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Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Fusion開発者ガイド
11gリリース1 (11.1.1.7.0)
B52028-05
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23 ADFによるデータバインドされた表の作成

この章では、ADF FacesコンポーネントおよびADFデータバインディングを使用してデータバインドされた表を作成するための、「データ・コントロール」パネルの使用方法を説明します。

この章の内容は次のとおりです。

23.1 表の追加の概要

フォームとは異なり、表を使用すると、コレクションのデータ・オブジェクトを一度に複数表示できます。図23-1は、StoreFrontモジュール・アプリケーションの注文内容ページの注文品目タブを示しており、特定の注文の品目を表示するための表の参照が使用されています。

図23-1 注文表

注文ページには製品をリストした表が含まれます

単にデータを表示する表を作成することも、データの編集または作成が可能な表を作成することもできます。コレクションを表としてドロップすると、選択した行に対してなんらかのロジックを実行するアクションにバインドされたコマンド・ボタンを追加できます。また、必要に応じてデフォルトのコンポーネントを変更することもできます。

23.2 基本表の作成

フォームを構成する個々のUIコンポーネントをコレクション上の個々の属性にバインドするフォームとは異なり、表では、ADF Facesのtableコンポーネントをコレクション全体にバインドするか、コレクションから一度にnデータ・オブジェクトのレンジにバインドします。その結果、列にデータを表示するために使用される個々のコンポーネントが属性にバインドされます。イテレータ・バインディングによって各オブジェクトの適切なデータが表示され、tableコンポーネントによって各オブジェクトが1行で表示されます。JDeveloperを使用すると、宣言的にこの処理を実行できるため、コードを記述する必要がありません。

23.2.1 基本表の作成方法

データ・コントロールを使用して表を作成するには、tableコンポーネントをコレクションにバインドします。JDeveloperでは、「データ・コントロール」パネルからコレクションをドラッグ・アンド・ドロップして、宣言的にこの処理を実行できます。


ヒント:

また、コンポーネント・パレットから表コンポーネントをドラッグし、ADF Faces Tableの作成ウィザードを完了しても表を作成できます。


データバインドされた表を作成するには:

  1. 「データ・コントロール」パネルから、コレクションを選択します。

    たとえば、システム内の製品を表示する簡単な表をStoreFrontモジュールで作成するには、Productsコレクションを選択します。

  2. コレクションをJSFページにドラッグし、ポップアップ・メニューから適切な表を選択します。

    コレクションをドラッグする場合は、次の表のタイプから選択できます。

    • ADF表: 編集可能な表列に表示する特定の属性、およびデータの表示に使用するUIコンポーネントを選択できます。デフォルトでは、ADF inputTextコンポーネントはほとんどの属性で使用され、このコンポーネントにより、表は編集可能となります。日付である属性ではinputDateコンポーネントが使用されます。さらに、属性にコントロール・タイプのコントロール・ヒントが作成されている場合、または属性がリストとして構成されている場合、ヒントにより設定されたコンポーネントが使用されます。

    • ADF読取り専用表: 「ADF表」と同じですが、各属性は、outputTextコンポーネントに表示されます。

    • ADF読取り専用動的表: 返されて表示される属性が実行時に動的に決定される表を作成できます。このコンポーネントは、対応するオブジェクトの属性が実行時まで不明な場合、あるいはJSFページに列名をハードコーディングしない場合に適しています。

  3. 次に表示される「表の列の編集」ダイアログには、コレクション内の各属性が表示されます。また、これらの属性がどのように動作し、表の列としてどのように表示されるかを定義できます。


    注意:

    コレクションに構造化属性(Javaのプリミティブ・タイプまたはコレクションのいずれでもない属性)が含まれる場合、その構造化属性の属性も同様にダイアログに表示されます。


    ダイアログを使用すると、次の操作ができます。

    • 「行選択」チェック・ボックスの選択による、ADFモデル・レイヤーでの選択の処理。このオプションを選択すると、イテレータ・バインディングがイテレータにアクセスして選択した行を決定します。表での選択を実行しない場合以外は、このオプションを選択してください。

    • 「ソート」チェック・ボックスの選択による、ADFモデル・レイヤーでの列のソート処理。このオプションを選択すると、イテレータ・バインディングがイテレータにアクセスし、order-by問合せを実行して順序を決定します。列のソートを実行しない場合以外は、このオプションを選択してください。

    • 「フィルタリング」チェック・ボックスの選択による、入力した基準を使用した、表の列のフィルタリングの実行。このオプションを選択すると、各列の上にあるテキスト・フィールドに基準を入力できます。その後で、この基準を使用してコレクションへのQuery-by-Example (QBE)検索を作成すると、問合せによって戻された結果のみが表に表示されます。詳細は、27.5項「スタンドアロンのフィルタ処理された検索表を名前付きビュー基準から作成」を参照してください。

    • 目的の属性(ダイアログでは行として表示)の選択およびグループ化ボタンのクリックによる、親列の下の選択した属性の列のグループ化。図23-2は、表の作成後にグループ化された3つの列がビジュアル・エディタでどのように表示されるかを示しています。

      図23-2 ADF Faces表のグループ化された列

      列をグループ化できます
    • 列の表示ラベルを変更できます。デフォルトでは、ラベルは表バインディング上の属性に定義されたすべてのコントロール・ヒントのlabelsプロパティにバインドされます。このバインディングにより、ビュー・オブジェクトのラベル・テキストの値を1回変更することで、そのラベルが表示されるすべてのページに、その変更を同様に表示できます。

      このデフォルトを使用するかわりにテキストまたはEL式を入力し、ラベル値のバインド先をリソース・ファイルのキーなど、別のものにすることができます。

    • 列の値バインディングの変更。異なる属性にバインドされるように列を変更できます。単に列を並べ替える場合は、順序ボタンを使用してください。列の属性バインディングを変更すると、列のラベルも変更されます。

    • 属性の表示に使用されるUIコンポーネントの変更。UIコンポーネントは、コレクションをページにドロップしたときに選択した表と、対応する属性のタイプ(たとえば、日付である属性にはinputDateコンポーネントを使用)、および対応するビュー・オブジェクトにおいてデフォルト・コンポーネントがコントロール・ヒントとして設定されているかどうかに基づいて設定されます。ドロップダウン・メニューを使用して別のコンポーネントに変更できます。


      ヒント:

      表の属性の1つが主キーでもある場合、ユーザーが値を変更できないUIコンポーネントを選択します。



      ヒント:

      ドロップダウン・メニューに表示されないコンポーネントを使用する場合は、このダイアログを使用してoutputTextコンポーネントを選択した後、手動で他のタグをページに追加します。


    • 順序ボタンを使用した列の順序の変更。

    • 追加」アイコンを使用した列の追加。追加できる列の数に制限はありません。最初にアイコンをクリックすると、JDeveloperではダイアログの下部に新規列の行が追加され、そこにバインドされたコレクションの最初の属性の値が移入されます。後続の新規列には順序内の次の属性の値が移入され、その後も同様に続きます。

    • 「削除」アイコンを使用した列の削除。

  4. 表をページにドロップした後は、プロパティ・インスペクタを使用して表に他の表示プロパティを設定できます。たとえば、表の幅を特定の割合またはサイズに設定できます。表示プロパティの詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド』の「表、ツリーおよびその他のコレクションベースのコンポーネントの使用方法」を参照してください。


    ヒント:

    表の幅を100%に設定すると、表には境界が含まれないため、表の実際の幅はさらに大きくなります。コンテナの幅の100%に表を設定するには、プロパティ・インスペクタの「スタイル」セクションを展開し、「ボックス」タブを選択してBorder Width属性を0(ゼロ)ピクセルに設定します。


  5. ユーザーが表の情報を編集し、変更を保存できるようにするには、変更を発行して保存する方法を指定する必要があります。詳細は、23.3項「編集可能な表の作成」を参照してください。ユーザーによるデータ入力が可能な表の作成手順は、23.4項「入力表の作成」を参照してください。

23.2.2 表の作成時の処理

「データ・コントロール」パネルから表をドロップすると、テキスト・フィールドまたはフォームをドロップするのと同じ効果があります。要約すると、Jdeveloperによって行われる処理は次のとおりです。

  • 表のバインディングを作成し、ページ定義ファイルにそのバインディングを追加します。

  • UIコンポーネントに必要なコードをJSFページに追加します。

詳細は、22.2.2項「テキスト・フィールドの作成時の処理」を参照してください。

23.2.2.1 表のイテレータと値バインディング

「データ・コントロール」パネルから表をドロップすると、ツリーの値バインディングが作成されます。ツリーはノードの階層で構成され、各サブノードは上位レベルのノードから分岐します。表の場合、フラット化された階層であり、各属性(列)は表のサブノードになります。フォームで使用される属性バインディングと同様で、ツリーの値バインディングによってイテレータ・バインディングが参照されると同時に、イテレータ・バインディングによってデータ・コレクションのイテレータが参照されるため、コレクションのデータ・オブジェクト全体の反復が円滑に行われます。属性ごとに異なるバインディングが作成されるのではなく、表ノードへのツリー・バインディングのみが作成されます。ツリー・バインディングでは、表の各行で表示または参照に使用する各属性の子要素が、nodeDefinition要素のAttrNames要素に含まれています。

ツリーの値バインディングは、FacesCtrlHierBindingクラスのインスタンスです。このクラスは、コアのJUCtrlHierBindingクラスを拡張して、次の2つのJSF固有のプロパティを追加します。

  • collectionModel: JSFおよびADF Facesで表などのコレクション値コンポーネントに使用するjavax.faces.model.DataModelオブジェクトを拡張するオブジェクトによってラップされたデータを戻します。

  • treeModel: collectionModelを拡張し、実質的に階層構造であるデータを戻します。詳細は、第24章「マスター/ディテール・データの表示」を参照してください。

例23-1に、Productsコレクションをドロップすると作成される表の値バインディングを示します。

例23-1 ページ定義ファイルにおける表の値バインディング・エントリ

<bindings>
  <tree IterBinding="ProductsIterator" id="Products">
    <nodeDefinition DefName="oracle.fodemo.storefront.store.queries.ProductsVO">
      <AttrNames>
        <Item Value="ProductId"/>
        <Item Value="SupplierId"/>
        <Item Value="CategoryId"/>
        <Item Value="ProductName"/>
        <Item Value="CostPrice"/>
        <Item Value="ListPrice"/>
        .
        .
        .
     </AttrNames>
   </nodeDefinition>
  </tree>
</bindings>

データにアクセスする必要があるのは表のみであるため、(列または個々のセル内のテキスト・コンポーネントではなく)モデルにバインドする必要があるのは表コンポーネントのみです。表のツリー・バインディングは表の個々の構造化属性にドリルダウンするので、表の列は表コンポーネントからその情報を導出できます。

23.2.2.2 ADF Faces表のJSFページのコード

「データ・コントロール」パネルを使用してJSFページに表をドロップすると、表バインディングで指定された各属性に対するADF Facesのcolumnコンポーネントが含まれたADF FacesのtableコンポーネントがJDeveloperによって挿入されます。各列には、属性の値にバインドされた別のコンポーネント(inputTextコンポーネントやoutputTextコンポーネントなど)が含まれます。各列のヘッダーは、属性のコントロール・ヒントのlabelsプロパティにバインドされます。


ヒント:

関連するビューまたはエンティティ・オブジェクトで属性が非表示としてマークされている場合、対応するUIは作成されません。


例23-2に、Productsコレクションを読取り専用の表としてドロップして作成した表から抜粋した、簡略化されたコードを示します。

例23-2 ADF Faces表の簡略化されたJSFコード

<af:table value="#{bindings.Products.collectionModel}" var="row"
          rows="#{bindings.Products.rangeSize}"
          emptyText="#{bindings.Products.viewable ? 'No data to display.':
                                                    'Access Denied.'}"
          fetchSize="#{bindings.Products.rangeSize}"
          selectedRowKeys="#{bindings.Products.collectionModel.selectedRow}"
          selectionListener="#{bindings.Products.collectionModel.makeCurrent}"
          rowSelection="single" id="t1">
  <af:column sortProperty="ProductId" sortable="true"
             headerText="#{bindings.Products.hints.ProductId.label}" id="c1">
    <af:outputText value="#{row.ProductId}" id="ot1"/>
  </af:column>
  <af:column sortProperty="SupplierId" sortable="true"
             headerText="#{bindings.Products.hints.SupplierId.label}" id="c2">
    <af:outputText value="#{row.SupplierId}" id="ot2">
      <af:convertNumber groupingUsed="false"
                        pattern="#{bindings.Products.hints.SupplierId.format}"/>
    </af:outputText>
  </af:column>
  <af:column sortProperty="CostPrice" sortable="true"
             headerText="#{bindings.Products.hints.CostPrice.label}" id="c3">
    <af:outputText value="#{row.CostPrice}" id="ot3">
      <af:convertNumber groupingUsed="false"
                        pattern="#{bindings.Products.hints.CostPrice.format}"/>
    </af:outputText>
  </af:column>
.
.
.
</af:table>

ツリー・バインディングは、イテレータ・バインディングによって公開されたデータ全体を反復します。表の値は、collectionModelオブジェクトにアクセスするcollectionModelプロパティにバインドされています。表は、イテレータ・バインディングからの結果セットをcollectionModelオブジェクト内にラップします。collectionModelにより、コレクションの各アイテムは、var属性を使用して表コンポーネント内で使用できるようになります。

例では、表がProductsイテレータ・バインディングの現在レンジの行全体を反復します。イテレータ・バインディングは、現在行の追跡を続行する行セット・イテレータにバインドします。表のvar属性をrowに設定すると、次のaf:outputTextタグの値に示すように、各列はrow変数を使用して、表タグに示される現在行の現在データ・オブジェクトにアクセスします。

<af:outputText value="#{row.ProductId}"/>

行変数にバインドするかわりに、ADF表(ADF読取り専用表ではなく)をドロップすると、入力コンポーネントの値は、bindingsプロパティによってバインディング・コンテナ内の特定の行に暗黙的にバインドされます(例23-3を参照)。さらに、入力コンポーネントごとにバリデータ・コンポーネントとコンバータ・コンポーネントが追加されます。bindingsプロパティを使用すると、発生した例外を該当するバインド・オブジェクトにリンクできます。コントローラは、バインディング・コンテナ内のすべての例外を反復処理し、FacesMessageオブジェクトの作成時にクライアントIDを取得するためのバインディング・オブジェクトを取得します。この取得により、特定のセルのエラーを表に表示できるようになります。この方法は、リストなどの選択コンポーネントを含め、すべての入力コンポーネントに使用されます。

例23-3 入力コンポーネントを使用したバリデータとコンバータの追加

<af:table value="#{bindings.Products.collectionModel}" var="row"
          rows="#{bindings.Products.rangeSize}"
          first="#{bindings.Products.rangeStart}"
          emptyText="#{bindings.Products.viewable ? 'No data to display.':
                                                    'Access Denied.'}"
          fetchSize="#{bindings.Products.rangeSize}"
          selectedRowKeys="#{bindings.Products.collectionModel.selectedRow}"
          selectionListener="#{bindings.Products.collectionModel.makeCurrent}"
          rowSelection="single" id="t1">
  <af:column sortProperty="ProductId" sortable="true"
             headerText="#{bindings.Products.hints.ProductId.label}" id="c1">
    <af:inputText value="#{row.bindings.ProductId.inputValue}" id="it1"
      <f:validator binding="#{row.bindings.ProductId.validator}"/>
      <af:convertNumber groupingUsed="false"
                        pattern="#{bindings.Products.hints.ProductId.format}"/>
    </af:inputText>
  </af:column>

ADF Facesのバリデータとコンバータの使用方法の詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド』の「入力の検証および変換」を参照してください。

表23-1に、「データ・コントロール」パネルを使用して作成されるADF Faces表に対して、デフォルトで定義される他の属性を示します。

表23-1 ADF Faces表の属性と移入される値

属性 説明 デフォルト値

rows

一度に表示する行数を決定します。

デフォルトで、関連付けられたイテレータ・バインディングのrangeSizeプロパティに評価されるEL式。これにより、データ・コントロールから一度にフェッチされるデータの行数が決定されます。表は戻される行数以上を表示できないため、rows属性の値は、対応するイテレータのrangeSize値以下にする必要があります。

first

レンジの最初の行の索引(ベース0)。

関連付けられたイテレータ・バインディングのrangeStartプロパティに評価されるEL式。

emptyText

戻す行がない場合に表示するテキスト。

イテレータの表示可能なプロパティに評価されるEL式。表が表示可能で、戻すオブジェクトがない場合、「表示するデータがありません」と表示されます。表が表示できない場合(表に対して認可の制限が設定されている場合など)は、「アクセスが拒否されました」と表示されます。

fetchSize

データソースからフェッチされたデータの行数。

デフォルトで、関連付けられたイテレータ・バインディングのrangeSizeプロパティに評価されるEL式。rangeSizeプロパティの詳細は、22.4.2.2項「イテレータのRangeSize属性」を参照してください。この属性は、rows属性より大きい数値に設定することができます。

表でのスクロール動作を向上させるため、表のイテレータ・バインディングが200超の項目で構成されるデータ・セットを管理すると想定され、ビュー・オブジェクトが範囲ページングを使用するように構成されている場合、イテレータは1つの範囲のみではなく範囲のセットを実際には戻します。範囲ページングの使用方法の詳細は、39.1.5項「範囲ページ移動を使用した大きい結果セットの効率的なスクロール」を参照してください。

selectedRowKeys

表の選択の状態。

デフォルトでコレクション・モデルの選択された行に評価されるEL式。

selectionListener

選択したイベントをリスニングするメソッドへの参照。

デフォルトでコレクション・モデルのmakeCurrentメソッドに評価されるEL式。

rowSelection

行が選択可能かどうかを決定します。

一度に1行のみ選択するにはsingleに設定します。一度に複数の行を選択できるようにする方法の詳細は、23.5項「複数選択機能の提供」を参照してください。

列の属性



sortProperty

列をソートする対象となるプロパティを決定します。

列の対応する属性バインディング値に設定します。

sortable

ソートできる列かどうかを決定します。

falseに設定します。trueに設定すると、イテレータ・バインディングがイテレータにアクセスし、順序を決定します。

headerText

列の上部に表示されるテキストを決定します。

デフォルトで、対応する属性に設定されたラベルのコントロール・ヒントに評価されるEL式。


23.2.3 表での現在行の設定について

アプリケーションで表を使用し、ADFモデル・レイヤーで行選択を管理できるようにする場合、現在行はイテレータによって決定されます。ユーザーがADF Faces表で行を選択すると、表の行が影付きになり、選択された行がコンポーネントによりイテレータに通知されます。そのためには、例23-4に示すように、表のselectedRowKeys属性をコレクション・モデルの選択した行にバインドします。

例23-4 表のselection属性

<af:table value="#{bindings.Products1.collectionModel}" var="row"
.
.
.
          selectedRowKeys="#{bindings.Products.collectionModel.selectedRow}"
          selectionListener="#{bindings.Products.collectionModel.
                                                               makeCurrent}"
          rowSelection="single">

このバインディングは、表の選択したキーをコレクション・モデルの選択した行にバインドします。selectionListener属性は、コレクション・モデルのmakeCurrentプロパティにバインドされます。このバインディングは、コレクションの選択した行をイテレータの現在行に設定します。


注意:

カスタム選択リスナーを作成した場合、コレクション・モデル(#{binding.Products.collectionModel.makeCurrent}など)のmakeCurrentプロパティへのメソッド・バインディングを作成し、任意のカスタム・ロジックの前にこのメソッド・バインディングをカスタム選択リスナーで起動する必要があります。


表は選択を自動的に処理できますが、オブジェクトの現在行をイテレータにプログラムで設定する必要がある場合があります。

getKey()メソッドをどのビュー行でコールしても、行を識別する1つ以上のキー属性をカプセル化するKeyオブジェクトを取得できます。Keyオブジェクトは、findByKey()による行セット内のビュー行の検索にも使用できます。実行時に、setCurrentRowWithKeyまたはsetCurrentRowWithKeyValueのいずれかの組込み操作がデータ・バインディング・レイヤーによって名前で起動されると、findByKey()メソッドを使用して、パラメータとして渡された値に基づいて行が検索された後、検索された行が現在の行として設定されます。

setCurrentRowWithKey操作およびsetCurrentRowWithKeyValue操作ではいずれもrowKeyという名前のパラメータが予想されますが、実行時にそのrowKeyパラメータに予想される値はそれぞれで異なります。

setCurrentRowWithKey

setCurrentRowWithKeyでは、rowKeyパラメータ値に、ビュー行キーのシリアライズされた文字列表現が想定されています。これは、次のような16進エンコード文字列です。

000200000002C20200000002C102000000010000010A5AB7DAD9

キーのシリアライズされた文字列表現により、ブラウザのURL文字列またはフォーム・パラメータで単一値として渡すことができる方法で、ビュー行のキーを構成する可能性のあるすべてのキー属性がエンコードされます。実行時に、有効なシリアライズされた文字列キーではないパラメータ値を不注意に渡すと、oracle.jbo.InvalidParamExceptionまたはjava.io.EOFExceptionなどの例外を結果として受信する場合があります。Webページでは、ADFコントロール・バインディングのrowKeyStrプロパティ(#{bindings.SomeAttrName.rowKeyStr}など)またはADF Faces表の行変数(#{row.rowKeyStr}など)を参照すると、行のシリアライズされた文字列キーの値にアクセスできます。

setCurrentRowWithKeyValue

setCurrentRowWithKeyValue操作では、rowKeyパラメータ値がビュー行のキーを表すリテラル値であると想定しています。たとえば、製品番号201を検索する場合、この値は単に201になります。


注意:

アプリケーション・モジュール・クラスにカスタム・コードを記述し、クライアントから渡されたシリアライズされた文字列キーに基づいて行を検索する必要がある場合は、oracle.jbo.clientパッケージにあるJboUtilクラスのgetRowFromKey()メソッドを次のように使用できます。

static public Row getRowFromKey(RowSetIterator rsi, String sKey)

第1パラメータは、行を検索するビュー・オブジェクト・インスタンスです。第2パラメータは、キーのシリアライズされた文字列書式です。


23.3 編集可能な表の作成

ユーザーが表内の情報を編集し、その変更をデータソースにコミットできるようにする表を作成できます。そのためには、コレクション(またはデータ・コントロール自体)に関連付けられたデータ・レコードを変更できる操作を使用して、コマンド・ボタンを作成し、このボタンを表のツールバーに配置します。たとえば、Delete操作を使用して、ユーザーが現在のレンジからレコードを削除できるボタンを作成します。または、組込みの「発行」ボタンを使用して、変更を送信できます。


ヒント:

データ・ストアに新規レコードを挿入できる表を作成するには、23.4項「入力表の作成」を参照してください。


重要なのは、これらの操作がADFキャッシュのオブジェクトに対してのみ実行されるという点です。ルート・データ・コントロール上でCommit操作を使用して、任意の変更をデータソースに実際にコミットする必要があります。データ・コントロールのRollback操作を使用して、キャッシュされたオブジェクトに対する任意の変更をロールバックします。ページが、バインド・タスク・フロー内のトランザクションの一部である場合、通常、タスク・フロー・リターン・アクティビティのトランザクションを解決するためにこの操作を使用します。詳細は、18.4項「トランザクションの管理」を参照してください。

編集可能なコンポーネントを使用してデータを表示することにした場合、一度にすべての行を変更可能として表示する表か、ユーザーが行内をダブルクリックするまですべての行を読取り専用として表示する表という選択肢があります。図23-3は、すべての行に編集可能フィールドがある表を示しています。ページは、ページに追加されたコンポーネント(inputTextinputDateおよびinputNumberSpinboxコンポーネントなど)を使用してレンダリングされます。

図23-3 編集可能フィールドがある表

すべてのフィールドが編集可能な表

図23-4は、同じ表ですが、データを編集または入力するにはユーザーが行をダブルクリック(または行がすでに選択されている場合はシングルクリック)する必要があるように構成されています。図23-3と同じ入力コンポーネントを使用してページは作成されていますが、outputTextコンポーネントを使用して選択されていない行にデータを表示しています。これらのコンポーネントを実際にレンダリングしている行は、編集のために選択された行のみです。

図23-4 行の編集のためにクリックする表

行を編集可能にするにはクリックする必要がある表

ADF Facesの表コンポーネントによる編集の処理方法の詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド』の「表、ツリーおよびツリー表のデータの編集」の項を参照してください。

23.3.1 編集可能な表の作成方法

編集可能な表を作成するには、基本表の作成に類似した手順に従い、続いて操作にバインドされたコマンド・ボタンを追加します。ただし、表にツールバーを含めるには、表の作成に使用されたコレクションのアイテムとツールバーを関連付けるADF Facesコンポーネントを追加する必要があります。

編集可能な表を作成するには:

  1. 「データ・コントロール」パネルから、コレクションを選択します。

    たとえば、システム内の製品を編集できる簡単な表をStoreFrontモジュールで作成するには、Productsコレクションを選択します。

  2. コレクションをJSFページにドラッグし、ポップアップ・メニューから「ADF表」を選択します。

    これにより、入力コンポーネントを使用して編集可能な表が作成されます。

  3. 次に表示される「表の列の編集」ダイアログを使用して、属性がどのように動作し、表の列としてどのように表示されるかを決定します。「行選択」チェック・ボックスを必ず選択することにより、ユーザーは編集する行を選択できます。

    このダイアログを使用して表を構成する方法の詳細は、23.2.1項「基本表の作成方法」を参照してください。

  4. 構造ウィンドウで表を選択し、プロパティ・インスペクタの「動作」セクションを展開してEditingMode属性を設定します。全行を編集可能にする場合は、editAllを選択します。ユーザーに1行をクリックさせてその行を編集可能にする場合は、clickToEditを選択します。

  5. 構造ウィンドウで、表コンポーネントを右クリックし、ポップアップ・メニューから「囲む」を選択します。

  6. 「囲む」ダイアログでは、ドロップダウン・リストで「ADF Faces」が選択されていることを確認し、「パネル・コレクション」コンポーネントを選択して「OK」をクリックします。

    panelCollectionコンポーネントのツールバー・ファセットによりツールバーが保持され、そのツールバーによりデータの更新に使用されるコマンド・コンポーネントが保持されます。

  7. 構造ウィンドウで、panelCollectiontoolbarファセット・フォルダを右クリックし、ポップアップ・メニューから「ツールバーの内部に挿入」「Toolbar」の順に選択します。

    これにより、ユーザーが表の表示方法を変更できるデフォルトのメニューと、表全体の連結を解除する「連結解除」リンクをすでに含むツールバーが作成され、ブラウザ・ウィンドウの大部分を占めるように表示されます。panelCollectionコンポーネントの詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド』の「表メニュー、ツールバーおよびステータス・バーの表示」の項を参照してください。

  8. 「データ・コントロール」パネルから操作の実行対象となるオブジェクトのコレクションに関連付けられている操作を選択し、構造ウィンドウのtoolbarコンポーネントにドラッグします。これにより、データバインドされたコマンド・コンポーネントがツールバー内に配置されます。

    たとえば、製品レコードを削除できるようにする場合は、Productsコレクションに関連付けられているDelete操作をドラッグします。図23-5に、コレクションに関連付けられている操作を示します。

    図23-5 コレクションに関連付けられている操作

    DCPでのナビゲーション操作
  9. ポップアップ・メニューから「操作」→「ADFツールバー・ボタン」を選択します。

  10. 変更をキャッシュに送信する「送信」ボタンを作成するには、構造ウィンドウでツールバー・コンポーネントを右クリックし、「af:toolbarの内部に挿入」「ツールバー・ボタン」の順に選択します。

  11. ページが、バインド・タスク・フロー内のトランザクションの一部でない場合、ユーザーが変更をコミットまたはロールバックできるようにするためのボタンを作成する必要があります。「データ・コントロール」パネルから、ルートレベル・データ・コントロールに関連付けられたCommit操作とRollback操作をドラッグし、コマンド・ボタンまたはコマンド・リンクのいずれかとしてツールバーにドロップします。

    図23-6に、StoreServiceAMDataControlデータ・コントロールのコミット操作とロール・バック操作を示します。

    図23-6 データ・コントロールのCommit操作とRollback操作

    「コミット」操作は「演算子」フォルダの下にネストされます。

    ページが、バインド・タスク・フロー内のトランザクションの一部である場合、タスク・フロー・リターン・アクティビティを作成する際のトランザクションを解決する値としてCommitまたはRollbackを入力します。詳細は、18.4項「トランザクションの管理」を参照してください。

23.3.2 編集可能な表の作成時の処理

編集可能な表の作成は、レコードの編集に使用するフォームの作成と類似しています。「データ・コントロール」パネルからドロップした操作に対してアクション・バインディングが作成されます。編集可能な表の作成時の処理の詳細は、22.4.2項「コマンド・ボタンの作成時の処理」を参照してください。

23.4 入力表の作成

ユーザーが表に新しく空白行を挿入し、各列に値を追加することのできる表を作成できます(対応するエンティティ・オブジェクトまたはビュー・オブジェクトに設定されたデフォルト値は自動的に移入されます)。

23.4.1 入力表の作成方法

入力表を作成する際に、現在の行セット内の他の行のコンテキストにある新しい空白行をユーザーに表示する必要があります。この挿入を可能にするには、フォームで使用するのと同様に、Create操作ではなくCreateInsert操作を使用する必要があります。CreateInsert操作は、実際にはキャッシュのみではなく行セット内に新しい行を作成します。

ページ全体をリフレッシュするのではなく、他のコンポーネントとの対話に基づいて1つのコンポーネントをリフレッシュするようにADF Facesコンポーネントを設定できます。これは、部分ページ・レンダリングと呼ばれます。新規行を作成するためのボタンをユーザーがクリックしたときには、その新規行が表示されるように表をリフレッシュする必要があります。これを行うには、ユーザー・アクションに対応するよう表を構成する必要があります。

作業を始める前に、次のようにします。

  1. 23.3項「編集可能な表の作成」で説明しているように、編集可能な表を作成します。

  2. 表がバインド・タスク・フローの一部でない場合は、Commit操作とRollback操作にバインドされたボタンを必ず含めます。

入力表を作成するには:

  1. 「データ・コントロール」パネルから、ドロップされたコレクションに関連付けられたCreateInsert操作をドラッグし、ツールバー・ボタンとしてツールバーにドロップします。IDは、CreateInsertなどのわかりやすいものに変更できます。これによって、部分トリガーとして選択する際に識別しやすくなります。

  2. 構造ウィンドウで、表コンポーネントを選択します。プロパティ・インスペクタで「動作」セクションを展開します。

  3. プロパティ・インスペクタで、PartialTriggers属性のドロップダウン・メニューをクリックし、「編集」を選択します。

  4. 「プロパティの編集」ダイアログで、panelCollectionコンポーネントのツールバー・ファセットを展開し、CreateInsert コマンド・コンポーネントを含むツールバーを展開します。そのコンポーネントを選択し、「選択済」パネルに移動します。「OK」をクリックします。これにより、表のリフレッシュがトリガーされるコンポーネントが設定されました。

23.4.2 入力表の作成時の処理

CreateInsert操作を使用して入力表を作成すると、JDeveloperによって次の処理が行われます。

  • コレクションのイテレータ・バインディング、CreateInsert操作のアクション・バインディング、および表の属性バインディングの作成。CreateInsert操作は、行セットに新しい行を作成します。Commit操作およびRollback操作を使用してコマンド・ボタンまたはリンクを作成した場合、JDeveloperではこれらの操作のアクション・バインディングも作成されます。

  • ADF Faces tableコンポーネント、columnコンポーネント、inputTextコンポーネント、および操作の場合はcommandButtonコンポーネントを使用した、JSFページへのコードの挿入。

例23-5に、Productsコレクションから作成された入力表のページ定義ファイルを示します(属性の中には、コレクションをドロップしたときに、「列の編集」ダイアログで削除されたものがあります)。

例23-5 入力表のページ定義コード

<executables>
  <iterator Binds="Products" RangeSize="25"
            DataControl="StoreServiceAMDataControl" id="ProductsIterator"/>
</executables>
<bindings>
  <tree IterBinding="ProductsIterator" id="Products">
    <nodeDefinition DefName="oracle.fodemo.storefront.store.queries.ProductsVO">
      <AttrNames>
        <Item Value="ProductId"/>
        <Item Value="ProductName"/>
        <Item Value="CostPrice"/>
        <Item Value="ListPrice"/>
        <Item Value="Description"/>
        <Item Value="CategoryName"/>
        <Item Value="CategoryDescription"/>
        <Item Value="ProductImageId"/>
      </AttrNames>
    </nodeDefinition>
  </tree>
  <action IterBinding="ProductsIterator" id="CreateInsert"
          RequiresUpdateModel="true" Action="createInsertRow"/>
  <action id="Commit" RequiresUpdateModel="true" Action="commitTransaction"
          DataControl="StoreServiceAMDataControl"/>
  <action id="Rollback" RequiresUpdateModel="false"
          Action="rollbackTransaction"
          DataControl="StoreServiceAMDataControl"/>
</bindings>

例23-6に、CreateInsertコマンド・ツールバー・ボタンを、表をリフレッシュするためのトリガーとして使用し、部分ページ・レンダリングを提供するJSFページに追加されたコードを示します。

例23-6 表のコマンド・ボタンに設定された部分ページ・トリガー

<af:form>
  <af:panelCollection id="pc1">
    <f:facet name="menus"/>
    <f:facet name="toolbar">
      <af:toolbar id="tb1">
        <af:commandToolbarButton actionListener="#{bindings.CreateInsert.execute}"
                                 text="CreateInsert"
                                 disabled="#{!bindings.CreateInsert.enabled}"
                                 id="CreateInsert"/>
        <af:commandToolbarButton actionListener="#{bindings.Commit.execute}"
                                 text="Commit"
                                 disabled="false" id="ctb2"/>
        <af:commandToolbarButton actionListener="#{bindings.Rollback.execute}"
                                 text="Rollback"
                                 disabled="#{!bindings.Rollback.enabled}"
                                 immediate="true" id="ctb3">
          <af:resetActionListener/>
        </af:commandToolbarButton>
      </af:toolbar>
    </f:facet>
    <f:facet name="statusbar"/>
    <af:table value="#{bindings.Products.collectionModel}" var="row"
              rows="#{bindings.Products.rangeSize}"
              emptyText="#{bindings.Products.viewable ? \'No data to display.\' :
                                                      \'Access Denied.\'}"
              fetchSize="#{bindings.Products.rangeSize}"
              rowSelection="single" partialTriggers="CreateInsert" id="t1">
      <af:column sortProperty="ProductId" sortable="false"
                 headerText="#{bindings.Products.hints.ProductId.label}" id="c1">
        <af:inputText value="#{row.ProductId}" simple="true"
                      required="#{bindings.Products.hints.ProductId.mandatory}"
                      columns="#{bindings.Products.hints.ProductId.displayWidth}"
                      maximumLength="#{bindings.Products.hints.
                                                  productId.precision}" id="it1"/>
      </af:column>
.
.
.
    </af:table>
  </af:panelCollection>
</af:form>

23.4.3 実行時に行われる処理: CreateInsertおよび部分ページ更新の動作方法

CreateInsert操作にバインドされたボタンを起動すると、アクションが実行され、ページがレンダリングされることによりコレクションの新しいインスタンスが作成および挿入されます。ボタンは、表をリフレッシュするトリガーとして構成されているため、表の最上部に新しい空白行を表示して再描画されます。Commitアクションにバインドされたボタンをユーザーがクリックすると、行セット内に作成された新しい行がデータベースに挿入されます。部分ページ・リフレッシュの詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド』の部分ページ・コンテンツのリフレッシュに関する項を参照してください。

23.4.4 行の作成および列のソートについて

表の列のソートが可能で、新規行を挿入する前にユーザーが列をソートした場合、新規行はソートされません。新規行を含めて列をソートするには、目的のソートとは逆の列ソートを行ってから再ソートする必要があります。これは、表で列がすでにソートされていると見なされるためで、最初から希望のソート順をクリックしても列には何の効果もあらわれません。

たとえば、ユーザーが列を昇順でソートし、その後行を新たに追加するとします。最初、その行は最上部に表示されます。もう一度昇順で列をソートするために最初から昇順をクリックすると、列がすでに昇順であると見なされ、表は再ソートされません。ユーザーは、降順でソートした後に昇順でソートする必要があります。

行を挿入すると、データが特定の列で特定の順に自動的にソートされるようにする場合、プログラムでコミット後にSortEventをキューに入れ、ソートを実行するハンドラを実装します。宣言的操作(Commit操作など)への機能の追加に関するする詳細は、28.4項「宣言メソッドのオーバーライド」を参照してください。

23.4.5 CreateおよびCreateInsertについて

CreateまたはCreateInsert操作を使用して新規行を宣言的に作成すると、次のコード行が実行されます。

// create a new row for the view object
Row newRow = yourViewObject.createRow();
// mark the row as being "initialized", but not yet new
newRow.setNewRowState(Row.STATUS_INITIALIZED);

ただし、CreateInsert操作を使用している場合は、行を行セットに挿入する追加のコード行も実行されます。

// insert the new row into the view object's default rowset
yourViewObject.insertRow(newRow);

行をエンティティベースのビュー・オブジェクトに作成すると、現在のアプリケーション・モジュールに関連付けられているTransactionオブジェクトによって、その処理が即時に記録されます。ビュー行の後に作成された新規エンティティ行は、Transactionの保留中の変更リストにすでに含まれています。作成された新規行は、初期化済状態であるとしてマーク付けされると、Transactionの保留中の変更リストから削除され、エンド・ユーザーによるデータ値の入力がまだ行われていない空白行とみなされます。初期化済という用語が適切である理由は、基礎となるエンティティ・オブジェクトによって定義されたすべてのデフォルト値を使用して初期化された新規行がエンド・ユーザーに表示されるためです。初期化済の行のどの属性にもユーザーがデータを入力していない場合は、その行が存在していないかのように処理されます。トランザクションのコミット時には、その行がTransactionの保留中の変更リストに含まれていないため、INSERT文はその行に対して試行されません。

初期化済の行に1つ以上の属性が設定されると同時に、初期化済の状態から新規状態(Row.STATUS_NEW)に自動的に遷移します。この時点で、基礎となるエンティティ行はTransactionの保留中の変更リストに登録され、トランザクションの次回コミット時に新規行が永続的に保存されます。


注意:

多数の初期化済の行を作成してもその行にデータを移入しない手順をエンド・ユーザーが実行した場合、低速メモリー・リークが発生することがあります。ただし、新規状態に遷移しない初期化済の行で使用されるメモリーは、Java仮想マシンのガベージ・コレクタによって最終的に解放されます。


23.5 複数選択機能の提供

デフォルトでは、表コンポーネントをドロップして行選択を使用するように設定すると、ユーザーが単一行を選択できるように設定されます。表を変更してアプリケーションが同時に複数の行を処理できるようにすることで、ユーザーが[Ctrl]キーまたは[Shift]キーを使用して複数の行を選択できるようにすることが可能です。

図23-7の例はUpdateUserInfoページの住所タブを示しており、ログイン・ユーザーの現住所が表に表示されています。ユーザーは、複数の住所を選択して「削除」ツールバー・ボタンをクリックできます。このアクションにより、それらの住所がデータストアから削除されます。

図23-7 複数選択が可能な住所表

3つの行が選択された住所表

ユーザーが複数の行を選択して操作できるようにするには、まず、rowSelection属性をmultipleに変更する必要があります。Fusion Webアプリケーションでは、操作(メソッドなど)は、イテレータによって追跡される現在のデータ・オブジェクトに作用します。rowSelection属性がsingleに設定されている場合(表の作成時に「表の列の編集」ダイアログで「行選択」チェック・ボックスを選択した場合のデフォルト設定)、表では現在のデータ・オブジェクトを選択済として表示できるほか、新たに選択された行をイテレータの現在のオブジェクトに設定することも可能です。後続のページでも同じイテレータが使用される場合(たとえば、ユーザーが行を選択してコマンド・ボタンをクリックし、オブジェクトを編集できるページに移動した場合)は、選択されたオブジェクトが表示されます。この選択およびナビゲーションが機能するのは、イテレータとコンポーネントが単一のオブジェクトと連動するためであり、異なるバインディング・コンテナ内の異なるイテレータ・バインディングが同じ行セット・イテレータにバインドされているという理由から、現在の行の概念は同じです。

一方、rowSelection属性をmultipleに設定した場合は、複数のオブジェクトが選択される可能性があります。ADFモデル・レイヤーには、"現在"に対する"選択済"という概念はありません。コンポーネント・インスタンスを取得し、選択された行を読み取り、選択の状態をバインディングに変換するモデル・レイヤーに、ロジックを追加する必要があります。そうすることで、選択された行に対するアクションをメソッドで実行できるようになります。

23.5.1 複数選択機能の追加方法

複数選択機能を追加するには、まず特定の表コンポーネントの属性を変更します。次に、マネージドBeanを使用して、選択された行を現在行になるように設定を処理します。


ヒント:

複数選択機能をツリーまたはツリー表に追加する場合は、同じ手順を実行できます。


作業を始める前に、次のようにします。

23.2項「基本表の作成」の説明に従って表を作成し、「行選択」チェック・ボックスが選択されていないことを確認します。


注意:

「行選択」チェック・ボックスが選択されていると、JDeveloperによってselectionListener属性がCollectionModelクラスのmakeCurrentメソッドに、またselectedRowKeys属性がそのクラスのselectedRowプロパティに自動的にバインドされるため、選択を解除しておく必要があります。どちらも、単一選択の表に対してのみ機能するよう設計されています。複数選択が必要な表には、どちらの属性も移入されないようにしてください。


複数選択機能を追加するには:

  1. 構造ウィンドウで、表コンポーネントを選択し、次の属性をプロパティ・インスペクタで設定します。

    • 行選択: multiple

    • ID: 表に選択するID

  2. ページのマネージドBeanがまだ存在しない場合は、作成および登録します。選択されたすべての行に対して実行されるように、マネージドBeanを使用して、行選択を処理し、選択に対してロジック(選択された行の削除など)を実行します。マネージドBeanを作成する手順は、20.4項「Fusion WebアプリケーションでのマネージドBeanの使用」を参照してください。

  3. 表コンポーネントを表すマネージドBeanにプロパティを追加します。プロパティの値を手順1で設定した表のID値に設定し、例23-7に示すように、プロパティ・クラスをADF Facesの表コンポーネント・クラスになるように設定します。

    例23-7 表を表すマネージドBeanのプロパティ

    <managed-property>
      <property-name>table1</property-name>
      <property-class>
        oracle.adf.view.rich.component.rich.data.RichTable
      </property-class>
      <value>#{table1}</value>
    </managed-property>
    
  4. 例23-8に示すように、表のgetterメソッドとsetterメソッドをマネージドBeanに追加します。

    例23-8 表コンポーネントのgetterメソッドとsetterメソッド

    private RichTable _table1;
     
        public void setTable1(RichTable table1) {
            this.table1 = table1;
        }
        public RichTable getTable1() {
            return table1;
        }
    

    ヒント:

    ADF Facesの表クラスをマネージドBeanにインポートする必要があります。例23-8のコードを追加した後で[Ctrl]キーを押しながら[Enter]キーを押すと、JDeveloperによってこの処理が宣言的に実行されます。


  5. JSPページに戻り、構造ウィンドウで表コンポーネントを選択し、バインディング属性が手順3で作成した管理プロパティにバインドされるように設定します。例:

    binding="#{myBean.table1}"
    

    このバインディングにより、アプリケーションは表コンポーネント全体で動作します。binding属性と、プログラムでオブジェクトへのアクセスを可能にする方法の詳細は、Sun社のWebサイト(http://www.oracle.com/technetwork/java/index.html)のJava EE 5チュートリアルを参照してください。


    ヒント:

    JSFページの作成時に自動コンポーネント・バインディングを使用するように選択した場合、手順2から5の操作のほとんどは自動的に実行されます。手順6に示すように、マネージドBeanでsetメソッドのみを作成する必要があります。ただし、自動コンポーネント・バインディングを使用したときのページの動作を理解することは非常に重要です。詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド』の「自動コンポーネント・バインディングについて」の項を参照してください。


  6. ロジックを追加して、宣言的操作またはメソッドが選択された行セットに対して操作できるようにします。

    例23-9に、updateUserInfoページの住所表から選択された行を削除するdeleteOnTable()というメソッドを示します。

    例23-9 イテレータでの複数行の削除

        public void deleteOnTable(RichTable myTable) {
            RowKeySet rowKeySet = (RowKeySet) myTable.getSelectedRowKeys();
            CollectionModel cm = (CollectionModel) myTable.getValue();
            for (Object facesTreeRowKey : rowKeySet) {
                cm.setRowKey(facesTreeRowKey);
                JUCtrlHierNodeBinding rowData = (JUCtrlHierNodeBinding)
                    cm.getRowData()
                rowData.getRow().remove();
            }
        }
    
    

注意:

CollectionModelでは行キー・パラメータを取るgetRowDataメソッドのバージョンがサポートされているため、現在の位置を変更することなく行データを取得できます。これはビュー・オブジェクトが範囲ページングを使用する場合に特に有用です。

したがって、前述の例では、このコードを、

cm.setRowKey(facesTreeRowKey);
JUCtrlHierNodeBinding rowData = (JUCtrlHierNodeBinding)
    cm.getRowData();

次のコードで置き換えることができます。

JUCtrlHierNodeBinding rowData = (JUCtrlHierNodeBinding)
    cm.getRowData(facesTreeRowKey);

23.5.2 実行時に行われる処理: 複数行に対する操作の実行方法

ユーザーが複数の行を選択してコマンド・ボタンをクリックすると、アプリケーションは別のコンテキストを使用して式ファクトリにアクセスし、バインディング・コンテナに解決される式を作成します。その後で、イテレータおよびコンポーネントで選択された行キーを取得し、選択された行をバインディングに設定します。次に、バインディングのコレクション・モデルを使用して行を削除し、コンポーネントに再アクセスしてコレクションをこの時点では削除された行で表示します。

23.6 表に表示される属性の変更

「データ・コントロール」パネルを使用して表を作成したら、属性の削除、表示順序の変更、表示に使用されるコンポーネントの変更、コンポーネントの属性バインディングの変更ができます。新しい属性を追加したり、表を新規のデータ・コントロールに再バインドすることもできます。

23.6.1 表示される属性の変更方法

「データ・コントロール」パネルを使用して作成された表は、次のような変更ができます。

  • 行のラベルに対するバインディングの変更

  • UIコンポーネントがバインドされている属性の変更

  • 属性にバインドされているUIコンポーネントの変更

  • 表内の列の並替え

  • 表内の列の削除

  • 表への列の追加

  • 選択とソート処理の有効化

表の属性を変更するには:

  1. 構造ウィンドウで、表コンポーネントを選択します。

  2. プロパティ・インスペクタで、別のセクションを展開して表の属性を変更します。

23.6.2 表のバインディングの変更方法

バインディングを変更するかわりに、表がバインドされているオブジェクトを完全に変更できます。

表を再バインドするには:

  1. 構造ウィンドウで表を右クリックし、「別のADFコントロールに再バインド」を選択します。

  2. 「ADFコントロールにバインド」ダイアログで、表のバインド先とする新しいコレクションを選択します。表のバインディングを変更すると、すべての列のバインディングも変更されます。23.6.1項「表示される属性の変更方法」の手順に従って、これらのバインディングを変更できます。


ヒント:

既存の表の最上部に異なるビュー・オブジェクトをドラッグして表を再バインドすることもできます。


23.6.3 バインディングまたは表示される属性の変更時に発生する処理

UIコンポーネントを移動または変更して単に属性の表示方法を変更すると、JSFページの対応するコードが変更されます。バインディング・エディタを使用してバインディングを追加または変更すると、JDeveloperによって、JSFページにコードが追加され、ページ定義ファイルに適切な要素が追加されます。