Oracle の StorageTek Virtual Library Extension (VLE) は VTSS 用のバックエンドディスクストレージです。VLE は次を提供します。
VSM ソリューションの追加ストレージレイヤー。VTSS から VLE への VTV の移行が可能となったため、最新データに高速でアクセスできます。さらに、VTV を長期のアーカイブのため、VLE ストレージからテープメディア (MVC) に移行できます。既存の HSC のマネージメントクラスとストレージクラスによって、VTV の移行およびアーカイブ方法を制御して、以前の構成との完全下位互換性を提供できます。
複数の VTSS システム間で共有されるバックエンドディスクストレージ。これにより、データへの高可用性アクセスが保証されます。
注: VLE 1.1 以上では、「VLE」はプライベートネットワークと相互接続されたノードの集まりです。 |
VLE は、VTCS からはテープライブラリと同じように見えますが、ディスク上の仮想マルチボリュームカートリッジ (VMVC) に VTV が格納される点が異なります。VLE を使用すると、VLE とテープ、または VLE のみ (Tapeless VSM 構成を使用するなど) のバックエンド VTV ストレージソリューションのいずれかを構成できます。VTSS は実際のテープライブラリの場合とまったく同様に、VLE との間で VTV の移行やリコールを行えます。
注意:
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VLE ソリューションは次から構成されます。
仮想テープストレージサブシステム (VTSS) ハードウェアおよびマイクロコード
仮想テープ制御サブシステム (VTCS) ソフトウェアおよびストレージ管理コンポーネント (SMC)
VLE ハードウェアおよびソフトウェア
VLE は Sun Rack II Model 1242 に収められた出荷時組み立てユニットであり、次のハードウェアから構成されます。
Sun Server X2-4 プラットフォーム上に構築されたサーバー。
SMC UUI 接続とサービス接続の組み合わせで使用する 4 つの 1GigE ポート。
サービス (ILOM) ポート。
4 枚の 4 ポート 1GigE カード。データ転送用の Ethernet ポートを 16 個提供します。
ZFS RAID アレイ内にディスク (HDD) を格納する 1 台または複数の Oracle Storage Drive Enclosure DE2-24C (DE2-24C) で、単一の JBOD VLE に対し 200T バイトから始まる実効容量で拡張可能です (VLE へのデータ移行を行う際の圧縮率を 4 対 1 と仮定)。
1 台のサーバーにつき 2 枚のデュアルポート 10GigE ネットワークアダプター (NIC) カード。2 つ以上のノードを備えた VLE の内部ネットワーク接続に必要です (3 つ以上のノードの場合は Oracle スイッチを使用します)。
DVD ドライブ。
VLE ソフトウェアは次から構成されます。
Oracle Solaris 11 オペレーティングシステム。
ZFS ファイルシステムと MySQL データベース。
VLE アプリケーションソフトウェア。
図 1-1 に VLE サブシステムのアーキテクチャーを示します。
図 1-1 に示すように、VLE アプリケーションソフトウェアは次から構成されます。
HTTP/XML は、ホストと VLE との間の通信のためのデータプロトコルです。
ユニバーサルユーザーインタフェース (UUI) リクエストハンドラ。ストレージ管理コンポーネント (SMC) および仮想テープ制御ソフトウェア (VTCS) からの UUI リクエストの処理、およびそれらへの応答の生成を行います。UUI リクエストハンドラは、どの VLE コンポーネントを使ってリクエストを処理するかを決定します。
UUI リクエストハンドラから次のものが呼び出されます。
VTV の移行やリコールのスケジューリングを行う PathGroup マネージャー。PathGroup マネージャーによってすべてのパスグループが管理され、各パスグループによって、VTSS と VLE との間の単一の VTV データ転送が管理されます。
すべてのレポート生成のスケジューリングを行うストレージマネージャー。
VLE ストレージマネージャーコンポーネントは、VLE 上の VMVC/VTV データおよびメタデータを管理します。VLE ストレージマネージャーは、JBOD アレイ上の ZFS に対して VTV データの格納や取得を行います。
TCP/IP/IFF がホストと VLE との間の通信のためのデータプロトコルであるのに対し、IP/IFF/ECAM コンポーネントは VTSS と VLE との間の通信を処理します。
図 1-2 に、単一ノードの VLE 構成を示します。
図 1-2 に示すように (1 は MVS ホストで 2 はライブラリです):
複数の TCP/IP 接続 (VTSS の IP ポートと VLE の IP ポートとの間) が次のようにサポートされています。
1 台の VLE を最大 8 台の VTSS に接続できるため、VTSS 間で VLE を共有できます。
1 台の VTSS を最大 4 台の VLE に接続できるため、バッファー領域を増やして高いワークロードに対応できます。
単一の VTSS は次に接続できます。
RTD のみ
(クラスタ化された) ほかの VTSS のみ
VLE のみ
上記の任意の組み合わせ。
VLE と VTSS との間の接続、および SMC と VTCS が実行されているホストと VLE との間の接続でサポートされるプロトコルは、TCP/IP のみです。
マルチノードの VLE システムにより、VLE ストレージシステムの大規模なスケーリングが可能になります。1 ノードから 64 ノードで構成でき、複数のノードがプライベートネットワークによって相互接続されたマルチノードシステムを構築できます。マルチノード VLE は、SMC/VTCS には単一の VLE のように見えます。Version 1.4 では、VLE に 4T バイトの JBOD が付属するようになりました。そのため、単一の VLE は 200T バイト (1 台の JBOD システムの場合) から 100P バイト (フル装備の 64 ノード VLE の場合) まで拡張できます。
注: これらは、圧縮率を 4:1 と仮定した場合の実効容量です。VLE は最大 64 ノードとして設計されていますが、最大 7 ノードに対してのみ検証されていることにも注意してください。 |
図 1-3 に、VLE マルチノードコンプレックスを示します。ここでは、ノードが専用の 10GE スイッチに相互接続され、各ノードがコンプレックス内のほかのノードにアクセスできるようになっています。ここでは:
1 - MVS ホスト
2 - リモート VLE
3 - パブリックネットワーク
4 - プライベートネットワーク
5 - VLE マルチノードグリッド
6 - 仮想テープストレージシステム
VLE ストレージシステムでは、VTSS と無関係にデータ転送を管理できます。これにより、フロントエンド (ホスト) のワークロードに使われる VTSS リソースが解放されるため、VTSS 全体のスループットが向上します。次に例を示します。
移行ポリシーで、(同じまたは別々の VLE に) VTV の 2 つの VLE コピーが必要であると指定している場合、VLE への最初の移行によって、データが VTSS から転送され、VTV に対する後続のすべての VLE の移行が VLE と VLE 間のコピーによって実現できます。これによって、VTV のすべてのコピーの移行に必要な VTSS サイクル時間が短縮されます。
環境で次を実行している場合:
VLE 1.2 以上、および
VTCS 7.1 (サポートする PTF を含む) または VTCS 7.2
VTCS を使用して、CONFIG STORMNGR VLEDEV
パラメータによって、VTSS と VLE 間のパスにあるより多くの VLE デバイスを定義できます。このアドレス指定スキームを使用した場合、VTSS から VLE 宛てのデータ転送が行われる場合にのみ、VTSS からターゲットの VLE へのパスが予約されるため、すべての VTV コピーを VLE に移行するために使用される VTSS リソースがさらに少なくなります。すべての VLE VRTD アクションで、VTSS データ転送が必要な場合にのみ、VTSS からのパスが予約されます。
暗号化機能により、VLE システムに書き込まれた VMVC の暗号化が可能になります。暗号化は、ノードに格納され、USB デバイスにバックアップされている暗号化鍵によって、ノード単位で有効にします。暗号化は、VLE GUI によって完全に管理されます。VLE が VTSS にリコールされた VTV を暗号化解除するため、ホストソフトウェアは暗号化を認識しません。
複製解除は、VLE コンプレックスの冗長データを除去します。複製解除は STORCLAS
ステートメント DEDUP
パラメータによって制御され、VLE の実効容量を増やし、VTV が VMVC に書き込まれる前に、VLE によって実行されます。
複製解除結果を評価するには、複製解除を有効にし、SCRPT
レポートによって結果をモニターして、必要に応じて複製解除を微調整します。SCRPT
レポートは、非圧縮 G バイトを使用中の G バイトで割った、複製解除されたデータのおよその「削減率」を示します。そのため、削減率には VTSS の圧縮と VLE の複製解除の両方が含まれます。削減率が大きいことは、圧縮と複製解除の効果が大きいことを示します。
たとえば、VTSS は 16M バイトのデータを受け取り、それを 4M バイトに圧縮して、圧縮されたデータを VTV に書き込みます。VLE は続いて VTV を 2M バイトに複製解除し、それを VMVC に書き込みます。したがって、削減率は 16M バイトを 2M バイトで割ると 8.0:1 になります。
Early Time To First Byte (ETTFB) (並行テープリコール/マウント機能とも呼ばれる) では、データが VLE からリコールされるときに VTSS が VTD を使用して、データを読み取ることができます。
ETTFB は CONFIG GLOBAL FASTRECL
によってグローバルに設定されます。
CONFIG GLOBAL FASTRECL=YES
の場合、CONFIG VTSS NOERLYMNT
によって、VTSS 単位で ETTFB を無効にできます。
CONFIG GLOBAL
と CONFIG VTSS
は RTD の ETTFB と VLE の ETTFB の両方に適用されます。