この章では、WebLogicドメインの紹介、構成ウィザードの概要、およびテンプレートの紹介を行います。また、ドメインを作成する別の方法についても説明します。
内容は以下のとおりです。
WebLogicドメインはWebLogic Serverの基本的な管理単位です。ドメインは、1つ以上のWebLogic Serverインスタンス、および1つの単位としてまとめて管理される論理的に関連したリソースとサーバーで構成されます。
図1-1に示すように、ドメインの基本的なインフラストラクチャは、1つの管理サーバーとオプションの管理対象サーバーおよびクラスタで構成されます。
WebLogicドメインのコンポーネントについて、表1-1で説明します。
表1-1 WebLogicドメインのインフラストラクチャ・コンポーネント
コンポーネント | 説明 |
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管理サーバー |
ドメインには、管理サーバーとして構成されたWebLogic Serverインスタンスが1つ含まれています。アプリケーションのデプロイメントおよび構成へのすべての変更は、管理サーバー経由で実施されます。 管理サーバーは、ドメインの管理、およびWebLogic Server管理ツールへのアクセスを提供するための中心点として役割を果たします。これらのツールには、次のものが含まれます。
WebLogic Server管理ツールの詳細は、『Oracle WebLogic Serverの紹介』のシステム管理ツールおよびAPIの概要に関する項を参照してください。 |
管理対象サーバー |
ドメイン内の他のすべてのWebLogic Serverインスタンスは、管理対象サーバーと呼ばれます。管理対象サーバーでは、アプリケーション・コンポーネントおよびリソースがホストされます。これらもまた、ドメインの一部としてデプロイおよび管理されます。WebLogic Serverインスタンスが1つのみのドメインでは、その1台のサーバーは管理サーバーと管理対象サーバーの両方の役割を果たします。 |
クラスタ |
ドメインには、WebLogic Serverクラスタを組み入れることもできます。WebLogic Serverクラスタは管理対象サーバー・インスタンスのグループであり、互いに連携してアプリケーションの拡張性と高可用性を実現します。クラスタは、パフォーマンスを向上させるとともに、サーバー・インスタンスが使用できなくなった場合にフェイルオーバーを提供できます。クラスタ内のサーバーは、同一のマシンで実行することも、異なるマシンに配置することもできます。クライアントには、クラスタは1つのWebLogic Serverインスタンスとして表示されます。 |
注意: ドメイン内のすべての管理対象サーバーで、同じバージョンのWebLogic Serverを実行する必要があります。管理サーバーは、ドメイン内の管理対象サーバーと同じバージョンまたはそれ以降のサービス・パックを実行することができます。 |
ドメインでは、インフラストラクチャ・コンポーネントの他に、そのドメイン内のサーバー・インスタンスの基本的なネットワーク構成が定義されます。具体的に、アプリケーションのデプロイメント、サポートされるアプリケーション・サービス(データベースおよびメッセージ・サービスなど)、セキュリティ・オプション、および物理的なホスト・マシンが定義されます。
ドメイン構成情報は、ドメイン・ディレクトリ配下の構成ディレクトリに格納されます。
一般的なWebLogicドメイン構成
システム管理者の役割、アプリケーションの論理的な分類、サーバーの地理的な場所、規模など、特定の基準に基づいて複数のWebLogicドメインを構成すると便利です。次の表では、最も一般的なドメイン構成について簡単に説明します。
表1-2 一般的なWebLogicドメイン構成
構成 | 説明 |
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管理対象サーバーがあるドメイン |
一般的な本番環境では、複数の管理対象サーバーでアプリケーションをホストすることができ、1つの管理サーバーで管理処理を実行します。 |
管理対象サーバーとクラスタがあるドメイン |
本番環境で、アプリケーションのパフォーマンス、スループット、または可用性を向上させる必要がある場合、複数の管理対象サーバーをクラスタにグループ化することができます。 このような場合は、WebLogicドメインは、1つ以上のクラスタとそのクラスタがホストするアプリケーション、追加の管理対象サーバー(必要な場合)、および管理操作を実行する管理サーバーで構成されます。 |
スタンドアロン・サーバーのドメイン |
開発環境またはテスト環境では、単一のアプリケーション・サーバーが管理対象サーバーなしで、個別にデプロイされる場合があります。このような場合、テストまたは開発するアプリケーションのホストでもある単一の管理サーバーで構成されるWebLogicドメインを使用することもできます。 |
注意: 本番環境では、アプリケーションを管理対象サーバーのみにデプロイし、管理サーバーを管理操作専用にすることをお薦めします。 |
WebLogicドメインの詳細は、『Oracle WebLogic Serverドメイン構成の理解』のOracle WebLogic Serverドメインに関する項を参照してください。
WebLogicドメインでアプリケーションを開発して実行する前に、WebLogicドメインを作成する必要があります。図1-2に示しているように、構成ウィザードを使用して、簡単にドメインを作成および拡張できます。
ドメインに組み込む製品コンポーネント(製品テンプレート)を選択して(または要件に最も合うテンプレートを選択して)、基本的な構成情報を指定するだけで構成ウィザードを使用してWebLogicドメインを作成または拡張できます。構成ウィザードによって、選択した製品テンプレートで定義されたリソースを追加してドメインが作成または拡張されます。
テンプレートの詳細は、「ドメイン・テンプレートと拡張テンプレートについて」を参照してください。
構成ウィザードを使用してWebLogicドメインを作成した後、ドメイン内でWebLogic Serverインスタンスを起動して、アプリケーションを開発、テストおよびデプロイできます。
注意: ドメイン・テンプレート・ビルダー・ツールの指示に従って、簡単にカスタム・ドメイン・テンプレートと拡張テンプレートを作成できます。これらのテンプレートを選択すると、構成ウィザードまたはWebLogic Scripting Tool (WLST)を使用してドメインを作成および拡張できます。ドメイン・テンプレート・ビルダーの詳細は、『ドメイン・テンプレート・ビルダーによるドメイン・テンプレートの作成』を参照してください。WLSTを使用したドメインの作成の詳細は、『Oracle WebLogic Scripting Tool』のWLSTオフラインを使用したドメインの作成に関する項を参照してください。 |
構成ウィザードは、サーバーが稼働していない状態でのみ使用できます。次の操作モードをサポートしています。
グラフィカル・モード: GUIベースの対話モード
コンソール・モード: テキスト・ベースの対話モード
注意: スクリプト化されたサイレント・モード方法の場合は、WLSTを使用できます。詳細は、『Oracle WebLogic Scripting Tool』を参照してください。 |
構成ウィザードを使用して作成したWebLogicドメインには、次のディレクトリがあります。
autodeploy
: このディレクトリからアプリケーションを開発サーバーに迅速にデプロイできます。WebLogic Serverインスタンスが開発モードで実行している場合、このディレクトリに配置したアプリケーションまたはモジュールは自動的にデプロイされます。
bin
: このディレクトリには、管理サーバーおよび必要に応じて管理対象サーバーの起動と停止に使用するスクリプトが格納されます。
config
: このディレクトリには、次のものが含まれます。
WebLogicドメインの名前およびドメイン内の各サーバー・インスタンス、クラスタ、リソース、およびサービスの構成パラメータ設定を指定するドメイン固有の構成ファイルconfig.xml
。
様々なシステム・モジュールの構成を含むサブディレクトリ(deployments
、diagnostics
、jdbc
、jms
、lib
、nodemanager
、およびsecurity
など)。これらのサブディレクトリには、参照ごとにconfig.xml
ファイルへ組み込まれる構成ファイルが含まれます。
注意: 構成によっては、いくつかのサブディレクトリが存在しない場合もあります。 |
console-ext
: このディレクトリには、管理サーバーによって使用されるコンソール拡張が含まれています。
init-info
: このディレクトリには、WebLogicドメインの作成および拡張をサポートするために構成ウィザードで使用されるファイルが含まれています。
lib
: このディレクトリには、ドメイン・ライブラリが含まれています。サーバーが起動すると、このディレクトリに配置したすべてのjar
ファイルが動的にサーバーのクラスパスの最後に追加されます。
security
: このディレクトリには、ドメイン内のすべてのサーバーに共通するセキュリティ・ファイルが含まれています。
servers
: このディレクトリには、ドメイン内の各サーバー用のサブディレクトリがあります。これらのサブディレクトリにはまた、WebLogicドメイン内の各サーバー固有のディレクトリおよびファイル(bin
、cache
、data
、logs
、security
、およびtmp
など)を格納するサブディレクトリがあります。
user_staged_config
: ドメインが、user-staged(管理者が構成情報を管理対象サーバーにステージング(コピー)する)として構成されている場合は、このディレクトリはconfig
ディレクトリのかわりに使用することができます。
WebLogicドメインの作成に使用したテンプレートにアプリケーションが含まれている場合、アプリケーション・ファイルはデフォルトで、user_projects/applications/
domain_name
に配置されます。
詳細は、『Oracle WebLogic Serverドメイン構成の理解』のドメイン構成ファイルに関する項を参照してください
構成ウィザードにおいて、「テンプレート」という用語は、WebLogicドメインの作成または拡張に必要なファイルとスクリプトを含むJavaアーカイブ(JAR)ファイルを指します。構成ウィザードでWebLogicドメインを作成または拡張するために使用されるテンプレートには、次のタイプのテンプレートがあります。
ドメイン・テンプレート: WebLogicドメイン内のすべてのリソースを定義するテンプレートです。これには、インフラストラクチャ・コンポーネント、アプリケーション、サービス、セキュリティ・オプション、一般的な環境とオペレーティング・システムのオプションが含まれます。ドメイン・テンプレートは、ドメイン・テンプレート・ビルダー・ツールまたはpack
コマンドを使用して、既存のWebLogicドメインから作成できます。その後、構成ウィザードを使用してテンプレートに基づくWebLogicドメインを作成できます。
製品配布には、ベースWebLogicドメイン・テンプレートが含まれています。ドメイン・テンプレートでは、ドメイン内の一連のコア・リソースを定義します。これには、次のものが含まれます。
管理サーバーおよび基本的な構成情報
インフラストラクチャ・コンポーネント
一般的な環境およびオペレーティング・システムの要件。
ドメイン・テンプレートには、サンプル・アプリケーションは含まれません。ドメイン・テンプレートを使用して基本的なWebLogicドメインを作成し、アプリケーションおよびサービス、または追加の製品コンポーネントを追加してそのドメインを拡張できます。
拡張テンプレート: ドメイン・テンプレートを使用して自立したWebLogicドメインを作成できる一方、拡張テンプレートを使用して既存のドメインに機能を追加できます。構成ウィザードで、使用する拡張テンプレートを選択する前に、拡張するドメインを選択する必要があります。
管理対象サーバーのテンプレート: リモート・マシン上に管理対象サーバー・ドメインを作成するために必要なリソースのサブセット(WebLogicドメイン内)を定義します。テンプレートのこのタイプはpack
コマンドを使用して作成できます。
WebLogic Serverの製品のインストールには、事前定義したドメインおよび拡張テンプレートのセットが含まれています。このセットには、基本WebLogicドメイン・テンプレートや様々な拡張テンプレートが含まれています。この拡張テンプレートを使用して、基本ドメインにコンポーネント機能やサンプルを追加できます。これらのテンプレートの詳細およびテンプレート間の関係は、『Oracle WebLogic Serverドメイン・テンプレート・リファレンス』を参照してください。
ドメインを作成、拡張、および管理するために、構成ウィザードの他に、表1-3にリストされるツールを使用できます。また、製品コンポーネントのコンソール(WebLogic Server管理コンソールなど)を使用してランタイム構成を行うこともできます。
表1-3 WebLogicドメインを作成、拡張、および管理するためのその他のツール
これを行うには | 次のツールを使用します |
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WebLogicドメインの作成または既存のドメインの拡張 |
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アプリケーションやサービスの追加、または既存の設定の変更 |
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ドメインのステータスの管理およびモニター |
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