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Oracle® Fusion Middleware Oracle Event Processingスタート・ガイド
11g リリース1 (11.1.1.7)
B61656-06
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1 Oracle Event Processingの概要

この章では、Oracle Event Processingの概要について説明します。ここではイベント処理ネットワーク、Eclipse IDEによる開発、Oracle Event Processing Visualizerによるアプリケーション管理を含む、主要概念、機能およびユース・ケースについて説明します。

この章の内容は以下のとおりです。

1.1 Oracle Event Processingの紹介

Oracle Event Processingは、イベントを表す大量のストリーム・データを受信でき、イベント・データの内容に応じて実行時にレスポンスを返すことができるアプリケーションの作成に使用されるミドルウェアです。Oracle Event Processingアプリケーションは、環境状態などのセンサー、ソーシャル・メディア、ファイナンシャル・フィード、自動車やモバイル・デバイスなどの移動するソースを含む、遠近を問わないソースからイベント・データを受信できます。

Oracle Event Processingアプリケーションのロジックの一部は、Oracle Continuous Query Language (Oracle CQL)問合せとして実装されており、データが受信された時点で実行時にデータの内容を確認し、データをフィルタしたり、データのパターンを監視したりします。Javaコードで実装したその他のロジックは、データの調査結果に応じて他のプロセスを起動したり、データを他の該当するコンポーネントに送信したりします。ユーザー・インタフェースでデータを表示するために、ツールにデータを報告することもこれに含まれます。

Oracle Event Processingアプリケーションは、リレーショナル・データベース、Hadoop、NoSQL、JMS (Java Message Service)システムなどのようなビッグ・データ・ソース、キャッシュなど外部コンポーネントやリソースと結合することにより、イベント・データを他の種類のデータと連携できるようになります。そうすることにより、これらのアプリケーションは現行のストリーム・データを、既存の比較的静的なシステムと統合します。

ソースの増え続けるリストによる膨大な量のデータ

Oracle Event Processingを利用することにより、世界中で増え続けるイベント・データを活用できるようになります。イベント・ドリブン・アプリケーションは、インターネットのような公共のネットワークをはじめ、個人ネットワークや企業内ネットワーク上の増え続けるイベント・ソースや膨大な量のイベント・データを活用できます。

たとえば、イベントのソースには次のものがあります。

これらの例で挙げたイベントはいずれも、膨大な量のストリーミング・データを意味する可能性があります。データを活用するため、アプリケーションは、不要なデータを取り除き、企業の利益のため、またはビジネス上の脅威を取り除くために使用できる関心のパターンを特定する能力を持つ必要があります。多くの場合、イベントを最大限に活用するというのは、特定のパターンに応じてアプリケーションのロジックをリアルタイムで実行できることを意味します。

このように膨大な量のデータが迅速に移動する状況では、処理のスケールを確保するため、非同期型の処理モデル・イベントが必要となります。Oracle Event Processingは、大量のデータが想定され、迅速なレスポンスが要求されるアプリケーション・コンテキストにおいて、きわめて低いレイテンシと高いスループットをサポートできるように設計されています。

1.1.1 Oracle Event Processingの高度なユース・ケース

この項のユース・ケースでは、Oracle Event Processingアプリケーションに固有の用途を説明します。

ファイナンシャル: 即応的なカスタマ・リレーションシップ

顧客と関係の強化を目的としたイニシアチブの一環として、あるリテール銀行は、個々の顧客の購入パターンと位置情報に応じたクーポンを発行する企画を立てました。

銀行は、顧客がATMを一番よく使う地域の情報を含む、ATMのデータを収集しました。銀行は、また、クレジット・カード取引の情報を取得しました。このデータを使用すれば、銀行は、顧客がどこにいて何を買う可能性が高いかという情報に基づき、購入インセンティブ(クーポンなど)をリアルタイムで顧客に送付できます。

Oracle Event Processingアプリケーションは、ATMやクレジット・カードの取引という形でイベント・データを受信します。受信されたイベントはOracle CQL問合せによってフィルタされ、顧客の(GPS座標による)位置情報と、購入について関心が高いと予測されるものを特定するパターンが検索されます。この一時データが、銀行で保存されている顧客のプロファイル・データと照合されます。一致するものが見つかると、購入インセンティブがモバイル・デバイスなどを介して顧客にリアルタイムで送信されます。

電話通信: リアルタイム請求

モバイル・データ使用の著しい増加に伴い、広い携帯電話顧客基盤を抱える電話通信会社が、その課金モデルを定額モデルからリアルタイムでの使用量に応じた利用回数制課金モデルへ変えようとしています。

この会社はモバイル・デバイスに割り当てられたIPアドレスを追跡し、これを保存されたユーザー・アカウント・データと関連付けています。また、DPI (Deep Packet Inspection)デバイス(データ・プランの使用状況を細かく把握するため)や、IPサーバーからも追加情報が収集され、Hadoopベースのビッグ・データ・ウェアハウスに格納されます。

Oracle Event Processingアプリケーションでは、使用状況に関するデータがイベント・データとしてリアルタイムで受信されます。Oracle CQL問合せの発行と、一時使用状況データと保存されている顧客アカウント・データとの関連付けにより、アプリケーション側で請求要件が決定されます。

エネルギー: ビッグ・データの分析による効率改善

データ管理デバイスおよびサービスを提供するある企業は、総所有コストを削減するため、データ・センターのコーディネーションとエネルギー管理を改善する必要があります。この企業にとって必要なのは、より詳細なセンサーおよびデータ・センターのレポートです。

この企業は現在、異種リソースからエネルギー使用状況に関するセンサー・データを受信しています。各センサーからのデータを個別に分析し、その妥当性を確認した上で、他のセンサーからのデータと集約し、エネルギーをより効率的に使用できるパターンを特定する必要があります。

個別にデプロイされるOracle Event Processingアプリケーションは、2層のアプローチを提供します。あるアプリケーションは、数千のデータ・センターの1つ1つにデプロイされており、イベント・データとしてセンサー・データを受信します。このアプリケーションは、センサー・データを表すイベントに対して問合せを行い、そのセンターのローカルな使用状況を分析し、障害や問題のあるイベントをフィルタリングし、必要に応じてアラートを送信します。別のアプリケーションは複数の一元管理サイトにデプロイされており、下層のアプリケーションからイベント・データを受信します。このアプリケーションはシステム全体からのデータを集約し、整合性に関する問題を特定し、パターンについてのレポートに使用するデータを生成します。

1.2 Oracle Event Processingアプリケーションおよび開発フレームワーク

Oracle Event Processingフレームワークを理解する上で、その主要概念、開発アーティファクトおよびプロセス、そして構成テクノロジを理解する必要があります。

ここでは、アプリケーションの働きを理解する上で把握しておく必要がある概念について説明します。

1.2.1 Oracle Event Processingにおける主要概念

この項で説明する概念は、Oracle Event Processingのベースとなっているイベントドリブン・モデルに特有の考え方に対応しています。このモデルに慣れていない場合、これらの主要概念を知ることが、Oracle Event Processingに特有の技術的側面が理解する基礎を身につけるのに役立ちます。

イベント・データ

イベント・データとは、EPNの外部にあるコンポーネントに対して送受信されるデータのことです。通常、イベント・データは、Oracle Event Processingが通信する外部のコンポーネントが認識できる形式になっています。たとえば、センサー機器から送信されるデータは、ほとんどの場合、その機器に固有の形式をとります。

イベント・データは、要素のタプルや順序付きリストで構成されます。たとえば、次のタプルを使用してオラクル社の50株が、1株当たり30.86で取引されていることを表すことができます:

{orcl,30.86,50}

イベント・データのタプルは、データベースの行に似たものと考えることができます。データには、データを一貫した形として定義するスキーマ - ここでは、{string型の記号、double型の価格、integer型のボリューム} - があります。

イベント・タイプ

イベント・タイプは、EPN内でのイベント・データを表す構造体を提供します。構造体によって、アプリケーションで受信されたイベント・データが標準化されます。イベント・タイプの作成方法として、イベント・データのタプル内の要素に対応するプロパティを持つJavaBeanを作成する方法をお薦めします。

EPNで受信されたイベント・データは、それを表すために開発されたイベント・タイプのインスタンスとバインドされます。イベント・タイプ・インスタンス(通常は単に「イベント」と呼ばれます)は、EPNの各ステージにおいてコードからイベント・データにアクセスするための、予測可能で標準化された手段を開発者に提供します。

ステージ

EPN内で連結されたステージは、EPNを通して渡されるイベントに対して各種のコードを実行する手段を提供します。ステージの種類には、アダプタ、プロセッサ、そしてBeanなどがあります。

たとえば、アダプタはイベント・データを受信し、それをイベント・タイプのインスタンスとバインドしてからプロセッサに渡します。プロセッサのContinuous Query Language (CQL)コードは、(SQLコードがデータベースの行を問い合せるのと同じように)イベントを問い合せて、EPNを通して流れるデータの中で特定のパターンを探すことができます。パターンの条件に一致したイベントがJavaで記述されたBeanに渡され、Beanの中でそのデータを外部ソースから取得したデータとともに計算することができます。さらに別のBeanでは、計算の結果をもとに、外部コンポーネントを使用してプロセスを実行します。

イベント・ソースとイベント・シンク

EPNでイベントを送受信できるように設計されたコンポーネント(EPNステージなど)は、その目的のため特別に実装する必要があります。イベントを受信できるコンポーネントはイベント・シンクと呼ばれ、イベントを送信するコンポーネントはイベント・ソースと呼ばれます。通常、単一のコンポーネントがその両方になります。

アダプタやCQLプロセッサの基になるコンポーネントなど、Oracle Event Processingに含まれるステージ・コンポーネントのセットは、必要な機能をすでにサポートしています。開発者は、OEP APIからのインタフェースを実装することにより、Bean、新しいアダプタ、その他のコードに対して、イベント・シンクとイベント・ソースのサポートを追加できます。

ストリームとリレーション

ストリームとリレーションは、Oracle Event Processingアプリケーション特有の概念です。そのため、他のアプリケーションの概念よりも難解に思われる可能性があります。しかし、それらは、問合せの結果としてイベントの状態に生じる変化を説明するために重要です。

イベントのストリームは、時系列に沿って次々に発生します。イベントは本質的に時間に基づくものであり、ストリームはその意味でイベントの自然な状態です。このようにしてイベント・データはOracle Event Processingアプリケーションに受信されます。

リレーションは、言うなれば、関連するイベントのバケットです。リレーションは、多くのCQL問合せによって生み出される結果です。したがって、リレーションは、データベース問合せの結果に似たものと考えることができます。リレーション内のイベントは、問合せで使用されるような何らかの条件によって関連付けられています。それらには順序はありません。

1.2.2 イベント処理ネットワークの概要

イベント処理ネットワーク(EPN)は、各Oracle Event Processingアプリケーションの中核です。各イベントはアプリケーションからアプリケーションへと流れ、アプリケーションは受信したイベントを処理します。

Oracle Event Processingでイベントを処理するには、EPNを中核とするアプリケーションを開発する必要があります。EPNは複数のステージから構成されており、各ステージはイベントの処理において、データの受信に始まり、データの問合せを経て、イベントに関して発見されたものに基づいてロジックを実行するまで、それぞれ異なる役割を果たします。アプリケーションは生のイベント・データを受信し、そのデータをイベント・タイプにバインドし、次に、イベントをステージからステージへと導いて処理します。

イベント処理ネットワークを利用することで、別々に開発されたコンポーネントを連携して正常に機能させることができるようになります。たとえば、ユーザー・コードを追加して、ネットワーク内の複数の場所で外部サービスを参照することができます。

図1-1 Oracle Event Processingアプリケーション

図1-1の説明が続きます
「図1-1 Oracle Event Processingアプリケーション」の説明

開発者はステージを順番に組み立ててEPNを構築します。そうすることにより、イベントをフィルタしたり、分析できるようになります。また、イベントにリアルタイムで応答することも可能になります。順番の中の各イベントはそれぞれ独自のロジックがあり、そのロジックを使用してイベントをフィルタしたり、イベント・データに応答したりします。

Oracle Event Processingでは、次のステージがサポートされています。

  • アダプタは、EPNがネットワークの外部にあるコンポーネントとデータをやりとりするための手段を提供します。アダプタは、通信相手のコンポーネント用のインバウンドおよびアウトバウンドのプロトコルを理解します。また、イベント・タイプによって表される標準化形式にイベント・データを変換します。Oracle Event Processingには、CSVファイルとしてデータを交換するアダプタ(テストおよびデバッグ用)のほか、Java Message Service (JMS)や、組み込みのHTTPパブリッシュ/サブスクライブ・サーバーとのアダプタが含まれています。開発者は、Oracle Event Processing APIを使用して独自のアダプタを作成することもできます。

  • プロセッサは、Continuous Query Language (CQL)で記述された問合せコードを含み、ネットワークで先行するチャネルからの標準化したイベント・データを消費します。また、その役割の一部として、プロセッサは出力チャネルに新しいイベントを生成することもあります。CQLは、データベース問合せ言語であるSQLの拡張です。CQLにはストリーミング・データを問い合せるために特別に設計された機能が含まれており、イベントのきめ細かな問合せに特に役に立ちます。CQL開発者は、プロセッサの中に複数の問合せブロックを記述し、あるブロックの実行結果に対して他のブロックを実行することができます。

  • Beanステージは、Javaで記述されたロジックのための場所を提供します。Beanの中のJavaコードはOracle Event Processing APIインタフェースを実装し、このインタフェースを通してコードはイベントを受信したり(イベント・シンク)、送信したり(イベント・ソース)またはその両方を行うことができます。開発者は、標準のBeanモデルまたはOEP固有の機能をサポートするOEPイベントBeanモデルをもとに、Beanを実装できます。Spring Beanモデルに対するサポートは、EPNで既存のSpring Beanコードを流用できる場合に特に役立ちます。

  • チャネルはいくつかの種類のステージを連結し、また、チャネルに含まれている構成オプションを使用してパフォーマンスを調整したり、向上させたりできます。たとえば、チャネルは、プロセッサ・エージェントがイベント・データを処理するまでそれをキューに待機させることができます。

次のEPNトポロジの簡単な例では、特定の目的を達成するためのステージの組合せについて説明します。

  • アダプタ -> チャネル -> Bean

    シナリオ: イベントをOracle CQL問合せで処理する必要はありません。受信したイベントを専用プロトコルから標準化されたモデルに適応させる以外には、処理が不要です。

  • アダプタ -> チャネル -> プロセッサ -> チャネル -> Bean

    シナリオ: イベントを単一のOracle CQLステージで処理してから、イベントに対してJavaで記述したロジックを実行する必要があります。たとえば、プロセッサは、Beanの中のロジックによってとられたアクションに関連するイベントのみをフィルタする可能性があります。

  • アダプタ -> チャネル -> プロセッサ -> チャネル -> Bean -> チャネル -> プロセッサ -> チャネル -> Bean

    シナリオ: イベントは2層のイベント処理を通過します。各層には、独自のOracle CQL問合せコードがあります。最初のプロセッサはイベント間の因果関係を作成し、2番目のプロセッサはイベントを集約してBeanで実装しているロジックにとって重要なイベントとともに渡します。

1.2.3 Oracle Event Processingアプリケーションの開発プロセスとライフサイクル

Oracle Event Processingを使用したイベント・ドリブン・アプリケーションの開発は、JEEアプリケーション用のモデルのようなより一般的なモデルを使用したアプリケーション開発と多くの点で似ています。ただし、時系列のストリーミング・データを扱うなど、イベント・ドリブン・アプリケーション固有のニーズに応じたツールやプロセスが必要になります。

次の項では、特にOracle Processingアプリケーションを中心としたアプリケーション開発ライフサイクルについて説明します。

ここで説明する各開発ステージは、Oracle Event Processingサーバーをすでにインストールし、構成していることを前提とします。このステップではサーバーをはじめ、クラスタリング、セキュリティ、ネットワークI/O、JMX (Java Management Extensions)、JDBC、HTTP Pub/Subサーバーおよびロギングといったサポート機能もインストールします。

サーバーをインストールした後、次のステージで開発と管理作業を実施します。

  1. 統合開発環境(IDE)を使用してアプリケーションの設計と開発を行います。

  2. 組み込みのコマンドラインまたはブラウザ・ベースのツールを使用してアプリケーションをデプロイします。

  3. 構成アーティファクトを直接編集するか、組み込みのブラウザ・ベースのツールを使用してアプリケーションを構成します。

  4. イベント処理ネットワーク内の特定のステージにおいて、データを注入およびトレースすることにより、アプリケーションをテストします。

  5. チャネル、クラスタ・ノード、キャッシュなどのアプリケーションの様相を監視します。

次は、ライフサイクルの各フェーズをさらに詳しく説明します。

設計と開発

アプリケーションの目的を把握したうえで、開発者はアプリケーションが取り扱うイベントのスキーマを定義します。アプリケーションの中で使用するイベント・スキーマは、監視デバイスなどのような外部のコンポーネントから受信したイベント・データに基づきます。ある特定の要素しか必要としないこともあるため、多くの場合、スキーマでのイベント・プロパティは受信したデータのサブセットになります。アプリケーションの設計者は、また、アプリケーションが通信する外部コンポーネントを考慮して、外部コンポーネントと通信するためにイベント・データと組み合せて必要になる識別データを格納するキャッシュなどを定義します。

アプリケーション開発の過程では、開発者はネットワークの各ステージを選択し、それらを構成しながらイベント処理ネットワークを構築します。また、プロセッサのCQLコードやBeanのJavaコードなど、特定のステージのロジックを記述することもあります。

たとえば、CQL開発者は、ある特定のパターンの一部であるイベント(たとえば、10分間で温度が急激に上昇する)を特定できるように設計されたプロセッサ・ステージに問合せコードを追加できます。また、イベントBeanステージとして追加したJavaBeanの中で、あるパターンの中のイベントの内容に応じてアクションをとる(たとえば、温度が上昇している場所を特定するイベント・プロパティ値を使用してアラートを発信する)ロジックをJavaで記述することができます。

このすべてを、Oracle Event Processingアプリケーションの開発に特化した設計ツールを提供する統合開発環境(IDE)を使用することで簡単に実施できます。Oracle Event Processingの現在のリリースでは、これらのツールとEclipseのプラグインが提供されています。IDEを使用することで、アプリケーションをテスト用と本番用にデプロイする直前まで反復的にプログラミング、デプロイ、そしてデバッグすることができます。

デプロイ

Oracle Event Processingアプリケーションは、スタンドアロン・ドメインとマルチ・サーバー・ドメインへのデプロイメントをサポートしています。次の2つの方法のいずれかでアプリケーションをテスト用と本番用にデプロイすることができます: Deployerコマンドライン・ユーティリティとOracle Event Processing Visualizer。(開発中のアプリケーションをデプロイするためにIDEを使用するのは一般的なことです。)

Deployerはコマンドライン・ユーティリティで、HTTP経由でOEPサーバーに接続し、指定したアプリケーションをデプロイします。Deployerユーティリティは、一時停止、再開、アンインストールといった操作のためにも使用できます。

Oracle Event Processing Visualizerはブラウザ・ベースのツールで、OEPサーバーやアプリケーションの管理に使用します。このツールを使用することで、サーバーとその上で実行されるアプリケーションを簡単にデプロイしたり、実行時に構成したりできます。

構成

Oracle Event Processingでは、調整用に複数の層にわたる構成機能が提供されています。Oracle Event Processingでは、サーバー自体を構成するための完全な構成オプションのほかに、イベント処理ネットワークのステージやアプリケーションの特性を構成するための構成オプションも提供されています。特に、Oracle CQL問合せは実行時の構成が可能です。

これらの構成オプションの多くを利用することで、サーバーやアプリケーションを調整し、高パフォーマンスと高可用性を確保できます。

テスト

Oracle Event Processing Visualizerを使用して、サーバーやアプリケーションの管理ができるほか、イベントをトレースおよび注入してアプリケーションをテストすることができます。イベント・トレーシングを行うと、EPNを流れるイベントに対してメッセージが表示されます。イベントの注入では、特定のEPNステージにイベントを注入し、そのステージの特定のプロパティを持つイベントを処理する能力を確認できます。

監視

Oracle Event Processing Visualizerおよびプログラミングしたリソースを使用することで、本番においてアプリケーションの様々な側面を監視できます。たとえば、Oracle Event Processing Visualizerでは、イベントのスループットとレイテンシを監視できます。また、Coherenceクラスタ・ノードとキャッシュ処理も監視できます。

1.2.4 Oracle Event Processingで使用するテクノロジ

Oracle Event Processingプラットフォームは標準のテクノロジから構成されており、これらのテクノロジを使用してアプリケーションのロジックを開発したり、アプリケーションをデプロイおよび構成したりできます。

  • Java

    Oracle Event Processingサーバーの機能のほとんどはJava言語でプログラミングされています。OEPアプリケーションを構成するコンポーネントは、Java言語で開発します。たとえば、イベントBeanやSpring Beanがあります。

  • Spring

    Springは、Javaを使用して簡単にエンタープライズ・アプリケーションを開発できるように設計されたテクノロジの集合体です。Oracle Event Processingでは、Spring構成モデルは広く使用されています。開発者は、アプリケーションの各部分を連結して構成するためにこのモデルを使用します。OEPアプリケーションでは、Springフレームワーク機能をサポートするJavaコンポーネントであるSpring Beanとして、ロジックを記述できます。

    Springに関する詳細は、プロジェクトのWebサイト(http://www.springsource.org/get-started)を参照してください。

  • OSGi

    OSGi (旧Open Services Gateway initiative)はモジュール・システムであり、このシステムによりOracle Event Processingアプリケーションのコンポーネントがデプロイメントにおいて組み立てられます。OSGiのコンポーネント・ガイドラインに従って、OEPアプリケーションではモジュール式のアセンブリ・モデルがサポートされています。このモデルを使用することで、アプリケーションの管理が簡単になります。

    OSGiの詳細は、Wikipedia (http://en.wikipedia.org/wiki/OSGi)を参照してください。

  • XML

    他の多くのエンタープライズ・アプリケーションと同じように、Oracle Event Processingアプリケーションの構成ファイルもXML形式で記述されています。これらのファイルには、EPNステージ間のリレーションのほか、設計時構成の定義が記述されているEPNアセンブリ・ファイルが含まれています。また、個別の設定XMLファイルもあり、このファイルの中の構成設定(Oracle CQL問合せを含む)をアプリケーションをデプロイした後でも編集できます。

  • SQL

    Structured Query Language (SQL)はOracle Continuous Query Language (Oracle CQL)のベースとなっています。Oracle CQLはSQLを拡張したものであり、ストリーミング・データを扱うアプリケーションのニーズに応じて設計された機能を提供します。

  • Hadoop

    Oracle CQL開発者は、問合せコードから「ビッグ・データ」Hadoopのデータ・ソースにアクセスできます。Hadoopはオープンソース・テクノロジであり、これを使用してクラスタにまたがって分散された膨大なデータ・セットにアクセスできます。Hadoopソフトウェアの特徴の1つに、リレーショナル・データベースに保存されていない膨大な量のデータへのアクセスを可能にするということが挙げられます。

    Hadoopに関する詳細は、HadoopプロジェクトのWebサイト(http://hadoop.apache.org/)を参照してください。

  • NoSQL

    Oracle CQL開発者は、問合せコードから「ビッグ・データ」NoSQLのデータ・ソースにアクセスできます。Oracle NoSQLデータベースは、分散型のキー値データベースです。このデータベースでは、データはキー値ペアで格納されており、これらのペアは特定のストレージ・ノードに記述されています。高可用性、ノード障害時のラピッド・フェイルオーバー、問合せの最適なロード・バランシングを確保するために、ノードはレプリケートされます。

    Oracle NoSQLに関する詳細は、http://www.oracle.com/technetwork/products/nosqldb/のOracle Technology Networkページを参照してください。

1.3 開発と管理ツール

Oracle Event Processingで提供されるツールを使用して、Oracle Event Processingサーバーとアプリケーションを簡単に開発および管理できます。

Oracle Event Processing IDE for Eclipse

Eclipseの統合開発環境(IDE)を使用するために必要なプラグインもOracle Event Processingに含まれています。Oracle Event Processing IDE for Eclipseには、Oracle Event Processingアプリケーションの開発を容易にするために特別に設計された機能が含まれています。図1-2では、イベント処理ネットワーク(EPN)を設計するために使うIDEのエディタ・ビューを示しています。

図1-2 Oracle Event Processing IDE for Eclipse

図1-2の説明が続きます
「図1-2 Oracle Event Processing IDE for Eclipse」の説明

Oracle Event Processing IDE for Eclipseは、Oracle Event Processingのアプリケーションを開発、デプロイおよびデバッグできるように設計されているEclipse IDE用のプラグインのセットです。

Oracle Event Processing IDE for Eclipseの主な機能は、次のとおりです。

詳細については、次を参照してください:

Oracle Event Processing Visualizer

Oracle Event Processingでは、Oracle Event Processing Visualizerという管理コンソールが提供されています。このツールでは、実行時に使用できるサーバーとアプリケーションの構成オプションへのアクセスを提供します。Oracle CQL問合せを編集したり、イベントを注入してアプリケーションをテストしたりできます。

図1-3は、Oracle Event Processing Visualizerの中のOracle CQL設計者用ユーザー・インタフェースを示しています。

図1-3 Oracle Event Processing Visualizer

図1-3の説明が続きます
「図1-3 Oracle Event Processing Visualizer」の説明

Oracle Event Processing Visualizerを使用することで、1つのブラウザからOracle Event Processingサーバー・ドメインとそのドメインにデプロイするOracle Event Processingアプリケーションを管理、調整および監視できます。Oracle Event Processing Visualizerは、Oracle CQLおよびEPLルールの管理および作成のサポートなどを含む、様々な高機能の実行時管理ツールを提供います。

Oracle Event Processing VisualizerはOracle Event Processingサーバーにあらかじめインストールされています。

詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Event Processing Visualizerユーザーズ・ガイド』を参照してください。

1.4 このリリースに含まれているドキュメント

Oracle Event Processingには、次のドキュメントが含まれています。

Oracle Fusion Middleware Oracle Event Processingスタート・ガイド

これは、Oracle Event Processingを紹介するガイドです。このガイドでは、それがどこで役立つか、およびそのフレームワークが何で構成されているかについて説明します。

Oracle Fusion Middleware Oracle Event Processing管理者ガイド

Oracle Event Processingアプリケーションをデプロイおよび管理するときにこのガイドを参照してください。単一サーバー・ドメインとマルチサーバー・ドメインでOracle Event Processingを管理するときのガイドラインが記載されています。また、セキュリティ、Jetty、JDBCなど、インストールのコンポーネントを構成する方法もこのガイドに記載されています。

Oracle Fusion Middleware Oracle Event Processing for Eclipse開発者ガイド

このガイドでは、Oracle Event Processingアプリケーションの開発手順を説明しています。このガイドは、主要概念について技術的により細かい情報を提供します。典型的なアプリケーションの部分と、それらを組み立てる方法も説明します。

Oracle Fusion Middleware Oracle Event Processing Visualizerユーザーズ・ガイド

ブラウザ・ベースのOracle Event Processing Visualizerを使用してOracle Event Processingサーバーおよびそれにデプロイしたアプリケーションを管理および構成するときに、このガイドを参照してください。

Oracle Fusion Middleware Oracle Event Processing CQL言語リファレンス

Oracle CQL言語の説明および構文を把握するためにこのリファレンスを参照してください。Oracle CQLはStructured Query Language (SQL)を拡張したものであり、ストリーミング・データを問合せるという特別のニーズに対応するものです。

Oracle Fusion Middleware Oracle Event Processing EPL言語リファレンス

このリファレンスは、非推奨になったOracle Event Processing Language (EPL)について記載したものです。新しい開発では、かわりにOracle Continuous Query Languageを使用する必要があります。この言語のサポートと関連ドキュメントは、将来ののリリースでは削除されます。

1.5 サポート対象のプラットフォーム

Oracle Event Processingでサポートされるプラットフォームの詳細は、http://www.oracle.com/technetwork/middleware/ias/downloads/fusion-certification-100350.htmlを参照してください。

ご使用のプラットフォームに適したインストール・プログラムをこちらからダウンロードできます。

http://www.oracle.com/technetwork/middleware/complex-event-processing/downloads/index.html.詳細は、2.1項「インストールの概要」を参照してください。

1.6 次のステップ