1 概要

ACSLS 8.4 では、多様なプラットフォームおよびファイルシステムの設定により、カスタマにより高い柔軟性が提供されます。ACSLS パッケージは、最新の Solaris 11.2 または Oracle Linux 6.5 プラットフォーム上の任意のファイルシステムにインストールされます。

その他の ACSLS ドキュメントについては、次にある OTN (Oracle Technical Network) を参照してください。

http://docs.oracle.com/

要件

このセクションでは、ソフトウェア、システム、ブラウザ、および共同ホスティングの要件について説明します。

ソフトウェア要件

  • 次を対象とした ACSLS 8.4 がテストされ、ドキュメント化されています。

    • Solaris 11 Update 2 を実行している Oracle の Sun SPARC および X86 プラットフォーム。

    • Oracle Linux 6.5。

      Oracle Linux のテストは、Oracle の Unbreakable Enterprise Kernel を使用する環境で行われました。

  • 仮想環境を含むその他のオペレーティングシステムは、テストもサポートもされていません。

  • ACSLS では、論理ライブラリやファイバ接続ライブラリ (SL500 や SL150 など) で使用する特別なデバイスドライバも提供されます。これは、Solaris ゾーン環境の問題です。このようなデバイスドライバはシステムカーネルに接続されるため、大域ゾーンへの配置が必要です。このようなドライバを使用する場合は、ACSLS をローカルゾーン環境にインストールできません。

  • ACSLS 8.4 HA (High Availability) システムは専用のプラットフォームペアにインストールする必要があります。

操作面で承認済み

この製品は、次に説明されているオペレーティング環境で実行するために正常にインストールされました。製品や関連する実行環境に悪影響を与えることなく基本機能を提供することが実証されています。

Red Hat Enterprise Linux

システム要件

  • メモリー: 4G バイト以上

    システムメモリーを表示するには:

    • Solaris

      prtconf | grep Mem
      
    • Linux

      grep MemTotal /proc/meminfo
      
  • スワップ: (Solaris 11.2 および Linux 6.5 を使用する) 今日のシステムには、4G バイト以上のメモリーと 2G バイト以上のスワップが搭載されているべきです。システムメモリーが 6G バイトを超える場合、スワップ領域は物理メモリーの 30% 以上です。スワップ空間を確認するには:

    • Solaris

      vmstat -S
      

      結果は K バイト単位で表されます。

    • Linux

      vmstat -s | grep total 
      

      結果は K バイト単位で表されます。

  • ファイルシステムおよび必要なデータベース:

    ACSLS 8.4 は任意のファイルシステムにインストールできます。ACSLS をインストールする前に、次のディレクトリを定義する必要があります。

    • ACSLS コンポーネントがインストールされるベースディレクトリ。

    • ACSLS バックアップ用のデフォルトディレクトリ。必須ではありませんが、ACSLS のベースディレクトリとは別のファイルシステムに ACSLS バックアップディレクトリを配置することをお勧めします。

    ACSLS は任意のディレクトリにインストールできますが、ACSLS に使用されるデフォルトディレクトリは次のとおりです。

    • /export/home がデフォルトの ACSLS ベースディレクトリです。

    • /export/backup がデフォルトの ACSLS バックアップディレクトリです。

    ACSLS ベースディレクトリのファイルシステムには、少なくとも 5G バイトの空き容量が必要です。ACSLS バックアップ用にさらに 5G バイトの空き容量を予約してください。ファイルシステムのサイズを表示するには:

    df -h
    
  • ファイバカード (オプション) はオプションです。ファイバチャネル動作用に適切な HBA が必要です。

    • 論理ライブラリ機能をサポートするターゲットモード動作については、この HBA は現世代の QLogic ファイバカード (4G バイト以上) である必要があります。

    • ファイバ接続ライブラリ (SL500 または SL150) をサポートするイニシエータモード動作については、ACSLS 8.4 は QLogic および Emulex HBA で十分にテストされ、認証されています。

ブラウザ要件

正式なテストは、最新リリースの FireFox、Chrome、および Internet Explorer に限定されていましたが、ACSLS 8.4 GUI は、もっとも一般的な最新のブラウザで動作できます。Chrome ブラウザおよび以前のバージョンの FireFox は、WebLogic サーバーでの ACSLS のデフォルト設定を使用して適切にテストされました。Internet Explorer V8 (以降) および FireFox V39 (以降) では、https 用の 2048 ビットの自己署名デジタル証明書を提供するために構成設定が必要です。『ACSLS 8.4 インストールガイド』のセクション「HTTPS 用の自己署名付きデジタル証明書の構成」を参照してください。

共同ホスティング

中断なしのライブラリサービスを保証し、リソースの競合による予期しない問題を回避するために、一般に、ACSLS を専用サーバー上のスタンドアロン環境で実行することが推奨されています。ただし、一部のシステムは、複数のアプリケーションが相互に完全に分離されているように共同ホストされた方法で実行できるように設計されています。Solaris Containers および Oracle Solaris VM Server for SPARC では、ACSLS とともに使用するために条件付きの共同ホスティングが可能になっています。

次のリストでは、ACSLS アプリケーションのさまざまな共同ホスティングオプションに関連する条件および制限について詳細に説明します。

  • Solaris ゾーン (コンテナ)

    Solaris ゾーンを使用すると、システム管理者が標準の低コストサーバーを 4 台の独立した Solaris システム (それぞれが独自の分離したファイルシステムと、Solaris の独自のインスタンスを持つ) にパーティション分割できます。同じプラットフォーム上のその他のゾーンにあるアプリケーションに影響を与えることなく、ネットワークリソースを各ゾーンに割り当てたり、任意のローカル (非大域) ゾーンをリブートしたりできます。ただし、複数のゾーン間でデバイスドライバなどのカーネルリソースを共有する機能はほとんど役立ちません。カーネルドライバが必要なアプリケーションは大域ゾーン内に存在することが理想的です。ただし、アプリケーションが回復不能なエラー状態になると、その他のゾーン内で動作しているその他のすべてのアプリケーションが影響を受ける可能性があるため、一般に、大域ゾーンにアプリケーションをインストールすることは不適切な運用です。

    ネットワークインタフェース以外のドライバが必要ない場合にかぎり、ACSLS 8.4 を Solaris ゾーンにインストールできます。論理ライブラリを使用する場合はターゲットモードファイバチャネルドライバが必要になり、SL500 または SL150 ライブラリへの接続にはイニシエータモードファイバチャネルドライバが必要になります。いずれの構成でも、ACSLS を大域ゾーンにインストールする必要があります。

    Solaris ゾーンでの使用がサポートされている ACSLS HA バージョンはありません。

  • Oracle VM Server for SPARC

    Oracle VM Server for SPARC (以前の Logical Domains (LDoms)) テクノロジには、各ドメインを独自の Solaris カーネルで制御できる範囲までは、Solaris Containers よりも大きな利点があります。

    Solaris 管理者は、システム間でハードウェアリソースをパーティション分割することで、特定のリソースを特定のドメインに割り当てることができます。この仮想マシン上のネットワークリソースは、サーバー上の最大 128 個の任意のゲストドメイン間で簡単に共有できます。ただし、PCIe バスから I/O デバイスへのアクセスが必要なアプリケーションは、特別な I/O ドメインにインストールする必要があります。VM サーバー上に作成できる I/O ドメインの数は、SPARC プラットフォーム上にある個別の PCIe バスの数によって異なります。単一の PCIe バスが搭載されたシステムでは、2 つの I/O ドメインを持つことができます。このうち 1 つは制御ドメインにする必要があります。

    ACSLS アプリケーションがライブラリ、およびクライアントアプリケーションへのネットワーク接続にのみ依存する場合、このサーバー上のゲストドメインにインストールできます。仮想ネットワークの設定手順については、『 Oracle VM Server for SPARC 2.1 管理ガイド』ドキュメントの「仮想ネットワークの使用」セクションに記載されています。

    ACSLS 8.4 アプリケーションで論理ライブラリを使用する予定の場合や、SL500 や L700 などのファイバチャネルライブラリに接続する予定の場合は、ACSLS を I/O ドメインにインストールする必要があります。『Oracle VM Server for SPARC 2.1 管理ガイド』の「I/O ドメインの設定」セクションを参照してください。

    Solaris Cluster Software は Oracle VM Server for SPARC でサポートされているため、このプラットフォームは ACSLS HA アプリケーションで使用できます。『Oracle Solaris Cluster Data Service for Oracle VM Server for SPARC Guide』を参照してください。

ACSLS の概要

ACSLS は自動ライブラリ管理ソフトウェアです。これにより、複数のクライアントでの自動的なテープ操作が容易になり、ライブラリの使いやすさ、パフォーマンス、および可用性を強化するサービスとサポートが提供されます。1 台の ACSLS サーバーで、ライブラリ複合体、個々のライブラリ、または両方の混在に接続されているライブラリを制御できます。

ACSLS には、旧バージョンの ACSLS 7.3.1 製品で使用可能なライブラリ管理機能がすべて含まれています。ACSAPI クライアントでは、cmd_proc および ACSLS ユーティリティーがサポートされています (起動と停止は変更されました)。

グラフィカルユーザーインタフェース

Web ベースの ACSLS グラフィカルユーザーインタフェース (GUI) は、ライブラリの操作を行なってモニターし、論理ライブラリを管理して操作するためのグラフィカルコンソールを備えています。GUI の使用手順と詳細情報については、オンラインヘルプを参照してください。

  • 柔軟性と使いやすさが大幅に向上した代替のライブラリコンソール。これは、旧バージョンの cmd_proc で使用可能なほとんどの操作を提供します。

  • 論理ライブラリのサポート。

  • ライブラリの管理および操作用。論理ライブラリの管理に関する新しい操作とともに、旧バージョンの cmd_proc 操作の大部分を実行できます。

  • テープライブラリコンポーネントのリアルタイムモニタリング。

  • 物理構成および論理構成をナビゲートするツリーブラウザ。

  • 各画面から表示されるリアルタイムのアラート。

    アラートは、ハードウェアの損傷、データの破損、またはアプリケーションソフトウェアの破損につながる可能性がある状況を通知します。これは常に、関連する情報の前に表示されます。

  • ユーザーが指定した条件でボリュームとドライブの表示をフィルタする機能。

  • ユーザーがカスタマイズした、システムイベントとシステムログのビュー。

  • オンラインヘルプ。

論理ライブラリ

ACSLS GUI または lib_cmd を使用すると、特定の物理ライブラリ内のボリュームおよびドライブのサブセットが含まれる論理ライブラリを作成できます。これにより、物理ライブラリの論理サブセットを定義できるため、個別の論理ライブラリであるかのようにクライアントアプリケーションで管理および使用できるようになります。特定のクライアントアプリケーションで使用するように、論理ライブラリに特定の物理ライブラリ内のボリュームおよびドライブの一部 (または全部) を割り当てることができます。

  • 論理ライブラリが複数の物理 ACS (または物理パーティション) に及ぶことはできません。

  • 論理ライブラリは、ACSLS 8.x SCSI インタフェースを使用してクライアントにアクセスできます。旧バージョンの ACSAPI を使用するクライアントでは使用できません

  • 論理ライブラリに割り当てられた物理ドライブおよびカートリッジは、ACSAPI クライアントにアクセスできなくなります。物理ライブラリは、論理ライブラリに割り当てられていないドライブおよびボリュームとともに、引き続き ACSAPI クライアントにアクセスできます。

  • 論理ライブラリに割り当てられたドライブおよびボリュームは、排他的に割り当てられます。論理ライブラリ間でのドライブまたはボリュームの共有はサポートされていません。

オープンフォーマット (Volser)

ACSLS 8.x 以前は、物理ライブラリで長いボリュームラベルがサポートされるかどうかは、ライブラリのファームウェアおよび構成に依存していました。

現在は、ACSLS SCSI Media Changer Interface を使用すれば ACSLS で長いボリュームラベルがサポートされます。長いボリュームラベルは、GUI、CLI (cmd_proc)、およびユーティリティーから表示できます。

長いボリュームラベルは、SCSI Medium Changer インタフェースを使用して論理ライブラリにアクセスするクライアントによって表示されます。ACSAPI クライアントにはアクセスできません。

SCSI Media Changer over Fibre Client Interface

ACSLS 8.x では、論理ライブラリにアクセスできる SCSI Media Changer over Fibre Channel Interface が提供されています。ACSLS は、同時に複数の SCSI クライアントにサービスを提供できます。各クライアントは、割り当てられた論理ライブラリに排他的にアクセスできます。

これにより、NetBackup などのクライアントソフトウェアが個別の物理ライブラリであるかのように論理ライブラリを使用できます。各論理ライブラリは 1 つのクライアントにしか割り当てることができませんが、必要に応じて、特定のクライアントは複数の論理ライブラリにアクセスできます。ACSLS 8.x では、SCSI クライアントがバッキング物理ライブラリに直接アクセスすることは許可されていません。論理ライブラリに割り当てられたボリュームおよびドライブにのみアクセスできます。

SCSI クライアントアクセスは、論理ライブラリの作成時または変更時に確立できます。

ACSAPI クライアントインタフェース

ACSLS 8.4 では、既存のクライアントアプリケーションと互換性がある ACSAPI クライアントインタフェースが提供されています。ACSAPI インタフェースは、旧バージョンの ACSLS 7.3 製品で提供されているインタフェースと同じです。

アクセスと表示

ACSAPI クライアントは、論理ライブラリを表示することもアクセスすることもできません。

物理ドライブおよびカートリッジ

論理ライブラリに割り当てられた物理ドライブおよびカートリッジは、ACSAPI クライアントにアクセスできなくなります。物理ライブラリは、論理ライブラリに割り当てられていないドライブおよびボリュームとともに、引き続き ACSAPI クライアントにアクセスできます。

コマンド行インタフェース

acsss ユーザーと acssa ユーザーが、2 つの ACSLS コマンド行インタフェース cmd_proclib_cmd にアクセスできます。

ライブラリ制御のためのプライマリコマンド行インタフェースは cmd_proc です。cmd_proc を使用すると、物理テープボリュームとドライブに関連するすべてのライブラリ操作機能にアクセスできます。このような関数には、mountdismountenterejectauditquerydisplay、および vary が含まれます。

2 番目のコマンド行インタフェース lib_cmd は、主に論理ライブラリの構成に使用されますが、displayvaryeject など、物理ライブラリに関連するコマンドセットは限られています。

ユーティリティー

ACSLS では、ACSLS サーバーで動作しているシェルから実行できるユーティリティーセットが提供されています。これには、旧バージョンの ACSLS 7.3.1 製品で提供されていた従来のユーティリティーの大部分が含まれています。

これらのユーティリティーには次のものが含まれます。

  • データベーステーブルのバックアップおよび復元操作。

  • データベーステーブルのインポートおよびエクスポート操作。

  • 起動および停止操作。

  • 物理ライブラリの動的構成。

  • カートリッジのボールティング操作。

  • ライブラリ管理ユーティリティー。

  • ライブラリインベントリレポート。

acsss 起動および停止マクロ

ACSLS ソフトウェアは、単純なコマンド acsss を使用して操作される複数のサービスで構成されます。acsss マクロを使用すると、複数のサービスを単一のエンティティーとして起動、停止して、そのステータスをチェックできます。acsss マクロを使用する共通の操作には、次が含まれます。

  • ACSLS を起動する場合は acsss enable

  • ACSLS を停止する場合は acsss disable

  • さまざまなサービスのステータスをチェックする場合は、acsss status

有効にすると、さまざまなサービスが、Solaris Service Management Facility (SMF) または Linux init サービスユーティリティーによって制御およびモニターされます。システムのブート後は、これらのそれぞれのシステムユーティリティーによって自動再起動操作が処理されます。