6 マネージメントクラスおよびストレージクラスによる最新のソリューション

このセクションを使用すると、VTCS マネージメントおよびストレージクラスを作成し、それらに関連する一般的なタスクを実行することができます。

VTCS CDS レベル

最新のソリューションに関して重要なことは、現在の CDS VTCS レベルと、そのレベルで何が可能で何が不可能かを確認することです。表6-1 では、CDS レベルと各レベルで使用可能な機能を示しています。

表6-1 サポートされている VTCS バージョンの CDS レベル

VTCS CDS レベル: VTCS/NCS バージョン: 拡張機能:

E

6.0、6.1、6.2、7.0

  • 4 MVC コピー

  • 800M ビットの VTV

F

6.1、6.2、7.0、7.1、7.2、7.3

  • NCO (Near Continuous Operations)

  • 双方向クラスタリング

  • CDS の I/O パフォーマンスの改善 - 仮想スクラッチサブプールの管理に必要な I/O の低減

G

6.2、7.0、7.1、7.2、7.3

  • 400M ビット/800M ビット/2G ビット/4G ビットの VTV

  • 標準/大規模の VTV ページ

  • 1 MVC あたり 65000 個の VTV

H

7.1、7.2、7.3

  • 動的リクレイム

  • 自律デバイスのサポート

I

7.3

  • VSM 6 32G バイト VTV サポート


マネージメントクラスおよびストレージクラスについて

さまざまな最先端のインプリメンテーションのコンポーネントである VTCS マネージメントクラスおよびストレージクラスは、次の処理を実行します。

  • VTCS マネージメントクラスは、VTCS が VTV を管理する方法を指定します。HSC MGMTclas 制御文はマネージメントクラスとその属性を定義します。たとえば、MGMTclas 文の DELSCR パラメータで、VTSS からスクラッチされた VTV を VTCS が削除するかどうかを指定します。

  • また、マネージメントクラスでは VTCS ストレージクラスの指定もできます。VTCS ストレージクラスは、移行された VTV がどこに存在するかを指定します。HSC STORclas 制御文はストレージクラスとその属性を定義します。例:

    MGMT NAME(PAYROLL) MIGPOL(LOCAC,REMAC)
    STORCLAS NAME(LOCAC) ACS(00) MEDIA(STK1R)
    STORCLAS NAME(REMAC) ACS(01) MEDIA(STK2P,ZCART)
    

    このマネージメントとストレージクラスの組み合わせは、「マネージメントクラス PAYROLL の場合、ローカルおよびリモート ACS 内の個別の MVC に移行します。ローカル ACS では、必要な場合はすぐに戻せるように 9840 メディアに配置します。リモート ACS では ZCART より 9940 メディアを優先しますが、明らかにストレージに配置します。」ということを表しています。

はじめに、「VTCS マネージメントおよびストレージクラスの作成と使用: 基本」について説明します。これは、業務の必要に応じて調整できる基本的な手順です。次に「マネージメントクラスおよびストレージクラスの管理に使用できる最先端技術」について説明します。このセクションではさまざまな選択肢を示します。その中から各自の環境にもっとも適したものを選んでください。

VTCS マネージメントおよびストレージクラスの作成と使用: 基本

このパターン (TAPEREQ > POLICY > MGMTclas > STORclas) は頻繁に使用しますので、よく理解してください。これは、「マネージメントクラスおよびストレージクラスの管理に使用できる最先端技術」に示すすべての情報のベースとなるものです。

VSM マネージメントおよびストレージクラスの作成および使用

  1. STORclas および MGMTclas 文を含む定義データセットを決定します。

    MGMTclas および STORclas 文は、相互検証のために同じデータセットに存在している必要があります

  2. STORclas 制御文でストレージクラスを定義します。

  3. 必要に応じて、MIGRSEL および MIGRVTV 文を使用して、移行ポリシーを調整します。

  4. MGMTclas 制御文でマネージメントクラスを定義します。

    MGMTclas 制御文は、さまざまなパラメータでストレージクラスを指定します。

  5. HSC MGMTDEF コマンドで、制御文をロードします。

  6. SMC POLICY コマンドでテープポリシーを指定します。

  7. 次のいずれかの方法で、VTCS に対するポリシー名を指定します。

  • SMC TAPEREQ 文。

  • StorageTek DFSMS インタフェースに記述した SMS ルーチン。

マネージメントクラスおよびストレージクラスの保守

次の点に注意してください

  • マネージメントクラスをマウントに割り当てる場合は、常に SMC POLICY コマンドを使用してください。

  • ポリシーは TAPEREQ 文または SMS ルーチンのいずれかで指定できます。

  • POLICY VALIDATE を使用して、すべての SMC POLICY 文が VALID MGMTCLAS 名を参照していることを確認してください。

  • VTVMAINT ユーティリティーを使用すると、VTV のマネージメントクラスを変更できます。また、VTVMAINT を使用して VTV のストレージクラスを直接変更することはできませんが、VTVMAINT を使用して VTV のマネージメントクラスを変更して、異なるストレージクラスを参照することはできることにも注意してください。

  • 実装するポリシーを定義するのに必要な最小限のストレージクラスを使用してください。過剰にストレージクラスを使用すると、MVC マウントおよびマウント解除のオーバーヘッドが発生して VSM のパフォーマンスに影響を与える可能性があります。また、MVC には 1 つのストレージクラスの VTV しか含まれないため、過剰なストレージクラスを使用すると MVC スペースが十分に使用されない可能性があります。

  • マネージメントクラス定義を削除することにした場合、VTV Report を実行して、そのマネージメントクラスがどの VTV にも割り当てられていないことを確認してください。この処理を行わないと、予測できない結果を招くことになります。

マネージメントクラスおよびストレージクラスの管理に使用できる最先端技術

次に、マネージメントクラスとストレージクラスを使用して実行できるタスクのうち、もっとも一般的なものだけを説明します。

  • MVC メディア優先の STORclas MEDIA パラメータの使用法。MVC メディアの優先順位にはデフォルトが用意されていますが、これらは必要に応じて調整できます。詳細は、『HSC および VTCS の管理』を参照してください。

  • 共有 MVC 上での複数の作業負荷のグループ化」。これは導入部の例でしたが、企業が独自のデータセンターを持ち、使用できるリソースの利用を次のようにして最適化する場合に適しています。

    • ローカルおよびリモートの ACS にある個別の MVC に重要なデータを二重化します。ローカル ACS では、必要な場合はすぐに戻せるように 9840 メディアに配置します。リモート ACS では、大容量メディアでのストレージのために ZCART より 9940 メディアを優先します。

    • 2 つの重要なジョブストリーム (給与と経理) にこれらマネージメント/ストレージクラスへのアクセスを与えます。結果: すべての給与および経理データは、ローカルとリモートで二重化され、ストレージクラスの仕様で説明した適切なメディアの MVC の同一セット上にグループ化されます。

    • 本稼働データも重要であるが、給与と経理データとは別セットの MVC にすることが望ましい場合。問題ありません。本稼働データ用に別のマネージメントクラス/ストレージクラスの組み合わせを作成するだけで完了です。

  • 単一の作業負荷の別々の MVC のセットへの分散」。すべてのサービスグループにとって頻繁に使用するタスクとなるので丁寧に学習してください。請求やセキュリティーのために、それぞれのクライアントに独自のリソースセットを与えたいと考えたことはありますか。その場合は作業負荷の分散が重要です。

  • データのアーカイブ」。このシナリオでは、StorageTek の自動テープ/仮想テープ環境のみで、VTCS を使用して HSM と同様の処理を実行できます。つまり、MGMTclas 文の ARCHAge および ARCHPol パラメータを使用すると、マネージメントクラスの VTV に対して Archive Policy を設定できます。

    StorageTek のストレージ管理ストラテジーである Information Lifecycle Management (ILM) の主要概念は、データは企業内での重要性や再利用パターンに適合するメディアに保存するということです。つまり、アクティブで重要なデータは高速アクセスが可能なメディアに格納するとともに複数のコピーを作成し、非アクティブで重要性の低いデータは大容量の低価格メディアにアーカイブします。このプロセスの自動化は、データストレージを管理する上でもっともコスト効率に優れた方法です。アーカイブでは、ILM を使って非アクティブなデータをアーカイブできます。VTCS アーカイブを使えば、VTV を異なるメディア (たとえば、高速アクセス 9840 メディアから大容量 9940 メディア) や異なる位置 (たとえば、ローカル ACS からイジェクトやボールト用のリモート ACS) に移動できます。詳細については、「データのアーカイブ」を参照してください。

  • VTV メディアと場所の再統合」。アーカイブをプロアクティブな移動として考えます。ILM サイクルでは、始めにデータを適切なメディアに配置します。そして、時間の経過に合わせてほかのメディアに移動します。それでは、データが間違ったメディアに配置された場合はどうなるでしょうか。回答: RECONcil ユーティリティーを使用して、別のストレージクラスに移動します。

  • VTV 移行の管理。ELS では、VTV 移行を詳細に管理できます。管理作業には、VTSS バッファーからのスクラッチ VTV の削除、即時移行の遅延間隔の指定、最大 VTV 常駐間隔の指定などがあります。詳細は、『HSC および VTCS の構成』および『ELS 障害回復およびオフサイトデータ管理ガイド』を参照してください。

共有 MVC 上での複数の作業負荷のグループ化

ストレージおよびマネージメントクラスを使用して、複数の作業負荷を共有 MVC 上でグループ化できます。たとえば、次の STORclas 文は、ストレージクラス LOC1、LOC2、REM1、REM2 を定義します。

STORCLAS NAME(LOC1) ACS(00) MEDIA(STK1R)
STORCLAS NAME(LOC2) ACS(00) MEDIA(STK1R)
STORCLAS NAME(REM1) ACS(01) MEDIA(STK2P,ZCART)
STORCLAS NAME(REM2) ACS(01) MEDIA(STK2P,ZCART)
  • マネージメントクラス PAY および ACCOUNT は、両方ともストレージクラス LOC1 および REM1 を MIGPOL パラメータ上で指定しています。したがって、PAY および ACCOUNT の VTV は、ストレージクラス LOC1 および REM1 で定義された MVC 上で二重化され、グループ化されます。

  • マネージメントクラス PROD は、MIGPOL パラメータ上でストレージクラス LOC2 および REM2 を指定しています。したがって、PROD の VTV は、ストレージクラス LOC2 および REM2 で定義された MVC 上で二重化され、グループ化されます。これらは、PAY および ACCOUNT とは別のものです。

    MGMT NAME(PAY) MIGPOL(LOC1,REM1)
    MGMT NAME(ACCOUNT) MIGPOL(LOC1,REM1)
    MGMT NAME(PROD) MIGPOL(LOC2,REM2)
    

次は、仮想メディアを指定して、それぞれにマネージメントクラスの PAY、ACCOUNT、および PROD を割り当てるテープポリシーを定義しています。

POLICY NAME (PPAY) MEDIA(VIRTUAL) MGMT(PAY)
POLICY NAME (PACCOUNT) MEDIA(VIRTUAL) MGMT(ACCOUNT)
POLICY NAME (PPROD) MEDIA(VIRTUAL) MGMT(PROD)

最後に、この例では、ポリシーを次のように割り当てる TAPEREQ 文を示しています。

  • PAYROLL.** の修飾子を持つデータセットには、PPAY ポリシーが割り当てられます。

  • ACCOUNTS.** の修飾子を持つデータセットには、PACCOUNT ポリシーが割り当てられます。

  • そのほかのすべてのデータセットには、PPROD ポリシーが割り当てられます。

    TAPEREQ DSN(PAYROLL.**) POLICY(PPAY)
    TAPEREQ DSN(ACCOUNTS.**) POLICY(PACCOUNT)
    TAPEREQ DSN(**) MEDIA(VIRTUAL) POLICY(PPROD)
    

一度 MVC がストレージクラスに使用されると、その MVC に現在の VTV のコピーがある間、MVC は対象のストレージクラスに排他的に割り当てられた状態になります。この MVC 上の VTV のグループ化は、MVC がリクレイム処理を受けたあともそのまま維持されます。

注意:

デフォルトのストレージクラス (リクレイムまたは移行で MVC に最後に書き込まれた VTSS の名前) を使用して、作業負荷をグループ化することはできません。

単一の作業負荷の別々の MVC のセットへの分散

ストレージおよびマネージメントクラスを使用して、単一の作業負荷を別々の MVC のセットに分散できます。たとえば、次の STORclas 文は、ストレージクラス LOC、CUSTA、CUSTB1、CUSTB2 を定義します。

STORCLAS NAME(LOC) ACS(00) MEDIA(STK1R)
STORCLAS NAME(CUSTA) ACS(00) MEDIA(STK1R)
STORCLAS NAME(CUSTB1) ACS(00) MEDIA(STK1R)
STORCLAS NAME(CUSTB2) ACS(01) MEDIA(STK2P)

次の例は、次のマネージメントクラスを定義します。

  • マネージメントクラス CUSTA は、ストレージクラス CUSTA を MIGPOL パラメータ上で指定しています。この顧客の希望に合わせて、VTCS はこのマネージメントクラスの VTV を CUSTA ストレージクラス (ローカル ACS の 9840 メディア) のみに単一化します。

  • 顧客 B は保護の強化、すなわちローカルおよびリモート ACS の二重化を望むため、マネージメントクラス CUSTB は CUSTB1 および CUSTB2 ストレージクラスの両方を指します。

  • 最後に、本稼働データに対してはローカル ACS/9840 メディアだけでよいため、マネージメントクラス PROD はそのように定義します。ほかの作業としては、最終的にストレージに移動できるように、このマネージメントクラスのアーカイブポリシーを設定します (データのアーカイブを参照)。

    MGMT NAME(CUSTA) MIGPOL(CUSTA)
    MGMT NAME(CUSTB) MIGPOL(CUSTB1,CUSTB2)
    MGMT NAME(PROD) MIGPOL(LOC)
    

この例は、仮想メディアを指定して、それぞれにマネージメントクラスの PAY、ACCOUNT、および PROD を割り当てるテープポリシーを定義しています。

POLICY NAME (PCUSTA) MEDIA(VIRTUAL) MGMT(CUSTA)
POLICY NAME (PCUSTB) MEDIA(VIRTUAL) MGMT(CUSTB)
POLICY NAME (PPROD) MEDIA(VIRTUAL) MGMT(PROD)

最後に、次の例は、対応する TAPEREQ 文とポリシーの割り当てを示しています。

  • HLQ CUSTA が指定されたデータセットには、PCUSTA ポリシーが割り当てられます。

  • HLQ CUSTB が指定されたデータセットには、PCUSTB ポリシーが割り当てられます。

  • そのほかのすべてのデータセットには、PPROD ポリシーが割り当てられます。

    TAPEREQ DSN(CUSTA.**) POLICY(PCUSTA)
    TAPEREQ DSN(CUSTB.**) POLICY(PCUSTB)
    TAPEREQ DSN(**) POLICY(PPROD)
    

注意:

デフォルトのストレージクラス (リクレイムまたは移行で MVC に最後に書き込まれた VTSS の名前) を使用して、作業負荷を分散させることはできません。

データのアーカイブ

MGMTclas 文の ARCHAge と ARCHPol パラメータを使って、マネージメントクラスの VTV にアーカイブポリシーを設定できます。VTV の古さが ARCHAge 値を超えている場合、VTV は ARCHPol パラメータで指定されているストレージクラスのアーカイブに適していることになります。実際のアーカイブは、次の 2 つの方法のいずれかになります。

  • 次に VTV のリコールと再移行が実行されるときに自動的に行われる。

  • ARCHIve ユーティリティーを使用したオンデマンド。

これに対する「what if」は、コンプライアンスを保証するためのものである可能性があります。外部監査のためにデータを 7 年間保持する必要があるが、社内監査では毎年 1 回見られる可能性があるとします。この場合のソリューションは次のようになります。

TAPEREQ DSN(COMPLY.**) POLICY(PCOMPLY)
POLICY NAME(PCOMPLY) MEDIA(VIRTUAL) MGMT(COMPLY)
MGMT NAME(COMPLY) IMMMED(DELETE) MIGPOL(LOC1) -
ARCHAGE(365) ARCHPOL(REMDEEP)
STOR NAME(LOC1) ACS(00) MEDIA(STK1R)
STOR NAME(REMDEEP) ACS(01) MEDIA(STK2P)

このシナリオでは、次のように処理されます。

  • すべてのコンプライアンスデータは即座にローカル ACS に移行され、9840 メディア上でグループ化されます。移行が成功したら、VTV は VTSS から削除されます。社内監査で翌年このデータが参照されるケースを考えて、このデータの「アーカイブ期間」は 365 日になっています。

  • その後、データは、リモート ACS の 9940 メディアへアーカイブ (移動) 可能になります。

結果: 仮想リソースを最適化しながら、最適なコストでのコンプライアンス。

アーカイブの使用上の注意

前述したように、実際のアーカイブを使用する場合、VTV がリコールおよび移行されるまで待つ方法と、ARCHIve ユーティリティーを使用してオンデマンドで実行する方法の 2 つがあります。再移行を待つことの問題は、これがアクセスされない可能性が高いデータであることです。おそらく、VTV をアーカイブする最善の方法は、ARCHIve ユーティリティーを定期的または必要に応じて実行することでしょう。

ARCHive ユーティリティーを使用するためのヒントを次に示します。

  • アーカイブする VTV を選択するために、次のパラメータのいずれかを指定できます。

    • MGMTclas。指定されたマネージメントクラスの ARCHAge/ARCHPol パラメータが指定するストレージクラスに VTV をアーカイブします。

    • VTV。それらの VTV に対して、マネージメントクラスの VTV のリストまたは範囲をアーカイブします。

      注記:

      MGMTclas または VTV に値を指定しない場合は、すべての VTV がスキャンされます。マネージメントクラスを使うことが多くなるでしょうが、VTV volser またはすべての VTV を使う状況もあり得ます。
  • MOVEVTV パラメータを指定しないと、アーカイブ要求で処理する VTV、MVC、および M バイト合計という貴重な「what if」の概要を示すレポートだけを取得できます。そのため、Oracle では、まず ARCHIve を MOVEVTV なしで実行してから、MOVEVTV を指定する前に、必要に応じてジョブを調整することを強くお勧めします。詳細については、ELS のコマンド、制御文、ユーティリティーに関するリファレンスを参照してください。

  • デマンドアーカイブはリソースを大量に消費する可能性があるので、通常は処理のピーク時を避けて ARCHIve を実行します。また、ARCHIve ユーティリティーを使用して CONFIG RECLAIM THRESHLD、MAXMVC、および CONMVC 設定をオーバーライドして、アーカイブのパフォーマンスを最適化することもできます。さらに、ELAPSE パラメータでアーカイブの最大時間を分で指定することもできます。アーカイブに影響する制限要素は複数あるので注意してください (たとえば、MAXMVC および ELAPSE)。VTCS は、もっとも厳格な制限要素を実現します。たとえば、ARCHIve を実行して、ELAPSE を 5 時間、MAXMVC を 10 に指定し、かつ VTCS が 1 時間に 10 の MVC をアーカイブすると、ELAPSE 値の期限が終了する前にアーカイブが終了されます。

  • POLICYdd パラメータを指定する場合を除き、ARCHIve 要求を処理するには、VTCS と HSC がアクティブである必要があります。POLICYdd (「レポートのみ」モードを強制します) も拡張された「what if」機能を提供します。異なるアーカイブポリシー (異なる ARCHAge および ARCHPol 値) を使用して代わりの MGMTclas 文を 1 つまたは複数作成し、POLICYdd を使用して、各シナリオでのアーカイブポリシーとリソースの使用を表示できます。

  • RECONcil ユーティリティーは、ARCHive に類似しています。それは、RECONcil もストレージクラス間 (つまり、MVC メディア間や ACS 間) で VTV を移動するためです。ARCHive をプロアクティブ、RECONcil をリアクティブと見なすと違いがわかります (「VTV メディアと場所の再統合」を参照してください)。

365 日が経過して、社内監査が実施されず、アーカイブのタイミングになったとします。以下の例は、次のように ARCHive を実行するための JCL を示しています。

  • マネージメントクラス COMPLY の VTV を、リモート ACS の 9940 メディアにアーカイブします。

  • ARCHive ジョブに対して、MAXMVC を 60、CONMVC を 8、および ELAPSE を 60 にそれぞれ設定します。

    //ARCHIVE     EXEC PGM=SLUADMIN 
    //STEPLIBDD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR //SLSPRINTDD SYSOUT=*
    //SLSINDD *
    ARCH MGMT(COMPLY) MAXMVC(60) CONMVC(8) ELAPSE(360) MOVEVTV 
    

ヒント:

MOVEVTV パラメータもレポートを提供するので、処理結果を確認できます。調整したパラメータで必要な対象がアーカイブされなかった場合は、ジョブを調整して再実行します。

VTV メディアと場所の再統合

RECONcil を使用して VTV メディアと場所を再統合することは、基本的に VTV をストレージクラス間で移動することを意味します。これは、ARCHive を使用したデータのアーカイブと同じでしょうか。データの移動という観点からは、そのとおりです。この作業を実行する理由という観点からは、これはプロアクティブではなくリアクティブです。通常、VTV の再統合は次の場合に行ないます。

  • VTV が間違ったメディア、間違った ACS、またはその両方にある場合。

  • 利用できない状態が相当期間続いていた ACS がオンラインに戻った場合。この場合、まず、影響を受ける VTV の MGMTclas 文の MIGpol パラメータを変更して別の ACS (必要に応じてメディア) を指示します。元の ACS がオンラインに戻ったときに、MGMTclas 文の MIGpol パラメータを元の ACS を指示するように変更し、更新された MGMTclas (または STORclas) 文を指定している RECONcil を実行して VTV を元の ACS に移動します。

再統合処理の詳細については、「RECONcil の例」を参照してください。

RECONcil の例

間違ったメディア、間違った ACS に存在する VTV を再統合するとします。どうやってそのことに気づくでしょうか。それは、「HSC および VTCS の管理」に説明したように、VTV レポートを毎週検証するからです。今週、本稼働 (PROD) マネージメントクラスのすべての VTV が間違ったメディアおよび間違った ACS に存在することに気付きます。さらに、ストレージクラスも正しくないようです。

どうしてこのようなことが起きたのでしょうか。それは、次のことを行なったからだと思われます

STORCLAS NAME(LOC) ACS(00) MEDIA(STK1R)
STORCLAS NAME(CUSTA) ACS(00) MEDIA(STK1R)
STORCLAS NAME(CUSTB1) ACS(00) MEDIA(STK1R)
STORCLAS NAME(CUSTB2) ACS(01) MEDIA(STK2P
MGMT NAME(CUSTA) MIGPOL(CUSTA)
MGMT NAME(CUSTB) MIGPOL(CUSTB1,CUSTB2)
MGMT NAME(PROD) MIGPOL(LOC)

この例によると、マネージメントクラス PROD 内にあるものはすべて、最終的にローカル ACS 内の 9840 メディアに配置されます。しかし、実際には、リモート ACS 内の 9940 メディアにすべてあります。まるで違ったストレージクラス内にあるようです。

よく調べてみると、本稼働のマネージメントクラスが実際には次のようになっています。

MGMT NAME(PROD) MIGPOL(CUSTA)

これは別の理由からも好ましくありません。それは、ある顧客専用に想定されているのと同じ MVC に本稼働データが共存しているからです。それでは RECONcil を実行すべきでしょうか。おそらくそうではありません。RECONcil は VTV を間違ったストレージクラスから移動するだけで、現時点では、マネージメントクラスの文の記述によると CUSTA が正しいストレージクラスになっています。RECONcil を実行する前に、このマネージメントクラスを次のように修正する必要があります。

MGMT NAME(PROD) MIGPOL(LOC)

これで、次のように RECONcil を実行できます。

  • マネージメントクラス PROD の VTV を、ストレージクラス LOC 内の更新された正しい場所に移動します。

  • RECONcil ジョブに対して、MAXMVC を 60、CONMVC を 8、および ELAPSE を 60 にそれぞれ設定します。

    //RECONCIL    EXEC PGM=SLUADMIN 
    //STEPLIBDD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR
    //SLSPRINTDD SYSOUT=* 
    //SLSINDD * 
    RECON MGMT(PROD) MAXMVC(60) 
    CONMVC(8) ELAPSE(360) MOVEVTV 
    

RECONcil の使用上の注意

再統合する VTV を選択するために、次のいずれかのパラメータを指定できます。

  • MGMTclas。MIGpol パラメータで指定したストレージクラスへ VTV を移動します。これは「RECONcil の例」で行なった処理です。マネージメントクラスが間違ったストレージクラスを指しているので、正しいストレージクラスを指すようにしてから、更新されたマネージメントクラスに対して RECONcil を実行します。

  • STORclas。指定されたストレージクラスへ VTV を移動します。これは、ACS が利用できない状態が相当期間続いた場合などに使用します。

  • MVC。MVC のリストまたは範囲上の VTV を再統合します。VTV は、VTV に対する MGMTclas 文の MIGpol パラメータで指定したストレージクラスに移動します。まずこれを使用し、続いて VTV オプションを使用できます。

  • VTV。VTV のリストまたは範囲を再統合します。VTV は、VTV に対するマネージメントクラスの MIGpol パラメータで指定したストレージクラスに移動します。

注記:

  • MGMTclas または VTV に値を指定しない場合は、すべての VTV がスキャンされます。

  • VTV の再統合は大量のリソースを消費する可能性があるので、通常は処理のピーク時を避けて RECONcil を実行します。また、RECONcil ユーティリティーを使用して、CONFIG RECLAIM THRESHLD、MAXMVC、CONMVC 設定をオーバーライドして、再統合のパフォーマンスを最適化することもできます。さらに、ELAPSE パラメータで再統合の最大時間を分で指定することもできます。

    再統合に影響する制限要素は複数あるので注意してください (たとえば、MAXMVC および ELAPSE)。VTCS は、もっとも厳格な制限要素を実現します。たとえば、RECONcil を実行して、ELAPSE を 5 時間、MAXMVC を 10 に指定し、かつ VTCS が 1 時間に 10 の MVC を再統合すると、ELAPSE 値の期限が終了する前に再統合が終了されます。

  • MOVEVTV パラメータを指定しないと、再統合要求で処理する VTV、MVC、および MB 合計という貴重な「what if」の概要を示すレポートだけを取得できます。そのため、Oracle では、まず RECONcil を MOVEVTV なしで実行してから、MOVEVTV を指定する前に、必要に応じてジョブを調整することを強くお勧めします

    詳細については、ELS のコマンド、制御文、ユーティリティーに関するリファレンスを参照してください。

  • POLICYdd パラメータを指定する場合を除き、RECONcil 要求を処理するには、VTCS と HSC がアクティブである必要があります。POLICYdd (「レポートのみ」モードを強制します) も拡張された「what if」機能を提供します。異なる再統合シナリオ (異なる MIGpol 値) を使用して代わりの MGMTclas 文を 1 つまたは複数作成し、POLICYdd を使用して、各シナリオでの再統合された VTV とリソースの使用を表示できます。

  • RECONcil 要求を処理するには、VTCS および HSC がアクティブでなければなりません。

Named MVC プールかそうでないか

Named MVC プールは、すべてのサービスグループのジョブに適したツールです。Named MVC プールを使用すると、Named プール内にある MVC の所有権をアプリケーションに割り当てることができます。たとえば、顧客が MVC のグループを購入および所有するために法的な要件を満たす必要があるサービスグループでは、Named MVC プールの使用を選択できます。

しかし、Named MVC に関する特定要件がなく、MVC 上のクライアントデータをグループ化または区分する場合は、Named MVC プールを使用しないことを強くお勧めします。この方法ではなく、次のセクションで説明する方法を使用してください。

上記のセクションでは、ストレージクラスを使用して、システム全体の MVC プールから MVC を選択し、その MVC のデータをグループ化または分散させる方法について説明します。この場合、単一の MVC プールだけを管理する必要があります。

Named MVC プールを作成する場合には、各プールを明示的に管理しなければなりません。たとえば、各プールに十分な空き MVC と使用可能な MVC スペースが存在しなければなりません。また、MVCPool MVCFREE、MAXMVC、THRESH、および START パラメータを使用して、各プールに個別のポリシーを設定しなければならない場合もあります。

Named MVC プールを使用する場合は、「Named MVC プールの作成と使用」に進みます。

Named MVC プールの作成と使用

Named MVC プールを作成して使用するには、次を実行します。

  1. 既存の POOLPARM 文を変更し、Named MVC プールを定義する文を追加します。

    POOLPARM NAME パラメータを指定しないと、VTCS は指定されたサブプールを作成せずに、指定したボリュームをデフォルトのプール (DEFAULTPOOL) に割り当てます。名前に DEFAULTPOOL および ALL の予約語を含む MVC プールは作成できません。

    オプションの MVCFREE、MAXMVC、THRESH、および START パラメータを使用して Named MVC プールの値を指定します。これは CONFIG で指定したグローバル値をオーバーライドします。

    たとえば、次の VOLPARM および POOLPARM 文は、CONFIG グローバル値をオーバーライドするリクレイムパラメータ値を使用して、Named プール SYS1MVCT1 の暗号化される T10000 フル容量ボリュームの範囲を定義します。

    VOLPARM VOLSER(T10K2000-T10K2999)MEDIA(T10000T1)RECTECH(T1AE) 
    POOLPARM NAME(SYS1MVCT1)TYPE(MVC)MVCFREE(40) MAXMVC(4) THRESH(60) START(70) 
    
  2. SET VOLPARM を実行して、ボリュームとプールの定義を適用します。

    
    SET VOLPARM APPLY(YES)
    
  3. ストレージクラスを定義して、Named MVC プールに関連付けます。

    たとえば、次の STORclas 文では、STORCL1 を定義し、このストレージクラスを Named MVC プール CUST1POOL に関連付けています。ストレージクラス STORC1 に MVC の使用が要求されると、MVC は Named プール SYS1MVCT1 からのみ選択されるようになります。

    STOR NAME(STORCL1) MEDIA(T!AE) MVCPOOL(SYS1MVCT1) 
    
  4. 手順 3 で定義したストレージクラスを指定するマネージメントクラスを作成し、データを Named MVC プールにルーティングするときに、これらのマネージメントクラスを指定します。

    詳細については、「VTCS マネージメントおよびストレージクラスの作成と使用: 基本」を参照してください。

  5. 次のいずれかで、VTCS にマネージメントクラスを指定します。

    • SMC TAPEREQ 文。

    • StorageTek DFSMS インタフェースに記述した SMS ルーチン。詳細は、『SMC の構成と管理』を参照してください。