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分散アプリケーションのネットワーク設定

分散アプリケーションのネットワーク設定
このトピックには次の項が含まれます:
分散アプリケーション用のネットワーク構成
分散アプリケーションとは、Oracle Tuxedoシステムのインストールをサポートする複数のコンピュータ上で動作するアプリケーションのことです。これらのコンピュータは接続され、ハードウェア、ソフトウェア、アクセス方式および通信プロトコルにより、ネットワーク経由で相互に通信できます。Oracle Tuxedoシステムは、メッセージをエンコード、ルーティングおよびデコードし、ネットワークを使用してこれらのメッセージをマシン間に送信します。これらのタスクは自動的に実行されます。
分散アプリケーションのサポートに必要なネットワーク機能を構成するには、表12‑1の構成ファイルに次のエントリを含めます。
 
MODEL (必須)
MP。このパラメータを指定すると、他のネットワーク・パラメータが有効になります。これは、ネットワーク接続されたマシン用のパラメータです。1台のマシンによる構成では、マルチプロセッサ・マシンの場合でもSHMを使用します。
OPTIONS (必須)
LAN (ローカル・エリア・ネットワーク)を指定すると、同一マシン上のプロセッサ間ではなく、異なるマシン間で通信が行われます。
MAXNETGROUPS (オプション)
定義できるNETGROUPSの数の制限を指定します。デフォルトは8で、上限値は8192です。
TYPE=string (オプション)
2台のマシン間でメッセージを交換する場合に、メッセージのエンコードが必要かどうかを指定します。TYPEパラメータは、定義される各マシンで使用されるデータ表現を指定します。データ表現が異なるマシン間でメッセージを送受信する場合は、送信メッセージをエンコードしてから送信し、受信時にデコードします。
CMPLIMIT=remote[, local] (オプション)
圧縮のしきい値、つまり、リモートやローカルの宛先に送信するメッセージのうち、圧縮の対象とするメッセージの最小値をバイト数で指定します。remoteおよびlocalに指定できる値は、0からMAXLONGまでの数値です。CMPLIMITに1つだけ値を指定すると、指定した値はremote引数と見なされ、ローカルの宛先に送信されるメッセージは圧縮されません。
たとえば、CMPLIMIT=1024と設定すると、リモートの宛先への、1024バイトより大きいメッセージは圧縮されます。
TMCMPLIMIT変数を使用して圧縮のしきい値を指定することもできます。TMCMPPRFM変数については、tuxenv(5)の説明を参照してください。この変数は、1 - 9の範囲で圧縮のレベルを設定します。
NETLOAD=number (オプション)
リモート・サービスのLOADの値に、アプリケーション固有の数値を追加します。結果は、リクエストをローカルで処理するか、またはリモート・マシンに送信するかを決定するために使用されます。NETLOADの値が大きいほど、リモート・マシンに送信されるトラフィックは少なくなります。
NETGROUPS (オプション)
NETGROUP (必須)
NETGRPNO=number (必須)
NETPRIO=number (オプション)
NETGROUPに優先度を割り当てます。このパラメータは、システム側でどのネットワーク接続を使用するかを決定するのに役立ちます。0 - 8192の数値を指定する必要があります。高速回線に高い優先度を割り当てます。DEFAULTNETには最も低い順位を割り当てます。
NETWORK (オプション)
LMID (必須)
指定したマシンを、MACHINESセクション内のエントリの1つにマッピングします。
NADDR=string (必須)
このLMIDBRIDGEプロセスに対するリスニング用アドレスを指定します。このネットワーク・アドレスを指定する有効な形式は4つあります。詳細は、UBBCONFIG(5)のNETWORKセクションを参照してください。
NLSADDR=string (必須)
このLMIDtlistenプロセスに対するネットワーク・アドレスを指定します。有効な形式は、NADDRの形式と同じです。
NETGROUP=string (オプション)
NETWORKグループ名を指定します。stringには、NETGROUPSセクションで指定したグループ名を指定しなければなりません。デフォルトはDEFAULTNETです。
ネットワーク上のデータの流れ
分散アプリケーションでは、データはネットワーク上で次のように送信されます。
送信側では、BRIDGEにより、メッセージがdestination_machineに送信されます。これは、メッセージを仮想回線に書き込み、オペレーティング・システムにその送信処理を委託することにより実現されます。保留メッセージのコピーは、オペレーティング・システム側で保持されます。ただし、ネットワーク・エラーが発生すると、保留メッセージは失われます。
受信側では、BRIDGEプロセスが、特定のネットワーク・アドレスで受信メッセージをリスニングします。
パラレル・ネットワーク上でのデータの流れ
分散アプリケーションでは、ネットワーク上でのデータの送受信にパラレル・データ回線を使用すると、次のような利点を活用できます。
複数のアドレスでリスニングできるため、BRIDGEで高い可用性が実現されます。
パラレル・データ回線を構成している場合は、最初の送信先である回線がビジー状態であっても、メッセージの送信は必ずしも失敗しません。トラフィックは、ネットワーク・グループ番号(NETGRPNO)が最も大きい回線に流れるように、システム側でスケジューリングされます。この回線がビジー状態の場合、トラフィックは次の回線、つまりネットワーク・グループ番号が2番目に大きい回線に自動的にスケジューリングされます。すべての回線がビジー状態の場合は、回線が使用可能になるまでデータはキューに入れられます。
ただし、パラレル・データ回線を使用するかどうかを決定する前に、アプリケーションでメッセージを順番に処理する必要があるかどうかを判断してください。システムでは、1つの特定のデータ回線に会話接続をバインドすることにより、会話型メッセージの正しいシーケンスが確保されます。
アプリケーションですべてのメッセージが順番に送信される必要がある場合、非会話型メッセージのシーケンスも追跡されるようにアプリケーションをプログラミングする必要があります。この方法を使用する場合、パラレル・データ回線の構成が不要となる場合があります。
図12‑1に、あるマシンから別のマシンへのデータの流れを示します。この図は、マシンAとマシンBで構成される例に基づいています。まず、BRIDGEは、両方のマシンに共通のネットワーク・グループであるMAGENTA_GROUPGREEN_GROUPおよびDEFAULTNETを識別します。
優先度が同じネットワーク・グループ(NETPRIOパラメータの値が同じグループ)には、データは並列に流れます。優先度が異なるネットワーク・グループは、フェイルオーバー用です。
図12‑1 BRIDGE上のデータの流れ
 
 
 
単純な分散アプリケーションのネットワーク構成の例
次の例は、単純なネットワークの構成方法を示しています。
#次は2サイトを含む構成ファイルの
# Networkセクションの例

*NETWORK
SITE1 NADDR="//mach1:51669”
NLSADDR="//mach1:31669"
#
SITE2 NADDR="//mach386:51669"
NLSADDR="//mach386:31669"
ネットワーク・データのスケジューリングでのフェイルオーバーとフェイルバック
データは使用可能な回線のうち、優先度が最も高い回線を流れます。すべてのネットワーク・グループに同じ優先度が与えられている場合、データはすべてのネットワークに同時に送信されます。現在優先されているすべての回線で障害が発生すると、データは次に優先度が高い回線に送信されます。このプロセスをフェイルオーバーと呼びます。フェイルオーバーが発生すると、失敗した接続は定期的に再試行されます。
優先度の高いネットワーク接続が再確立されると、フェイルバックが発生し、優先度の低い接続にはデータがスケジューリングされなくなります。優先度が低い接続は、規則的な方法で切断されます。
すべてのネットワーク・アドレスへの接続の再試行が失敗すると、次にマシン間でのアプリケーション・データやシステム・データの送信が必要になったときに接続が再試行されます。
複数のネットグループによる構成の例
First State Bankという架空の銀行で、5台のマシン(A - E)が構成されるネットワークを想定してください。これらのマシンは4つのネットワーク・グループに構成され、各マシンは2つまたは3つのネットワーク・グループで使用されています。
注意:
複数のネットワーク・グループ(NETGROUPS)を構成する場合のハードウェア要件とソフトウェア要件は、このマニュアルでは説明していません。たとえば、マシンが、複数の物理ネットワークに参加しなければならない場合があります。各マシンのTCP/IPシンボリック・アドレスは、/etc/hostsファイルまたはDNS(ドメイン・ネーム・サービス)で識別する必要があります。
次の例では、//A_CORPORATE:5345という形式のアドレスの文字列A_CORPORATEは、/etc/hostsファイルまたはDNSで指定されていることを想定しています。
First State Bankには、次の4つのネットワーク・グループがあります。
DEFAULTNET (デフォルトのネットワークである企業WAN)
GREEN_GROUP (メンバーのマシン間に、高速な光ファイバのポイント・ツー・ポイント・リンクを提供する専用LAN)
すべてのマシンは、DEFAULTNET (企業WAN)に属します。さらに、各マシンはMAGENTA_GROUPまたはBLUE_GROUPに関連付けられます。MAGENTA_GROUPの一部のマシンはGREEN_GROUPにも属しています。図12‑2に、ネットワークにおけるグループの割当てを示します。
図12‑2 ネットワーク・グループの例
 
この例では、マシンAとBは以下のグループに対するアドレスを持ちます。
DEFAULTNET (企業WAN)
マシンCは以下のグループに対するアドレスを持ちます。
DEFAULTNET (企業WAN)
マシンDとEは以下のグループに対するアドレスを持ちます。
DEFAULTNET (企業WAN)
ローカル・エリア・ネットワークはすべての場所間ではルーティングされないため、マシンD (BLUE_GROUP LAN内)は、共通の単一アドレス、つまり企業WANネットワーク・アドレスのみを使用してマシンA (GREEN_GROUP LAN内)と通信します。
サンプル・ネットワークの構成ファイル
前の項で説明した構成を設定するため、First State Bankの管理者は、次に示すように、UBBCONFIGファイルのNETGROUPSおよびNETWORKセクションで各グループを定義します。
*NETGROUPS

DEFAULTNET NETGRPNO = 0 NETPRIO = 100 #default
BLUE_GROUP NETGRPNO = 9 NETPRIO = 200
MAGENTA_GROUP NETGRPNO = 125 NETPRIO = 200
GREEN_GROUP NETGRPNO = 13 NETPRIO = 300

*NETWORK

A NETGROUP=DEFAULTNET NADDR="//A_CORPORATE:5723”
A NETGROUP=MAGENTA_GROUP NADDR="//A_MAGENTA:5724"
A NETGROUP=GREEN_GROUP NADDR="//A_GREEN:5725"
B NETGROUP=DEFAULTNET NADDR="//B_CORPORATE:5723"
B NETGROUP=MAGENTA_GROUP NADDR="//B_MAGENTA:5724"
B NETGROUP=GREEN_GROUP NADDR="//B_GREEN:5725"
C NETGROUP=DEFAULTNET NADDR="//C_CORPORATE:5723"
C NETGROUP=MAGENTA_GROUP NADDR="//C_MAGENTA:5724"

D NETGROUP=DEFAULTNET NADDR="//D_CORPORATE:5723"
D NETGROUP=BLUE_GROUP NADDR="//D_BLUE:5726"
E NETGROUP=DEFAULTNET NADDR="//E_CORPORATE:5723"
E NETGROUP=BLUE_GROUP NADDR="//E_BLUE:5726"

各ネットワーク・グループへの優先度の割当て
ネットワークのBRIDGEプロセスの機能を最大限に生かすには、各NETGROUPに適切に優先度を割り当てます。NETGROUP の優先度を割り当てる場合は、以下の点を念頭に置いてください。
現在優先されているすべての回線で障害が発生すると、データは次に優先度が高い回線に送信されます。
NETPRIOのデフォルト値は100です。
ネットワーク・グループへの優先度の割当て例
図12‑3に、First State Bankの管理者が使用可能なネットワーク・グループに優先度を割り当てる方法を示します。
図12‑3 ネットワーク・グループへの優先度の割当て
次のように優先度が割り当てられます。
NETGROUPセクションおよびNETWORKセクションの例
最も優先度の低いネットワーク・グループは、デフォルトのネットワーク・グループとして予約されます。つまり、他のネットワーク・グループがすべて使用不可能にならないかぎり、このグループは使用されません。したがって、分単位で課金される衛星回線など、特定のネットワークの使用を制限する場合は、そのネットワークをデフォルトのネットワーク・グループとして指定します。
デフォルトのネットワーク・グループに優先度を割り当てるには、他のグループと同じように、DEFAULTNETNETPRIOバラメータを設定します。DEFAULTNETの優先度を指定しないと、以下の例に示すようにデフォルト値の100が使用されます。
*NETGROUP
DEFAULTNET NETGRPNO = 0 NETPRIO = 100
DEFAULTNETでは、ネットワーク・グループ番号(NETGRPNO)の値を0に指定する必要があります。これ以外の値は無効です。NETGRPNOの値は、エントリごとにユニークでなければなりません。
一方、複数のネットワーク・グループに対して、同じNETPRIOの値を割り当てることもできます。たとえば、First State Bankの構成ファイルで、MAGENTA_GROUPGREEN_GROUPに同じネットワーク優先度(NETPRIO=200)を割り当てることができます。
各ネットワーク・アドレス(NETWORK)は、デフォルトでDEFAULTNETネットワーク・グループに関連付けられます。このパラメータは、エントリ間の統一性を保ちたい場合、または定義されるネットワーク・アドレスを2つ目のネットワーク・グループに関連付けたい場合に、明示的に指定することができます。
*NETWORK
D NETGROUP=BLUE_GROUP NADDR="//D_BLUE:5726"
 

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