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Oracle Enterprise Manager概要
10gリリース5(10.2.0.5)
B53905-01
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2 概要

Oracle Gridにより、企業がアプリケーションのパフォーマンスを高め、他に例のないITインフラストラクチャの信頼性を達成するための確かなソリューションが提供されます。あらゆる規模の企業において、Oracle Gridの直接の利点として、コンピューティング資源の可用性が向上し、生産的で優秀な管理者が育成され、高品質のサービスが実現されることにより、莫大なITコスト削減が達成されます。Oracle Gridの利点を十分に享受するための重要な要素は、グリッド・システムを管理するための正しいソリューションを採用することです。さらに、最も重要なのは、そのグリッド・システムで実行されるアプリケーションです。

Oracle Enterprise Manager 10gとは、Oracle Grid全体と、そこで実行されるアプリケーションを管理するための、オラクル社の単一統合ソリューションです。Grid Controlでは、アプリケーションに対して最高品質のサービスを約束する強力なトップダウンの監視手法と、費用効率の高い自動構成管理、プロビジョニングおよび管理ソリューションとを結合します。この強力な組合せにより、あらゆる規模のOracleデータ・センターに対する前例のない管理を実現します。

この章では、Enterprise Manager 10gリリース2(10.2)の概要、その豊富な機能およびオラクル社の顧客に提供される独自のメリットについて説明します。

サービス品質: ITインフラストラクチャとビジネスとの橋渡し

最近まで、ビジネスでの成功を測るものとITインフラストラクチャのパフォーマンスが同等に語られることはほとんどありませんでした。企業では、伝統的な組織構造を1つの理由としてこの2つを別々に取り扱っていました。しかし、主な理由は、既存の管理ツールでは、より広範なニーズの一部にのみ対処するポイント・ソリューションが提供されていたことです。IT管理の優先順位は主に個々のITシステムのパフォーマンス維持にあり、真のビジネスの目的やニーズからは切り離されていました。

現在、企業は、純利益を運用し、提供するサービス品質を差別化するためには、ITパフォーマンスによってビジネスがどのような影響を受けるかを見抜く力を持つ必要があることを認識しています。この要求によって、管理ソリューションの革新が必須となりました。この場合、ツールによって、個別のシステム管理の範囲を超えて、ビジネスの優先順位と一致するアプリケーションの可用性とパフォーマンス・レベルを提供することに重点を置く必要があります。ほとんどの管理ソリューションは、アプリケーションとそのライフ・サイクルという視野の狭い考え方を持つため、このタスクにはふさわしくありません。

拡張アプリケーション・サーバーの管理

Oracle Gridプラットフォームの重要な要素であるOracle Enterprise Manager 10gは、ビジネスの観点からサービス・レベルのパフォーマンスを管理します。最善のシステム監視ソリューション(データベース、アプリケーション・サーバー、ホスト、ファイアウォール、ロード・バランサおよびストレージに対する即時に利用可能なサポートなど)を活用することで、アプリケーション管理のトップダウン手法を提供します。このソリューションは、システムごとのカバレッジの深さとサポート対象のアプリケーションの範囲の広さの点が独特です。オラクル社の顧客に対して、これと同じレベルの深さ、統合および精度を提供するソリューションは他にはありません。Grid Controlリリース2の新機能は、豊富なグラフィカル・モデリングと監視、簡潔なワークフロー方式のダッシュボードおよび根本原因診断により、リリース1のアプリケーション・サービスのレベル管理ソリューションを拡張したものです。これにより、管理者は、エンド・ユーザー・アプリケーションの可用性の問題から、アプリケーション・スタック全体を経由して、原因となっているITインフラストラクチャ・コンポーネントを特定できます。また、管理者は補完機能を使用して、低レベルのシステム問題が表出した場合に、影響を受けるアプリケーションを迅速に特定して優先順位を付けることができます。管理者はGrid Controlリリース2の新機能を使用して、サービス提供のバックボーンとなるITインフラストラクチャ内のシステム・コンポーネントをモデリングして関連付けできます。このようなシステム・コンポーネントを活用して、システムに応じてアプリケーションまたはサービスを定義し、サービスの可用性とパフォーマンスを決定するために測定するビジネス・トランザクションを選択できます。Grid Controlは、カスタム・スクリプトなど20以上の各種トランザクション・プロトコルをサポートし、対象の幅を大きく拡張し、ほぼすべての環境でのアプリケーションの監視ニーズを満たしています。Grid Controlのグラフィカルな監視ダッシュボードを使用することによって、管理者、経営者および企業オーナーは、最も重要なビジネスのサービスのステータスを1つのビューでリアルタイムに認識できます。監視ダッシュボードには、ITシステム・コンポーネントの関係と状態を示すシステム・レベルのビューだけでなく、個々のサービスまたはサービス・グループの上位レベルのビューも表示されます。ダッシュボードは、新たに導入された根本原因の可用性管理機能とともに実装され、パフォーマンスに直接影響する問題の解決に要する時間を大幅に短縮します。サービスとシステムのダッシュボードは、Oracleのパッケージ・アプリケーションでは即時利用可能になります。

図2-1 複数のサービスが統合されたダッシュボード・ビュー

Enterprise Managerの「サービス・ダッシュボード」ページです。
「図2-1 複数のサービスが統合されたダッシュボード・ビュー」の説明

グリッドを使用した管理コストの削減

グリッドにおいて、システム数は少ない場合もかなり多い場合もあり、サービスの多様性についても低い場合とかなり高い場合があります。これまで、一連の大規模システムを管理するコストは直線的に増加し、新システムがエンタープライズに追加されることによってさらに増加してきました。スケーラビリティを持たない従来の管理ソリューションでは、グリッド環境で管理コストを維持することはまったく不可能です。Grid Controlによって行われる根本的な価値提案とは、管理対象システム数の増加に伴う管理コストを一定またはほぼ一定の額に維持することです。この提案を可能にする一連の条件があります。

既存のIT資産と稼働予定対象の把握

IT部門は長年にわたって、企業全体で実行するシステムのインストール、構成およびメンテナンスを手動で行う個人の知識に依存してきました。システムを起動し動作するには、しばしば深く関与した者のみが理解できる言語で書かれた詳細なマニュアルに従う必要がありました。その上、分散システムが進化してサービス・アーキテクチャがより複雑かつ異機種が混在するものになるに伴い、手動のソリューションは費用効果の観点から、またより差し迫った問題であるサービスの品質の観点から、もはや実行不可能になりました。管理者は、現在でははるかに多くのシステムに対して責任があり、システム間の関係も複雑すぎるため手動では追跡できません。ファイアウォール、スイッチ、ロード・バランサ、アプリケーション・サーバー、データベースおよびクラスタは、すべて信頼性のある自動構成管理が要求される複雑なルールを使用して分散および接続されています。

Grid Controlの構成管理ソリューションは、従来の手動構成管理ソリューションの悩みであったコストとエラーが発生しないように設計されています。Grid Controlは、ハードウェア、ソフトウェア・インストール(パッチ・レベルを含む)、および管理するすべてのサービスとシステムのソフトウェア構成データを集中管理して追跡します。この詳細情報は定期的または自動的に収集され、変更が起こるたびに更新されます。エンタープライズ構成情報の中央ストレージは、グリッド全体でシステムの定義、デプロイ、監査、強制およびメンテナンスの基盤となります。

認証構成: 絶え間なく変化するデータ・センターに調和をもたらす

ITの専門家の間では、デプロイされたシステムのタイプとそのデプロイに使用された構成のバリエーションが少ないほど、システムの管理が容易でシステムに信頼性があるという点で一致しています。しかし、最も成熟したビジネス慣行であっても、すべてのシステムが同じデプロイメントの標準仕様を採用することは期待できません。堅牢な構成管理ソリューションを使用することで、管理者は自動化ツールを使用し、デプロイされたすべてのシステムで指定された慣行とルールを確実に順守させることができます。このようにして、事前にテストされ、事前に認証された構成のみが、多忙なデータ・センターの稼働フェーズに入ることができます。

Grid Controlでは、管理者はルール(またはポリシー)を定義できます。ほとんどのルールは即時利用可能で、エンタープライズ全体で実行するすべてのシステムとソフトウェアの構成を管理します。また、システムの自然な構成ライフ・サイクルとは、パッチのインストール、ファイルおよびディレクトリの追加、ポートの変更、依存関係の編集などによって変更されることを意味するため、システムがロールアウトされると、Grid Controlは継続的に事前定義されたポリシーと照合して監査を行います。すべての変更を追跡することによって、管理者はその発生時期、実行者、受入れ可能な変更、修正が必要な変更を認識します。事前対応型の監査と強制を使用したこのレベルのセキュリティとコンプライアンスは、大部分のデータ・センターの特徴である絶え間ない変化において調和を保つために必要です。また、これは、新しいシステムが製品ラインに投入されたときや既存のシステムがアップグレードされたとき、またはパッチが適用されたときに、秩序を維持し、コンプライアンス標準を順守するためにも重要です。

エラーのない自動プロビジョニング: Linux、Oracle RAC、認証イメージ、パッチ、アップグレード

システム管理者は、自分の時間の最大25%を新しいソフトウェアのインストールと構成に使用する場合があります。Grid Controlの自動プロビジョニング・ツールを使用することによって、企業は新しいソフトウェアのデプロイに消費する時間を最大90%まで削減できます。管理者はGrid Controlを使用し、新しいデプロイメントがベースとする中央ライブラリ(事前構成済および認証済)にベース・イメージを格納できます。リリース2で新たに使用可能になった機能により、管理者はベアメタルから完全に構成済のLinuxシステムをデプロイできます。システムは希望するソフトウェア構成でデプロイされ、すべて数回のクリックのみで、該当するバージョンとパッチ・レベルとなることが保証されています。この機能は、迅速にエラーなしで容量を追加できるOracle Real Application Clusters(RAC)とアプリケーション・クラスタ環境では非常に強力です。リリース2では、手順数と複雑性を最小限に抑えるための、Oracle RACおよびクラスタ・システム用に設計された特定の機能が使用可能になりました。

図2-2 自動化されたOracle RACデプロイメントおよび拡張

「Oracleホームのクローニング: 製品設定」ページです。
「図2-2 自動化されたOracle RACデプロイメントおよび拡張」の説明

パッチの管理

これまで、IT環境のパッチの管理は非常に面倒で制御が困難でした。システム数とシステムに対する変更が広範囲に及ぶグリッド環境では、手動によるパッチの管理は終日に及ぶ非生産的なジョブです。

Grid Controlでは、オラクル社への直接リンクを使用し、リリースされた重要なパッチを事前にまたは定期的にMy Oracle Supportに問い合せ、適用する必要があるパッチをアドバイザを通じて管理者に通知します。特定のシステムおよび特定のサイトで実行するソフトウェアと使用可能なパッチを関連付けることで、管理者には適用可能なパッチのみが通知されます。My Oracle Supportに直接問い合せると、特定のターゲットと関連するパッチが参照されます。または必要に応じて、管理者は特定のパッチを問い合せることもできます。必要なパッチが見つかった後、Grid Controlによりダウンロードしてデプロイできます。Grid Controlでは、オプションでエンド・ユーザーが指定したスクリプトを実行し、そのパッチを必要とするすべてのシステムにパッチをインストールできます。これらの各ステップによって、顧客のエンタープライズ全体にパッチを迅速に適用できます。Grid Controlでは、この便利なパッチ管理機能が拡張されてOSパッチのサポートが組み込まれています。パッチはシステム・メンテナンスの重要なコンポーネントですが、同時にシステム修復用の重要なソフトウェアのインストールを妨げる最大の障害でもあります。

図2-3 特定のターゲットに関連するパッチの検索

Enterprise Managerの「パッチの選択」ページです。
「図2-3 特定のターゲットに関連するパッチの検索」の説明

Grid Controlを使用してパッチを検索、ダウンロードおよびデプロイし、毎日繰り返される日々のメンテナンス作業をできるだけ自動化することによって、管理者の効率が向上し、事前対応型のシステム作業に多くの時間を費やすことができます。

Oracle Grid環境全体の管理

Enterprise Manager 10gは、Oracle製品に対しては最も豊富で包括的な管理を提供していますが、オラクル社の製品のみの環境などはないことも明らかです。顧客は、重要な機能を持つ広範なプラットフォーム、ハードウェア、ネットワーク、ストレージおよびソフトウェア・コンポーネントをOracle Gridに持ち込んでいるため、この環境を監視および管理するツールを求めています。Grid Controlの最新のリリースでは、顧客が既存の投資を活用できるよう、ソリューションの拡張を目標とした相互に補完的な次の2つの取組みがあります。

拡張プラグインおよび管理プラグイン

リリース2では、Grid Controlの管理ソリューションの対象は非常に広範囲になっています。新しい拡張とプラグインによって、顧客はGrid Controlへの投資を活用し、ベンダーに依存しない方法で、アプリケーション・ソリューションを構成するファイアウォール、サーバーのロード・バランサ、Oracle以外のデータベースおよびアプリケーション・サーバーなどのコンポーネントを管理できます。たとえば、リリース2では、Oracle WebLogicまたはIBM WebSphereを実行している顧客が、Oracle製品で使用可能な、類似の豊富な管理機能を持つシステム・コンポーネントをシームレスに監視および管理できるようになります。

Grid Controlには、F5サーバーのロード・バランサおよびNetApp Filers用のコアとなるGrid Control製品の拡張も組み込まれています。今後数か月で、さらに多くの拡張がリリース2に実装しやすいプラグインとして広くリリースされ、使用可能になります。このようなプラグインには、オラクル社が開発したもの(Checkpointファイアウォール、SQL Serverなど)と、Oracle Gridのプライマリ監視および管理用に単一のコンソールを提供するために、オラクル社がサポートと検証を行い、サード・パーティ・ベンダーとの共同で開発されたものがあります。Grid Controlでは、即時利用可能な管理プラグイン以外に、新しいターゲットを簡単に追加して、管理ソリューションを顧客固有の環境に応じてカスタマイズするためのオープン・コマンドライン・インタフェースとわかりやすい実例を提供しています。カバレッジ範囲が拡張されたことによって、顧客がGrid Controlを使用して環境全体を集中管理する機能が提供されています。

図2-4 Oracle WebLogic Application Serverクラスタの監視

「BEA WebLogic Serverクラスタ」のホームページです。
「図2-4 Oracle WebLogic Application Serverクラスタの監視」の説明

オラクル社の統合管理パートナシップ

Grid Controlの直接アクセス範囲の拡張だけでなく、その他の主要管理ソリューションに対する双方向の統合サポートが主な優先事項です。Oracle以外の管理ソリューションに投資していた顧客は、オラクル社の統合への努力によってより大きな価値を獲得することができます。Grid Controlリリース2とHP社の製品、MicromuseおよびEMC SMARTSとの直接統合が現在サポートされています。たとえば、HP OpenView OperationsとGrid Control間の統合によって、管理データを共有できることで、管理機能に範囲の大きさと深さを与えています。この新しい統合レベルによって、顧客はデータベース、アプリケーション・サーバー、アプリケーション管理におけるオラクル社の長所と、ホストおよびネットワーク管理におけるHP OpenViewの長所をシームレスに活用できるようになりました。

オラクル社の顧客にとって独特な機能(ストレージ管理や動的にデータ・センターの容量を増減する機能)を提供するために他の相互に補完的なパートナシップが進行中で、間もなく発表されます。

まとめ

グリッド・コンピューティングによって、エンタープライズ全体でアプリケーションとサービスを提供する上での経済的な側面を根本的に変える準備が整っています。Enterprise Manager 10gでは、顧客は向上したアプリケーション・パフォーマンスを享受し、IT管理およびメンテナンス・コストを大きく節約できます。Enterprise Managerの堅牢なサービス・レベル管理機能によって、ITアプリケーション・パフォーマンスの要件とビジネスの優先順位がともに今までにない方法で考慮されています。多くのデータ・センターを悩ませ、全体的な管理コストを押し上げていた、エラーが発生しがちな手動の方法は、豊富な構成管理およびプロビジョニング機能によって不要になりました。管理者のリソースが不足し、ビジネスでIT消費予算の厳しい管理を余儀なくされている状況にあって、Enterprise Manager 10gは、グリッドをIT部門で実現しようとする中小および大規模企業にとっては必須のツールです。