Oracle® Fusion Middleware Oracle WebLogic Server JMSのプログラミング 11g リリース1(10.3.4) B61629-02 |
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マルチキャストを使用することによって、後でメッセージをクラスタ内のサブスクライバに転送する、指定したホストのグループにメッセージを配信できます。以下の節では、WebLogic JMSでマルチキャストを使用する場合の利点、制限事項、および構成について説明します。
マルチキャストには、次のような利点があります。
ホスト・グループにメッセージをほとんどリアルタイムに配信できます。
メッセージをクラスタ内のトピック・サブスクライバに配信する場合にJMSサーバーで必要になるリソース量が削減されるので、スケーラビリティが向上します。
マルチキャストには、次のような制限があります。
マルチキャストでは、ホスト・グループの全メンバーに対するメッセージの配信は保証されません。確実な配信とリカバリが必要なメッセージについては、マルチキャストを使用しないでください。
WebLogic Serverの様々なバージョンとの相互運用性を確保するために、ホストより前のリリースのWebLogic Serverをクライアントにインストールすることはできません。すべてのクライアントにホストと同じバージョンかそれより上のバージョンをインストールする必要があります。
マルチキャストを使用すると便利な例としては、株価表示があります。最新の株価を入手する場合に重要になるのは、信頼性よりもタイムリな配信です。全部または一部の内容が配信されなくても、リアルタイムの株価情報にアクセスするときに、クライアントは簡単に情報の再送信をリクエストできます。クライアントでは情報のリカバリは必要とされません。リカバリされた情報が再配信される頃には、その情報は古くて価値のないものになっています。
WebLogic Serverでは、マルチキャスト以外の方法でクラスタのメッセージングおよび通信を処理することもできます。ユニキャストは、マルチキャストのようなネットワーク間構成を必要としない単純な構成です。加えて、マルチキャスト・アドレスの競合によって発生する可能性がある潜在的なネットワーク・エラーが低減されます。
JMSトピックは、クラスタ・アドレスに依存しない独自のマルチキャスト・アドレスに対してメッセージをパブリッシュするので、マルチキャスト向けに構成されたJMSトピックでもユニキャスト向けに構成されたWebLogicクラスタにアクセスできます。ただし、以下の点を考慮に入れてください。
ユニキャスト・クラスタが使用できるようにルーター・ハードウェアを構成すると、JMSマルチキャスト・サブスクライバが機能しない場合があります。
JMSマルチキャスト・サブスクライバは、マルチキャスト・アクセスが可能なネットワーク・ハードウェア構成を必要とします。
詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverクラスタの使い方』の「クラスタでの通信」を参照してください。
次の図に、マルチキャストの設定に必要な手順を示します。
注意: マルチキャストは、Pub/Subメッセージング・モデル、および非恒久サブスクライバのみでサポートされています。マルチキャスト・セッションおよびマルチキャスト・コンシューマに関するモニター統計は提供されません。 |
マルチキャストを設定する前に、マルチキャストをサポートするよう、次のように接続ファクトリおよび宛先を構成する必要があります。
各接続ファクトリについては、システム管理者が、マルチキャスト・セッションに存在できる未処理のメッセージの最大数と、最大数に達した場合に最新のメッセージと最古のメッセージのどちらを破棄するかを構成します。メッセージが最大数に達すると、DataOverrunException
がスローされ、メッセージは自動的に破棄されます。これらの属性は、動的に構成することもできます(「マルチキャストの構成属性の動的構成」を参照)。
各宛先については、マルチキャスト・アドレス(IP)、ポート、TTL (存続時間)の各属性を指定します。TTL属性の設定の詳細は、「例: マルチキャストTTL (存続時間)」を参照してください。
注意: マルチキャストIPアドレス、ポート、存続時間の各属性を構成する場合は、ネットワーク管理者に相談の上、適切な値を設定することを強くお薦めします。 |
詳細は、Oracle WebLogic Server管理コンソール・オンライン・ヘルプのトピックのマルチキャスト・パラメータの構成に関する項を参照してください。
「JMSアプリケーションの設定」に説明されているとおりにJMSアプリケーションを設定します。ただし、セッションを作成する際は、「ステップ3: 接続を使用してセッションを作成する」に説明されているように、acknowledgeMode
の値をMULTICAST_NO_ACKNOWLEDGE
に設定して、セッションがマルチキャスト・メッセージを受信するように指定します。
注意: マルチキャストは、Pub/Subメッセージング・モデル、および非恒久サブスクライバのみでサポートされています。マルチキャスト・セッションで恒久サブスクライバを作成しようとすると、JMSException がスローされます。 |
たとえば、次のメソッドは、Pub/Subメッセージング・モデル用のマルチキャスト・セッションの作成方法を示します。
JMSModuleHelper.createPermanentQueueAsync(ctx, domain, jmsServerName, queueName, jndiName); Queue queue = findQueue(qsess, jmsServerName, queueName, retry_count, retry_interval);
注意: クライアント側では、マルチキャスト・セッションごとに、ソケットからメッセージを取り出すための専用のスレッドが1つ必要になります。そのため、JMSクライアント側のスレッド・プール・サイズを増やして調整する必要があります。 |
さらに、「TopicPublisherとTopicSubscriberの作成」の説明に従って、トピック・サブスクライバを作成します。
たとえば、次のコードは、トピック・サブスクライバの作成方法を示します。
tsubscriber = tsession.createSubscriber(myTopic);
注意: 指定した宛先がマルチキャストをサポートするよう構成されていない場合、createSubscriber() メソッドは失敗します。 |
マルチキャストのトピック・サブスクライバでは、メッセージを非同期に受信することしかできません。マルチキャスト・セッションで同期メッセージを受信しようとすると、JMSException
がスローされます。
「メッセージの非同期受信」の説明に従って、トピック・サブスクライバに対してメッセージ・リスナーを設定します。
たとえば、次のコードは、メッセージ・リスナーの設定方法を示します。
tsubscriber.setMessageListener(this);
メッセージを受信すると、WebLogic JMSでは、宛先から送信されたメッセージのシーケンスがトラッキングされます。マルチキャスト・サブスクライバのメッセージ・リスナーがシーケンスの異なるメッセージを受信すると、その結果、1つまたは複数のメッセージがスキップされ、そのセッションのExceptionListener
にSequenceGapException
がスローされます。スキップされたメッセージは、その後配信されても破棄されます。たとえば、次の図では、サブスクライバは2つの宛先から同時にメッセージを受信しています。
宛先1からメッセージ「4」を受信すると、SequenceGapException
がスローされ、シーケンスの異なるメッセージが受信されたことがアプリケーションに通知されます。その後、メッセージ「3」が配信されても、それは破棄されます。
注意: やり取りされるメッセージ数が多くなるほど、SequenceGapException が発生する危険性も大きくなります。 |
システム管理者は、構成時に、マルチキャストをサポートするよう、各接続ファクトリに対して以下の情報を構成します。
マルチキャスト・セッションに存在できる未処理のメッセージの最大数を指定する、最大メッセージ数
メッセージが最大数に達した場合に、最新のメッセージと最古のメッセージのどちらを破棄するかを指定する、超過時のポリシー
メッセージが最大数に達すると、DataOverrunException
がスローされ、メッセージは超過時のポリシーに基づいて自動的に破棄されます。また、Session
クラスのsetメソッドを使用して、最大メッセージ数と超過時のポリシーを設定する方法もあります。
次の表に、Session
クラスのsetメソッドとgetメソッドを、動的構成が可能な属性ごとに示します。
表8-1 メッセージ・プロデューサのsetメソッドおよびgetメソッド
属性 | setメソッド | getメソッド |
---|---|---|
最大メッセージ数 |
public void setMessagesMaximum( int messagesMaximum ) throws JMSException |
public int getMessagesMaximum( ) throws JMSException |
超過時のポリシー |
public void setOverrunPolicy ( int overrunPolicy ) throws JMSException |
public int getOverrunPolicy( ) throws JMSException |
注意: setメソッドを使用して設定された値は、構成された値よりも優先されます。 |
Session
クラスのメソッドの詳細は、weblogic.jms.extensions.WLSession
のJavadocを参照してください。これらのマルチキャスト構成属性の詳細は、Oracle WebLogic Server管理コンソール・オンライン・ヘルプのトピックのマルチキャスト・パラメータの構成に関する項を参照してください。
注意: 次の図は、マルチキャストTTL (存続時間)宛先構成属性が、ルーターを経由したメッセージの配信に影響する様子を説明するための単純な例です。マルチキャストTTL属性を構成する場合は、ネットワーク管理者に相談してから、適切な値を設定することをお薦めします。マルチキャストTTLは、メッセージの存続時間に依存しません。 |
次の例では、マルチキャストTTL宛先構成属性が、ルーターを経由したメッセージの配信に影響する様子を示します。
詳細は、Oracle WebLogic Server管理コンソール・オンライン・ヘルプのトピックのマルチキャスト・パラメータの構成に関する項を参照してください。
次のようなネットワーク図があります。
この図では、ネットワークは3つのサブネットで構成されています。サブネットAにはマルチキャスト・パブリッシャがあり、サブネットBおよびCにはそれぞれ1台ずつマルチキャスト・サブスクライバがあります。
マルチキャストTTL属性が0に設定されている(メッセージはルーターを経由できず、現在のサブネットにしか配信されないことを示す)場合は、サブネットAにあるマルチキャスト・パブリッシャでメッセージがパブリッシュされても、メッセージはどのマルチキャスト・サブスクライバにも配信されません。
マルチキャストTTL属性が1に設定されている(メッセージは1台のルーターを経由できることを示す)場合、サブネットAにあるマルチキャスト・パブリッシャでメッセージがパブリッシュされると、サブネットBにあるマルチキャスト・サブスクライバでメッセージが受信されます。
同様に、マルチキャストTTL属性が2に設定されている(メッセージは2台のルーターを経由できることを示す)場合、サブネットAにあるマルチキャスト・パブリッシャでメッセージがパブリッシュされると、サブネットBおよびCにあるマルチキャスト・サブスクライバでメッセージが受信されます。