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Oracle® Fusion Middleware Oracle WebCenter Portalエンタープライズ・デプロイメント・ガイド
11gリリース1 (11.1.1.9.0)
B55900-11
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1 エンタープライズ・デプロイメントの概要

この章では、Oracle WebCenter Portalエンタープライズ・デプロイメントの概要を示します。

この章には次のトピックが含まれます:

1.1 エンタープライズ・デプロイメント・ガイドについて

このエンタープライズ・デプロイメント・ガイドは、Oracle WebCenter Portalエンタープライズ・デプロイメントの実証済高可用性テクノロジ、セキュリティ・テクノロジおよび推奨事項に基づいたベスト・プラクティスの青写真です。これらの青写真に示すベスト・プラクティスは、技術スタック全体において多くのOracle製品を対象にしています。それらの製品には、Oracle Database、Oracle Fusion MiddlewareおよびEnterprise Manager Fusion Middleware Controlがあります。

Oracle Fusion Middlewareのエンタープライズ・デプロイメントの特長は、次のとおりです。

  • 様々なビジネス上のサービス・レベル合意(SLA)を考慮し、高可用性に対するベスト・プラクティスを可能なかぎり広範囲に適用できるようにします。

  • データベース・グリッド・サーバーと低コストのストレージを使用したストレージ・グリッドを活用し、回復力に優れ低コストのインフラストラクチャを提供します。

  • 様々な構成に対する広範なパフォーマンス影響調査の結果を利用し、最適な高可用性アーキテクチャを構成して、実行およびビジネス・ニーズに合せたスケール変更を可能にします。

  • 停止状態からのリカバリ時間と自然災害時に許容可能なデータ損失量を制御できます。

  • ハードウェアやオペレーティング・システムに依存しない、Oracleのベスト・プラクティスと推奨アーキテクチャを使用します。

高可用性の実現の詳細は、Oracle Technology NetworkのOracle Database高可用性に関するページ(http://www.oracle.com/technetwork/database/features/availability/maa-best-practices-155366.html)を参照してください。


注意:

Oracle WebCenter Portalのエンタープライズ・デプロイメント・ガイドは、Linux環境におけるエンタープライズ・デプロイメントを中心に説明しています。しかしながら、UNIX環境やWindows環境を使用したエンタープライズ・デプロイメントの実装も可能です。

1.2 エンタープライズ・デプロイメントの用語

この項では、以前のリリースのコンポーネントで使用されていた用語と、それに対応する11gリリース1 (11.1.1.9.0)の用語について説明します。

  • Oracleホーム: Oracleホームには、特定の製品をホストするために必要な、インストール済のファイルが含まれています。たとえば、WebCenter Portal Oracleホームには、Oracle WebCenter Portalのバイナリおよびライブラリ・ファイルを含むディレクトリが含まれています。Oracleホームは、ミドルウェア・ホームのディレクトリ構造の内部にあります。各Oracleホームは、複数のOracleインスタンスやOracle WebLogic Serverドメインと関連付けることができます。

  • Oracle共通ホーム: この環境変数と関連ディレクトリ・パスは、Oracle Enterprise Manager Fusion Middleware ControlおよびJava Required Files (JRF)に必要なバイナリおよびライブラリ・ファイルが含まれるOracleホームを指しています。

  • WebLogic Serverホーム: WebLogic Serverホームには、WebLogic Serverをホストするために必要な、インストール済のファイルが含まれています。WebLogic Serverホームのディレクトリは、Oracleホームのディレクトリのピアで、ミドルウェア・ホームのディレクトリ構造の内部にあります。

  • ミドルウェア・ホーム: ミドルウェア・ホームは、Oracle WebLogic Serverホームと、オプションとして1つまたは複数のOracleホームで構成されます。ミドルウェア・ホームは、ローカル・ファイル・システムに配置できますし、NFSを介してアクセス可能なリモート共有ディスクにも配置できます。

  • Oracleインスタンス: Oracleインスタンスには、Oracle Web Cache、Oracle HTTP Server、Oracle Internet Directoryなどの、1つ以上のアクティブなミドルウェア・システム・コンポーネントが含まれます。インストール時かその後でインスタンスの作成と構成を行うときに、インスタンスにどのコンポーネントを含めるかを決定しますOracleインスタンスには、更新可能なファイルがあります。それらのファイルの例には、構成ファイル、ログ・ファイル、一時ファイルなどがあります。

  • フェイルオーバー: 高可用性システムのメンバーに不測の障害が発生した場合(計画外停止)、サービスの提供をコンシューマに対して続行するため、システムではフェイルオーバー操作が行われます。システムがアクティブ/パッシブ型システムの場合、パッシブ・メンバーはフェイルオーバー操作においてアクティブになります。そしてコンシューマは、障害が発生したメンバーではなく、アクティブになったメンバーにダイレクトされます。フェイルオーバー操作は、手動でも実行できます。また、障害を検出した場合にクラスタのリソースを障害ノードからスタンバイ・ノードに移動するように、ハードウェア・クラスタ・サービスを設定することで、フェイルオーバー操作を自動化することもできます。システムがアクティブ/アクティブ型システムの場合、ロード・バランサのエンティティによりフェイルオーバーが実行されます。このエンティティによって、リクエストがアクティブ・メンバーで処理されます。アクティブ・メンバーに障害が発生すると、ロード・バランサにより障害が検出され、障害メンバーへのリクエストが、正常に動作しているアクティブ・メンバーに自動的にリダイレクトされます。アクティブ/アクティブ型システムとアクティブ/パッシブ型システムの詳細は、『高可用性ガイド』を参照してください。

  • フェイルバック: システムのフェイルオーバー操作が正常に終了した後、最初に障害を起こしたメンバーは修復され、スタンバイ・メンバーとしてシステムに再導入されます。必要に応じて、フェイルバック処理を開始して、このメンバーをアクティブにし、別のメンバーを非アクティブにすることができます。この処理によりシステムは、障害発生前の構成に戻ります。

  • ハードウェア・クラスタ: ハードウェア・クラスタは、これらのサービスのクライアントにネットワーク・サービス(例: IPアドレス)や、アプリケーション・サービス(例: データベース、Webサーバー)の単一ビューを提供するコンピュータの集まりです。ハードウェア・クラスタの各ノードは、それぞれ固有のプロセスを実行するスタンドアロン・サーバーです。これらのプロセスは互いに通信して、単一のシステムであるかのように動作して、アプリケーション、システム・リソースおよびデータを連携してユーザーに提供できます。

    特別なハードウェア(クラスタ・インターコネクト、共有記憶域)とソフトウェア(ヘルス・モニター、リソース・モニター)を使用することで、ハードウェア・クラスタにより高可用性とスケーラビリティが実現されます。クラスタ・インターコネクトは、ハートビート情報でノード障害を検出するハードウェア・クラスタで使用されるプライベート・リンクです。ハードウェア・クラスタでは特別なハードウェアとソフトウェアが必要なので、一般的にSun、HP、IBM、Dellなどのハードウェア・ベンダーによりハードウェア・クラスタは提供されています。ハードウェア・クラスタで構成可能なノードの数はベンダーによって異なりますが、Oracle Fusion Middlewareの高可用性を実現するのに必要なノードの数は2つのみです。このため、ハードウェア・クラスタを使用する高可用性ソリューションでは、2つのノードによるハードウェア・クラスタがこのドキュメントで前提にされています。

  • クラスタ・エージェント: ハードウェア・クラスタのノード・メンバー上で実行されるソフトウェアで、他のノードとの可用性やパフォーマンスの操作の調整をします。クラスタウェアによりリソースのグループ化と監視を行い、サービスを移行できます。クラスタ・エージェントではサービスのフェイルオーバーを自動化できます。

  • クラスタウェア: クラスタ・メンバーの処理を、1つのシステムとして管理するソフトウェアです。これにより、クラスタ・メンバー間のハートビート・メカニズムを使用して、監視対象のリソースとサービスのセットを定義したり、これらのリソースとサービスをクラスタ内の別のメンバーにできるだけ効率的かつ透過的な方法で移動することができます。

  • 共有記憶域: エンタープライズ・デプロイメント・ドメイン内のすべてのマシンがアクセスできる記憶域のサブシステムです。共有ディスクには特に次のものが配置されています。

    • ミドルウェア・ホームのソフトウェア

    • AdminServerドメイン・ホーム

    • JMS

    • Tlogs(該当する場合)

    Oracle WebCenter ContentまたはInbound Refinery管理対象サーバーを除いて、管理対象サーバー・ホームも共有ディスクに配置できます。共有記憶域は、Network Attached Storage (NAS)またはStorage Area Network (SAN)にすることができます。また、複数のノードが同時にアクセスして読込みと書込みができる他のストレージ・システムにすることもできます。

  • 1次ノード: Oracle Fusion Middlewareインスタンスをいつでもアクティブに実行しているノードであり、バックアップ/2次ノードを持つように構成されているノードです1次ノードに障害が発生すると、Oracle Fusion Middlewareインスタンスは2次ノードにフェイルオーバーされます。このフェイルオーバーは、管理サーバー用のクラスタウェアを使用して、手動または自動で実行できます。サーバー移行機能に基づいたシナリオでは、WebLogic Whole Server移行機能が自動化フェイルオーバーに使用されています。

  • 2次ノード: Oracle Fusion Middlewareインスタンスのバックアップ・ノードであるノード。1次ノードが使用できなくなると、アクティブなインスタンスでフェイルオーバーが実行されます。この項で、1次ノードに関する定義を参照してください。

  • ネットワーク・ホスト名: ネットワーク・ホスト名は、/etc/hostsファイルまたはDNS名前解決を通じてIPアドレスに割り当てられる名前です。この名前は、参照先マシンに接続する際にネットワークで参照可能です。ネットワーク・ホスト名と物理ホスト名が同一である場合があります。ただし、各マシンには物理ホスト名は1つのみ付与されますが、ネットワーク・ホスト名は複数付与される場合があります。そのため、マシンのネットワーク・ホスト名はその物理ホスト名であるとはかぎりません。

  • 物理ホスト名: このガイドでは、物理ホスト名とネットワーク・ホスト名を区別しています。このガイドでは、現在のマシンの内部名を指す場合に物理ホスト名が使用されます。UNIXでは、hostnameコマンドにより返される名前です。

    Oracle Fusion Middlewareで使用される物理ホスト名は、ローカル・ホストを示します。インストール中に、インストーラでは物理ホスト名が現在のマシンから自動的に取得され、ディスク上のOracle Fusion Middleware構成メタデータに格納されます。

  • 物理IP: 物理IPは、ネットワーク上のマシンのIPを示します。ほとんどの場合、マシンの物理ホスト名と関連付けられます(物理ホスト名に関する定義を参照)。仮想IPと対照的に、マシンがネットワークに接続されると、必ず同じマシンと関連付けられます。

  • スイッチオーバー: 通常の操作中に、システムのアクティブなメンバーのメンテナンスやアップグレードが必要になることがあります。スイッチオーバー処理を開始して、メンテナンスやアップグレード(計画停止中に実施)が必要なメンバーが処理していたワークロードを、代替メンバーが引き継ぐことができます。スイッチオーバー処理により、システムのコンシューマに対してサービスが続行できるようになります。

  • スイッチバック: スイッチオーバー操作の実行時、メンテナンスまたはアップグレードのためにシステムのメンバーは非アクティブ化されます。メンテナンスやアップグレードが完了すると、システムでスイッチバック処理を実行して、アップグレードしたメンバーをアクティブ化し、スイッチオーバー前の構成にシステムを戻すことがきます。

  • 仮想ホスト名: 仮想ホスト名はネットワーク・アドレスを指定可能なホスト名で、ロード・バランサまたはハードウェア・クラスタを通じて、1つ以上の物理マシンにマップされます。ロード・バランサの場合、このマニュアルでは仮想サーバー名の名前は仮想ホスト名と同じ意味で使用されます。複数のサーバーのセットを代表する仮想ホスト名をロード・バランサに付与でき、クライアントは仮想ホスト名を使用して、間接的にマシンと通信します。ハードウェア・クラスタの仮想ホスト名は、クラスタの仮想IPに割り当てられるネットワーク・ホスト名です。クラスタにある特定ノードにクラスタの仮想IPが永続的に付与されないため、仮想ホスト名も特定ノードに永続的に付与されません。


    注意:

    このドキュメントで仮想ホスト名という用語を使用する場合は、常にそれが仮想IPアドレスに関連付けられることを前提とします。IPアドレスが必要とされたり使用される場合、明示的に言及します。

  • 仮想IP: クラスタ仮想IP、ロード・バランサ仮想IPとも言います。一般的に、仮想IPはハードウェア・クラスタやロード・バランサに割り当てることができます。クラスタにおいて単一のシステム・ビューをネットワークのクライアントに対して実現するために、クラスタのメンバーであるサーバーのグループに対して仮想IPはエントリ・ポイントのIPアドレスとして機能します。仮想IPはハードウェア・クラスタやサーバーのロード・バランサに割り当てることができます。

    ハードウェア・クラスタではクラスタの仮想IPが使用され、外部の世界に対してクラスタ(スタンドアロンのマシンにも設定可能)へのエントリ・ポイントを実現します。ハードウェア・クラスタのソフトウェアにより、クラスタにある2台の物理ノード間においてこのIPアドレスの変更が管理されますが、クライアントはこのIPアドレスに接続します。その際、このIPアドレスが現在アクティブである物理ノードを判別する必要はありません。2台のノードによる標準的ハードウェア・クラスタ構成では、各マシンには固有の物理IPアドレスと物理ホスト名が付与されながら、数個のクラスタIPアドレスを付与することもできます。これらのクラスタIPアドレスは、2台のノードにおいて切り替わります。クラスタIPアドレスを現在所有しているノードは、そのアドレスでアクティブになります。

    また、ロード・バランサでも、複数のサーバーのセットのエントリ・ポイントとして仮想IPが使用されます。これらのサーバーは、同時にアクティブになる傾向があります。この仮想IPアドレスは個々のサーバーには割り当てられませんが、サーバーとクライアントとの間においてプロキシとして動作するロード・バランサに割り当てられます。

1.3 Oracle推奨事項のメリット

このガイドで説明するOracle Fusion Middleware構成では、すべての起動でセキュリティが確保され、ハードウェア・リソースが最大化され、様々なアプリケーションを使用したエンタープライズ・コンピューティングのために信頼性が高く標準に準拠したシステムを提供するために設計されています。

Oracle Fusion Middleware構成のセキュリティと高可用性のメリットは、ファイアウォール・ゾーンの分離とソフトウェア・コンポーネントのレプリケーションを通じて実現されます。

1.3.1 組込みセキュリティ

エンタープライズ・デプロイメント・アーキテクチャのセキュリティを確保するためには、ソフトウェア・コンポーネントのすべての機能グループを各グループ固有のDMZで分離し、すべてのトラフィックをプロトコルとポートによって制限します。次の特長により、必要なレベルのすべてのセキュリティが確保され、高レベルの標準の準拠が実現します。

  • ポート80で受信した外部通信はすべてポート443にリダイレクトするように、外部のロード・バランサを構成します。

  • 外部のクライアントからの通信はロード・バランシング・ルーターを超えたレベルでは発生しません。

  • ロード・バランシング・ルーターからデータ層への直接的な通信は許可されません。

  • コンポーネントは、Web層、アプリケーション層およびデータ層の異なる保護ゾーンで分離されます。

  • いずれの時点においても、2つのファイアウォール間での直接的な通信は禁止されています。

  • 1つのファイアウォール・ゾーンで通信が始まった場合、それは次のファイアウォール・ゾーンで終わる必要があります。

  • Oracle Internet Directoryはデータ層内で独立しています。

  • Oracle Identity Managementコンポーネントは別のサブネットにあります。

  • 複数の保護ゾーンにおいて複数のコンポーネント間の通信はすべて、ファイアウォールのルールに従いポートとプロトコルによって制限されます。

1.3.2 高可用性

各コンポーネントまたはソフトウェア・コンポーネントの機能グループが別のコンピュータにレプリケートされており、コンポーネント・レベルでの高可用性を実現するように構成されます。このため、エンタープライズ・デプロイメント・アーキテクチャでは高い可用性が実現されます。