ナビゲーションリンクをスキップ | |
印刷ビューの終了 | |
Oracle Solaris 11 ネットワーキングの紹介 Oracle Solaris 11.1 Information Library (日本語) |
管理者は、管理の観点から、データリンクの上に IP インタフェースを作成します。データリンクは、開放型相互接続 (OSI) モデルの第 2 層のリンクオブジェクトを表します。物理リンクはデバイスに直接関連付けられ、デバイス名を所有します。デバイス名は基本的に、ドライバ名とデバイスインスタンス番号を含むデバイスインスタンス名です。インスタンス番号には、システム上でそのドライバを使用する NIC の数に応じて、0 から n-1 までの値を割り当てることができます。
たとえば、ホストシステムとサーバーシステムの両方でプライマリ NIC として使用されることが多いギガビット Ethernet カードについて考えてみます。この NIC の標準的なドライバ名には、bge や e1000g などがあります。プライマリ NIC として使用される場合、ギガビット Ethernet インタフェースには、bge0 や e1000g0 などのデバイス名が割り当てられます。その他のドライバ名には、nge や nxge などがあります。
この Oracle Solaris リリースでは、デバイスインスタンス名は引き続き、ベースとなるハードウェアに依存します。ただし、ハードウェア層とソフトウェア層の分離の結果として、これらのデバイスの上にあるデータリンクは同様にはバインドされません。そのため、これらのデータリンクには、その構成のベースとなっているデバイス名以外の名前を付けることができます。
Oracle Solaris 11 では、データリンクにはデフォルトで自動的に汎用名が提供されます。この名前の割り当てでは、net# という命名規則が使用されます。ここで、# はインスタンス番号です。このインスタンス番号は、net0、net1、net2 などのように、デバイスごとに増分します。
汎用名または柔軟なリンク名は、次の例に示すようなネットワーク構成における利点を提供します。
1 つのシステム内では、動的再構成 (DR) がより容易になります。特定の NIC のためのネットワーク構成を、別の NIC 交換で継承できます。
ネットワーク設定に関しては、ゾーンの移行の複雑さが減ります。移行先システムのリンクが、移行の前にそのゾーンに割り当てられていたリンクとの間で同じ名前を共有している場合は、移行されたシステム内のゾーンでそのネットワーク構成が保持されます。そのため、移行のあと、そのゾーンでの追加のネットワーク構成は必要ありません。
システム構成 (SC) マニフェストで指定されているネットワーク構成には、汎用の名付けスキームが役立ちます。プライマリネットワークデータリンクには一般に、すべてのシステムで net0 という名前が付けられます。そのため、net0 の構成を指定する複数のシステムで、汎用の SC マニフェストを使用できます。
また、データリンクの管理も柔軟になります。たとえば、図 1-2 に示すように、データリンクで提供される特定の機能が反映されるように、データリンクの名前をさらにカスタマイズできます。
次の表は、ハードウェア (NIC)、デバイスインスタンス、リンク名、およびそのリンク上のインタフェースの間の新しい対応関係を示しています。データリンクの名前は、OS によって自動的に提供されます。
|
この表に示されているように、デバイスインスタンス名がハードウェアに基づいたままであるのに対して、データリンクの名前は、インストールされたあとの OS によって変更されています。
汎用名が付けられたデータリンクと、それに対応するデバイスインスタンスの間のマッピングを表示するには、dladm show-phys サブコマンドを使用します。例:
# dladm show-phys LINK MEDIA STATE SPEED DUPLEX DEVICE net2 Ethernet up 1000 full bge2 net0 Ethernet up 1000 full e1000g0 net3 Ethernet up 1000 full nge3 net1 Ethernet up 1000 full e1000g1
Oracle Solaris では、特定の条件に基づいて、OS がすべてのデータリンクの汎用名を提供します。すべてのデバイスが、同じ接頭辞 net を共有します。ただし、インスタンス番号は、次に基づいて割り当てられます。
物理ネットワークデバイスは、メディアタイプに従って順序が付けられます。ここでは、特定のタイプがほかのタイプより優先されます。メディアタイプは、次の降順の優先順位で順序が付けられています。
Ethernet
IP over IB (Infiniband デバイス)
Ethernet over IB
WiFi
デバイスがメディアタイプに従ってグループ化およびソートされたあと、これらのデバイスは、その物理的な場所に基づいてさらに順序が付けられます。ここでは、システムボード上のデバイスが周辺デバイスより優先されます。
そのメディアタイプと場所に基づいてより高い優先順位を持つデバイスに、より小さいインスタンス番号が割り当てられます。
これらの条件に基づくと、より下位のマザーボードまたは IO ボード、ホストブリッジ、PCIe ルートコンプレックス、バス、デバイス、および機能上の Ethernet デバイスが、ほかのデバイスより高くランク付けされます。
リンク名、デバイス、および場所の対応関係を表示するには、次のように dladm show-phys コマンドを使用します。
# dladm show-phys -L LINK DEVICE LOCATION net0 e1000g0 MB net1 e1000g1 MB net2 e1000g2 MB net3 e1000g3 MB net4 ibp0 MB/RISER0/PCIE0/PORT1 net5 ibp1 MB/RISER0/PCIE0/PORT2 net6 eoib2 MB/RISER0/PCIE0/PORT1/cloud-nm2gw-2/1A-ETH-2 net7 eoib4 MB/RISER0/PCIE0/PORT2/cloud-nm2gw-2/1A-ETH-2
Oracle Solaris では、リンク名の割り当て時に接頭辞 net が使用されます。ただし、代わりに eth などの任意のカスタム接頭辞を使用できます。また、必要に応じて、中立的なリンク名の自動割り当てを無効にすることもできます。
注意 - 汎用リンク名が自動的に割り当てられる方法は、Oracle Solaris をインストールする前にカスタマイズする必要があります。インストール後は、既存の構成を削除しないかぎり、デフォルトのリンク名をカスタマイズすることはできません。 |
リンク名の自動割り当てを無効にしたり、リンク名の接頭辞をカスタマイズしたりするには、システム構成 (SC) マニフェストで次のプロパティーを設定します。SC マニフェストは、Oracle Solaris の自動インストーラ (AI) 機能によって使用されます。
<service name="network/datalink-management" version="1" type="service"> <instance name="default enabled="true"> <property_group name='linkname-policy' type='application'> <propval name='phys-prefix' type='astring' value='net'/> </property_group> </instance> </service
太字で示されているように、デフォルトでは、phys-prefix の値は net に設定されます。
名前の自動割り当てを無効にするには、phys-prefix に設定されている値をすべて削除します。名前の自動割り当てを無効にした場合、データリンク名は、関連付けられたハードウェアドライバ (bge0 や e1000g0 など) に基づきます。
net 以外の接頭辞を使用するには、phys-prefix の値として (eth などの) 新しい接頭辞を指定します。
phys-prefix に指定された値が無効な場合は、その値は無視されます。その場合、データリンクには、関連付けられたハードウェアドライバ (bge0 や e1000g0 など) に従って名前が付けられます。有効なリンク名に関する規則については、「有効なリンク名のための規則」を参照してください。
Oracle Solaris 11 リリースが新しくインストールされたシステムでは、データリンクには net0 から netN-1 までの名前が自動的に付けられます。ここで、N はネットワークデバイスの総数を表します。
これに対して、Oracle Solaris 11 Express からアップグレードした場合、データリンクでは、アップグレードの前に確立されていた名前が保持されます。これらの名前は、ハードウェアに基づくデフォルトの名前か、または管理者がアップグレードの前にデータリンクに割り当てたカスタマイズされた名前のどちらかです。さらに、これらのアップグレードされたシステムでは、そのあとに追加される新しいネットワークデバイスも、汎用名を受け取るのではなく、ハードウェアに基づくデフォルトの名前を保持します。アップグレードされたシステムでのこの動作により、OS によって割り当てられた汎用名が、その他のハードウェアに基づく名前や、アップグレードの前に管理者によって割り当てられたカスタマイズされた名前と混在しないことが保証されます。
Oracle Solaris 11 が動作するシステムでは、ハードウェアに基づく名前と OS によって提供されたリンク名の両方を、ほかの任意の名前に置き換えることができます。通常、システムのネットワーク構成の作成には、OS によって割り当てられたデフォルトのリンク名で十分です。ただし、リンク名を変更するには、以降のセクションで説明されている重要な考慮事項に注意してください。
システムのリンクにハードウェアに基づく名前が付けられている場合は、これらのリンクの名前を少なくとも汎用名に変更します。ハードウェアに基づく名前を保持した場合は、あとでこれらの物理デバイスを取り外したり、交換したりしたときに、混乱が発生する可能性があります。
たとえば、デバイス bge0 に関連付けられたリンク名 bge0 を保持したとします。リンク構成はすべて、そのリンク名を参照することによって実行されます。あとで、NIC bge を NIC e1000g に交換したとします。以前のデバイスのリンク構成を新しい NIC e1000g0 に再適用するには、リンク名 bge0 を e1000g0 に再割り当てする必要があります。ハードウェアに基づくリンク名 bge0 を関連付けられた別の NIC e1000g0 と組み合わせると、混乱が発生することがあります。ハードウェアに基づかない名前を使用することによって、そのリンクを関連付けられたデバイスからより適切に区別することができます。
ハードウェアに基づくリンク名の置き換えはベストプラクティスですが、それでも、リンクの名前を変更する前には慎重な計画が必要です。デバイスのリンク名を変更しても、その新しい名前が、既存の関連付けられたすべての構成に自動的に反映されるわけではありません。次の例は、リンク名を変更した場合のリスクを示しています。
IP フィルタの構成にある一部の規則は、特定のリンクに適用されます。リンクの名前を変更すると、振り分け規則は引き続き、そのリンクの元の名前を参照します。その結果、リンクの名前を変更したあと、これらの規則は期待どおりに動作しなくなります。新しいリンク名を使用して、そのリンクに適用されるように振り分け規則を調整する必要があります。
ネットワーク構成情報をエクスポートする可能性を考慮してください。前に説明したように、OS によって提供されるデフォルトの net# の名前を使用すると、ゾーンを移行し、ネットワーク構成を別のシステムに容易にエクスポートすることができます。ターゲットシステムのネットワークデバイスに net0 や net1 などの汎用名が付けられている場合、これらのゾーンは単純に、そのゾーンに割り当てられたデータリンクに名前が一致するデータリンクのネットワーク構成を継承します。
そのため、一般的な規則として、データリンクの名前はランダムに変更しないでください。データリンクの名前を変更する場合は、そのリンクの関連付けられたすべての構成が、リンク名が変更されたあとも引き続き適用されることを確認してください。リンクの名前を変更することによって影響を受ける可能性のある一部の構成は、次のとおりです。
IP 振り分け規則
/etc/dhcp.* などの構成ファイルで指定されている IP 構成
Oracle Solaris 11 ゾーン
autopush 構成
注 - リンクの名前を変更したときに autopush 構成を変更する必要はありません。ただし、リンクの名前が変更されたあと、この構成がリンクごとの autopush プロパティーでどのように動作するかを認識しておく必要があります。詳細は、『Oracle Solaris 11.1 での固定ネットワーク構成を使用したシステムの接続』の「データリンク上の STREAMS モジュールの設定」を参照してください。
リンク名を割り当てる場合は、次の規則に従ってください。
リンク名は、文字列と物理接続点 (PPA) 番号で構成する必要があります。
リンク名は、次の制約に従う必要があります。
名前は 3 文字から 8 文字までの間で構成されることが理想です。ただし、名前の最大文字数は 16 です。
名前のための有効な文字は、英数字 (a-z、0-9) とアンダースコア (_) です。
注意 - リンク名には大文字を使用しないでください。 |
各データリンクに割り当てるリンク名は、一度に 1 つだけにする必要があります。
各データリンクには、システム内で一意のリンク名を割り当てる必要があります。
リンク名を割り当てるときに、ネットワーク設定内のリンクの機能が役立つリファレンスになる場合があります。たとえば、netmgt0 をネットワーク管理専用のリンクにすることができます。Upstream2 を ISP に接続するリンクにすることができます。混乱を回避するための一般的な規則として、既知のデバイスの名前をリンクに割り当てることはしないでください。