド
    「図23-2 メディエータ・エディタと「再順序レベル」フィールド」の説明

    「再順序レベル」「コンポーネント」を選択すると、各操作で再順序付けオプションは表示されなくなり、サービス・コンポーネントに再順序モードを設定するための「再順序モード」フィールドが表示されます。デフォルトの再順序モードは「オフ」に設定されています。

    再順序モードを選択すると、図23-3に示すように、サービス・コンポーネントの「再順序オプション」セクションが表示されます。操作の「再順序モード」フィールドが「オフ」に設定されている場合、「再順序オプション」セクションは表示されません。

    図23-3 メディエータ・エディタと「再順序オプション」セクション

    図23-3の説明は次にあります。
    「図23-3 メディエータ・エディタと「再順序オプション」セクション」の説明

    「再順序オプション」セクションのオプションは、再順序モードの変更に応じて変化します。

23.3.2 再順序付け方法の構成方法

この項では、再順序付け方法の構成方法について説明します。

23.3.2.1 標準の再順序付け

表23-5に、標準再シーケンサの構成に必要なフィールドを示します。

表23-5 標準の再順序付け

フィールド名 説明 デフォルト値 必須

groupIDExpression

グループ化を実行する着信メッセージのフィールドを指し示すXPath。

該当なし

いいえ

sequenceIDExpression

再順序付けを実行する着信メッセージのフィールドを指し示すXPath。

該当なし

はい

timeoutDuration

予期されているメッセージを待機する期間(秒単位)。タイムアウトが発生すると、再シーケンサはグループをタイムアウトとしてロックします。

0脚注1

いいえ

sequenceStart

連番の開始番号。

1

いいえ

sequenceIncrement

連番の増分。

1

いいえ


脚注1このデフォルト値は、グループのタイムアウトがデフォルトでは発生しないことを意味します。

図23-4に、「再順序」フィールドが「標準」に設定されている状態のOracle Mediatorを示します。

図23-4 「再順序モード」が「標準」に設定されている状態のOracle Mediator

図23-4の説明は次にあります。
「図23-4 「再順序モード」が「標準」に設定されている状態のOracle Mediator」の説明

23.3.2.2 FIFO再順序付け

表23-6に、FIFO再シーケンサの構成に必要なフィールドを示します。

表23-6 FIFO再順序付け

フィールド名 説明 デフォルト値 必須

groupIDExpression

グループ化を実行する着信メッセージのフィールドを指し示すXPath。

該当なし

いいえ


図23-5に、「再順序」フィールドが「FIFO」に設定されている状態のOracle Mediatorを示します。

図23-5 「再順序モード」が「FIFO」に設定されている状態のOracle Mediator

図23-5の説明は次にあります。
「図23-5 「再順序モード」が「FIFO」に設定されている状態のOracle Mediator」の説明

23.3.2.3 ベスト・エフォート再順序付け

表23-7に、ベスト・エフォート再シーケンサの構成に必要なフィールドを示します。

表23-7 ベスト・エフォート再順序付け

フィールド名 説明 デフォルト値 必須

groupIDExpression

グループ化を実行する着信メッセージのフィールドを指し示すXPath。

該当なし

いいえ

sequenceIDExpression

再順序付けを実行する着信メッセージのフィールドを指し示すXPath。

該当なし

はい

sequenceIDDataType

順序IDのデータ型。

順序付けはデータ型に基づいて実行されます。サポートされている値は、日付/時間または数値です。

数値

いいえ

maxRowsRetrieved

再シーケンサがデータ・ストアから一度に取得する順に従ったメッセージの数。

5

いいえ


図23-6に、「再順序」フィールドが「ベスト・エフォート」に設定されている状態のOracle Mediatorを示します。

図23-6 「再順序モード」が「ベスト・エフォート」に設定されている状態のOracle Mediator

図23-6の説明は次にあります。
「図23-6 「再順序モード」が「ベスト・エフォート」に設定されている状態のOracle Mediator」の説明

23.4 再シーケンサの制限事項

このリリースでは、再シーケンサに次の制限があります。

XSDファイルにサーバー・ロケールのエンコーディングでサポートされていないマルチバイト文字が含まれている場合の再シーケンサの失敗

XSDファイルにサーバー・ロケールのエンコーディングでサポートされていないマルチバイト文字が含まれている場合、再シーケンサの実行は、プロジェクト・フローをトリガーした後に失敗します。