この章では、WebLogic Server Multitenant (MT)でOracle Traffic Director (OTD)を構成する方法について説明します。この章の説明に従い、Fusion Middleware Control (FMWC)またはWLSTを使用して、Oracle Traffic Directorを構成できます。この章では、適宜追加情報について、Oracle Traffic Directorドキュメントおよびオンライン・ヘルプを参照します。
この章の内容は次のとおりです。
通常のデプロイメント・シナリオでは、Oracle Traffic Directorは、受信クライアント・リクエストをOracle WebLogic Serverに配布します。WLS MT環境では、OTDは、明示的なユーザー・アクションなしで自動的に、WLS MTパーティション管理を使用して構成を調整することによって、受信クライアント・リクエストをWLS MTパーティションに配布します。ただし、OTDマルチテナント・サポートを使用するには、次の各項の説明に従い、最初の1回かぎりのOTD構成を実行する必要があります。
次のデプロイメント・トポロジについて考えます。
別のドメインにあるOracle WebLogic Server MTおよびOracle Traffic Director
このトポロジでは、Oracle Traffic Directorは、WebLogic Server MTドメインとは別のドメインに存在します。これらのドメインは、異なるホスト上に指定できます。OTDドメインに存在するOracle Traffic Directorインスタンスは、異なるホスト上に存在する複数のWebLogic Server MTドメインにクライアント・リクエストを配布します。Oracle Traffic Directorは別のドメインにあっても、管理のためにWebLogic Serverとともに配置される必要があります。詳細は、『Oracle Traffic Directorのインストール』のOracle Traffic Directorドメイン構成の選択に関する項を参照してください。
単一のドメインにあるOracle WebLogic Server MTおよびOracle Traffic Director
このトポロジでは、Oracle Traffic Directorは、WebLogic Server MTドメインと同じドメインにあります。Oracle Traffic Directorインスタンスは、同じWebLogic Server MTドメインに存在し、そのドメインにクライアント・リクエストを配布します。このトポロジでも、OTDは管理のためにWebLogic Server MTとともに配置される必要があります。詳細は、『Oracle Traffic Directorのインストール』のOracle Traffic Directorドメイン構成の選択に関する項を参照してください。
要約すると、次を行う必要があります。
OTDをWLS MTとともに配置してインストールし、OTDドメインを作成します。詳細は、「Oracle Traffic Directorのドメインの作成」を参照してください。
1回かぎりの最初のOTD構成を実行して、OTDマルチテナント機能を有効にします。これには、OTD MT構成とインスタンスの作成、およびライフサイクル・マネージャ(LCM)へのOTDランタイムの登録が含まれます。詳細は、「Oracle Traffic DirectorのMT構成およびインスタンスの作成」および「Oracle Traffic Directorランタイムの登録」を参照してください。
パーティションの作成中に、WLS MTパーティションのロード・バランサ構成を作成するときに、登録されたOTDランタイムを使用します。「エンドツーエンドのライフサイクル管理」で説明しているように、完了すると、LCMは、オーケストレーションをOTDと適切に調整します。
FMWCを使用してWLS MTパーティションを作成すると、対応するOracle Traffic Directorパーティションが作成されます。Oracle Traffic Directorパーティションは、単純に、パーティションおよびリソース・グループと同じ名前のグループです。Fusion Middleware Controlでは、パーティションおよびリソース・グループにマップされるOracle Traffic Directorアーティファクトを識別するためのOracle Traffic Directorパーティションのリストを含むサマリー表が提供されます。WLSTを使用して、Oracle Traffic Directorパーティションをリストすることもできます。『Oracle Traffic Director WebLogic Scripting Toolコマンド・リファレンス』のotd_listPartitionsに関する項
およびotd_listResourceGroupsに関する項
を参照してください。
次のように、Oracle Traffic DirectorアーティファクトはWebLogic Server MTアーティファクトにマップされます。
各クラスタは、オリジン・サーバー・プールにマップします。
パーティションまたはリソース・グループ、あるいはその両方に関連付けられた仮想ターゲットのホスト名は、仮想サーバーにマップされます。
仮想ターゲットのURI接頭辞は、仮想ターゲットのホスト名に対応する仮想サーバー内のルートにマップします。
Oracle Traffic Directorアーティファクトの詳細は、『Oracle Traffic Directorの管理』のOracle Traffic Directorの用語に関する項を参照してください。
この項では、WLS MT環境でOracle Traffic Directorのドメインおよび構成を作成する主な手順について説明します。内容は次のとおりです。
Oracle Traffic Director MT構成およびインスタンスを作成するには、まずWLS MTドメインを作成し、制限付きのJRFテンプレートを使用してOTD用に拡張する必要があります。これで、WLSTまたはFMWCのいずれかを使用して、OTD構成およびインスタンスを作成できます。
次のように、Oracle WebLogic Server MTドメインを作成します。
単一のOracle Traffic Directorインスタンスがクライアント・リクエストを複数のOracle WebLogic Server MTドメインに配布する、大規模なエンタープライズ・デプロイメントでは、Oracle WebLogic Server MTおよびOracle Traffic Director用に別のドメインを作成します。
たとえば、2つのマシン(m1
およびm2
)を使用して、m1
上にOTDドメイン、m2
上にWLS MTドメインを設定する場合、次のようになります。
次のように、m1
でOTDドメインを作成します。
$ORACLE_HOME
にWLS MTおよびJRFをインストールします。
同じ$ORACLE_HOME
にOTDをインストールします。
構成ウィザードを起動します。
OTD用にOracle Traffic Director - Restricted JRFテンプレートを選択し、ドメインの作成を続行します。
次の手順で、WLS MTドメインを作成してOTD用に拡張し、OTD構成およびインスタンスの作成を続行できます。OTDドメイン内でも、WLS MTおよびJRFをインストールし、WLS MTを作成してOTD用に拡張する必要があります。
m2
でWLS MTドメインを作成するには、次の手順を実行します。
$ORACLE_HOME
にWLS MTをインストールします(WLS MTとJRF両方をインストールする必要はありません)。
構成ウィザードを起動します。
基本WLS MTドメインを作成します。
配置されたドメインで、Oracle WebLogic Server MTをインストールした場所と同じORACLE_HOME
にOracle Traffic Directorをインストールします。
たとえば、マシンm1
上の単一のドメイン内にOTDとWLS MTの両方を設定する場合、次のようになります。
$ORACLE_HOME
にWLS MTおよびJRFをインストールします。
同じ$ORACLE_HOME
にOTDをインストールします。
構成ウィザードを起動します。
OTD用にOracle Traffic Director - Restricted JRFテンプレートを選択し、ドメインの作成を続行します。
このデプロイメント・シナリオでは、WLS MTとOTDの両方が同じドメイン内にあり、OTDは、このドメイン内に作成されるWLS MTパーティションを管理します。
OTDドメイン(実際にはOTD用に拡張されたWLS MTドメイン)を作成した後で、次の各項の説明に従い、Fusion Middleware ControlまたはWLSTを使用して、ブートストラップOracle Traffic Director構成を作成する必要があります。
FMWCを使用したOracle Traffic Director MT構成およびインスタンスの作成の詳細は、『Oracle Traffic Directorの管理』のFusion Middleware Controlを使用した構成の作成に関する項およびFusion Middleware Controlを使用したOracle Traffic Directorインスタンスの作成に関する項を参照してください。
WLSTを使用したOracle Traffic Director MT構成およびインスタンスの作成の詳細は、『Oracle Traffic Directorの管理』のWLSTを使用した構成の作成に関する項およびWLSTを使用したOracle Traffic Directorインスタンスの作成に関する項を参照してください。
Fusion Middleware Controlを使用して、Oracle Traffic Directorランタイムを登録して、ライフサイクル・イベントまたは操作を有効にします。
注意: OTDランタイムはWLS MTドメインで登録する必要があります。OTDランタイムを登録する前に、FMWCを使用して、WLS MTドメインにログインします。 |
「WebLogicドメイン」ドロップダウン・メニューから「環境」→「OTDランタイム」を選択します。
「レジスタ・ランタイム」をクリックします。
Oracle Traffic Directorの新規ランタイムの名前を指定して、このランタイムを配置する場所の情報(ホスト、ポートおよび資格証明)を入力します。任意のOTDランタイム名を指定できますが、パーティションの作成中に、WLS MTパーティションのロード・バランサ構成を作成する場合は、同じランタイム名を選択する必要があります。
また、MTに使用される既存のOTD構成の名前を指定する必要があります。たとえば、「Fusion Middleware Controlを使用した構成およびインスタンスの作成」で作成した構成を使用する場合、OTD構成の作成時に指定した名前と同じ名前を指定します。
注意: 「レジスタ・ランタイム」ダイアログで、OTDドメインの管理サーバーのホストとポートの詳細、および(OTDドメインの)管理サーバー資格証明を指定する必要があります。 |
LCMオーケストレーションを使用して、受信クライアント・リクエストをWLS MTパーティションに正常に配布するために必要なOTDアーティファクトのみが、自動的に構成されます。これらのアーティファクトには、仮想サーバー、オリジン・サーバー・プール(オリジン・サーバーを含む)およびルートがあります。これとは別に、他のすべての構成(OTD用のSSLの有効化、OTDでのフェイルオーバー・グループの作成と管理など)は、OTD管理インタフェースを使用して明示的に行われる必要があります。詳細は、『Oracle Traffic Directorの管理』を参照してください。
次の各項では、一般的なデバッグのヒント、よくある質問、WLS MTコンポーネントとOTDコンポーネントが同期されなくなった場合に実行できる修正アクションについて説明します。
OTDをWLS MTパーティションに関連付ける前に、次の点を確認してください。
WLS MT管理サーバーおよびノード・マネージャがOTDドメインで起動して稼働中である。
WLS MT管理サーバーがノード・マネージャに問題なくアクセスできる。
MTに使用されるOTD構成および対応するインスタンスが作成されている。「Oracle Traffic DirectorのMT構成およびインスタンスの作成」を参照してください。
適切なOTDランタイムがライフサイクル・マネージャ(LCM)に登録されている。「Oracle Traffic Directorランタイムの登録」を参照してください。
よくある質問および問題には、次の応答で対応します。これらのFAQは、MT用のOTDの構成、およびOTDでLCMを使用したパーティション管理に関連するものです。
MTに既存のOTD構成を使用できますか。
はい。ただし、configuration
というランタイム・プロパティを使用してOTDランタイムをLCMに登録する際には、既存の構成名を指定する必要があります。指定しない場合、名前はmt
にデフォルト設定されます。
OTDが正常にWLS MTパーティションに関連付けられているかどうかをどのようにして確認すればよいですか。
関連付けが成功すると、仮想サーバーやルートなどのOTDアーティファクトが、OTDのWLS MTパーティションに対して作成されます。
OTDドメインでotd_listPartitions
およびotd_listResourceGroups
WLSTコマンドを呼び出して検証します。
低レベルのREST APIを使用する場合、OTDパーティションを明示的に作成する必要はありますか。
はい。Fusion Middleware ControlはOTDパーティションを暗黙的に作成しますが、低レベルのREST APIは作成しません。
OTDパーティション名は、WLS MTパーティション名と同じである必要があります。
OTDパーティションは機能アーティファクトではないことに注意してください。WLS MTパーティションへのリクエストを処理するすべてのOTDアーティファクトを論理的にグループ化するためにのみ使用されます。
OTDがLCMで通知されるかどうかを、どのようにして決定すればよいですか。
OTDプラグインは、LCMで通知される場合、デバッグ情報を記録します。ログ・メッセージのサンプルは次のとおりです。
<[com.oracle.weblogic.lifecycle.plugin.otd.OTDUtil:log] OTDLifeyclePlugin : Associating OTD with the WLS MT partition>
OTDプラグインのデバッグをどのようにして有効化すればよいですか。
WLS MT管理サーバー・ドメインのログ・レベルをDebug
に設定します。
WLS管理コンソールで、「環境」→「サーバー」→「ロギング」→「詳細」を選択し、必要な重大度レベル(「ログの最低の重大度」や「ログ・ファイル」重大度レベルなど)をDebug
に設定します。
WLSTを使用する場合: cd('/Servers/AdminServer/Log/AdminServer')
を実行し、必要な重大度レベルをDebug
に設定します(cmo.setLoggerSeverity('Debug')
)。
WLS MTパーティションがターゲット指定された仮想ターゲットのホスト名およびURI接頭辞の値を変更しましたが、OTDは更新されませんでした。なぜですか。
仮想ターゲットのホスト名およびURI接頭辞は、有効にするにはパーティションの再起動が必要な非動的属性です。WLS MTパーティションを再起動すると、OTDが更新されます。
既存のWLS MTパーティションに新しいリソース・グループを追加しましたが、OTDは更新されませんでした。なぜですか。
これは既知の問題です。詳細は、『Oracle WebLogic Serverリリース・ノート』のリソース・グループの変更で更新されないOracle Traffic Directorに関する項を参照してください。
WLS MTとOTDの同期が取れていない場合、どのようにして同期すればよいですか。
同期LCM REST APIを起動します。
curl -v \ --user $WLS_DOMAIN_ADMIN_USERNAME:$WLS_DOMAIN_ADMIN_PASSWORD \ -H X-Requested-By:MyClient \ -H Accept:application/json \ -H Content-Type:application/json \ -X POST http://$WLS_DOMAIN_ADMIN_HOSTNAME:$WLS_DOMAIN_ADMIN_PORT/management/lifecycle/latest/environments/$ENVIRONMENT_NAME/sync
$
トークンを適切に置換する必要があります。
同期REST APIがWLS MTとOTDを同期しない場合、何を行いますか。
WLS MTパーティションのOTDとの関連付けを解除してから、再度関連付けを行います。
REST APIを使用して、次のことを行います。
関連付けを解除するには、次を実行します。
curl -v \ --user $WLS_DOMAIN_ADMIN_USERNAME:$WLS_DOMAIN_ADMIN_PASSWORD \ -H X-Requested-By:MyClient \ -H Accept:application/json \ -H Content-Type:application/json \ -d '{ "partition1Name": "$WLSPartition_Name", "partition1RuntimeName" : "$WLS_RUNTIME_NAME", "partition2Name": "$OTDPartition_Name", "partition2RuntimeName": "$OTD_RUNTIME_NAME", "properties" :[]}' \ -X POST http://$WLS_DOMAIN_ADMIN_HOSTNAME:$WLS_DOMAIN_ADMIN_PORT/management/lifecycle/latest/environments/$ENVIRONMENT_NAME/dissociatePartitions
関連付けを行うには、次を実行します。
curl -v \ --user $WLS_DOMAIN_ADMIN_USERNAME:$WLS_DOMAIN_ADMIN_PASSWORD \ -H X-Requested-By:MyClient \ -H Accept:application/json \ -H Content-Type:application/json \ -d '{ "partition1Name": "$WLSPartition_Name", "partition1RuntimeName" : "$WLS_RUNTIME_NAME", "partition2Name": "$OTDPartition_Name", "partition2RuntimeName": "$OTD_RUNTIME_NAME", "properties" :[]}' \ -X POST http://$WLS_DOMAIN_ADMIN_HOSTNAME:$WLS_DOMAIN_ADMIN_PORT/management/lifecycle/latest/environments/$ENVIRONMENT_NAME/associatePartitions
FMWCで、次を実行します。
「ドメイン・パーティション」→「管理」→「ロード・バランシング構成」に移動します。
関連付けを解除するには、「ロード・バランシングにOTDを使用します」チェック・ボックスを選択解除します。
再度関連付けを行うには、同じチェック・ボックスを選択します。
OTDパーティションごとに個別のログ・ファイルはありますか。
はい。パーティション・ログ・ファイル名は、パーティション名と同じです(たとえば、<OTD_PARTITION_NAME>.log
は<OTD_DOMAIN_HOME>/servers/<OTD_INSTANCE_NAME>/logs
にあります)。
次のWLSTコマンドを使用できます: otd_getPartitionAccessLogProperties
およびotd_setPartitionAccessLogProperties
。