このドキュメントで説明するソフトウェアは、Extended SupportまたはSustaining Supportのいずれかにあります。 詳細は、https://www.oracle.com/us/support/library/enterprise-linux-support-policies-069172.pdfを参照してください。
Oracleでは、このドキュメントに記載されているソフトウェアをできるだけ早くアップグレードすることをお薦めします。
第1章 新機能および変更点
Unbreakable Enterprise Kernelリリース2 (UEK R2)は、Oracle Linux 5およびOracle Linux 6向けにテストを重ね、最適化されたオペレーティング・システム・カーネルのオラクル社が提供する2番目のメジャー・リリースです。 これはメインラインのLinux 3.0バージョン3.0.36に基づいています。 UEK R2と、Linux 2.6.32に基づいていたUnbreakable Enterprise Kernelの最初のバージョンの違いの詳細な説明は、最初の『Oracle Unbreakable Enterprise Kernelリリース・ノート リリース2』(https://oss.oracle.com/ol6/docs/RELEASE-NOTES-UEK2-en.html)を参照してください。
2.6.39-400.109.1リリースは、4番目の四半期ごとのドライバ更新リリースで、これにもバグやセキュリティの修正が含まれています。
カーネルやRPMパッケージで表示されるバージョン番号は2.6.39です。 これは、新しい3.xバージョンのスキームでは対応できない可能性のある、Oracle Linuxディストリビューションの一部の低レベルのユーティリティで起こりうる破損を避けるために行われました(プラミングとしても知られます)。 通常のLinuxアプリケーションでは普通、Linuxカーネルのバージョン番号は認識されず、それによる影響もありません。
1.1 注目すべき変更点
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統合OpenFabrics Alliance (OFED) 1.5.5スタックで、x86_64アーキテクチャのシステム上の次のInfiniBandハードウェアがサポートされます。
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Mellanox ConnectX-2 InfiniBandホスト・チャネル・アダプタ
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Sun InfiniBand QDRホスト・チャネル・アダプタPCIe #375-3696
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btrfsファイルシステムに対して、次のカーネルレベル機能が実装されます。
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ページ・サイズ(4KB)より大きなメタデータ・ブロック(最大64KBまでのサイズ)の許可。
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デバイスの準備完了ステータスを読み取る、新しい
ioctl
コールBTRFS_IOC_DEVICES_READY
。 -
デフラグメンテーションで、スナップショット間のデータ・ブロックの共有が元に戻されません。 以前は、共有データ・ブロックが複製されていたので、デフラグメンテーションによってディスク領域の使用が増える場合がありました。
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ファイル・システム・ラベルを取得または設定する、新しい
ioctl
コールBTRFS_IOC_GET_LABEL
およびBTRFS_IOC_SET_LABEL
。 -
fsync
直接I/Oおよび同時マルチスレッド読取りのスピード向上。 -
FALLOC_FL_PUNCH_HOLE
フラグ指定でfallocate()
を呼び出すことによるファイル穴空けのサポート。 穴を検出するにはFIEMAP
ioctl
を使用します。lseek()
システム・コールのSEEK_HOLE
およびSEEK_DATA
オプションはサポートされていません。
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-
ユーザー空間
btrfs-progs
パッケージ(btrfs-progs-0.20-1.4
)は、yum updateを使用したインストール用にol6_latest
チャネルで提供されます。 このパッケージの新機能に対するコマンドライン・アクセスは、この更新より前のカーネル・バージョンではサポートされていません。 この更新はインストールしたが、更新されたユーザー空間btrfs-progs
パッケージをインストールしていない場合は、ioctl
または他のプログラミング・インタフェースがある機能に対してプログラムからアクセスできます。更新された
btrfs-progs
パッケージでは、カーネルレベルの機能に加えて、次の機能がサポートされます。-
mkfs.btrfsの-lオプションで、ファイル・システムのリーフ・サイズを指定できます。 ほとんどの使用形態に対しては、デフォルト値の
4k
(4KB)をお薦めします。16k
または32k
(16または32KB)という値を指定すると、メタデータのフラグメンテーションが削減されて、一部のワークロードのパフォーマンスが向上する場合があります。 サポートされている最大サイズは64k
(64KB)です。 -
btrfs filesystem label
device
newlabel
コマンドで、既存のファイル・システムのラベル設定またはラベル変更がサポートされます。 ファイル・システムを1つのデバイスのみで構成する必要があるという制限、およびファイル・システムをまずアンマウントする必要があるという制限があります。 btrfs filesystem showコマンドで、ファイル・システムのラベルが表示されます。 -
btrfs replace startコマンドを使用して、デバイスを実行時に置換できます。
-
btrfs filesystem balanceコマンドで、btrfs RAIDプロファイルを動的に変更できます。
-
btrfs device statsコマンドを使用して、デバイス統計(読取りおよび書込みの失敗、チェックサム・エラーおよび破損ブロックの数)を収集できます。
-
[Ctrl]+[C]
を押すか、デフラグメンテーション・プロセスを強制終了すれば、デフラグメンテーションを取り消せます。
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1.2 Xenの改良点
Xenの使用をサポートするために、いくつかの改良点がUnbreakable Enterprise Kernelに組み込まれました。
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多数のバグ修正とパフォーマンス向上。
-
新しいハイパーコール(
add_to_physmap_range
)による、ARMおよびPVHのxen/privcmd
の最適化。 -
Xen ARMのバルーン・ドライバのサポート。
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PVHVMバックエンド・ドライバを許可し、dom0機能をゲストに移動できるようにするための機能拡張。
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多数の物理コアおよびゲストに対するブロック・プロトコルのスケーラビリティを向上するための、ブロック・リング・プロトコルに対する永続付与拡張機能の実装。
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Xen Processor Aggregator Device (PAD)の追加。
1.3 ドライバの更新
Unbreakable Enterprise Kernelでは、広範なハードウェアおよびデバイスをサポートします。 ハードウェアおよびストレージのベンダーとの密接な協力関係により、いくつかのデバイス・ドライバがオラクル社によって更新されました。
1.3.1 ストレージ・アダプタ・ドライバ
ATAオーバー・イーサネット
-
ATAオーバー・イーサネット(AoE)ドライバ(
aoe
)の47qへの更新。
Broadcom
-
NetXtreme II iSCSIドライバ(
bnx2i
)の2.7.6.1dへの更新。 -
NetXtreme IIファイバ・チャネル・オーバー・イーサネット・ドライバ(
bnx2fc
)の2.3.4への更新。
Cisco
-
Cisco FCoE HBAドライバ(
fnic
)の1.5.0.41への更新。
Emulex
-
Blade Engine 2 Open-iSCSIドライバ(
be2iscsi
)の10.0.467.0oへの更新。 -
ファイバ・チャネルHBAドライバ(
lpfc
)の0:8.3.7.10.4pへの更新。
LSI
-
LSI Fusion-MPTベース・ドライバ(
mptbase
)の4.28.20.01への更新。 -
LSI Fusion-MPT
ioctl
ドライバ(mptctl
)の4.28.20.01への更新。 -
LSI Fusion-MPTファイバ・チャネル・ホスト・ドライバ(
mptfc
)の4.28.20.01への更新。 -
LSI Fusion-MPT IPオーバー・ファイバ・チャネル・ドライバ(
mptlan
)の4.28.20.01への更新。 -
LSI Fusion-MPT SASドライバ(
mptsas
)の4.28.20.01への更新。 -
LSI Fusion-MPT SCSIホスト・ドライバ(
mptscsih
)の4.28.20.01への更新。 -
LSI Fusion-MPT SPIホスト・ドライバ(
mptspi
)の4.28.20.01への更新。 -
LSI Fusion-MPT SAS 2.0ドライバ(
mpt2sas
)の16.05.01.00への更新。
MegaRAID
-
MegaRAID SASドライバ(
megaraid_sas
)の06.505.02.00への更新。
Mellanox
これらのドライバは、UEK R2四半期更新3で最初にリリースされました。
-
ConnectXコア・ドライバ(
mlx4_core
)は1.0-ofed1.5.5でリリースされています(x86_64のみ)。 デバイスの初期化やファームウェア・コマンド処理などの低レベル機能を処理して、リソース割当てを制御し、InfiniBandおよびEthernet機能が相互に競合することなく、デバイスを共有できるようにします。 -
ConnectXイーサネット・ドライバ(
mlx4_en
)の1.5.10 (2013年1月) (x86_64のみ)への更新。 Ethernet固有の機能を処理し、netdev中間レイヤーに接続します。 -
ConnectX InfiniBandドライバ(
mlx4_ib
)は1.0-ofed1.5.5でリリースされています(x86_64のみ)。 インフィニバンド固有の機能を処理します。
QLogic
-
ファイバ・チャネルHBAドライバ(
qla2xxx
)の8.05.00.03.39.0-kへの更新。 -
iSCSIドライバ(
qla4xxx
)の5.03.00.02.06.02-uek2への更新。 Open-iSCSIをサポートします。
1.3.2 ネットワーク・アダプタ・ドライバ
Broadcom
-
NetXtreme IIネットワーク・アダプタ・ドライバ(
bnx2
)の2.2.3nへの更新。 -
NetXtreme II 10Gbpsネットワーク・アダプタ・ドライバ(
bnx2x
)の1.76.54への更新。 -
統合ネットワーク・インタフェース・カード・コア・ドライバ(
cnic
)の2.5.16gへの更新。 -
Tigon3イーサネット・アダプタ・ドライバ(
tg3
)の3.129dへの更新。
Emulex
-
Blade Engine 2 10Gbpsアダプタ・ドライバ(
be2net
)の4.6.62.0uへの更新。
Intel
-
PRO/1000 PCI-Express Gigabitネットワーク・アダプタ・ドライバ(
e1000e
)の2.3.2-NAPIへの更新。 -
ギガビット・イーサネット・ネットワーク・アダプタ・ドライバ(
igb
)の4.1.2への更新。 -
10ギガビットPCI-Expressネットワーク・アダプタ・ドライバ(
ixgbe
)の3.14.5への更新。 -
10ギガビット・サーバー・アダプタ仮想機能ドライバ(
ixgbevf
)の2.8.7への更新。 カーネルはSingle Root I/O Virtualization (SR-IOV)をサポートしている必要があります。
QLogic
-
1/10 GbE統合/インテリジェント・イーサネット・アダプタ・ドライバ(
qlcnic
)の5.2.29.45への更新。 -
QLE81xxネットワーク・アダプタ・ドライバ(
qlge
)のv1.00.00.32への更新。
Realtek PCI Expressギガビット・イーサネット・コントローラ
-
Realtek PCI Expressギガビット・イーサネット・コントローラ(
r8169
)の2.3LK-NAPIへの更新。
VMware
-
VMware VMXNET3仮想イーサネット・ドライバ(
vmxnet3
)の1.1.30.0-kへの更新。
1.3.3 その他のドライバ
HP
-
HP ProLiantチャネル・インタフェース・デバイス・ドライバfor iLO (
hpilo
)の1.4への更新。
1.4 テクノロジ・プレビュー
Unbreakable Enterprise Kernelリリース2に含まれている次の機能はまだ開発中ですが、テストおよび評価プロセスに使用できます。
-
分散複製型ブロック・デバイス(DRBD)
非共有型の同時複製ブロック・デバイス(ネットワーク経由のRAID1)で、高可用性(HA)クラスタのビルディング・ブロックの役割を果たすように設計されています。 自動フェイルオーバーのためにはクラスタ・マネージャ(ペースメーカーなど)が必要です。
-
カーネル・モジュール署名機能
暗号署名チェックをモジュール・ロード時にモジュールに適用し、カーネルにコンパイルされた公開キーリングに対して署名をチェックします。 GPGは暗号化の作業を行うために使用され、署名およびキーのデータの書式を決定します。
-
Linuxコンテナ(lxc)
コンテナでは、Linux Cgroupsおよびネームスペース機能に基づいて、相互に干渉することなく、単一ホストでオペレーティング・システムの複数のアプリケーションまたはインスタンスを安全かつセキュアに実行できます。 コンテナは軽量かつリソース・フレンドリで、ラック・スペースおよび電力を節約します。 コンテナを開始するには、Unbreakable Enterprise Kernelのパッケージ・リポジトリに含まれている
lxc
パッケージをインストールする必要があります。 -
Transcendent Memory
Transcendent Memory (tmem)は、システム内の十分に利用されていないメモリーを要求し、最も必要とされるところで利用できるようにすることで、仮想化環境での物理メモリーの利用を向上させるための新しい方法を提供します。 オペレーティング・システムの観点から見れば、tmemはサイズが不確定で可変の高速擬似RAMで、主として実際のRAMが不足しているときに役に立ちます。 このテクノロジとそのユースケースの詳細は、透過メモリー・プロジェクト・ページ(https://oss.oracle.com/projects/tmem/)を参照してください。
1.5 互換性
Oracle LinuxではRed Hat Enterprise Linuxとのユーザー空間の互換性が維持され、これはオペレーティング・システムの下で実行されているカーネルのバージョンとは無関係です。 ユーザー空間の既存のアプリケーションは、Unbreakable Enterprise Kernelリリース2で変更なしに引き続き実行され、RHEL認定アプリケーションには証明書の更新は不要です。
カーネルABIは、四半期更新3の後のUEK R2のすべての更新において変更されていません。
Oracle Linuxチームはリリース時の互換性に関する影響を最小限に抑えるため、カーネル・モジュールに対する依存性があるハードウェアおよびソフトウェアを提供するサード・パーティ・ベンダーと緊密に協力しています。 ただし、新規ドライバの導入を可能にするために、変更が必要になる場合もあります。 この更新をインストールする前に、アプリケーション・ベンダーによるこのリリースのサポート状況を確認してください。