B 共有ファイルシステムでのマウントオプション

Oracle Hierarchical Storage Manager and StorageTek QFS Software 共有ファイルシステムは、いくつかのマウントオプションを使用してマウントできます。この章では、これらのオプションのいくつかについて、その役割のコンテキスト内で説明します。

共有ファイルシステムのマウントオプション

ほとんどのマウントオプションは、mount コマンドを使用するか、/etc/vfstab ファイルに入力するか、または samfs.cmd ファイルに入力することによって指定できます。たとえば、次の /etc/vfstab ファイルには、共有ファイルシステムのためのマウントオプションが含まれています。

sharefs - /sfs samfs - no shared,mh_write

いくつかのマウントオプションは、samu オペレータユーティリティーを使用して動的に変更できます。これらのオプションの詳細は、『Oracle Hierarchical Storage Manager and StorageTek QFS samu コマンドリファレンス』を参照してください。

これらのマウントオプションの詳細は、mount_samfs のマニュアルページを参照してください。

bg: バックグラウンドでのマウント

bg マウントオプションは、最初のマウント操作が失敗した場合は、それ以降のマウントの試行をバックグラウンドで実行することを指定します。デフォルトでは、bg は有効ではなく、マウント試行はフォアグラウンドで継続されます。

retry: ファイルシステムのマウントの再試行

retry マウントオプションは、システムでファイルシステムのマウントを試行する回数を指定します。デフォルトは 10000 です。

shared: Oracle HSM 共有ファイルシステムの宣言

shared マウントオプションは、ファイルシステムを Oracle HSM 共有ファイルシステムにすることを宣言します。ファイルシステムを Oracle HSM 共有ファイルシステムとしてマウントするには、このオプションを /etc/vfstab ファイル内に指定する必要があります。このオプションが samfs.cmd ファイル内、または mount コマンド上に存在してもエラー条件は発生しませんが、ファイルシステムは共有ファイルシステムとしてマウントされません。

minallocsz および maxallocsz: 割り当てサイズの調整

mount コマンドの minallocsz および maxallocsz オプションは、容量を K バイト単位で指定します。これらのオプションは、最小のブロック割り当てサイズを設定します。ファイルサイズが大きくなる場合は、追加リースが認められると、メタデータサーバーによってブロックが割り当てられます。この割り当ての初期サイズを指定するには、-o minallocsz=n を使用します。メタデータサーバーは、アプリケーションのアクセスパターンに応じてブロック割り当てのサイズを -o maxallocsz=n の設定まで増やすことができますが、この値を超えることはできません。

mount コマンド行のこれらの mount オプションは、/etc/vfstab ファイルまたは samfs.cmd ファイル内に指定できます。

rdleasewrlease、および aplease: Oracle HSM 共有ファイルシステムでのリースの使用

デフォルトでは、ホストがファイルを共有するときに、入出力 lease をそれ自体およびそのクライアントに発行すると、Oracle HSM メタデータサーバーでファイルシステムの整合性が保持されます。リースによって、指定された期間内でファイルを操作するためのアクセス権が共有ホストに付与されます。read lease を使用すると、ホストがファイルデータを読み取ります。write lease を使用すると、ホストが既存のファイルデータを上書きします。append lease を使用すると、ホストがファイルの末尾に追加データを書き込みます。メタデータサーバーは、必要に応じてリースを更新できます。

したがって、Oracle HSM 共有ファイルシステムに対する読み取りおよび書き込みは、データに対する POSIX の動作に類似しています。ただし、メタデータに対しては、アクセス時間が変化しても、ほかのホストにはすぐにわからないことがあります。ファイルへの変更は、書き込みリースの最後にディスクにプッシュされます。読み取りリースが取得されると、新しく書き込まれたデータを表示できるように、システムは期限切れのキャッシュページをすべて無効にします。

次のマウントオプションは、リースの期間を設定します。

  • -o rdlease= number-seconds は、読み取りリースの最大時間 (秒単位) を指定します。

  • -o wrlease= number-seconds は、書き込みリースの最大時間 (秒単位) を指定します。

  • -o aplease= number-seconds は、追加リースの最長時間 (秒単位) を指定します。

これら 3 つのいずれの場合も、 number-seconds は [15-600] の範囲の整数です。各リースのデフォルトの時間は 30 秒です。リースが有効な場合、ファイルを切り捨てることはできません。これらのリースの設定の詳細は、mount_samfs のマニュアルページを参照してください。

現在のメタデータサーバーが停止したためにメタデータサーバーを変更する場合は、リース時間を切り替え時間に加える必要があります。 これは、代替メタデータサーバーが制御を引き継ぐには、その前にすべてのリースが期限切れになっていることが必要であるためです。

リース時間を短く設定しておくと、リースが期限切れになるごとに更新する必要があるため、クライアントホストとメタデータサーバーの間のトラフィックが増加します。

mh_write: マルチホスト読み取りと書き込みの有効化

mh_write オプションでは、複数ホストから同一ファイルへの書き込みアクセスが制御されます。メタデータサーバーホスト上でマウントオプションとして mh_write が指定されている場合は、Oracle HSM 共有ファイルシステムにより、複数のホストから同じファイルへの同時の読み取りと書き込みが可能になります。メタデータサーバーホストで mh_write を指定しないと、同時にファイルに書き込みができるホストは 1 つだけになります。

デフォルトでは、mh_write は無効になっており、wrlease マウントオプションの期間中ファイルに書き込めるのは 1 つのホストだけです。mh_write オプションが有効になった状態で Oracle HSM 共有ファイルシステムがメタデータサーバー上にマウントされている場合は、複数のホストから同じファイルへの同時の読み取りと書き込みを実行できます。

メタデータサーバー上で mh_write が有効になっている場合は、Oracle HSM で次のことがサポートされます。

  • 複数の読み取りホストとページ入出力

  • 複数の読み取りホストおよび書き込みホストと、書き込みがあった場合にのみ直接入出力

  • 1 つの追加ホスト (その他のホストは読み取りまたは書き込みを行う) と、書き込みがあった場合にのみ直接入出力。

mh_write オプションを使用してファイルシステムをマウントしても、ロック動作は変わりません。ファイルロックは、mh_write が有効かどうかには関係なく同じ動作を行います。ただし、その他の点では、動作は一定ではない可能性があります。読み取りと書き込みが同時にあった場合、Oracle HSM 共有ファイルシステムは、ファイルへのすべてのホストアクセスに直接入出力を使用します。そのため、ページ整合入出力がその他のホストにただちに表示されるはずです。ただし、非ページ整合入出力では期限切れのデータが表示されたり、場合によってはファイルに書き込まれたりしますが、これは、このような状況を防止している通常のリースメカニズムが無効になるためです。

このため、複数のホストが同じファイルに同時に書き込む必要がある場合、およびホストされているアプリケーションがページ整合入出力を実行し、競合する書き込みを調整する場合にかぎり、mh_write オプションを指定してください。それ以外の場合は、データの不一致が発生する可能性があります。mh_write を付けて flock() を使用してホスト間を調整しても、整合性は保証されません。詳細については、mount_samfs のマニュアルページを参照してください。

min_pool: 並行スレッドの最小数の設定

min_pool マウントオプションは、Oracle HSM 共有ファイルシステムの並行スレッドの最小数を設定します。Oracle Solaris システムでのデフォルト設定は min_pool=64 です。この設定は、Oracle Solaris ではスレッドプール内にアクティブスレッドが少なくとも 64 個存在することを示します。共有ファイルシステムのアクティビティーに応じて、min_pool の設定を [8-2048] の範囲の任意の値に調整できます。

min_pool マウントオプションは samfs.cmd ファイルに設定してください。これを /etc/vfstab ファイル内か、またはコマンド行で設定した場合は無視されます。

meta_timeo: キャッシュされた属性の保持

meta_timeo マウントオプションは、システムがメタデータ情報に対するチェックを待つ間隔の長さを決定します。デフォルトでは、システムはメタデータ情報を 3 秒ごとにリフレッシュします。たとえば、新しく作成されたファイルがいくつか含まれている共有ファイルシステムで ls コマンドを入力すると、3 秒が経過するまですべてのファイルに関する情報が返されない可能性があります。このオプションの構文は meta_timeo=seconds で、seconds は [0-60] の範囲の整数です。

stripe: ストライプ化割り当ての指定

デフォルトでは、共有ファイルシステム内のデータファイルは、ラウンドロビン式ファイル割り当て方式を使用して割り当てられます。ファイルデータが複数のディスクにわたってストライプ化されるように指定するには、メタデータホストとすべての潜在的なメタデータホスト上で stripe マウントオプションを指定できます。デフォルトでは、非共有ファイルシステムのファイルデータは、ストライプ化方式で割り当てられることに注意してください。

ラウンドロビン式割り当てでは、ファイルは、各スライスまたはストライプ化グループ上にラウンドロビン式で作成されます。1 つのファイルの最大のパフォーマンスは、スライスまたはストライプ化グループの速度になります。ファイル割り当て方式の詳細は、『Oracle Hierarchical Storage Manager and StorageTek QFS インストールおよび構成ガイド』(Oracle HSM お客様向けドキュメントライブラリdocs.oracle.com/en/storage) を参照してください。

sync_meta: メタデータが書き込まれる頻度の指定

sync_meta オプションを sync_meta=1 または sync_meta=0 に設定できます。

デフォルト設定は sync_meta=1 です。これは、メタデータが変更されるたびに Oracle HSM 共有ファイルシステムがファイルのメタデータをディスクに書き込むことを示します。この設定によってデータのパフォーマンスが低下しますが、データの整合性は保証されます。メタデータサーバーを変更する場合は、この設定が有効である必要があります。

sync_meta=0 を設定した場合、Oracle HSM 共有ファイルシステムは、メタデータをバッファーに書き込んでからディスクに書き込みます。この遅延書き込みによってより高いパフォーマンスが実現されますが、マシンの予定外の停止が発生したあとのデータの整合性は低下します。

worm_capable および def_retention: WORM 機能の有効化

worm_capable マウントオプションにより、ファイルシステムでは WORM ファイルがサポートされます。def_retention マウントオプションは、def_retention=MyNdOhPm の形式を使用して、デフォルトの保存期間を設定します。

この形式では、MNO、および P は負でない整数であり、ydh、および m は、それぞれ年、日、時、分を表します。これらの単位を任意に組み合わせることができます。たとえば 1y5d4h3m は 1 年、5 日、4 時間、3 分、30d8h は 30 日と 8 時間、300m は 300 分をそれぞれ表します。この形式は、保存時間を分単位で指定していた旧バージョンのソフトウェアと下位互換性があります。

詳細は、『Oracle Hierarchical Storage Manager and StorageTek QFS インストールおよび構成ガイド』(Oracle HSM お客様向けドキュメントライブラリdocs.oracle.com/en/storage) を参照してください。