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Oracle® Fusion Middleware Oracle Business Process Managementユーザーズ・ガイド
11g リリース1(11.1.1.4.0)
B61408-02
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1 Oracle Business Process Management Suite (Oracle BPM Suite)の概要

この章では、Oracle BPM Suiteの概要について説明します。

この章の内容は次のとおりです。

1.1 Oracle BPM Suiteの概要

Oracle BPM Suiteは、ビジネス・プロセスを軸として展開するビジネス・アプリケーションを開発、管理および使用するための統合環境を提供します。

Oracle BPM Suiteでは、次の機能が用意されています。

Oracle BPM Suiteでは、設計時および実装からランタイムおよびアプリケーション管理まで、アプリケーション開発ライフサイクルの全ステージをシームレスに統合します。

Oracle BPM SuiteはOracle SOA Suiteの上位レイヤーになり、次を含む製品コンポーネントの多くを共有しています。

図1-1は、Oracle BPM Suiteの概要レベルのアーキテクチャ・ビューを示しています。

図1-1 Oracle BPM Suite

図1-1の説明が続きます
「図1-1 Oracle BPM Suite」の説明

1.3項「Oracle BPM Suiteコンポーネント」では、図1-1に示す各コンポーネントの詳細を説明します。

1.2 Oracle BPMのユーザー・ペルソナ

アプリケーション開発ライフサイクルの様々なステージで、様々なタイプのユーザーからの相互作用が必要になります。表1-1では、Oracle BPM Suiteの一般的なユーザーとその役割について説明し、これらのユーザーが作業を行うために使用するOracle BPMのコンポーネントを示します。

これらのユーザー・ペルソナは、このガイド内の例として使用されています。

表1-1 Oracle BPMのユーザー・ペルソナ

ユーザー・ペルソナ 説明

プロセス・アナリスト

プロセス・アナリストの役割は、ビジネス・プロセスの最初のフローを作成し、そのステップをドキュメント化することです。これには、主要パフォーマンス・インジケータ(KPI)およびビジネス・プロセスのルーティング・アーティファクトを定義する概要レベルのルールを特定し、それらを定義することも含まれます。また、このペルソナが投資利益率の計算と予測をシミュレーションする場合もあります。

プロセス・アナリストは通常、Oracle Business Process Analysis SuiteまたはBusiness Process Composerを使用してプロセス・モデルを作成します。また、Oracle BPM Studio内部のプロセス・アナリスト・ロールを使用することもできます。

プロセス開発者

プロセス開発者の役割は、プロセス・アナリストが作成したプロセス・モデルを実装することです。プロセスの各ステップに実装が必要です。プロセス開発者には、データベースなどのバックエンド・アプリケーションとビジネス・プロセスを統合する役割もあります。

プロセス開発者は通常、Oracle BPM Studioを使用してビジネス・アプリケーションのコンポーネントのモデリングと実装を行います。また、基本的なプロセスをモデリングするためにOracle Business Process Composer (Business Process Composer)を使用することもあります。

ビジネス管理者

ビジネス管理者の役割は、BPMインフラストラクチャの管理です。一般的なアクティビティには、BPM環境のインストールとセットアップ、ビジネス・プロセスをホストするOracle BPMNサービス・エンジンの全般的な管理などが含まれます。

このペルソナは、ユーザー、グループ、組織単位、カレンダや休日など、組織の資産を管理する役割を委任できます。

ビジネス管理者が主に使用するツールは、Oracle Enterprise ManagerおよびAntなどの自動化ツールです。また、ビジネス管理者は、組織単位、ロール割当ての管理、およびワークフロー拡張ルーティング宣言の作成などのその他のアクティビティを管理するために、Oracle Business Process Management Workspace(プロセス・ワークスペース)も使用します

プロセス所有者

プロセス所有者の役割は、デプロイされたビジネス・プロセスを制御および管理することです。ビジネス・プロセスの実行全体を監督する役割もあります。管理対象のビジネス・プロセスの現在の状態を把握するために、ダッシュボードなどのメトリック分析ツールも使用します。

プロセス所有者は通常、プロセス・ワークスペースを使用します。また、Oracle Business Rulesを編集してプロセスの動作を変更するために、Business Process Composerも使用します。メトリック・ダッシュボードを表示するために、Oracle BAMコンソールを使用する場合もあります。

プロセス参加者

プロセス参加者とは、Oracle BPM Suiteで作成されたビジネス・アプリケーションを使用する人々です。

プロセス参加者は通常、プロセス・ワークスペースまたはプロセス・スペースを使用します。


1.3 Oracle BPM Suiteのコンポーネント

この項では、Oracle BPM Suiteの主要コンポーネントの概要を説明します。これらのコンポーネントがアプリケーション開発プロセス内でどのように相互作用するかについては、1.5項「アプリケーション開発ライフサイクルの概要」を参照してください。

1.3.1 プロセス・モデリングおよび実装

この項では、ビジネス・プロセスおよびプロセスベースのビジネス・アプリケーションをモデリングおよび実装するために使用するアプリケーションとコンポーネントについて説明します。

Oracle BPM Suiteには、ビジネス・プロセスのモデリングおよび実装に対して、Oracle BPM StudioとOracle Business Process Composerの2つのプライマリ・アプリケーションが用意されています。


注意:

Oracle BPMでは、Oracle Business Process Analysis Suiteを使用して作成したビジネス・プロセスの統合も可能です。詳細は、1.4項「Oracle Business Process Analysis(BPA) Suite」を参照してください。

1.3.1.1 Oracle BPM Studio

Oracle BPM Studioは、プロセス・アナリストがビジネス・プロセス・モデルを設計し、プロセス・シミュレーションを実行するユーザーフレンドリな環境を提供するOracle BPM Suiteのコンポーネントです。Oracle BPM Studioでは、Business Process Management Notation (BPMN) 2.0をサポートしています。

Oracle BPM Studioでは、プロセス開発者が作業用のプロセスベース・アプリケーションを作成できます。このアプリケーションは、SOAコンポジット・アプリケーションとして統合されるOracle BPMプロジェクトです。

Oracle BPM Studioを使用すると、ビジネス・プロセスを、アダプタ、ヒューマン・ワークフローおよびビジネス・ルールなどの他のOracleコンポーネントと一緒に実装できます。実装したプロセスは、Oracle BPMランタイムにデプロイできます。

Oracle BPM StudioはOracle JDeveloper IDEの一部に含まれます。Oracle BPM Studioを使用すると、ITユーザーは、単一の統合されたツールを使用して、ビジネス・プロセスをモデリングおよび編集し、必要なIT要素を実装し、アプリケーションをランタイム環境にデプロイできます。

また、Oracle BPM Studioは、ビジネス・ユーザーがプロセス設計の関連機能のみを表示する簡易バージョンのOracle JDeveloperを使用できるようにするBPMロールも提供します。

詳細は、Oracle Fusion Middleware Oracle Business Process Managementモデリングおよび実装ガイドを参照してください。

1.3.1.2 Oracle Business Process Composer (Business Process Composer)

Business Process Composerは、ビジネス・ユーザーがプロセスの開発者や設計者と共同作業できるようにするWebベースのアプリケーションです。Oracle BPM Studioで作成されたプロセスやプロセス・テンプレートを編集するための使いやすい環境を提供します。

プロセス開発者はOracle BPM Studio内のサービス、タスクおよびルールなど、事前に構成されたコンポーネントのカタログを作成できます。このカタログは、プロセス・アナリストがBusiness Process Composerを使用して新規プロジェクトを作成する際に使用できるプロジェクト・テンプレートに組み込むことができます。

プロセス・アナリストは、プロジェクト・テンプレートに基づいてプロジェクトを作成した後で、ビジネス・カタログ要素を取り込み、プロジェクト・テンプレートで定義されている他の必要な編集を行います。その後、プロセス・アナリストはプロジェクトをOracle BPMランタイムにデプロイできます。

また、Business Process Composerでは、プロセス・アナリストがプロセス・ブループリントを作成することもできます。これはプロセスの最初のドラフトであり、Oracle BPM Studioを使用するプロセス開発者がプロジェクトに実装の詳細と改良を加えるために使用します。

さらに、Business Process Composerでは、ランタイムでOracle Business Rulesを編集することもできます。これは、ポリシーがビジネス・プロセスより頻繁に更新される傾向があるため重要です。

詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Business Process Management Business Process Composerユーザーズ・ガイド』および『Oracle Fusion Middleware Oracle Business Process Managementモデリングおよび実装ガイド』を参照してください。

1.3.1.3 Oracle Metadata Service(MDS)リポジトリ

MDSでは、Oracle Fusion Middleware環境内にデプロイされたアプリケーションのデータを保存するリポジトリが提供されます。Oracle BPMでは、Oracle Business Process Managementメタデータ・ストアと呼ばれるリポジトリを使用して、デプロイされたアプリケーションの情報が保存されます。

Oracle BPMでは、個別のMDSパーティションを使用して、プロセス・アナリストとプロセス開発者の間でプロジェクトとプロジェクト・テンプレートを共有します。図1-1「Oracle BPM Suite」では、MDSリポジトリがすべてのOracle BPMアーキテクチャ内でどのように適合しているかを示します。

1.3.1.4 Oracle BPMプロジェクト

Oracle BPMプロジェクトは、プロセスベースのビジネス・アプリケーションを作成するためのビジネス・プロセスと関連リソースのコンテナです。Oracle BPMプロジェクトには、次のものを組み込むことができます。

  • 組織データ

  • アクティビティ・ガイド

  • BPMNプロセス・モデル

  • ビジネス・カタログ

  • シミュレーション・モデル

  • その他のリソース

Oracle BPMプロジェクトはSOAコンポジット・アプリケーションとして実行時にデプロイされます。プロジェクトとSOAコンポジット・アプリケーションの使用の詳細は、次のドキュメントを参照してください。

  • Oracle Fusion Middleware Oracle Business Process Managementモデリングおよび実装ガイドのプロジェクトおよびプロジェクト・テンプレートの使用

  • Oracle Business Process Management用のOracle Fusion Middleware Business Process Composerユーザーズ・ガイドのプロジェクトおよびプロジェクト・テンプレートの使用

  • Oracle Fusion Middleware Oracle SOA Suite開発者ガイド

1.3.2 Oracle BPMランタイム・コンポーネント

Oracle BPMランタイムは、デプロイされているアプリケーションを制御します。Oracle BPMランタイムには次のコンポーネントが含まれています。

1.3.2.1 Oracle BPMエンジン

Oracle BPMエンジンは、ビジネス・プロセスを実行するためのランタイム環境を提供します。BPMNプロセスとBPELプロセスの両方のネイティブ・サポートも提供します。

BPMエンジンは3つの独立したコンポーネントで構成されます。

  • BPMNエンジン

    BPMNエンジンはBPMNプロセスを実行するための環境を提供します。

  • BPELエンジン

    BPELエンジンはBPELプロセスを実行するための環境を提供します。

  • プロセス・コア

    プロセス・コアでは、BPMNエンジンとBPELエンジンで共有されるエンジン機能を提供します。プロセス・コアによって実行される主な機能は次のとおりです。

    • セキュリティの管理

    • 監査証跡の生成

    • サービスの起動

    • 永続性の管理

1.3.2.2 Oracle Human Workflow

多くのエンドツーエンドのビジネス・プロセスでは、プロセスとユーザーとの相互作用が必要です。承認、例外管理、ビジネス・プロセスを進めるために必要なアクティビティの実行などにユーザーの相互作用が必要となります。ヒューマン・ワークフロー・サービスは、次のような機能を提供します。

  • ユーザー、グループまたはアプリケーション・ロールへのタスク・ルーティング

  • タスクが適切なタイミングで実行されることを保証するために必要な期限、エスカレーション、通知およびその他の機能

  • ワークスペースやポータルなどの様々なメカニズムを介してエンド・ユーザーにタスクを表示するためのタスク・フォーム

  • エンド・ユーザーが各自のタスクを実行するときの生産性を向上するために必要な組織、フィルタ、優先順位付け、ディスパッチ・ルールおよびその他の機能

1.3.2.3 Oracle Business Rules

Oracle Business Rulesは、ランタイムの動的決定を可能にするOracle SOA Suiteのコンポーネントで、特に規制や競争圧力に対してアプリケーションを迅速に適合させることができます。この高いアジリティを実現できる理由は、Oracle Business Rulesを使用するプロセス・アナリストが、アプリケーション・コードとは別のところでビジネス・ルールを作成および変更できる点にあります。Oracle Business Rulesを使用することにより、プロセス・アナリストはビジネス・プロセスを停止することなく、ビジネス・ルールを変更できます。また、ビジネス・ルールを外部に置くことで、プロセス・アナリストが関与しなくても、プロセス・アナリストがビジネス・ルールを直接管理できます。

1.3.2.4 Oracle WebLogic Server

Oracle WebLogic Serverは、J2EE準拠のアプリケーションを作成および実行するプラットフォームとなるアプリケーション・サーバーです。

1.3.2.5 Oracle Enterprise Manager

Oracle Enterprise Managerは、Oracle SOA Suiteで実行するアプリケーションをシステム管理者が制御および管理できるようにするWebベースのアプリケーションです。Enterprise Managerを使用すると、ビジネス管理者がビジネス・アプリケーションとプロセス・インスタンスを構成および管理できます。

1.3.3 Oracle BPM Suiteプロセス参加者アプリケーション

以降の項では、プロセス参加者が日常業務を実行するために使用するOracle BPM Suiteのコンポーネントについて説明します。これらのアプリケーションでは、プロセス参加者がOracle BPMランタイムで管理される実行中のビジネス・アプリケーションと相互作用できます。

1.3.3.1 Oracle Business Process Management Workspace(プロセス・ワークスペース)

プロセス・ワークスペースを使用すると、プロセス参加者はOracle BPMを使用して作成したアプリケーションと相互作用できます。プロセス・ワークスペースのユーザー・インタフェースには、次のタブがあります。

  • タスク: このページを使用して、プロセス参加者は自身に割り当てられたタスクを参照し、使用できます。

  • プロセス・トラッキング: このページを使用して、プロセス参加者は実行中のプロセス・インスタンスを参照できます。

  • 標準ダッシュボード: このページでは、プロセス・パフォーマンス、タスク・パフォーマンスおよび負荷を監視するための、すぐに使用できるダッシュボードが提供されます。

  • カスタム・ダッシュボード: このページを使用して、プロセス参加者は、プロセス・インスタンスによって生成された測定データに基づき、カスタム・ダッシュボードを定義し、使用できます。

プロセス・ワークスペースでは、ビジネス管理者が組織およびロールを構成し、管理することもできます。詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Business Process Managementユーザーズ・ガイド』を参照してください。

1.3.3.2 Oracle Business Process Management Process Spaces(プロセス・スペース)

プロセス・スペースは、Oracle WebCenter Spaces上に構築されたコラボレーティブな作業領域であり、コラボレーションを増やすことによってBPMの生産性を向上できます。

詳細は、Oracle Fusion Middleware Oracle Business Process Managementユーザーズ・ガイドを参照してください。

1.3.4 その他のOracle BPM Suiteのコンポーネント

以降の各項では、Oracle BPM Suiteのその他のコンポーネントについて説明します。

1.3.4.1 プロセス分析

ビジネス・プロセス分析では、プロセス参加者は実行中のプロセスベース・アプリケーションのパフォーマンスを監視できます。BPMプロジェクトで定義された主要パフォーマンス・インジケータが測定され、データベースに保存されます。プロセス参加者とアナリストは、プロセス・ワークスペースの各ダッシュボードまたはOracle BAMを使用して、プロセス分析データベースに保存されているメトリックを参照できます。

1.3.4.2 ガイド付きビジネス・プロセス

ガイド付きビジネス・プロセスでは、プロセス・アナリストと開発者は、BPMプロセスの相互作用アクティビティを、プロセス参加者にとって意味のある一連のマイルストンにまとめることができます。これによって、ビジネス・プロセスの複雑さを意識させず、プロセス参加者が実行する必要のあるステップの概略を示します。

Oracle Fusion Middleware Oracle Business Process Managementモデリングおよび実装ガイドのガイド付きビジネス・プロセスの概要を参照してください

1.4 Oracle Business Process Analysis (BPA) Suite

Oracle Business Process Analysis Suiteは、IDS ScheerのArisプラットフォームをベースにした、独立したOracle製品スイートです。Oracle Business Process Analysis Suiteでは、全社的なビジネス・プロセスに対して、モデリングから分析、シミュレーションにいたる総合的機能を提供します。また、戦略的な目標、目的、より高いKPI、リスクおよび管理などのビジネス・アーキテクチャのアーティファクトの取得と、バリュー・チェーン図などの概念モデルの取得がサポートされます。

また、Oracle Business Process Analysis Suiteでは次の内容がサポートされます。

Oracle Business Process Analysis Suiteで定義されたビジネス・アーキテクチャは、戦略的な目標と、Oracle BPMで作成された実際のビジネス・アプリケーションを正式に結び付けます。Oracle Business Process Analysis Suiteでは、戦略マップ、目標、目的、リスクおよび管理などのビジネス・アーキテクチャのアーティファクトをモデリングできるとともに、それらをビジネス・プロセスにリンクできます。

これにより、所要能力の優先順位付け、デシジョンの正当化、およびビジネスの戦略的目標に対するビジネス・プロセス改善計画活動の追跡ができるようになり、このため、ビジネスとITがより整合するようになります。この製品により、どのBPMプロジェクトを開始するのか、またどのプロセスが現時点で企業に最も適しているのか、さらにどのサービスが事業戦略に最も整合しているのかを明確に理解できるようになるため、この製品は非常に大きな価値を提供します。

Oracle Business Process Analysis Suiteは、組織のゴールを含めたモデリング・フェーズに直交ディメンションを追加することにより、Oracle BPM Suiteの機能を補完します。詳細は、 Oracle BPAクイック・スタート・ガイドを参照してください

Oracle Business Process Analysis Suiteで作成されたプロセスは、Oracle BPM Suiteにインポートできます。Oracle BPM Studioを使用して、自分のビジネス・プロセスを他のOracleテクノロジ(アダプタ、ビジネス・ルール、ヒューマン・タスクなど)に統合できます。

Oracle BPM Studio内でOracle Business Process Analysisに作成したビジネス・プロセスを使用する方法の詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Business Process Managementモデリングおよび実装ガイド』を参照してください。

1.5 アプリケーション開発ライフサイクルの概要

この項では、Oracle BPMアプリケーションの開発ライフサイクルのステージの概要と、各ステージでOracle BPMの様々なコンポーネントがどのように使用されるかについて説明します。

図1-2 は、アプリケーション開発ライフサイクルの4つのステージ、各ステージに適したユーザー・ペルソナ、使用されるOracle BPMのツールおよびアプリケーションを示しています。

図1-2 Oracle BPMアプリケーション開発ライフサイクルのステージ

この図については本文で説明しています。
「図1-2 Oracle BPMアプリケーション開発ライフサイクルのステージ」の説明

1.5.1 プロセス・モデリング

アプリケーション開発ライフサイクルの最初のステージはプロセス・モデリングです。プロセス・アナリストは、このステージで実際のビジネス・プロセスと問題に基づいてプロセス・モデルを作成します。

Oracle BPMには、ビジネス・プロセスをモデリングするための個別のツールが3つ用意されています。各ツールは、Oracle BPM Suite内で別々のロールを持っています。使用するツールは、ユーザーのビジネス要件、アプリケーション開発サイクルのステージおよびユーザー・ペルソナによって決まります。

  • Oracle BPM Studio

    Oracle BPM StudioはOracle JDeveloper IDEプラットフォームで稼働します。Oracle BPM Studio では、プロセス・モデルの設計に重点を置いた簡易版のJDeveloper機能セットを表示するプロセス・アナリスト・ロールが提供されます。

    Oracle BPM Studioでは、プロセス・アナリストとプロセス開発者が、Oracle BPMランタイムにデプロイされ、作業用アプリケーションとして実行される詳細なプロセス・フローを設計し、実装できます。また、Oracle Business Process Analysis SuiteまたはBusiness Process Composerからの詳細なプロセス・フローは、Oracle BPM Studio内に取り込んで追加の実装を行い、Oracle BPMランタイムにデプロイすることもできます。

  • Oracle Business Process Composer

    Business Process Composerは、プロセス・アナリストとプロセス開発者との共同作業を可能にするコラボレーション・ツールです。

  • Oracle Business Process Analysis Suite (BPA)

    Oracle Business Process Analysis Suiteでは、組織全体を表す概念レベルのモデルから、実行プロセスとして実装できるより詳細なビジネス・プロセスまで、様々なビジネス・プロセスの強力なモデルを作成できます。

一般的なOracle BPMユース・ケースでこれらのツールを使用する場合の詳細は、1.6項「Oracle BPMのユース・ケース」を参照してください。アプリケーション開発ライフサイクルでBusiness Process ComposerとOracle BPM Studioを連携させる方法の詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Business Process Management Business Process Composerユーザーズ・ガイド』および『Oracle Fusion Middleware Oracle Business Process Managementモデリングおよび実装ガイド』を参照してください。

1.5.2 実装

プロセス・アナリストがビジネス・プロセスをモデリングした後、そのモデルを基にプロセス開発者がビジネス・アプリケーションを作成します。プロセス開発者はOracle BPM Studioを使用して、再使用可能サービスを実装し、その他のビジネス・システムと統合します。

実装には、プロセス開発者が一般的に実行する、次のタイプのタスクが通常含まれます。

  • データ・マッピングおよび変換

  • システム・フォルト処理

  • Oracle Human Workflowを使用したユーザー・インタフェースの設計および実装

  • Oracle Business Rulesの設計

  • ダッシュボードの作成

プロセス開発者が実装を完了すると、そのアプリケーションは他のSOAコンポジット・アプリケーションと同様にコンパイルおよびデプロイされます。コンパイルおよびデプロイにはOracle BPM Studioを使用します。

1.5.3 デプロイメント

デプロイメントは、Oracle BPMプロジェクトを開発環境からランタイム環境に移行するプロセスです。ランタイム環境には、テスト用ランタイム環境か本番ランタイム環境があります。

ビジネス・プロセスをバックエンド・システムおよび再使用可能サービスと統合した後、プロセス開発者は作業用のプロセスベース・アプリケーションを作成し、コンパイルします。次にこのアプリケーションは、Oracle BPMランタイムにデプロイされます。

Oracle BPM Suiteには、Oracle BPMランタイムにデプロイするための一般的なシナリオがあります。次のとおりです。

  • Oracle BPM Studioからの直接のデプロイメント

    Oracle BPMで作成されたアプリケーションは、他のSOAコンポジット・アプリケーションと同様に直接ランタイム環境にデプロイできます。これは通常、プロセス開発者がOracle BPM Studioを使用してテスト環境または開発環境から行います。

    SOAコンポジット・アプリケーションのデプロイの詳細は、Oracle Fusion Middleware Oracle SOA Suite開発者ガイドを参照してください。

  • Business Process Composerからの直接のデプロイメント

    Oracle BPMでは、Business Process Composerがインストールされているのと同じランタイム環境に、プロジェクト・テンプレートから作成したプロジェクトを直接デプロイできます。プロジェクトの作成時には承認ワークフローを指定できますが、このワークフローはプロジェクトのデプロイ前に完了しておく必要があります。

    Oracle BPMランタイムと同じサーバー・インフラストラクチャにインストールされている場合は、Business Process Composerからデプロイできます。これによって、プロセス・アナリストは、プロセスベースのビジネス・アプリケーションをデプロイおよびテストできます。これは一般的に、テスト環境で行われます。

  • エクスポートされたSARファイルを使用したデプロイメント

    Oracle BPM StudioとBusiness Process Composerを使用すると、SARファイルを使用してアプリケーションをエクスポートできます。SARファイルは、ビジネス管理者がOracle Enterprise Managerを使用してランタイム環境にデプロイできます。

    本番環境では、アプリケーションは通常この方法でデプロイされます。

  • WebLogic Scripting Tool (WLST)を使用したデプロイ

    Oracle BPMでは、Oracle BPMプロジェクトの管理およびデプロイ用にカスタマイズされたWLSTコマンドが用意されています。

1.5.4 Oracle BPMランタイム

アプリケーションのデプロイ後、そのランタイム環境では、ビジネス・プロセスがデプロイされた組織に割り当てられているロールに基づいて、Oracle BPMアプリケーションがプロセス参加者に対して使用可能になります。このステージは次の機能にわかれています。

  • ユーザーによる相互作用

    プロセス参加者とプロセス所有者は、プロセス・ワークスペースを使用して、実行中のアプリケーションと相互作用を行います。

    また、プロセス・アナリストと所有者は、Business Process Composerを使用して、プロセスを監視し、Oracle Business Rulesを実行時に修正することもできます。

  • プロセス管理および監視

    プロセス所有者は、プロセス・ワークスペースを使用して実行中のプロセスを監視および管理します。プロセス・アナリストと所有者は、Oracle Business Process Analysisを使用してビジネス・プロセスのリアルタイムのパフォーマンスを監視します。

  • プロセス作成

    必要な権限を持つプロセス参加者は、Oracle BPM WorkspaceまたはOracle Process Spacesを使用して新しいプロセスを作成できます。

  • システム管理

    ビジネス管理者は、Oracle Enterprise ManagerおよびOracle WebLogic Server管理コンソールを使用して、実行中のビジネス・アプリケーションおよびランタイム・インフラストラクチャ全体を管理します。

1.6 Oracle BPMのユース・ケース

この項では、プロセス・モデリングからランタイムまでのOracle BPM Suiteのユースケースについて説明します。

1.6.1 ユース・ケース: Oracle BPM Studioを使用したプロジェクト・テンプレートの作成

このユース・ケースでは、Oracle BPM Studioを使用してプロジェクト・テンプレートを作成します。テンプレートは、プロセス・アナリストがBusiness Process Composerで新規プロジェクトを作成する際に使用されます。

Oracle BPM Studioを使用したプロジェクト・テンプレート作成の一般的なワークフロー

  1. ビジネス要件を決定します(プロセス・アナリスト)。

  2. Oracle BPM Studioを使用して必要なビジネス・プロセスをモデリングします(プロセス・アナリストまたはプロセス開発者)。

    プロセス・アナリストはOracle JDeveloper内のプロセス・アナリスト・ロールを使用できます。

  3. プロセスの各要素をバックエンド・システムと再使用可能サービスに統合することでプロセスを実装します(プロセス開発者)。

  4. Oracle BPM Studioを使用してプロジェクト・テンプレートを作成します(プロセス開発者)。

  5. プロジェクト・テンプレートをOracle BPM MDSリポジトリに公開します(プロセス開発者)。

  6. プロジェクト・テンプレートに基づいて、新しいOracle BPMプロジェクトを作成します(プロセス・アナリスト)。

  7. プロジェクト・テンプレートで定義した再使用可能な必須サービスを実装します(プロセス・アナリスト)。

  8. プロジェクトをOracle BPMランタイムにデプロイします(プロセス・アナリスト)。

1.6.2 ユース・ケース: Oracle BPM Studioを使用したプロセスのモデリングおよびアプリケーションのデプロイ

このユース・ケースでは、Oracle BPM Studioを使用してプロセス・モデルを作成します。モデルは、Oracle BPMランタイムにデプロイされる作業用ビジネス・アプリケーションの作成に使用されます。

Oracle BPM Studioを使用したプロセス・モデリングの一般的なワークフロー

  1. ビジネス要件を決定します(プロセス・アナリスト)。

  2. Oracle BPM Studioを使用して必要なビジネス・プロセスをモデリングします(プロセス・アナリストまたはプロセス開発者)。

    プロセス・アナリストはOracle JDeveloper内のプロセス・アナリスト・ロールを使用できます。

  3. プロセスのパフォーマンスをテストして改善するためのシミュレーションを実行します(プロセス分析者/プロセス開発者)。

  4. プロセスの各要素をバックエンド・システムと再使用可能サービスに統合することでプロセスを実装します(プロセス開発者)。

  5. Oracle BPMプロジェクトをコンポジット・アプリケーションとしてコンパイルします(プロセス開発者)。

  6. アプリケーションをランタイム環境にデプロイします(プロセス開発者、ビジネス管理者)。

  7. 実行中のビジネス・アプリケーションの一部としてデプロイされたプロセスと相互作用します(プロセス参加者、プロセス所有者)。

  8. 実行中のプロセスベースのアプリケーションを管理および監視します(ビジネス管理者、プロセス所有者)。

1.6.3 ユース・ケース: Business Process Composerを使用したプロセス・ブループリントの作成

このユース・ケースでは、Business Process Composerを使用してプロセス・ブループリントを作成します。ブループリントはプロセス開発者が共有してOracle BPM Studioにインポートし、改良および実装します。

Business Process Composerを使用したプロセス・ブループリント作成の一般的なワークフロー

  1. Business Process Composerを使用してプロセス・ブループリントを作成します。(プロセス・アナリスト)

  2. ビジネス・プロセスの実装の詳細を準備して、プロセスベースのビジネス・アプリケーションをデプロイメント対象として準備します(プロセス開発者)。

  3. Oracle Business Process Management Studioを使用してプロジェクト・テンプレートを作成し、Oracle BPMメタデータ・ストア・リポジトリに公開します。(プロセス開発者)

  4. プロジェクト・テンプレートに基づいてプロジェクトを作成します(プロセス・アナリスト)。

  5. プロジェクト・テンプレートの編集ポリシーで定義したとおり、プロジェクトを編集します(プロセス・アナリスト)。

  6. プロジェクトをOracle BPMランタイムにデプロイします。(プロセス・アナリスト、プロセス管理者)

1.6.4 ユース・ケース: Business Process Composerを使用したOracle Business Rulesの修正

このユース・ケースでは、Business Process Composerを使用して、実行時にOracle Business Rulesを編集します。アプリケーションのデプロイ後、プロセス・アナリストと所有者は、デプロイ済プロジェクトを開き、Oracle Business Rulesを編集できます。

Process Composerを使用したOracle Business Rules修正の一般的なワークフロー

  1. 一連のビジネス・プロセスをモデリングします(プロセス・アナリスト)。

  2. アプリケーションを実装し、デプロイします(プロセス開発者)。

  3. Business Process Composerを使用してOracle Business Rulesを実行時に編集します(プロセス所有者)。

1.6.5 ユース・ケース: Oracle Business Process Analysis Suiteを使用したビジネス・プロセスのモデリング

このユース・ケースでは、Oracle Business Process Analysis Suiteを使用してビジネス・プロセスをモデリングします。これらのプロセスは、Oracle BPM Studioにインポートできます。

Oracle Business Process Analysis SuiteとOracle BPM Suiteを使用したプロセス・モデリングの一般的なワークフロー

  1. ビジネス要件を決定します(プロセス・アナリスト)。

  2. Oracle Business Process Analysisを使用して戦略的な目標、プロセス・マップ、バリュー・チェーン図を取得し、ビジネス・アーキテクチャを設計します(プロセス・アナリスト)。

  3. 戦略的な分析を実行し、Oracle BPMプロジェクトのプロセス候補を決定します。(プロセス・アナリスト)

  4. 前記で識別されたプロセス候補の詳細なプロセス・フローを設計します(プロセス・アナリスト)。

  5. プロセス・モデルをOracle BPM Studioにインポートします(プロセス・アナリスト、プロセス開発者)。

  6. 各プロセス・コンポーネントをバックエンド・システムと再使用可能サービスに統合することでプロセスを実装します(プロセス開発者)。

  7. ビジネス・プロセスをBPMプロジェクトとしてランタイム環境にデプロイします(プロセス開発者、ビジネス管理者)。

  8. ビジネス・アプリケーションの一部としてデプロイされたプロセスと相互作用します(プロセス参加者、プロセス所有者)

  9. プロセスを管理します(ビジネス管理者、プロセス所有者)。