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Oracle® Fusion Middleware Oracle WebLogic Server 12.1.3の理解
12c (12.1.3)
E56254-04
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5 WebLogic Serverクラスタリング

この章では、WebLogic Serverクラスタ、すなわち同時に動作し、連携してWebLogic Server 12.1.3の高度なスケーラビリティと信頼性を実現するサーバー・インスタンスのグループについて説明します。

この章の内容は次のとおりです。

WebLogic Serverクラスタの概要

WebLogic Serverクラスタは、同時に動作し、連携して高度なスケーラビリティと信頼性を実現する複数のWebLogic Serverサーバー・インスタンスで構成されます。クラスタはクライアントからは単一のWebLogic Serverインスタンスのように見えます。クラスタを構成する複数のサーバー・インスタンスは同じマシン上で実行することも、複数のマシンに分散配置することもできます。クラスタの能力は、既存のマシン上のクラスタにサーバー・インスタンスを追加することによって強化できます。また、新たにサーバー・インスタンスを配置するためのマシンをクラスタに追加することもできます。クラスタ内の各サーバー・インスタンスでは、同じバージョンのWebLogic Serverが動作している必要があります。

クラスタとドメイン間の関係

クラスタは特定のWebLogic Serverドメインの一部です。

ドメインとは、関連性があり1つの単位として管理されるWebLogic Serverリソースの集合のことです。ドメインには1つまたは複数のWebLogic Serverインスタンス(クラスタ化インスタンス、非クラスタ化インスタンス、またはクラスタ化インスタンスと非クラスタ化インスタンスの組合せが可能)が含まれます。ドメインには、複数のクラスタを構成できます。またドメインには、ドメインにデプロイされるアプリケーション・コンポーネントと、それらのアプリケーション・コンポーネントおよびドメイン内のサーバー・インスタンスが必要とするリソースおよびサービスも含まれます。アプリケーションおよびサーバー・インスタンスで使用されるリソースとサービスの例には、マシン定義、オプションのネットワーク・チャネル、コネクタ、起動クラスなどがあります。

WebLogic Serverインスタンスは、様々な基準によってドメインに分類できます。たとえば、ホストするアプリケーションの論理的な区分、地理的な考慮事項、あるいは管理対象リソースの数や複雑度に基づいてリソースを複数のドメインに割り当てることができます。ドメインの詳細は、『Oracle WebLogic Serverドメイン構成の理解』を参照してください。

各ドメイン内で、1つのWebLogic Serverインスタンスが管理サーバーとして機能します。このサーバー・インスタンスでは、ドメイン内のその他のサーバー・インスタンスおよびリソースのすべてを構成、管理、およびモニターします。各管理サーバーでは1つのドメインだけを管理します。ドメインに複数のクラスタが含まれる場合、ドメイン内の各クラスタは同じ管理サーバーによって管理されます。あるクラスタ内のすべてのサーバー・インスタンスは同じドメイン内になければなりません; 1つのクラスタを複数のドメインにまたがって「分割」することはできません。同様に、構成済みのリソースまたはサブシステムを複数のドメインで共有することはできません。

クラスタ化されたWebLogic Serverインスタンスの動作は、フェイルオーバーとロード・バランシングの機能を備えること以外は、クラスタ化されないインスタンスと同様です。クラスタ化されたWebLogic Serverインスタンスの構成に使用するプロセスおよびツールは、クラスタ化されないインスタンスの場合と同じです。ただし、クラスタリングによって可能になるロード・バランシングとフェイルオーバーの効果を実現するためには、クラスタの構成に関する特定のガイドラインに従う必要があります。

CoherenceクラスタとWebLogic Serverクラスタの関係

Coherenceクラスタは複数の管理対象Coherenceサーバー・インスタンスで構成されており、連携して機能することにより、データをインメモリーに分散してアプリケーションのスケーラビリティ、可用性およびパフォーマンスを向上します。クライアントはローカル・キャッシュ内のデータと相互に作用するため、データの分散とバックアップがクラスタ・メンバー間で自動的に実行されます。

Coherenceクラスタは、WebLogic Serverクラスタとは異なります。これらは、異なるクラスタ・プロトコルを使用しているため、別個に構成されます。WebLogic Serverドメインには、単一のCoherenceクラスタを含めることができます。1つのCoherenceクラスタには、複数のWebLogic Serverクラスタを関連付けることができます。

Coherenceクラスタの構成と管理の詳細は、『Oracle WebLogic Serverクラスタの管理』を参照してください。

クラスタリングの利点

WebLogic Serverクラスタを利用することによってもたらされる利点には、次のものがあります。

  • スケーラビリティ

    WebLogic Serverクラスタにデプロイされるアプリケーションの能力を、必要に応じて動的に増強することができます。サービスを中断させることなく、つまり、クライアントおよびエンド・ユーザーへの影響なしにアプリケーションを動作させ続けながら、クラスタにサーバー・インスタンスを追加できます。

  • 高可用性

    WebLogic Serverクラスタでは、サーバー・インスタンスで障害が発生してもアプリケーションの処理を継続できます。アプリケーション・コンポーネントの「クラスタリング」は、クラスタ内の複数のサーバー・インスタンス上にコンポーネントをデプロイすることによって行います。そのため、コンポーネントが動作しているサーバー・インスタンスに障害が発生した場合、同じコンポーネントがデプロイされている別のサーバー・インスタンスがアプリケーションの処理を継続できます。

クラスタの重要な機能

この項では、スケーラビリティと高可用性を実現する重要なクラスタリングの機能を、技術的でない分かりやすい用語で定義します。

  • アプリケーションのフェイルオーバー

    フェイルオーバーとは、特定の「ジョブ」、つまり何らかの処理タスクの集合を実行しているアプリケーション・コンポーネントが何らかの理由によって使用不可になったときに、障害を起こしたオブジェクトのコピーがそのジョブを引き継いで完了することを意味します。

  • 移行

    WebLogic Serverでは、クラスタ化サーバー・インスタンスを、あるマシンから別のマシンに、自動的にまたは手動で移行できます。移行できる管理対象サーバーは、移行可能なサーバーと呼ばれます。この機能は、高可用性が求められる環境に向けて設計されています。

  • ロード・バランシング

    ロード・バランシングとは、環境内のコンピューティング・リソースおよびネットワーキング・リソース間で、ジョブとそれに関連する通信を均等に分配することです。

クラスタリング可能なオブジェクトの種類

クラスタ化されるアプリケーションまたはアプリケーション・コンポーネントは、クラスタ内の複数のWebLogic Serverインスタンス上で利用可能なものです。オブジェクトをクラスタリングすると、そのオブジェクトに対してフェイルオーバーとロード・バランシングが有効になります。クラスタの管理、保守、およびトラブルシューティングの手順を簡素化するには、オブジェクトを均一に、つまりクラスタ内のすべてのサーバー・インスタンスにデプロイします。

Webアプリケーションは、Enterprise JavaBeans (EJB)、サーブレット、Java Server Pages (JSP)などを含む様々な種類のオブジェクトで構成できます。それぞれのオブジェクトの種類ごとに、制御、呼び出し、およびアプリケーション内部での機能に関連する動作の一意の集合が定義されています。この理由から、クラスタリングをサポートし、またその結果としてロード・バランシングとフェイルオーバーを実現するためにWebLogic Serverで利用される手法は、オブジェクトの種類ごとに異なる可能性があります。WebLogic Serverのデプロイメントでは、次の種類のオブジェクトのクラスタリングが可能です。

  • サーブレット

  • JSP

  • EJB

  • Remote Method Invocation (RMI)オブジェクト

  • Java Messaging Service (JMS)の宛先

  • Coherenceクラスタと管理対象Coherenceサーバー

  • タイマー・サービス

クラスタリング不可能なオブジェクトの種類

次のAPIおよび内部サービスは、WebLogic Serverでクラスタリングできません。

  • ファイルの共有を含むFileサービス

動的クラスタの概要

動的クラスタは、アプリケーションのリソース・ニーズを満たすように動的にスケール・アップできるサーバー・インスタンスで構成されます。動的クラスタは、指定した数の生成された(動的)サーバー・インスタンスの構成を定義する単一のサーバー・テンプレートを使用します。

動的クラスタを作成すると、動的サーバーが事前構成され、自動的に生成されます。これにより、追加のサーバー容量が必要な場合に動的クラスタ内のサーバー・インスタンスの数を簡単にスケール・アップできます。動的サーバーは、簡単に起動でき、最初に手動で構成してそれらをクラスタに追加する必要はありません。

動的クラスタの詳細は、『Oracle WebLogic Serverクラスタの管理』の動的クラスタに関する項を参照してください。

WebLogic Serverでのクラスタリングのためのロードマップ

表5-1 WebLogic Serverでのクラスタリングのためのロードマップ

主要なタスク サブタスクと追加情報

WebLogic Serverクラスタリングについてもっとよく知る

  • サーブレットとJSPのクラスタリング

  • EJBとRMIオブジェクトのクラスタリング

  • JMSとクラスタリング

  • Coherenceクラスタリング

  • 動的クラスタ

クラスタの構成

  • クラスタの構成の理解

  • クラスタでの通信

  • クラスタ・アーキテクチャ

  • WebLogic Serverクラスタの設定

  • クラスタリングのベスト・プラクティス

  • Coherenceクラスタの設定

クラスタでのロード・バランシングとフェイルオーバーについてもっとよく知る

  • クラスタでのロード・バランシング

  • クラスタのフェイルオーバーとレプリケーション

  • クラスタを使用したBIG-IPハードウェアの構成

  • MAN/WANフェイルオーバーに関するF5ロード・バランサの構成

  • MAN/WANフェイルオーバーに関するRadwareロード・バランサの構成

クラスタ内のサーバーとサービスの移行

  • サーバー全体の移行

  • サービスの移行

トラブルシューティング

  • 一般的な問題のトラブルシューティング

  • マルチキャスト構成のトラブルシューティング

リファレンス

  • WebLogicクラスタのAPI