ホットスペアとホットスペアプールの概要

「ホットスペアプール」はスライス (「ホットスペア」) のコレクションで、Solaris Volume Manager が RAID-1 (ミラー) および RAID-5 ボリュームのデータ可用性を向上させるために使用します。スライスで障害が発生すると、サブミラーまたは RAID-5 ボリュームで、Solaris Volume Manager が障害の発生したスライスをホットスペアに自動的に置換します。

ホットスペアは、アイドル時に、データや状態データベースの複製を保持するために使用できません。ホットスペアは、それに関連付けられているボリュームでスライスの障害が発生した場合に、すぐに使用できるように準備しておく必要があります。ホットスペアを使用するには、システムが実際に機能するために必要なディスク以上に追加のディスクに投資する必要があります。

Solaris Volume Manager により、ホットスペアプール内のホットスペアを動的に追加、削除、置換、有効にすることができます。Solaris 管理コンソール またはコマンド行ユーティリティーを使用して、ホットスペアおよびホットスペアプールを管理できます。これらのタスクの詳細については、第 17 章ホットスペアプール (タスク)を参照してください。

ホットスペア

ホットスペアとは、機能し、使用可能ですが、使用中でないスライス (ボリュームでない) です。ホットスペアは予約されています。つまり、サブミラーまたは RAID-5 ボリューム内の障害の発生したスライスの置換に備えて待機しています。

ホットスペアはハードウェアの障害から保護します。RAID-1 および RAID-5 ボリュームのスライスは、障害の発生時にホットスペアによって自動的に置換されます。ホットスペアは、ボリュームで使用できるように再同期化されます。ホットスペアは、障害の発生したサブミラーや RAID-5 ボリュームスライスが修正されるか、交換されるまで、一時的に使用することができます。

ホットスペアプール内にホットスペアを作成します。個々のホットスペアは 1 つまたは複数のホットスペアプールに含めることができます。たとえば、2 つのサブミラーと 2 つのホットスペアがあるとします。ホットスペアは、各プールに優先順位の異なる 2 つのホットスペアがある 2 つのホットスペアプールとして配置できます。この方法により、最初に使用されるホットスペアを指定できます。この方法は、使用可能なホットスペアを増やすことで、可用性も向上します。

サブミラーまたは RAID-5 ボリュームは、サブミラーまたは RAID-5 ボリューム内の障害の発生したスライスのサイズ以上のホットスペアのみを使用できます。たとえば、1G バイトのドライブから構成されたサブミラーがある場合、サブミラーのホットスペアは 1G バイト以上である必要があります。

ホットスペアプール

ホットスペアプールは、ホットスペアの順序付きリスト (コレクション) です。

最少のスライスから、最大の柔軟性と保護を得るために、1 つまたは複数のホットスペアプールにホットスペアを配置できます。ホットスペアプールとして使用するように指定した単一のスライスを、それぞれ異なるスライスと特性を持つ、複数のホットスペアプールに入れることができます。次に、ホットスペアプールを任意の数のサブミラーボリュームまたは RAID-5 ボリュームに割り当てることができます。

ホットスペアのしくみ

I/O エラーが発生すると、Solaris Volume Manager は、ホットスペアがホットスペアプールに追加された順番に基づいて、ホットスペアプールでホットスペアを検索します。Solaris Volume Manager は、置換対象のスライスのサイズ以上で、最初に使用可能なホットスペアについて、ホットスペアプールをチェックします。十分な大きさのある、Solaris Volume Manager によって最初に見つけられたホットスペアが置換先として使用されます。Solaris Volume Manager はホットスペアのステータスを「使用中」にし、必要に応じて、データを自動的に再同期化します。置換が行なわれても、ホットスペアプール内のホットスペアの順番は変更されません。

ミラーの場合、ホットスペアは機能するサブミラーからのデータで再同期化されます。RAID-5 ボリュームの場合、ホットスペアは、ボリューム内の他のスライスによって再同期化されます。ホットスペアのリストに、十分なサイズのスライスが見つからない場合、障害の発生したサブミラーまたは RAID-5 ボリュームは失敗状態になり、ホットスペアは使用されないままになります。サブミラーの場合、サブミラーはデータを完全に複製しなくなります。RAID-5 ボリュームの場合、データの冗長性は使用できなくなります。

スライスで I/O エラーが発生すると、障害の発生したスライスが「障害」状態に置かれます。この状況を修正するには、まず障害の発生したスライスを修復するか、交換します。次に、Solaris 管理コンソール 内の拡張ストレージツール を使用して、スライスを「使用可能」状態に戻します。または、metahs -e コマンドを使用します。

サブミラーまたは RAID-5 ボリュームは、障害の発生したスライスが有効になるか、交換されるまで、障害の発生したスライスの代わりにホットスペアを使用します。その後、ホットスペアは、ホットスペアプール内で「使用可能」とマークされます。このホットスペアは再び使用の準備が整えられます。

ホットスペアプールの状態

次の表に、ホットスペアプールの状態と実行可能なアクションについて説明します。

表 16-1 ホットスペアプールの状態 (コマンド行)

例 — ホットスペアプール

図 16-1 に、ミラー d1 内のサブミラー d11 および d12 に関連付けられているホットスペアプールを示します。いずれかのサブミラー内のスライスで障害が発生した場合、自動的にホットスペアが、障害の発生したスライスに置換されます。ホットスペアプール自体は、ミラーではなく、各サブミラーボリュームに関連付けられます。ホットスペアプールは、必要に応じて、他のサブミラーまたは RAID-5 ボリュームに関連付けることもできます。

図 16-1 ホットスペアプールの例