この付録では、統合キャプチャ・モードのExtractをサポートするようダウンストリームOracleマイニング・データベースを準備する手順について説明します。
この付録の内容は次のとおりです。
これらの手順で使用されるパラメータの詳細は、『Oracle Databaseリファレンス』および『Oracle Data Guard概要および管理』を参照してください。
統合キャプチャの詳細は、5.2項「使用するキャプチャ方法の決定」を参照してください。
ダウンストリーム・マイニング構成の例は、付録C「ダウンストリーム・マイニング構成の例」を参照してください。
ダウンストリーム・デプロイによってソース・データベースの負荷を軽減できます。ソース・データベースはREDOログをダウンストリーム・データベースに送り、Extractはダウンストリーム・データベースでログマイニング・サーバーを使用してREDOログをマイニングします。ダウンストリーム・マイニング・データベースでは、アーカイブ・ログとオンラインREDOログの両方をソース・データベースから受け入れることができます。
複数のソース・データベースのREDOデータを1つのダウンストリーム・データベースに送信できます。ただし、ダウンストリーム・マイニング・データベースは、それらのソース・データベースの1つからのみオンラインREDOログを受け入れることができます。残りのソース・データベースはアーカイブ・ログを送る必要があります。
オンライン・ログがダウンストリーム・データベースに送られると、Extractによるリアルタイム・キャプチャが可能です。Extractでソース・ログからの読取りと同様に変更がキャプチャされます。オンラインREDOログをソース・データベースから受け入れるには、ダウンストリーム・マイニング・データベースにスタンバイREDOログが構成されている必要があります。
ダウンストリーム・マイニング構成を使用する場合、ソース・データベースとマイニング・データベースは同じプラットフォームのものである必要があります。たとえば、ソース・データベースがLinux 64ビットで稼働している場合、ダウンストリーム・データベースのプラットフォームもLinux 64ビットである必要があります。
この項では、次のプロセスについて説明します。
ソース・データベースにExtractユーザーが必要です。Extractではこのユーザーの資格証明を使用してメタデータ問合せを行い、必要に応じてソース・データベースから列値をフェッチします。ソース・ユーザーはUSERIDALIASパラメータによって指定されます。
必要な権限を割り当てるには、第4章「Oracle GoldenGate資格証明の確立」の手順に従います。
次の手順を実行して、ソース・データベースからダウンストリーム・マイニング・データベースへのREDOログ・ファイルの転送を設定し、ダウンストリーム・マイニング・データベースでこれらのREDOログ・ファイルを受け入れる準備をします。
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注意: ソース・データベースから送られたアーカイブ・ログは、外部アーカイブ・ログと呼ばれます。外部アーカイブ・ログの格納にダウンストリーム・マイニング・データベースのリカバリ領域を使用することはできません。そのような構成は、統合キャプチャでサポートされません。 |
これらの手順では、必要に応じて複数のソースからREDOを転送するための要件が考慮されています。ソースごとにExtractプロセスを構成します。複数のソースから1つのダウンストリーム・マイニング・データベースへのREDOの送信をサポートするためのルールを次に要約します。
オンラインREDOログをダウンストリーム・マイニング・データベースのスタンバイREDOログに送信するよう構成できるのは、1つのソース・データベースのみです。このソース・データベースのlog_archive_dest_n設定にTEMPLATE句を含めることはできません。
オンラインREDOログをダウンストリーム・マイニング・データベースのスタンバイREDOログに送信しないソース・データベースには、log_archive_dest_nパラメータにTEMPLATE句を指定する必要があります。
REDOをダウンストリーム・マイニング・データベースに送信する各ソース・データベースは一意のDBIDを持つ必要があります。これらのソース・データベースのv$databaseビューからDBID列を選択し、DBIDが一意であることを確認します。
REDO転送を構成する手順
各ソース・データベースがマイニング・データベースと通信できるようOracle Netを構成します。手順は、『Oracle Database Net Services管理者ガイド』を参照してください。
REDOデータの転送をサポートするよう、各ソース・データベースとダウンストリーム・マイニング・データベースで認証を構成します。REDO転送セッションは、Secure Sockets Layer(SSL)プロトコルまたはリモート・ログイン・パスワード・ファイルを使用して認証されます。ソース・データベースにリモート・ログイン・パスワード・ファイルがある場合、マイニング・データベース・システムの適切なディレクトリにコピーします。パスワード・ファイルは、すべてのソース・データベースとマイニング・データベースで同じである必要があります。REDO転送の認証要件については、『Oracle Data Guard概要および管理』のスタンバイ・データベースの作成用のプライマリ・データベースの準備に関する項を参照してください。
各ソース・データベースで、REDOデータをダウンストリーム・マイニング・データベースに転送するためにLOG_ARCHIVE_DEST_n初期化パラメータを1つ構成します。リアルタイム・キャプチャ・モードを使用するか、アーカイブログのみキャプチャ・モードを使用するかに応じて、次の例のいずれかのようにこのパラメータの属性を設定します。
ソース・データベースがオンラインREDOログをダウンストリーム・データベースに送信する場合のダウンストリーム・マイニング・サーバーでのリアルタイム・キャプチャの例:
ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_DEST_2='SERVICE=DBMSCAP.EXAMPLE.COM ASYNC NOREGISTER VALID_FOR=(ONLINE_LOGFILES,PRIMARY_ROLE)DB_UNIQUE_NAME=dbmscap'
ダウンストリーム・ログマイニング・サーバーでのアーカイブログのみキャプチャの例:
ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_DEST_2='SERVICE=DMBSCAP.EXAMPLE.COM ASYNC NOREGISTER VALID_FOR=(ONLINE_LOGFILES,PRIMARY_ROLE) TEMPLATE=/usr/oracle/log_for_dbms1/dbms1_arch_%t_%s_%r.log DB_UNIQUE_NAME=dbmscap'
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注意: アーカイブ・ログのみのダウンストリーム・マイニング・データベースを使用する場合、TEMPLATE属性の値を指定する必要があります。ソース・データベースでTEMPLATE句を使用して、すべてのリモート・ソース・データベースのログ・ファイルが、ローカル・データベース・ログ・ファイルと分けて保管され、ログ・ファイル同士が分けて保管されるようにすることをお薦めします。 |
ソース・データベースで、次の例に示すように、ダウンストリーム・マイニング・データベースの宛先に相当するLOG_ARCHIVE_DEST_nパラメータに対応するLOG_ARCHIVE_DEST_STATE_n初期化パラメータに値ENABLEを設定します。
ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_DEST_STATE_2=ENABLE
ソース・データベースとダウンストリーム・マイニング・データベースで、次の例に示すように、ソース・データベースとダウンストリーム・データベースのDB_UNIQUE_NAMEを含むようLOG_ARCHIVE_CONFIG初期化パラメータのDG_CONFIG属性を設定します。
ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_CONFIG='DG_CONFIG=(dbms1,dbmscap)'
次の項で、ダウンストリーム・マイニング・データベースを準備する方法について説明します。
ダウンストリーム・マイニング構成を使用する場合、ダウンストリーム・データベースにExtractマイニング・ユーザーが必要です。マイニングExtractプロセスはこのユーザーの資格証明を使用して、ダウンストリーム・ログマイニング・サーバーと対話します。ダウンストリーム・マイニング・ユーザーは、MININGUSERALIASオプションを使用したTRANLOGOPTIONSパラメータで指定します。ご使用のデータベース・バージョン用の正しい資格証明を割り当てるには、第4章「Oracle GoldenGate資格証明の確立」を参照してください。
この手順では、REDOデータをオンラインREDOログにアーカイブするようダウンストリーム・マイニング・データベースを構成します。これらは、ダウンストリーム・マイニング・データベースで生成されるREDOログです。
Extractをリアルタイム統合キャプチャ・モードで実行する場合、ダウンストリーム・マイニング・データベースでアーカイブを有効にする必要がありますが、これはアーカイブ・ログのみキャプチャの場合も推奨されます。統合キャプチャ・モードのExtractはデータベースの状態情報を書き込みます。ダウンストリーム・マイニング・データベースでディスクの障害や破損があった場合、アーカイブと通常のバックアップによって、この状態情報をリカバリできます。
ローカルREDOログ・ファイルをアーカイブする手順
ダウンストリーム・マイニング・データベースをアーカイブ・ログ・モードに変更します。これは、次のDDLコマンドを発行して行います。
STARTUP MOUNT; ALTER DATABASE ARCHIVELOG; ALTER DATABASE OPEN;
ダウンストリーム・マイニング・データベースで、次の例に示すように、1つ目のアーカイブ・ログの宛先をLOG_ARCHIVE_DEST_n初期化パラメータに設定します。
ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_DEST_1='LOCATION=/home/arc_dest/local VALID_FOR=(ONLINE_LOGFILE,PRIMARY_ROLE)'
あるいは、次の例のようなコマンドを使用します。
ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_DEST_1='LOCATION='USE_DB_RECOVERY_FILE_DEST' valid_for=(ONLINE_LOGFILE,PRIMARY_ROLE)'
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注意: ダウンストリーム・マイニング・データベースによって生成されるオンラインREDOログはリカバリ領域にアーカイブできます。ただし、外部アーカイブ・ログのステージングやスタンバイREDOログのアーカイブにダウンストリーム・マイニング・データベースのリカバリ領域は使用できません。高速リカバリ領域の構成の詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。 |
ローカル・アーカイブの宛先を有効にします。
ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_DEST_STATE_1=ENABLE
これらの初期化パラメータの詳細は、『Oracle Data Guard概要および管理』を参照してください。
この手順は、ダウンストリーム・マイニング・データベースでリアルタイム・キャプチャを使用する場合にのみ必要です。アーカイブ・ログのみキャプチャ・モードを使用する場合は必要ありません。リアルタイム・キャプチャを使用する場合、B.3.2項「ローカルREDOログ・ファイルをアーカイブするためのマイニング・データベースの構成」に示すようにローカルREDOデータをアーカイブするようダウンストリーム・データベースがすでに構成されているものとします。
次の手順では、スタンバイREDOログ・ファイルをダウンストリーム・マイニング・データベースに追加する手順を概説します。スタンバイREDOログの作成ルールを次に要約します。
各スタンバイREDOログ・ファイルのサイズは、少なくともREDOソース・データベースの最大REDOログ・ファイルと同程度である必要があります。管理を簡単にするために、ソース・データベースのすべてのREDOログ・ファイルとダウンストリーム・マイニング・データベースのスタンバイREDOログ・ファイルを同じサイズにすることをお薦めします。
スタンバイREDOログは、ソース・データベースのREDOスレッドごとにソース・データベースのREDOログより1つ以上多い数のREDOログ・グループを持つ必要があります。
スタンバイREDOログ・ファイルの追加に必要な特定の手順やSQL文は、環境によって異なります。スタンバイREDOログ・ファイルのデータベースへの追加の詳細は、『Oracle Data Guard概要および管理11gリリース2 (11.2)』を参照してください。
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注意: 1つのダウンストリーム・マイニング・データベースにREDOを送信するソース・データベースが複数ある場合、それらのソースのうち1つのみがマイニング・データベースのスタンバイREDOログにREDOを送信できます。このソース・データベースからのREDOをマイニングするExtractプロセスはリアルタイム・モードで実行できます。他のソース・データベースはすべてアーカイブ・ログのみをダウンストリーム・マイニング・データベースに送信し、このデータを読み取るExtractはアーカイブ・ログのみモードで実行されるよう構成される必要があります。 |
スタンバイREDOログ・ファイルを作成する手順
SQL*Plusで、管理ユーザーとしてソース・データベースに接続します。
ソース・ログ・ファイルのサイズを確認します。結果を控えておきます。
SELECT BYTES FROM V$LOG;
ソース・データベースに構成されているオンライン・ログ・ファイル・グループの数を確認します。結果を控えておきます。
SELECT COUNT(GROUP#) FROM V$LOG;
管理ユーザーとしてダウンストリーム・マイニング・データベースに接続します。
スタンバイ・ログ・ファイル・グループをマイニング・データベースに追加します。スタンバイ・ログ・ファイルのサイズは、ソース・ログ・ファイルのサイズ以上である必要があります。スタンバイ・ログ・ファイル・グループの数は、ソース・オンライン・ログ・ファイル・グループの数より1つ以上多い数である必要があります。これは、RACインストールの各インスタンス(スレッド)に適用されます。ソース・データベースに"n"個のスレッドがあり、それぞれ"m"個のREDOログ・グループがある場合、n*(m+1)個のREDOログ・グループをダウンストリーム・マイニング・データベースで構成する必要があります。
次の例は、3つのスタンバイ・ログ・グループを示しています。
ALTER DATABASE ADD STANDBY LOGFILE GROUP 3
('/oracle/dbs/slog3a.rdo', '/oracle/dbs/slog3b.rdo') SIZE 500M;
ALTER DATABASE ADD STANDBY LOGFILE GROUP 4
('/oracle/dbs/slog4.rdo', '/oracle/dbs/slog4b.rdo') SIZE 500M;
ALTER DATABASE ADD STANDBY LOGFILE GROUP 5
('/oracle/dbs/slog5.rdo', '/oracle/dbs/slog5b.rdo') SIZE 500M;
スタンバイ・ログ・ファイル・グループが正常に追加されたことを確認します。
SELECT GROUP#, THREAD#, SEQUENCE#, ARCHIVED, STATUS FROM V$STANDBY_LOG;
結果は次のようになります。
GROUP# THREAD# SEQUENCE# ARC STATUS
---------- ---------- ---------- --- ----------
3 0 0 YES UNASSIGNED
4 0 0 YES UNASSIGNED
5 0 0 YES UNASSIGNED
ソース・データベースのログ・ファイルが、設定したローカルのLOG_ARCHIVE_DEST_nのLOCATION属性で指定した場所にあることを確認します。ディレクトリ内のファイルを確認するために、ソース・データベースでログ・ファイルの切り替えが必要な場合があります。
この手順では、ソース・データベースのオンラインREDOログからREDOデータを受信するスタンバイREDOログをアーカイブするようダウンストリーム・マイニング・データベースを構成します。外部アーカイブ・ログは、ダウンストリーム・マイニング・データベースのリカバリ領域にアーカイブできないことに注意してください。
スタンバイREDOログをローカルでアーカイブする手順
ダウンストリーム・マイニング・データベースで、次の例に示すように、2つ目のアーカイブ・ログの宛先をLOG_ARCHIVE_DEST_n初期化パラメータに設定します。
ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_DEST_2='LOCATION=/home/arc_dest/srl_dbms1 VALID_FOR=(STANDBY_LOGFILE,PRIMARY_ROLE)'
外部アーカイブ・ログ(リモート・ソース・データベースからのログ)はローカル・マイニング・データベース・ログ・ファイルと分けて保管し、ログ・ファイル同士も分けて保管することをお薦めします。外部アーカイブ・ログのステージングにダウンストリーム・マイニング・データベースのリカバリ領域を使用することはできません。高速リカバリ領域の構成の詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。
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注意: 別のデータベースによって生成されたREDOをダウンストリーム・マイニング・データベースのスタンバイREDOログで受け入れる場合、前述のとおりスタンバイREDOログ用にlog_archive_dest_2を構成する必要があります。 |
前のステップで設定したLOG_ARCHIVE_DEST_2パラメータを次の例に示すように有効にします。
ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_DEST_STATE_2=ENABLE
これらの初期化パラメータの詳細は、『Oracle Data Guard概要および管理』を参照してください。