Oracle Hierarchical Storage Manager and StorageTek QFS Software をインストールおよび構成したときに、回復ポイントファイルとアーカイブログのコピーを格納するためのセキュアな場所を作成しました。また、回復ポイントの作成、ログのバックアップ、およびシステム構成の保護を自動的に行うプロセスを構成しました。これらの手順では、ファイルシステムの中心的な保護機能が提供されます。ただし、ときどきスケジュール外の保護対策が必要となる場合もあります。
物理インフラストラクチャーまたはデータセンター設備への重要な変更など、混乱を生じる可能性のある、予測されるイベントの前に、Oracle HSM の構成およびファイルシステムをバックアップします。
現在の構成が保護されるように、ソフトウェア、オペレーティングシステム、またはホストプラットフォームのアップグレードまたは再構成のあとに、Oracle HSM の構成およびファイルシステムをバックアップします。
Oracle HSM サポートサービスを受ける前に、必要な構成およびステータス情報を収集します。
この章では、必要に応じて構成およびファイルシステムの回復ファイルを収集、作成、および格納するための手順について概要を示します。主要な 3 つのセクションで構成されます。
この章では、すべてのタスクでコマンド行インタフェースを使用します。Oracle HSM Manager のグラフィカルユーザーインタフェースを使用する場合は、オンラインヘルプで詳細な手順を参照してください。
このセクションでは、Oracle HSM ファイルシステムの保護を簡単に見直すことから始めます (回復ポイントおよびアーカイブログの理解)。続いて、次のタスクを実行するための手順を示します。
ファイルシステムを保護するには、2 つのことを実行する必要があります。
データが保持されているファイルを保護する必要があります。
データを使用、整理、検索、アクセス、および管理できるように、ファイルシステム自体を保護する必要があります。
Oracle HSM アーカイブファイルシステムでは、ファイルデータはアーカイバによって自動的に保護されます。変更されたファイルは、テープなどのアーカイブストレージメディアに自動的にコピーされます。ただし、ファイルしかバックアップしていないときに、ディスクデバイスまたは RAID グループに回復不能な障害が発生した場合は、データは保持されますが使用することは難しくなります。代替のファイルシステムの作成、各ファイルの特定、新しいファイルシステム内の適切な場所の決定、そのファイルの取り込み、およびそのファイルとユーザー、アプリケーション、その他のファイルとの間の失われた関係の再作成を行う必要があります。このような回復は、最善の状況でも、面倒で時間のかかるプロセスとなります。
したがって、すばやく効率的に回復するには、ファイルおよびアーカイブコピーを使用可能にするファイルシステムのメタデータを積極的に保護する必要があります。リムーバルメディア上でアーカイブされたコピーに、ディレクトリパス、i ノード、アクセス制御、シンボリックリンク、およびポインタをバックアップする必要があります。
Oracle HSM ファイルシステムのメタデータを保護するには、回復ポイントをスケジュールし、アーカイブログを保存します。回復ポイントは、Oracle HSM ファイルシステムのメタデータのポイントインタイムバックアップコピーを格納する圧縮ファイルです。データの損失 (ユーザーファイルの誤った削除から、ファイルシステム全体の壊滅的な損失まで) が発生した場合は、ファイルまたはファイルシステムが元の状態のままである最新の回復ポイントを見つければ、即座にファイルまたはファイルシステムの既知の良好な最新状態まで回復できます。次に、その時点で記録されたメタデータを復元し、メタデータに示されているファイルをアーカイブメディアからディスクキャッシュにステージングするか、または可能であれば、ユーザーおよびアプリケーションがファイルにアクセスするときに必要に応じてファイルシステムでファイルをステージングするようにします。
ポイントインタイムバックアップコピーと同様に、回復ポイントが障害が発生した時点のファイルシステムの状態の完全なレコードであることは、ほとんどありません。必然的に、1 つの回復ポイントが完成してから、次の回復ポイントが作成されるまで、少なくとも数個のファイルが作成および変更されます。ファイルシステムが使用されていないときに回復ポイントを頻繁に作成するようにスケジュールすれば、この問題を最小限にできます。ただし、現実には、ファイルシステムは使用するために存在するため、スケジューリングには妥協が必要です。
このため、アーカイバログファイルのポイントインタイムコピーを保存する必要もあります。それぞれのデータファイルがアーカイブされると、ログファイルには、アーカイブメディアのボリュームシリアル番号、アーカイブセットとコピー番号、メディアでのアーカイブ (tar
) ファイルの位置、および tar
ファイル内でのデータファイルのパスと名前が記録されます。この情報があれば、Solaris または Oracle HSM tar
ユーティリティーを使用して、失われたファイルを回復ポイントから回復できます。ただし、この情報は変動します。大部分のシステムログと同様に、アーカイバログは急速に増加するため、頻繁に上書きされてしまいます。定期的にコピーして回復ポイントを補完していなければ、必要なときにログ情報がないことになります。
このセクションの残りの部分では、要求に応じて回復ポイントとログのコピーを作成する手順について説明します。次のサブセクションが含まれます。
通常のスケジュール外の時点で、アーカイブシステムファイルからメタデータを取得する必要がある場合があります。破損の可能性があることが予測されるシステムや機能を保守する際には常に、前後に回復ポイントを作成し、ファイルシステムが確実に保護されるようにします。
オンデマンドでスケジュールの回復ポイントの作成を開始するには、次の手順を実行します。
Oracle HSM サーバーホストに root
としてログインします。
root@solaris:~#
回復ポイントが格納される独立した場所を選択します。
この例では、最初にファイルシステムを構成したときに回復ポイント用に作成したディレクトリの下に、サブディレクトリ unscheduled/
を作成します。/zfs1
ファイルシステムはリモートの場所に配置され、Oracle HSM ファイルシステムと共通のコンポーネントは持っていません。
root@solaris:~# mkdir /zfs1/samqfs_recovery/unscheduled
root@solaris:~#
ファイルシステムのルートディレクトリに移動します。
この例では、マウントポイントディレクトリ /samqfs
に移動します。
root@solaris:~# cd /samqfs
root@solaris:~#
データがリムーバブルメディアにコピーされるアーカイブファイルシステムをバックアップする場合は、メタデータのみをバックアップします。コマンド samfsdump
-f
recovery-point
を使用します。ここで recovery-point
は、最終的な回復ポイントファイルのパスおよびファイル名です。
詳細については、samfsdump
のマニュアルページを参照してください。この例では、スケジュールされた保守関連の停電の前に、samqfs
ファイルシステム用のスケジュール外の回復ポイントを作成します。ディレクトリ /zfs1/samqfs_recovery/unscheduled/
に回復ポイントファイル 20150315pre-outage
を作成します (次の 2 つ目のコマンドは 1 行で入力し、改行はバックスラッシュ文字でエスケープします)。
root@solaris:~# cd /samqfs root@solaris:~# samfsdump -f \ /zfs1/samqfs_recovery/unscheduled/20150315pre-outage root@solaris:~#
データがリムーバブルメディアにコピーされないスタンドアロンファイルシステムをバックアップする場合は、メタデータとデータの両方をバックアップします。コマンド samfsdump
-U
-f
recovery-point
を使用します。ここで recovery-point
は、最終的な回復ポイントファイルのパスおよびファイル名です。
データとメタデータが含まれる回復ポイントファイルは、非常に大きくなる可能性があることに注意してください。詳細については、samfsdump
のマニュアルページを参照してください。この例では、samqfs
ファイルシステム用のスケジュール外の回復ポイントを作成します。リモートディレクトリ /zfs1/samqfs_recovery/unscheduled/
に回復ポイントファイル 20150315pre-outage
を作成します (次の 2 つ目のコマンドは 1 行で入力し、改行はバックスラッシュ文字でエスケープします)。
root@solaris:~# cd /samqfs root@solaris:~# samfsdump -f -U \ /zfs1/samqfs_recovery/unscheduled/20150315pre-outage root@solaris:~#
アーカイブファイルシステムをバックアップする場合は、アーカイバログをバックアップします。
それ以外の場合は、状況に応じて、samexplorer
の実行や、Oracle HSM 構成の手動バックアップが必要となることもあります。
回復ポイントファイルに、ファイルシステムの復元時に必要となる情報のほぼすべてが含まれている場合は、回復ポイントが作成されたあとに作成または変更されたファイルのメタデータは保持されません。アーカイバログにはアーカイブされているすべてのファイルおよびカートリッジ上の格納場所が一覧表示されるため、アーカイバログを使用すれば、回復ポイントの作成後にアーカイブされたファイルを回復できます。そのため、可能であれば、スケジュール外の回復ポイントを作成する際は必ず、アーカイバログファイルのスケジュール外のコピーを作成してください。次のように進めます。
Oracle HSM サーバーホストに root
としてログインします。
root@solaris:~#
バックアップされたアーカイバログが格納される独立した場所を選択します。
この例では、上記で作成した対応するスケジュール外の回復ポイントと同じディレクトリに、ログを格納することに決定します。/zfs1
ファイルシステムはリモートの場所に配置され、Oracle HSM ファイルシステムと共通のコンポーネントは持っていません。
root@solaris:~# ls /zfs1/samqfs_recovery/unscheduled 20150315pre-outage root@solaris:~#
選択した場所に現在のアーカイバログをコピーし、一意の名前を付けます。コマンド cp /var/adm/samqfs.archive.log
path
/"date +%y%m%d";
を使用します。ここで path
は選択した場所へのパスです。
次のコマンドは 1 行で入力し、改行はバックスラッシュ文字でエスケープします。
root@solaris:~# cp /var/adm/samqfs.archive.log \ /zfs1/samqfs_recovery/unscheduled/20150315pre-outage/"date +%y%m%d".archive.log root@solaris:~#
状況に応じて、samexplorer
の実行や、Oracle HSM 構成の手動バックアップが必要となることもあります。
Oracle HSM 構成を変更する際は必ず、変更した構成ファイルおよび関連情報をすべてバックアップして、投資を保護してください。次のタスクを実行します。
完全な冗長化のために、ソフトウェア、オペレーティングシステム、またはホストを大幅に変更する際は必ず、構成ファイルのローカルコピーを作成してください。次のように進めます。
ファイルシステムホストに root
としてログインします。
root@solaris:~#
バックアップ構成情報が保持されているサブディレクトリに、Oracle HSM 構成の手動バックアップコピー用のサブディレクトリを作成します。コマンド mkdir
mount-point
/
path
を使用します。ここで mount-point
は選択した独立ファイルシステム用のマウントポイントディレクトリ、path
は選択したディレクトリのパスと名前です。
この例では、アーカイブファイルシステム /samqfs
用の回復ポイントを構成します。そのため、ディレクトリ /zfs1/sam_config/samconfig
を作成しました。
root@solaris:~# mkdir /zfs1/sam_config/samconfig
Oracle HSM 構成の手動バックアップコピーが保持されているサブディレクトリに、現在の Oracle HSM 構成用のサブディレクトリを作成します。コマンド mkdir
mount-point
/
path
/
subdirectory
を使用します。ここで mount-point
は選択した独立ファイルシステム用のマウントポイント、path
/
subdirectory
は選択したディレクトリのパスと名前です。
この例では、この目的のために初期構成時に作成したディレクトリ /zfs1/sam_config/samconfig
に、サブディレクトリを作成します。日付を使用してサブディレクトリの名前を付けます。
root@solaris:~# mkdir /zfs1/sam_config/samconfig/20150315
構成ファイルを別のファイルシステムにコピーします。
/etc/opt/SUNWsamfs/ mcf archiver.cmd defaults.conf diskvols.conf hosts.family-set-name hosts.family-set-name.local preview.cmd recycler.cmd releaser.cmd rft.cmd samfs.cmd stager.cmd inquiry.conf samremote # SAM-Remote server configuration file family-set-name # SAM-Remote client configuration file network-attached-library # Parameters file scripts/* # Back up all locally modified files /var/opt/SUNWsamfs/
すべてのライブラリカタログデータ (ヒストリアンで保持されているデータを含む) をバックアップします。カタログごとに、コマンド /opt/SUNWsamfs/sbin/dump_cat -V
catalog-file
を使用します。ここで、catalog-file
はカタログファイルのパスと名前です。出力を新しい場所にある dump-file
にリダイレクトします。
この例では、library1
のカタログデータを、NFS でマウントされた個別のファイルシステム zfs1
上のディレクトリにあるファイル library1cat.dump
にダンプします (次のコマンドは 1 行で入力し、改行はバックスラッシュ文字でエスケープします)。
root@solaris:~# dump_cat -V /var/opt/SUNWsamfs/catalog/library1cat > \ /zfs1/sam_config/20150315/catalogs/library1cat.dump
Oracle HSM のインストールおよび構成中に変更したシステム構成ファイルをコピーします。これには、次が含まれる可能性があります。
/etc/ syslog.conf system vfstab /kernel/drv/ sgen.conf samst.conf samrd.conf sd.conf ssd.conf st.conf /usr/kernel/drv/dst.conf
Oracle HSM 構成の一部として作成したカスタムシェルスクリプトおよび crontab
エントリを選択したサブディレクトリにコピーします。
たとえば、回復ポイントの作成を管理するために crontab
エントリを作成した場合は、ここでコピーを保存します。
Oracle HSM 構成の一部として作成したカスタムシェルスクリプトおよび crontab
エントリを選択したサブディレクトリにコピーします。
たとえば、回復ポイントの作成を管理するために crontab
エントリを作成した場合は、ここでコピーを保存します。
現在インストールされているソフトウェア (Oracle HSM、Solaris、Solaris Cluster (該当する場合) を含む) のリビジョンレベルを記録し、選択したサブディレクトリ内の readme
ファイルに情報のコピーを保存します。
必要になったときにソフトウェアをすばやく復元できるように、選択したサブディレクトリに、ダウンロードした Oracle HSM Oracle HSM、Solaris、および Solaris Cluster パッケージのコピーを保存します。
samexplorer
を使用した構成および診断情報の収集samexplorer
は、Oracle HSM ソフトウェアおよびファイルシステムに関する包括的な構成およびステータス情報を取得およびレポートする診断ツールです。Oracle HSM 構成を変更する際は必ず、samexplorer
を実行して、構成ファイルのバックアップコピーとともに結果レポートを格納するようにしてください。また、問題のトラブルシューティングを行うときや、Oracle HSM サポートサービスの担当者から実行するよう要求されたときにも、samexplorer
を実行するようにしてください。次のように進めます。
samexplorer
の実行ファイルシステムホストに root
としてログインします。
バックアップ構成情報が保持されているディレクトリに、samexplorer
レポート用のサブディレクトリを作成します。コマンド mkdir
mount-point
/
path
を使用します。ここで mount-point
は選択した独立ファイルシステム用のマウントポイントディレクトリ、path
は選択したディレクトリのパスと名前です。
この例では、この目的のために初期構成時に作成したディレクトリ /zfs1/sam_config/
に、新しいサブディレクトリを作成します。新しいサブディレクトリに explorer/
という名前を付けます。
root@solaris:~# mkdir /zfs1/sam_config/explorer
選択したディレクトリに、samexplorer
レポートを作成します。コマンド samexplorer
path
/
hostname
.
YYYY
MM
DD
.
hh
mm
z
.
tar.gz
を使用します。ここで path
は選択したディレクトリへのパス、hostname
は Oracle HSM ファイルシステムホストの名前、YYYY
MM
DD
.
hh
mm
z
は日付とタイムスタンプです。
デフォルトのファイル名は /tmp/SAMreport.
hostname
.
YYYY
MM
DD
.
hh
mm
z
.tar.gz
です。この例では、ホスト samhost1
のレポートを、2015 年 3 月 15 日 (山地標準時午後 4:59) の日付で作成します (次のコマンドは 1 行で入力し、改行はバックスラッシュ文字でエスケープします)。
root@solaris:~# samexplorer \ /zfs1/sam_config/explorer/samhost1.20150315.1659MST.tar.gz Report name: /zfs1/sam_config/explorer/samhost1.20150315.1659MST.tar.gz Lines per file: 1000 Output format: tar.gz (default) Use -u for unarchived/uncompressed. Please wait............................................. Please wait............................................. Please wait...................................... The following files should now be ftp'ed to your support provider as ftp type binary. /zfs1/sam_config/explorer/samhost1.20150315.1659MST.tar.gz
ファイルシステムを大幅に再構成する際は必ず、この手順を繰り返してください。
ここで停止します。Oracle HSM 構成がバックアップされています。