ヘッダーをスキップ
Oracle® WebLogic Server SIP Container管理者ガイド
11g リリース1(11.1.1)
B61429-02
  目次へ移動
目次
索引へ移動
索引

前
 
次
 

2 SIPサーブレット・コンテナ・プロパティの構成

次の項は、Oracle WebLogic Server SIP Containerデプロイメントのエンジン層でSIPコンテナの機能を構成する方法を説明します。

2.1 SIPコンテナ構成の概要

管理コンソールやWebLogic Scripting Tool (WLST)などのJMXユーティリティを使用するか、またはカスタムJMXアプリケーションをログラミングするかのいずれかによって、SIPコンテナ・プロパティを構成できます。2.2項「コンテナ・プロパティを構成するための管理コンソールの使用」では、管理コンソールのグラフィカル・ユーザー・インタフェースを使用してコンテナ・プロパティを構成する方法を説明しています。

2.3項「WLST (JMX)によるコンテナ・プロパティの構成」では、コンテナ構成を変更するためにJMX MBeansに直接アクセスする方法を説明しています。すべての例では、構成MBeansへのJMXアクセスを示すためにWLSTを使用します。

2.2 コンテナ・プロパティを構成するための管理コンソールの使用

Oracle WebLogic SIP Containerに含まれる管理コンソールを使用すると、Oracle WebLogic SIP Containerで提供されているコアWebLogic Serverの機能およびSIPサーブレット・コンテナ機能を構成および監視できます。管理コンソールを使用してSIPサーブレット機能の構成または監視を行うには、『Oracle Fusion Middleware管理者ガイド』のOracle WebLogic Server管理コンソール・スタート・ガイドの項を参照してください。

表2-1 Oracle WebLogic Server SIP Container構成および監視に使用する各種ページ

ページ サブページ 関数

「構成」

「全般」

「SIPタイマー値」、「セッション・タイムアウト期間」、「デフォルトのOracle WebLogic Server SIP Containerの動作(プロキシまたはユーザー・エージェント)」、「サーバー・ヘッダー形式」、「呼出し状態のキャッシュ処理」、「DNS名の解決」、「タイマー・アフィニティ」、「ドメイン別名」、「レポート・サポート」、および「診断イメージ形式」などを構成します。

「構成」

「アプリケーション・ルーター」

カスタム・アプリケーション・ルーター(AR)のクラス名、構成、またはデフォルト・アプリケーションを構成します。

「構成」

「プロキシ」

プロキシ・ルーティングURIおよびプロキシ・ポリシーを構成します。

「構成」

「過負荷保護」

自動オーバーロード制御の有効化と無効化の条件を構成します。

「構成」

「メッセージのデバッグ」

開発システムでのSIP「メッセージ・ロギング」の有効化または無効化。

「構成」

「SIPセキュリティ」

認証の実行対象としない「信頼性のあるホスト」の指定。

「構成」

「永続性」

「存続期間が長いデータのRDBMSへの格納」、または「地理的に冗長なリモート・サイトに存続期間が長いセッション・データのレプリケート」の永続性オプションを構成します。

「構成」

「データ層」

SIPデータ層サーバーの現在の構成を表示します。ここには、パーティションを追加、削除および構成することもできます。

「構成」

「ロードバランサ・マップ」

ソフトウェアのアップグレード中に、複数のクラスタの内部仮想IPアドレスへのマッピングを構成します。

「構成」

「ターゲット」

エンジン層の構成を受けるサーバーとクラスタのリストを構成します。ターゲット・サーバーのリストは、どのサーバーまたはクラスタがSIPサーブレット・コンテナの機能を提供するかを決定します。

「構成」

「接続プール」

「接続再利用プール」を、SBC (Session Border Control)機能またはS-CSCF (Serving Call Session Control Function)との通信オーバーヘッドを最小限に抑えるために構成します。

「監視」

「全般」

エンジン層サーバーで処理されたメッセージおよびセッションに関する実行時情報の表示。

「監視」

「SIPアプリケーション」

デプロイ済SIPアプリケーションの実行時セッション情報の表示。

「監視」

「データ層の情報」

現在のステータスおよびSIPデータ層のサーバーによって実行される機能に関するランタイム情報を表示します。


2.2.1 構成のロックおよび永続性

Oracle WebLogic Server SIP Containerの構成ページのいずれかに関する情報を変更するためには、構成がロックされる必要があります。構成をロックすると、他の管理者が同時にその構成を変更できなくなります。ロックは本番ドメインで自動的に有効化され、開発ドメインで有効化または無効化できます。

変更するには、次の手順を実行します。

  1. 管理コンソールの左上にある「チェンジ・センター」を検出します。

  2. 「ロックして編集」をクリックして、ドメインの編集可能な構成階層をロックします。これにより、管理コンソールを使用して変更できるようになります。

  3. コンソールの関連ページ上で変更する項目を変更し、変更した各ページ上で「保存」をクリックします。

  4. 変更する項目の変更を完了したら、「チェンジ・センター」で「変更のアクティブ化」をクリックします。


注意:

管理コンソールで行った変更の一部は、アクティブ化するとすぐに反映されます。それ以外の変更では、変更によって影響を受けるサーバーまたはモジュールを再起動する必要があります。後者の変更は、動的でない変更と呼ばれます。動的でない変更は、管理コンソールでは「警告」アイコンで示されます。

動的でない構成設定を編集した場合、編集した内容は、サーバーを再起動するまで反映されません。

Oracle WebLogic Server管理コンソールの使用方法の詳細は、『Oracle Fusion Middleware管理者ガイド』を参照してください。


2.3 WLST (JMX)のによるコンテナ・プロパティの構成

WebLogic Scripting Tool (WLST)は、WebLogic ServerまたはOracle WebLogic Server SIP Containerインスタンス上で使用可能なJMX MBeanを監視または変更するために使用できるユーティリティです。WLSTの完全なドキュメントは、『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Scripting Tool』で参照できます。

Oracle WebLogic Server SIP Containerドメインを構成するためにWLSTを使用する前に、環境を設定して必要なOracle WebLogic Server SIP Containerクラスをクラスパスに追加します。MIDDLEWARE_HOME/server/binにあるsetWLSEnv.shスクリプトまたはドメイン環境スクリプトのいずれかを使用してください。ここで、MIDDLEWARE_HOMEは、Oracle WebLogic Server SIP Containerインストールのルートです。

2.3.1 構成ロックの管理

表2-1では、構成のロックおよび変更の適用に使用するWLSTメソッドを示します。

表2-2 MBeanメソッドのサマリー

メソッド 説明

activate

現在の構成のMBean属性(現在のSIPサーブレット・コンテナ構成)をsipserver.xml構成ファイルに書込み、変更を実行中のサーバーに適用します。

cancelEdit

編集ロックをリリースして編集セッションを削除し、保存していない変更をすべて破棄します。管理者権限を持つユーザーであれば、ユーザーが編集セッションを起動していなくてもこの操作を呼び出すことができます。

cd

構成Beanまたは実行時Beanの階層を移動します。

connect

WLSTをWebLogic Serverインスタンスに接続します。

edit

編集セッションを開始します。

save

現在の構成MBeanの属性(現在のSIPサーブレット・コンテナの構成)を一時構成ファイルに書き込みます。

set

現在の構成Beanの指定された属性値を設定します。

stopEdit

SIPコンテナのプロパティを変更するために取得したロックを解放し、一時ファイルをすべて破棄し、MBeanに対する未保存の変更をすべてロールバックします。


次は、T1タイマー間隔を変更するためのコマンドの使用例です。

例2-1 T1タイマー間隔の変更

connect()
edit()
cd('CustomResources/sipserver/Resource/sipserver')
set('T1TimeoutInterval',505)
activate()

2.3.2 Oracle WebLogic Server SIP ContainerのMBeanの検出

すべてのSIPサーブレット・コンテナ構成のMBeanは、WLSTでserverConfig()コマンドを使用してアクセスできる、「serverConfig」MBeanツリーにあります。このBeanツリー内では、各構成MBeanは次のパスを使用してアクセスできます。

CustomResources/sipserver/Resource/sipserver

たとえば、Oracle WebLogic Server SIP ContainerドメインのデフォルトのプロキシMBeanを参照するには、次のWLSTコマンドを入力します。

serverConfig()
cd('CustomResources/sipserver/Resource/sipserver/Proxy')
ls()

ランタイムMBeanは、WLSTのcustom()コマンドを実行してアクセスするカスタムMBeanツリーでアクセスします。ランタイムMBeanは次のパスを使用します。

mydomain:Location=myserver,Name=myserver,Type=mbeantype

プロキシおよび過負荷保護設定などの特定の構成設定は、sipserver.xmlにはデフォルトで定義されます。構成MBeanは、関連サーバーを起動時にこれらの設定用に生成されるため、プロキシおよびOverloadProtection MBeanをすぐに参照できます。その他の構成設定はデフォルトでは構成されないため、関連MBeanにアクセスする前にそれを作成する必要があります。詳細は、2.4.2項「MBeanの作成および削除」を参照してください。

2.4 WLSTの構成

次の項では、SIPサーブレット・コンテナ・プロパティを構成するためのWLSTスクリプトおよびコマンドを説明しています。

2.4.1 WLSTの起動

Oracle WebLogic Server SIP ContainerでWLSTを使用するためには、クラスパスにすべてのOracle WebLogic Server SIP ContainerのJARファイルを含める必要があります。次の手順を実行します。

  1. Oracle WebLogic Server SIP Container環境を設定します。

    cd MIDDLEWARE_HOME/user_projects/domains/mydomain/bin
    ./setDomainEnv.sh
    
  2. WLSTを起動します。

    java weblogic.WLST
    
  3. Oracle WebLogic Server SIP Containerドメインの管理サーバーに接続します。

    connect('system','weblogic','t3://myadminserver:<portnumber>')
    

2.4.2 MBeanの作成および削除

SipServer MBeanは、sipserver.xml構成ファイルのコンテンツ全体を示します。SIPタイマーおよびSIPアプリケーション・セッション・タイムアウトを構成するためのいくつかの属性の他に、SipServerは、プロキシ設定および過負荷保護制御を表すMBeanの作成または削除に役立つヘルパー・メソッドを提供します。SipServerにおける他のヘルパー・メソッドのリストは、表2-1「Oracle WebLogic Server SIP Container構成および監視に使用する各種ページ」を参照してください。Oracle Fusion Middleware Communication Services Java APIリファレンスも参照してください。

2.5 タイマー処理の構成

エンジン層サーバーが新しい呼出し状態データをSIPデータ層に追加すると、SIPデータ層はキューのインスタンスを作成し、各呼出しに関連したSIPプロトコル・タイマーおよびアプリケーション・タイマーの完全なリストを管理します。エンジン層サーバーは、現在の時間に従ってどのタイマーが期限切れになるかを決定するために、SIPデータ層で定期的にパーティションのポーリングを実行します。デフォルトでは、複数のエンジン層からSIPデータ層へのポーリングは、タイマー表上の競合を避けるために時間差を置いて行われます。次に、エンジン層サーバーは、sip.timer.Default実行キューで割り当てられたスレッドを使用して、すべての期限切れのタイマーを処理します。

2.5.1 タイマー・アフィニティの構成(オプション)

デフォルトのタイマー処理メカニズムを使用すると、指定されたエンジン層サーバーが、現在起動時間に達したすべてのタイマーを処理します。この処理は、エンジンがそのようなタイマーに関連した呼出しを処理するかどうかに関係なく行われます。ただし、一部のデプロイメント・シナリオでは、そのタイマーに関連する呼出しを最後に変更したサーバーと同一のエンジン・サーバー上でタイマーが処理される必要があります。このシナリオの一例として、別のエンジンが処理に失敗するまで呼出しデータを処理しないセカンダリ・エンジンを保持するホット・スタンドバイ・システムがあります。Oracle WebLogic Server SIP Containerを使用すると、このようなシナリオでタイマー・アフィニティを構成することができます。

タイマー・アフィニティを有効化すると、レプリカは、各エンジン層サーバーが定期的に処理されたタイマーのSIPデータ層にポーリングを実行するようにリクエストします。SIPデータ層をポーリングするとき、エンジンは、最後にそのエンジンによって変更された呼出しに関連したタイマーか、または所有者がいない呼出しのタイマーのみを処理します。


注意:

エンジン層サーバーが失敗する場合、最後にそのエンジンによって変更されたどんな呼出し状態にも、所有者は存在しません。所有者がいない期限切れのタイマーがSIPデータ層にポーリングを実行する次のエンジン・サーバーによって処理されます。

タイマー・アフィニティを有効化するには:

  1. ドメインの管理コンソールにアクセスします。

  2. (開発環境で有効化されている場合に)「ロックして編集」をクリックして、構成ロックを取得します。

  3. 左ペインで「SipServer」ノードを選択します。コンソールの右ペインには、Oracle WebLogic Server SIP Containerの構成および監視に使用される2つのレベルのタブ・ページがあります。

  4. 右ペインで「構成」>「全般」タブを選択します。

  5. 「タイマー・アフィニティの有効化」を選択します。

  6. 「保存」をクリックし、構成の変更を保存します。

なお、「タイマー・アフィニティの有効化」設定は、sipserver.xmlenable-timer-affinity要素で保持されます。

2.5.2 正確なSIPタイマーのNTPの構成

SIPプロトコル・スタックを正常に機能させるには、エンジン層とSIPデータ層のすべてのサーバーのシステム時計を、共通の時間ソースに1または2ミリ秒以下の精度で正確に同期させる必要があります。システム時計の時刻に大きな差があると、次のような重大な問題が発生する原因となります。

  • 時計の設定が進められたサーバー上で早期に起動するSIPタイマー。

  • エンジン層におけるタイマー処理の不適切な分散。たとえば、1つのエンジン層サーバーがすべての期限切れタイマーを処理しますが、一方で他のエンジン層サーバーはタイマーを処理しません。

各Oracle WebLogic Server SIP Containerインスタンスでネットワーク・タイム・プロトコル(NTP)クライアントまたはデーモンを使用し、共通NTPサーバーに同期することをお薦めします。


注意:

SIPプロトコル・スタックを正常に機能させるには、サーバーのシステム時計を共通の時間ソースに正確に(1または2ミリ秒以下の精度で)同期させる必要があります。T1タイマーの初期値として設定される500ミリ秒の値は、INVITEリクエストおよびレスポンスの再送信間隔の制御や、その他のタイマーの初期値の設定に使用されるので、システム時計の設定に少しでもずれがあると、SIPプロトコルが適切に動作しなくなるおそれがあります。たとえば、エンジン層の1つのサーバーのシステム時計の時刻が他のサーバーの時計より250ミリ秒進んでいると、そのサーバーが処理する期限切れタイマーの割合が他のエンジン層サーバーに比べて高くなり、割り当てられている間隔の半分の時間が経過した時点で再送信が開始されるようになります。また、メッセージのタイムアウトが本来より早い時点で強制的に発生するおそれもあります。