Oracle Automatic Storage Managementの記憶域要件の指定

Oracle ASMの記憶域要件を特定するには、必要なデバイス数およびディスクの空き領域を決定する必要があります。この作業を行うステップは、次のとおりです。

  1. Oracle ASMをOracle Databaseファイルまたはリカバリ・ファイル、あるいはその両方に使用するかどうかを決定します。Oracle Databaseファイルには、データファイル、制御ファイル、REDOログ・ファイル、サーバー・パラメータ・ファイル、およびパスワード・ファイルが含まれます。

    データベースのインストール時に、Oracle Databaseファイルの記憶域メカニズムとしてファイル・システムまたはOracle ASMのどちらかを選択するオプションがあります。同様に、リカバリ・ファイルの記憶域メカニズムとしてファイル・システムまたはOracle ASMのどちらかを選択するオプションもあります。

    注意:

    Oracle Databaseファイルとリカバリ・ファイルの両方に同じ記憶域メカニズムを使用する必要はありません。一方のファイル・タイプにファイル・システムを使用し、もう一方にOracle ASMを使用できます。

    Oracle ASMをOracle Databaseファイルの記憶域オプションとして選択した場合、「リカバリ・オプションの指定」画面の選択内容によって次のリカバリ・オプションがあります。

    • リカバリ・ファイルにOracle ASMオプションを選択した場合、Oracle Universal Installerでは、Oracle Databaseファイルおよびリカバリ・ファイルの両方に同じディスク・グループを使用するオプションのみが示されます。

    • データベースのインストール時にリカバリを有効にしないように決定している場合、データベースのインストール後に、DB_RECOVERY_FILE_DESTパラメータを変更して高速リカバリ領域を有効にできます。

  2. 作成するOracle ASMディスク・グループごとに、使用するOracle ASMの冗長性レベルを選択します。

    Oracle ASMディスク・グループの冗長性レベルを選択することによって、ディスク・グループにおけるOracle ASMによるファイルのミラー化方法、必要なディスク数およびディスク領域が決まります。

    • 外部冗長性

      このオプションでは、Oracle ASMでディスク・グループのコンテンツをミラーできません。この冗長性レベルの選択が推奨されるのは、RAIDデバイスなどそれ自体がデータ保護を提供するデバイスがディスク・グループに含まれる場合、またはデータベースが割込みなしのデータ・アクセスを必要としない場合です。

    • 標準冗長性

      標準冗長性ディスク・グループでは、パフォーマンスおよび信頼性を最適化するために、Oracle ASMではデータファイルの双方向ミラー化および制御ファイルの3方向ミラー化がデフォルトで使用されます。また、ディスク・グループの個々のファイルに対してミラー化の特性を選択できます。

      双方向ミラー化を使用する場合、標準冗長性ディスク・グループには、2つ以上の障害グループ(または2つ以上のディスク・デバイス)が必要です。標準冗長性ディスク・グループの有効なディスク領域は、その全デバイスのディスク領域の合計の半分です。

      Oracleでは、ほとんどのインストールに標準冗長性ディスク・グループの使用をお薦めします。Oracle Exadataでは、障害に対する保護を強化するために高冗長性のディスク・グループを使用することをお薦めします。

    • 高冗長性

      ディスク・グループの内容は、デフォルトで3方向にミラー化されます。高冗長性ディスク・グループを作成するには、3つ以上の障害グループ(3つ以上のデバイス)を指定する必要があります。

      高冗長性ディスク・グループでは最高水準のデータ保護が提供されますが、この冗長性レベルの使用を決定する前に、追加するストレージ・デバイスによりコストが高くなることを考慮する必要があります。

    • フレックス冗長性

      フレックス冗長性ディスク・グループは、柔軟なファイル冗長性、ミラー分割、冗長性変更などの機能を持つ新しいディスク・グループ・タイプです。フレックス・ディスク・グループは、異なる冗長性要件を持つファイルを単一のディスク・グループに統合できます。データベースでファイルの冗長性を変更する機能も用意されています。

      データベース・データに対して、ミラー化なし(非保護)、双方向ミラー化(ミラー化)または3方向ミラー化(高)を選択できます。フレックス冗長ディスク・グループでは、最小で3台のディスク・デバイス(または3つの障害グループ)が必要です。

  3. データベース・ファイルおよびリカバリ・ファイルに必要なディスク領域の合計量を判別します。

    システムでOracle ASMインスタンスが実行されている場合は、既存のディスク・グループを使用して記憶域要件を満たすことができます。必要に応じて、データベースをインストールする際に既存ディスク・グループにディスクを追加できます。

    表9-1 Oracle Database (非CDB)のOracle ASMディスク数および領域の要件

    冗長性レベル ディスクの最小台数 データ・ファイル リカバリ・ファイル 両方のファイル・タイプ

    外部

    1

    2.7GB

    8.1GB

    10.8GB

    標準またはフレックスの双方向ミラー化

    2

    5.2GB

    15.6GB

    20.8GB

    高またはフレックスの3方向ミラー化

    3

    7.8GB

    23.4GB

    31.2GB

    表9-2 1つのプラガブル・データベース(PDB)を含むマルチテナント・コンテナ・データベース(CDB)のOracle ASMディスク数および領域の要件

    冗長性レベル ディスクの最小台数 データ・ファイル リカバリ・ファイル 両方のファイル・タイプ

    外部

    1

    4.5GB

    13.5GB

    18GB

    標準またはフレックスの双方向ミラー化

    2

    8.6GB

    25.8GB

    34.4GB

    高またはフレックスの3方向ミラー化

    3

    12.9GB

    38.7GB

    51.6GB

    注意:

    • ディスク・デバイスは、グリッド・インストールを実行するユーザーが所有する必要があります。

      システム管理者に問い合せて、Oracle ASMで使用されるディスクがストレージ・レベルでミラー化されているかどうか確認してください。ミラー化されている場合、冗長性に「外部」を選択します。ディスクがストレージ・レベルでミラー化されていない場合は、冗長性に「標準」を選択します。

    • すべてのOracle ASMディスクは割当て単位(AU)に分割されます。割当て単位は、ディスク・グループ内の割当ての基本単位です。特定のディスク・グループ互換レベルに応じて、AUサイズの値には1、2、4、8、16、32または64MBを選択できます。デフォルト値は、フレックス・ディスク・グループの場合は4 MBで、他のすべてのディスク・グループ・タイプの場合は1 MBです。エンジニアド・システムでは、デフォルト値は4 MBです。

  4. 必要な場合は、Oracle ASMディスク・グループのデバイスに障害グループを指定します。

    標準冗長性、高冗長性またはフレックス冗長性ディスク・グループを使用する場合は、カスタム障害グループのディスク・デバイスを関連付けることによって、ハードウェア障害に対するデータベースの保護を強化できます。デフォルトでは、各デバイスに独自の障害グループが含まれます。ただし、標準冗長ディスク・グループの2台のディスク・デバイスが同じSCSIコントローラに接続されている場合、コントローラに障害が発生すると、ディスク・グループは使用できなくなります。この例でのコントローラは、シングル・ポイント障害です。

    このタイプの障害を防止するためには、2つのSCSIコントローラを使用します。各コントローラに2台のディスクを接続し、各コントローラに接続されたディスクに障害グループを定義します。この構成では、ディスク・グループが1つのSCSIコントローラの障害を許容できます。

    カスタム障害グループを定義する際には、次のガイドラインを考慮してください。

    • リリース2以降、Oracle Grid Infrastructureインストール時に「ASMディスク・グループの作成」画面でカスタム障害グループを指定できます。

    • インストール後に、GUIツールのASMCA、コマンドライン・ツールのasmcmd、またはSQLコマンドを使用して、カスタム障害グループを定義することもできます。

    • カスタム障害グループを定義する際、データベース・ファイルのみを格納する障害グループの場合、標準冗長ディスク・グループでは最小で2つの障害グループ、高冗長ディスク・グループでは3つの障害グループを指定する必要があります。

  5. システムに適切なディスク・グループが存在しない場合は、適切なディスク・デバイスを設置または指定して、新しいディスク・グループを追加します。

    次のガイドラインに従って、適切なディスク・デバイスを指定します。

    • ディスク・デバイスは、Oracle Grid Infrastructureインストールを実行しているユーザーが所有している必要があります。

    • Oracle ASMディスク・グループでは、すべてのデバイスのサイズおよびパフォーマンス特性が同じである必要があります。

    • 単一の物理ディスクにある複数のパーティションを、1つのディスク・グループのデバイスとして指定しないでください。Oracle ASMは、各ディスク・グループのデバイスが、別々の物理ディスク上に存在するとみなします。

    • 論理ボリュームは、Oracle ASMディスク・グループのデバイスとして指定できますが、Oracle ASMには不要な複雑なレイヤーが追加されるため、これを使用することはお薦めできません。論理ボリューム・マネージャの使用を選択する場合は、追加ストレージ・レイヤーのストレージ・パフォーマンスに対する影響を最小化できるように、論理ボリューム・マネージャを使用してストライプ化またはミラー化しない単一の論理ユニット番号(LUN)を表すことをお薦めします。