この章には、次の内容が含まれます。
製品ポートフォリオは、製品および製品提案(概念)のセットで構成されます。製品ポートフォリオ開発アクティビティでは、ポートフォリオ・マネージャが製品および製品概念を評価し、開発に最適なものを決定することができます。製品ポートフォリオ開発には次の作業が含まれます。
タスク | 可能な作業 |
---|---|
製品ポートフォリオ構造の開発 |
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製品ポートフォリオの分析 |
|
正味現在価値は、資金インフローの現在価値と資金アウトフローの現在価値の差として計算されます。
正味現在価値に影響する要因は3つあります。
キャッシュ・フロー
値引係数
年数
基準日
このアプリケーションでは、NPVはニュートンラフソン・アルゴリズムを使用して計算されます。正味現在価値は次の等式から導出されます。
NPV = C(0) + C(1)/(1+d) + C(2)/(1+d)2 + ...+ C(n)/(1+d)n
等式の変数は次のように説明されます。
c - 製品のキャッシュ・フローで、収益が正、コストが負と見なされます。
d - 値引係数
n - 将来の年数
値nは、それに対して定義されたトレンドに基づいて計算されます。トレンドをポイント・トレンドと見なしているため、トレンド日は開始日と同じです。次に、nの値の計算方法を説明します。
n = (開始日 - 基準日)/365
注意
基準日のデフォルトは、提案の作成日と同じです。
コストまたは収益の開始日が基準日よりも少ない場合、その行は無視され、設定された基準日よりも前に発生したキャッシュ・フローは含まれません。コストまたは収益の開始日が基準日の1年後と同じかそれ以内の場合、値は0になります(1年目)。最初の年の1日後は1に増加します。コストまたは収益の開始日が基準日から2年後と同じかそれ以内の場合、nの値は2に増加し、その後も同様になります。2年目の1日後からは2に増加し、その後も同様になります。同じn値を持つ行を合計し、計算式を適用します。
年数の計算
固定基準日が2012年1月1日である次のシナリオを考慮します。 様々な開始日について、nの値は次のように決定されます。
開始日 | コスト | 年数 |
---|---|---|
2012年5月1日 |
140 |
0 |
2010年4月3日 |
300 |
-2 |
開始日 | 収益 | 年数 |
---|---|---|
2015年1月1日 |
200 |
3 |
2010年4月3日 |
300 |
-2 |
注意
年数が負の場合、対応するコストおよび収益の値はNPV計算の対象となりません。
キャッシュ・フローの計算
キャッシュ・フローを決定するために、同じ年数のすべてのコストおよび収益がグループ化されます。前述の方法で取得された値nを使用し、次のようにキャッシュ・フローが計算されます。
年数 | キャッシュ・フロー(収益 - コスト) |
---|---|
0 |
-140 |
3 |
200 |
NPVの計算
割引率を0.1と仮定し、キャッシュ・フローに必要な値を決定した後、前述の等式を使用してNPVを計算すると10.26という値を得られます。
内部利益率は、正味現在価値が0に等しくなる率です。IRRは、将来のすべてのキャッシュ・フローの現在価値が初期投資に等しくなる割引率とも定義されます。
内部利益率に影響する入力変数は3つあります。
キャッシュ・フロー
年数
正味現在価値
内部利益率は、正味現在価値の計算に使用される場合と同じ等式によって導出されます。NPVを導出する等式は次のとおりです。
NPV = C(0) + C(1)/(1+r) + C(2)/(1+r)2 + ...+ C(n)/(1+r)n
等式の変数は次のように説明されます。
c - 製品のキャッシュ・フローで、収益が正、コストが負と見なされます。
r - 内部利益率
n - 将来の年数
内部利益率は、NPVを0に設定することによって決定できます。このアプリケーションでは、分割統治法を使用した推定方式を採用しており、正味現在価値がゼロになるための割引率に仮定が使用されます。NPVがゼロになる調整係数または推定係数が、内部利益率であると見なされます。
推定係数または割引率が0であるシナリオを考慮します。この設定により、結果のNPVが負である場合、割引率を10に増加してNPVが再計算されます。割引率が10の場合にNPVが正になると、NPVが0になる範囲が0から10の間であると判断できます。
推測される範囲が決定できたため、割引率をさらに調整して、NPVが0になる範囲をさらに狭めます。割引率を1と見なします。この値を割引率に置換した場合、結果のNPVが負になったとします。これは、正のNPVを得るには割引率をさらに2まで増加できることを示唆しています。結果のNPVが0の場合、割引率は2であると見なされます。
別のシナリオで、増分した割引率が0、10、20である場合にNPVが負であるとします。割引率が30でNPVが正の値となった場合、割引率の範囲が20から30の間であると判断できます。NPVが正になる割引率が21であるとします。NPVが0になる割引率の値を見つける可能性は、20から21の間となりました。今度は割引率として増分値20.1、20.2および20.3が使用され、NPVが再計算されます。割引率20.3でNPVが0になると、IRRの値は20.3であると見なされます。
シナリオの編集時に選択する基準日は、正味現在価値などの製品およびポートフォリオ・メトリックを計算する際にシナリオ分析で使用されます。
製品提案の作成日が製品提案の基準日と見なされます。シナリオに製品提案を追加すると、製品提案基準日が、シナリオについて設定した基準日で上書きされます。これにより、「要素」表の製品提案メトリックが再計算されます。シナリオの基準日を変更すると、そのすべての要素の基準日が更新されます。また、シナリオ・メトリックもそれに合せて更新されます。
注意
製品ポートフォリオを保存すると、製品基準日の変更によってその製品に関連付けられたメトリックが再計算されます。
様々なポートフォリオや製品メトリックを計算する際、基準日は重要な要因です。基準日は、「要素」表の製品提案および製品に関する正味現在価値、内部利益率および損益分岐時間の計算に使用されます。
損益分岐時間は、収益の計算値の累計が、合計開発予測費用と等しくなる期間です。
損益分岐時間の計算時に考慮すべき要因が4つあります。
製品の開発予測費用
収益
割引率
基準日
損益分岐時間は、割引率と年数を使用して期間中のすべての収益を計算した値と、製品について提供された合計開発予測費用を加算して計算されます。
割引率が0.1であるシナリオを考慮します。損益分岐時間を判別するには、前述のシナリオで示されているように年数を計算します。nの値を決定した後、次の手順を実行します。
次の等式を使用して計算上収益を決定します。
計算上収益 = 1 / (1 + d) ^ n
割引率を0.1として、計算上収益と累計収益を決定します。
年数 | 計算収益 | 累計収益 |
---|---|---|
0 |
200 |
200 |
1 |
272.73 |
472.73 |
2 |
330.58 |
803.31 |
直線係数の計算
開発予測費用に近い値は472.73と803.31です。これらの値をそれぞれ最低値と最高値と見なし、次の等式を使用して直線係数を決定します。
直線係数 = {(開発予測費用 - 最低値) / (最高値 - 最低値)} * 365
この例では、直線係数が30.10と求められます。
直線日付の計算
直線日付は、次の等式を使用して計算されます。
直線日付 = Y + 直線係数
この等式で、Yは最低値の開始日です。
この例では、直線日付は2013年1月31日です。
次の等式を使用して損益分岐時間を計算します。
損益分岐時間 = (直線日付 - 基準日) / 365
この例では、損益分岐時間は1.09と判別されます。
回収時間とは、収益の累計が合計開発予測費用と等しくなる期間です。
回収時間に影響する要因は2つあります。
開発予測費用
収益
回収時間は、期間の収益を、製品またはポートフォリオの合計開発予測費用に加算して計算されます。
2012年1月1日が固定基準日である次のシナリオを考慮します。予測開発費用が500である場合、累計は次のように計算されます。
開始日 | 収益 | 累計収益 |
---|---|---|
2012年1月1日 |
200 |
200 |
2013年1月1日 |
300 |
500 |
2014年1月1日 |
400 |
900 |
累計収益が予測開発費用と等しい期間は2013年1月1日です。 この日付と基準日を考慮すると、回収時間は次のように計算されます。
回収期間 = X - 基準日
Xは、累計収益が予測開発費用と等しい期間です。
Xが2013年1月1日、基準日が2012年1月1日とすると、回収時間は1年と計算できます。
Oracle ADF Desktop Integrationツールを使用すると、データをExcelスプレッドシートにエクスポートし、そこで変更を加え、データへの変更点をアプリケーションに今度はインポートすることにより、製品提案または製品ポートフォリオ・オブジェクトのメトリック・データを追加、削除および更新できます。次に、製品提案オブジェクトの「リソース」タブにある「処理」メニューの「スプレッドシートで編集」オプションから、この処理を実行する例を示します。
「処理」メニューで「スプレッドシートで編集」をクリックします。
ログイン資格証明情報を入力します。
すでにOracle ADF Desktop Integrationツールを使用するためにログイン資格証明情報を入力して別のExcelスプレッドシートを開いて作業をしている場合、再度入力する必要はありません。
開いたExcelファイルで、データを追加、削除または更新できます。
行を削除するには、削除する行にフラグを付加します。行を追加するには、最後の行を選択し、次に新しい行と入力内容を挿入する必要があります。間に空白の行があると、データをアプリケーションにインポートできなくなるので、空白の行を挟まないでください。
Excelスプレッドシートでエクスポートされたデータが表示されているタブから、「アップロード」オプションをクリックします。
アップロードしてデータがアプリケーションに正しくインポートされると、変更されたデータの更新後ステータスが「ステータス」列に表示されます。
変更点をExcelスプレッドシートからアップロードした後、オブジェクトを再度開く必要があります。オブジェクトが保存されても変更点は表示されません。
このエクスポートおよびインポートを「要素」表から実行した場合、変更したデータがローカルで開いたExcelスプレッドシートで正しく表示されるようにするには、ポートフォリオをアプリケーションで保存する必要があります。
年間割引率は、現在のキャッシュ・フローに変換するために将来のキャッシュ・フローに定められた割引率です。
いいえ。ポートフォリオに関しては、ビジネスに関する情報を入力し、期間を選択し、目標収益および目標コストを含めることが可能です。製品提案の場合は、予測および実際のコスト、資源および収益を含められます。
「処理」メニュー・オプションに「スプレッドシートで編集」があります。ここには製品提案の「キャッシュ・フロー」タブの「コスト」表または「収益」表および「リソース」タブからアクセスできます。また、ポートフォリオの「要素」表からもアクセスできます。開いたExcelファイルで、「スプレッドシートで編集」処理のソースにより、データを追加、削除または更新できます。この処理を「キャッシュ・フロー」または「リソース」タブから実行した場合、Excelスプレッドシートでコンテンツを追加、削除または更新できます。この処理を「要素」表から実行した場合、アプリケーションのユーザー・インタフェースで編集可能になっているメトリックのコンテンツのみ更新可能です。