法的エンティティのモデル化

Oracle Fusion Cloud Applicationsでは、法的エンティティのモデル化がサポートされます。他の法的エンティティとの間で売買を行う場合、自社の顧客およびサプライヤ登録で、これらの他の法的エンティティを定義します。

これらの登録は、Oracle Trading Community Architectureの一部です。

法的エンティティが互いに取引を行う場合は、それらを法的エンティティとして、また、自社の顧客およびサプライヤ登録内の顧客とサプライヤとして表します。法的エンティティの関係を使用して、どの取引が会社間で行われ、会社間会計が必要であるかを判断します。法的エンティティは、法人事業主として識別できるため、人材管理(HCM)アプリケーションで使用できます。

法的エンティティを作成する際に考慮する必要がある決定事項がいくつかあります。

  • トランザクションにおける法的エンティティの使用の重要性

  • 法的エンティティおよび法的エンティティのビジネス・ユニットに対する関係

  • 法的エンティティおよび法的エンティティのディビジョンに対する関係

  • 法的エンティティおよび法的エンティティの元帳に対する関係

  • 法的エンティティおよび法的エンティティの貸借一致セグメントに対する関係

  • 法的エンティティおよび法的エンティティの連結ルールに対する関係

  • 法的エンティティおよび法的エンティティの会社間トランザクションに対する関係

  • 法的エンティティおよび法的エンティティの就業者割当ておよび法人事業主に対する関係

  • 法的エンティティおよび給与レポート

  • 法的レポート・ユニット

トランザクションにおける法的エンティティの使用の重要性

企業の全資産は、個々の法的エンティティにより所有されます。Oracle Fusion Cloud Financialsでは、ユーザーが価値または義務の移動を表すトランザクションに対して法的エンティティを入力できます。

たとえば、販売オーダーにより、同意した日に商品を届けるためのオーダーを手配する義務が法的エンティティに生じます。また、これにより、その商品の受取りと支払を行う義務が購入者に生じます。ほとんどの国の契約法には、次の両方に関して損害を請求できる法規があります。

  • 実際の損失(被害者が契約の締結がなかった場合と同様の状態に置かれること)。

  • いわゆる交渉機会の損失(つまり、トランザクションで得られた可能性のある利益)。

別の例として、原材料費の上昇を計上するために倉庫の在庫を再評価した場合、再評価および再評価累計額は、法的エンティティの勘定科目に反映させる必要があります。Oracle Fusion Cloud Applicationsでは、在庫組織の在庫は、1つのビジネス・ユニットで管理され、1つの法的エンティティに属します。

法的エンティティおよび法的エンティティのビジネス・ユニットに対する関係

ビジネス・ユニットは、多くの法的エンティティにかわってトランザクションを処理できます。多くの場合、ビジネス・ユニットは1つの法的エンティティの一部です。ほとんどの場合、法的エンティティはトランザクションで明示されます。たとえば、買掛/未払金請求書には、明示的な法的エンティティ・フィールドがあります。買掛/未払金部門は、1つ以上のビジネス・ユニットにかわって、サプライヤの請求書を処理できます。

場合によっては、法的エンティティは、トランザクションを処理しているビジネス・ユニットから推測されます。たとえば、ビジネス・ユニットACM UKには、デフォルトの法的エンティティInFusion UK Ltd.があります。購買オーダーがACM UKに入ると、法的エンティティInFusion UK Ltd.は、サプライヤに対する法的義務を負います。Oracle Procurement、Oracle Fusion Cloud Project ManagementおよびOracle Fusion Cloud Supply Chain and Manufacturingアプリケーションでは、ビジネス・ユニットから法的エンティティ情報を導出する必要があります。

法的エンティティおよび法的エンティティのディビジョンに対する関係

ディビジョンは、管理職責の領域であり、法的エンティティの集合に対応しています。必要な場合、法的エンティティごとに、または他の法的エンティティの組合せ部分ごとに、ディビジョンに関する結果を集計できます。ディビジョンごとの集計およびレポートを容易にするために、勘定体系内のコスト・センターまたは法的エンティティのセグメントに対する有効日の階層を定義します。ディビジョンと法的エンティティは、独立した概念です。

法的エンティティおよび法的エンティティの元帳に対する関係

主要な職責の1つに、法的エンティティの財務諸表を届け出ることがあります。Oracle General Ledger Accounting Configuration Managerを使用して、法的エンティティを特定の元帳にマッピングします。元帳内では、オプションで法的エンティティを1つ以上の貸借一致セグメント値にマッピングできます。

法的エンティティおよび法的エンティティの貸借一致セグメントに対する関係

General Ledgerでは、貸借一致セグメントが3つまでサポートされます。ベスト・プラクティスとして、1つのセグメントで法的エンティティを表して、規制機関、税務当局および投資者に対して自社の運営を説明するための要件を軽くすることをお薦めします。自社の運営について説明するということは、法的エンティティごとに、貸借一致している貸借対照試算表を作成する必要があることを意味します。1つの元帳で多くの法的エンティティを計上する場合は、次のことを行う必要があります。

  1. 元帳内の法的エンティティを識別します。

  2. 会社間トランザクションを介して法的エンティティの境界をまたぐトランザクションを貸借一致させます。

  3. どの貸借一致セグメントが各法的エンティティに対応するか判断し、それらの貸借一致セグメントをGeneral Ledger Accounting Configuration Managerで割り当てます。元帳で貸借一致セグメント値を1つでも割り当てると、すべての貸借一致セグメント値を割り当てる必要があります。この推奨ベスト・プラクティスにより、法的エンティティ別の資産、負債および収益のレポートが容易になります。

法的エンティティは、少なくとも1つの貸借一致セグメント値で表します。さらに詳細なレポートが必要な場合は、2つまたは3つの貸借一致セグメント値で表すことができます。たとえば、欧州の複数の管轄区域で法的エンティティが運営している場合は、貸借一致セグメント値を定義し、それらを法定レポート・ユニットにマッピングできます。1つの法的エンティティは、複数の貸借一致セグメント値で表すことができます。複数の法的エンティティを表すために、1つの貸借一致セグメント値を使用することはありません。

General Ledgerには、3つの貸借一致セグメントがあります。各ディビジョンまたはビジネス・ユニットに対する貸借対照表レベルでの管理レポートを使用可能にするために、別々の貸借一致セグメントを使用して、ディビジョンまたは戦略的ビジネス・ユニットを表すことができます。このソリューションを使用して、ビジネス・ユニットおよびディビジョンのマネージャに対して、資産活用または投資収益率を追跡し、その責任を負えるだけの権限を付与します。複数の貸借一致セグメントを使用すると、実装時に法的エンティティの一部の処分が進行中で、そのエンティティの資産および負債を切り分ける必要があることがわかっている場合にも役立ちます。

複数の貸借一致セグメントの実装では、ディビジョンまたはビジネス・ユニットごとに貸借一致していないすべての仕訳について、貸借一致明細を生成する必要があります。元帳の使用を開始した後で、複数の貸借一致セグメントに変更することはできません。これは、新しい複数の貸借一致セグメントにより履歴データが貸借一致しないためです。履歴データの書き換えはこの時点で行う必要があります。

企業が定期的に別会社のビジネスを設立するか、マネージャが資産活用の責任を負う場合、そのビジネスを貸借一致セグメント値で識別します。別々の元帳で各法的エンティティを計上するよう決定した場合は、法的エンティティを貸借一致セグメント値で識別する必要はありません。

貸借一致セグメントにまたがるトランザクションは必ずしも法的エンティティの境界をまたぐものではありませんが、法的エンティティの境界をまたぐトランザクションはすべて、貸借一致セグメントをまたぎます。買収を行う場合、または企業の一部を処分する準備を進めている場合、企業のその部分について、それが単独の法的エンティティではなくても、それ自体の貸借一致セグメント内で計上できます。同一の元帳を共有する法的エンティティを貸借一致セグメントにマッピングしない場合、会社間機能を使用してそれらを区別することはできず、それらの個々の資本を追跡することもできません。

法的エンティティおよび法的エンティティの連結ルールに対する関係

Oracle Fusion Applicationsでは、法的エンティティを貸借一致セグメントにマッピングしてから、貸借一致セグメントを使用して連結ルールを定義できます。法的エンティティの定義と、連結におけるそれらのロールとの間の関係を作成します。

法的エンティティおよび法的エンティティの会社間トランザクションに対する関係

Oracleの会社間機能を使用して、貸借一致セグメント間の会社間仕訳を自動作成します。会社間処理では、企業の法的エンティティのグループ内で法的所有権が更新されます。請求書または仕訳は、必要に応じて作成されます。企業での取引ペアの数を制限するには、会社間組織を設定し、それらを認可された法的エンティティに割り当てます。処理オプションおよび会社間勘定を定義して、会社間トランザクションを作成する際に使用し、連結消去仕訳を支援します。これらの勘定科目は、会社間組織に割り当てられた法的エンティティに基づいて、会社間トランザクションで導出され、自動的に入力されます。

会社内取引(この取引では、法的所有権は変更されませんが、その他の組織職責は変更されます)もサポートされます。たとえば、部門レベルの会社間組織を作成することにより、法的エンティティ内の部門間で移動する資産および負債を追跡できます。

ヒント: Oracle Fusion Supply Chain and Manufacturingアプリケーションでは、ビジネス・ユニットを使用して会社間関係がモデル化され、そこから法的エンティティが推測されます。

法的エンティティおよび法的エンティティの就業者割当ておよび法人事業主に対する関係

Legal Entity Configuratorでは、個人を雇用する法的エンティティは法人事業主と呼ばれます。Oracle Fusion Cloud HCMの就業者の割当てでは、法人事業主を入力する必要があります。

法的エンティティおよび給与レポート

法的エンティティは、給与税および社会保険(給与に対する社会保障など)の支払を行うために必要です。Oracle Fusion Applicationsでは、給与法定ユニットを登録して、法的エンティティの給与税および社会保険の支払およびレポートを行うことができます。法人事業主は、国レベルのみでなく、地域レベルでも、給与税の支払が必要になる場合があります。この義務を果たすには、地域当局の管轄区域内にある就業地として、法的エンティティを設定します。特定の法的レポートの義務がある企業の一部を表す法的レポート・ユニットを設定します。ビジネスを行う場所を管轄区域内に設定した結果として法的エンティティが税金を支払う必要がある場合、これらの法的レポート・ユニットを税金レポート・ユニットとしてマークすることもできます。