この章では、OC4Jアプリケーションをアップグレードし、Oracle WebLogic Serverに再デプロイする場合に実行が必要になる可能性が高い一般的なタスクについて簡単に説明します。
この章の内容は次のとおりです。
Oracle Application Server 10gアプリケーションをOracle Fusion Middleware 11gにアップグレードする前に、まず、現時点でアプリケーションがOracle Application Server 10gに正常にデプロイされ実行中であることを確認する必要があります。
また、アプリケーションをデプロイしたOC4Jインスタンスに対して行ったアプリケーション固有の構成変更を記録しておきます。たとえば、アプリケーションに特定のデータソース、JMSサーバーまたは他のリソースが必要な場合は、この章で後から説明するようにOracle WebLogic Serverドメインに対して同様の構成変更を行う必要があります。
Oracle WebLogic ServerおよびOracle Fusion Middlewareプラットフォーム用のJava EEアプリケーションを開発するための最適なツールを選択する際に役立つ情報については、次の項を参照してください。
Oracle Application Development Framework(ADF)、Oracle Metadata Services(MDS)、Oracle SOA Suite、Oracle WebCenterなどのOracleテクノロジを利用していないJava EEアプリケーションの場合は、使い慣れた開発ツールを使用してコード変更を行うことができます。
ただし、Oracleテクノロジを利用する場合は、統合開発環境(IDE)であるOracle JDeveloperの使用をお薦めします。Oracle JDeveloperを使用すると、Oracle Fusion Middleware向けのADF、SOAおよびWebCenterアプリケーションの開発、テストおよびデプロイを大幅に簡単かつ効率的に行うことができます。
Oracle ADF、Oracle SOA、Oracle WebCenterなどのOracleテクノロジを利用するアプリケーションを容易に作成する機能の提供の他に、Oracle JDeveloperには、OC4JアプリケーションをOracle WebLogic Serverにアップグレードするための拡張機能もあります。
SmartUpgrade拡張機能を使用すると、Oracle JDeveloperを使用して既存のエンタープライズ・アーカイブ(EAR)ファイルを分析し、一連の分析結果を順に確認するSmartUpgradeレポートを生成できます。それぞれの分析結果は、アプリケーションをどのように修正するとOracle WebLogic Serverに正しくデプロイできるかを示すアドバイスになります。
詳細は、『Oracle Fusion Middleware SmartUpgradeユーザーズ・ガイド』を参照してください。
Oracle Fusion Middleware 11g ではJDK SE 6をサポートしています。アプリケーションをOracle WebLogic Serverに再デプロイする前に、アプリケーションのJavaソース・コードとJDK 6に互換性があることを確認します。
詳細は、次のSun社Webサイトで提供されているリソースを参照してください。
http://java.sun.com/javase/6/
OC4JおよびOracle WebLogic Serverはどちらも、Java EE標準のデプロイメント・ディスクリプタだけでなく、対応する専用ディスクリプタもサポートしています。ただし、OC4JアプリケーションをOracle WebLogic Serverに再デプロイする場合は、Oracle WebLogic Serverの要件に準拠するようにapplication.xml
、web.xml
などのアプリケーション・ディスクリプタを変更する必要があります。
アプリケーション・デプロイメント・ディスクリプタのアップグレードについて詳しく学習するには、次の項を参照してください。
標準のデプロイメント・ディスクリプタとOC4J固有のディスクリプタについて理解している場合は、表4-1を参照して、Oracle WebLogic Server環境での同等のデプロイメント・ディスクリプタ・ファイルを確認できます。
WebLogic Serverにデプロイできるようにアプリケーションを準備するには、OC4J固有のデプロイメント・ディスクリプタを削除し、WebLogic Server固有の同等の設定に置き換える必要があります。
デプロイを正常に行うには、各デプロイメント・ディスクリプタを調べ、アプリケーションで使用されるデプロイメント・ディスクリプタ機能ごとに次のいずれかの操作を実行します。
OC4Jのデプロイメント・ディスクリプタ機能が、WebLogic Server固有の同等のデプロイメント・ディスクリプタ内に直接マップされている場合は、同等のWebLogic Serverディスクリプタに適切な要素と値を指定して使用します。
OC4Jのデプロイメント・ディスクリプタ機能が直接マップされていない場合は、適切なOracle WebLogic Serverドキュメントを確認します。
Oracle WebLogic Serverのデプロイメント・ディスクリプタに直接マップされていない機能は、多くの場合、WebLogicドメインを適宜構成することによって使用できるようになります。
表4-2に、デプロイメント・ディスクリプタをOracle WebLogic Serverへアップグレードする場合に役立つドキュメント・リソースのリストを示します。
表4-2 デプロイメント・ディスクリプタをOracle WebLogic Serverにアップグレードする場合のドキュメント・リソース
アップグレード先となるWebLogic固有のデプロイメント・ディスクリプタ | 参照先ドキュメント・リソース |
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"『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverアプリケーションの開発』のエンタープライズ・アプリケーション・デプロイメント・ディスクリプタ要素に関する項 |
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付録A「orion-web.xmlおよびorion-ejb-jar.xmlのアップグレード・リファレンス」。 |
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付録A「orion-web.xmlおよびorion-ejb-jar.xmlのアップグレード・リファレンス」。 |
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"『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverスタンドアロン・クライアントのプログラミング』のクライアント・アプリケーション・デプロイメント・ディスクリプタ要素に関する項 |
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"『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverリソース・アダプタのプログラミング』のweblogic-ra.xmlファイルの構成に関する項 |
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"『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Server WebLogic Webサービス・リファレンス』のWeblogic Webサービス・デプロイメント・ディスクリプタ要素に関する項 |
5.3.6項「Oracle WebLogic Server上でのセキュリティの構成」で推奨されている手順を使用する場合、web.xml
やejb-jar.xml
などの標準のJava EEアプリケーション・デプロイメント・ディスクリプタに格納されているセキュリティの構成(認証方法、セキュリティ制約、EJBメソッドの権限など)は、そのままアップグレードに使用することができ、アプリケーションがOracle WebLogic Serverにデプロイされても引き続き機能します。
OC4J固有のディスクリプタで指定されているセキュリティ構成(セキュリティ・ロール・マッピングなど)については、WebLogic Server Securityドキュメントを参照して、4.4.1項「OC4JおよびOracle WebLogic Serverのデプロイメント・ディスクリプタの比較」で説明されている同等のOracle WebLogic Serverデプロイメント・ディスクリプタ内の要素に各構成をマップしてください。
デプロイメント・プランは、Oracle WebLogic ServerとOC4Jの両方でサポートされている標準のJava EEサーバー機能です。ただし、デプロイメント・プランはアプリケーション・サーバー間で移植できません。OC4JからOracle WebLogic Serverにアップグレードする場合は、デプロイメント・プロセスの一部としてOracle WebLogic Serverに保存されるアプリケーションのデプロイメント・プランを再生成して保存する必要があります。また、weblogic.PlanGenerator
コマンドライン・ツールを使用して、新しいデプロイメント・プランを構築することもできます。
詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverへのアプリケーションのデプロイ』のweblogic.PlanGeneratorの概要に関する項を参照してください。
Oracle Application Server 10g アプリケーションをOracle WebLogic Serverに再デプロイする前に、アプリケーションを確認し、ソース・コードが参照するアプリケーション・プログラミング・インタフェースを特定する必要があります。
詳細は、次の項を参照してください。
Oracle Fusion Middleware11g には、Oracle Java Required Files(JRF)テンプレートと呼ばれるOracle WebLogic Serverドメイン・テンプレートが用意されています。このテンプレートを使用して、Oracle WebLogic Serverドメインを作成(または拡張)できます。作成または拡張されたドメインには、Oracle Application Server 10g の主要機能の一部の更新済バージョンが格納されます。
詳細は、5.1.4項「Java Required Files(JRF)ドメイン・テンプレートの使用」を参照してください。
特に、JRFテンプレートを使用すると、Oracle Fusion Middleware 11g で次のOracle Application Server機能をサポートできます。
これらのAPIを使用するアプリケーションは、JRFで拡張されたドメインを使用できるので、そのAPIへの更新の結果として必要になる変更以外に変更は必要ありません。
詳細は、第5章「Java EE環境のアップグレード」を参照してください。
表4-3に、その他のOracle Application Server 10g のAPIの概要と、これらがOracle Fusion Middleware 11g へのアップグレードによって受ける影響の概要を示します。
表4-3 Oracle Fusion Middleware 11g へのアップグレード時に必要なその他のAPIの変更
API | 説明および必要な操作 | 詳細情報 |
---|---|---|
Oracle Fusion Middleware 11g で用意されているJRFドメイン・テンプレートでは、Oracle Platform Security Services(OPSS)APIが提供する機能セットと同等の更新済の機能セットが提供されます。 現在Oracle JAZN APIを使用してセキュリティ管理を行っているアプリケーションは、アップグレードの一環としてOPSSを使用するように更新を行い、これらのアプリケーションをJRFで拡張されたOracle WebLogic Serverドメインにデプロイできるようにする必要があります。 |
"『Oracle Fusion Middlewareセキュリティ・ガイド』のOracle Platform Security Servicesの概要に関する項 |
|
引き続きOracle Toplinkを使用するには、対象となるOracle WebLogic ServerドメインがJPA永続性プロバイダとしてOracle TopLinkを使用するように構成されている必要があります。 Oracle WebLogic ServerではOracle TopLinkの完全なサポートを保証しています。 |
『Oracle Fusion Middleware Oracle TopLink開発者ガイド』のTopLinkとOracle WebLogic Serverの統合に関する項 |
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引き続きこれらのタグ・ライブラリを使用するには、Oracle JSPタグ・ライブラリに関連付けられているOracle Application Server 10g のTLDファイルとJARファイルが、次のWARファイルのディレクトリに存在するようにしてください(このディレクトリにない場合は配置します)。 |
該当なし |
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Web Cacheの無効化APIを引き続き使用するには、WebLogic Serverへのデプロイ時にアプリケーションでOracleAS 10g の適切なjarファイルが使用できるようにします。 また、このAPIの完全な下位互換性を持つ更新済バージョンもJRFドメイン・テンプレートの一部として提供されています。 |
4.5.1項「Java Required Files(JRF)ドメイン・テンプレートで使用可能なAPI」 |
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OracleAS Web Servicesを使用するアプリケーションでは、Oracle Fusion MiddlewareまたはWebLogic ServerのAPIおよび機能と同等のセットを使用するために変更が必要です。具体的には次のようになります。 |
『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Server WebLogic Webサービスの紹介』 |
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OC4J Job Schedulerに対してはOracle Fusion Middleware Enterprise Scheduler(ESS)へのアップグレードおよび移行パスが提供されています。 |
Oracle Technology Network(OTN)で提供されている『Oracle Ultra Search vs Oracle Secure Enterprise Search, Frequently Asked Questions』(PDF形式) |
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このAPIを使用するアプリケーションは、Java Standard Tag Library(JSTL)タグの同等のセットを使用するように変更する必要があります。 |
『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Server Webアプリケーション、サーブレット、JSPの開発』 |
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アプリケーションおよび環境の管理を目的としてOC4J JMX MBeanを直接使用しているアプリケーションは、WebLogic Server JMX MBeanの同等のセットを使用するように変更する必要があります。 |
『Oracle Fusion Middleware Developing Manageable Applications With JMX for Oracle WebLogic Server』 |
WebサービスをOC4JからOracle WebLogic Serverにアップグレードするには、次の項を参照してください。
一般的に、WebサービスをOC4JからOracle WebLogic Serverにアップグレードする場合は、アプリケーションをアップグレードしてWebLogic Serverで同等のJava WebサービスAPIを使用できるようにする必要があります。
ほとんどのOC4J Webアプリケーションにとって、これはOC4J JAX-RPC WebサービスからOracle WebLogic Server JAX-RPC Webサービスへのアップグレードを意味します。通常、JAX-RPCのアップグレード・プロセスでは、Oracle WebLogic ServerのWebサービス・ツールを使用して、Oracle WebLogic Server上のJavaアーティファクトを、基礎となる同じJavaビジネス・ロジックに再生成します。
古いリリースのOC4Jを使用している場合は、Java EE内にWebサービスの標準が存在しないため、Oracle WebLogic ServerでJava EE 5.0の標準仕様であるJAX-WSにアップグレードすることをお薦めします。
詳細は、次を参照してください。
"『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Server WebLogic Webサービスの紹介』のJAX-WSまたはJAX-RPCの選択方法に関する項
特定のOC4J WebサービスのパブリックAPI(WDSL)に完全に準拠するには、WebLogic ServerのWebサービスをOC4J WSDLから再生成し、生成されたWebサービスをWebLogic Serverにデプロイします。このプロセスは、Webサービス開発のトップダウン方式と呼ばれます。
Oracle WebLogic Serverでデプロイ可能な同等のWebサービス・アーティファクトを作成した後は、次の管理操作として、WS-SecurityやWS-ReliableMessagingなど、同等のサービス品質(QOS)機能を適用します。
表4-4は、OC4JおよびOracle WebLogic ServerでサポートされているWebサービス標準の仕様の比較を示しています。Oracle WebLogic Serverでは、WS-Reliabilityを除き、OC4JがサポートするすべてのWebサービスの標準と仕様をサポートしています。