この章では、ビジネス・インテリジェンス・システムを構築する2つのシナリオについて説明します。最初のシナリオでは高度な分析を行うOLAPを使用し、次のシナリオではトランザクション・データを参照してレポートします。
この章は、次のトピックで構成されています。
この項では、データ・セットと要件が異なる2つの架空の会社を例にして説明します。ここでは、それぞれの会社に対応したOracle Business Intelligenceソリューションを説明するために、一連のOracle Business Intelligenceコンポーネントが使用されています。
Global社の例は、Globalスキーマに基づいています。このスキーマは、Oracle Business Intelligenceの次のWebサイトから入手できます。
http://www.oracle.com/technology/bi/olap/olap.html
Acme社の例は、Oracle Databaseで提供されるサンプル・スキーマに基づいています。いずれのソリューションも、次の項に示す基本手順に従っています。
エンド・ユーザーがどのようにデータを分析するかを予測することは重要です。主要なユーザーにインタビューすることによって、ビジネス・インテリジェンス・システムで対応する必要がある問題を識別できます。
たとえば、次のような質問をします。
現在、どのような情報を保持していますか?
どのような情報がさらに必要ですか?
情報をどのように閲覧しますか?
ビジネス要件は、組織内のすべてのレベルで発生します。次に、対応が必要になる要件の例を示します。
取締役会
競合分析
主要な指標の追跡
傾向分析
例外レポート
管理分析および計画部門
投資および買収の評価
再編成分析
長期計画
リソース割当
許容量計画
人事計画
会計部門
予算
連結
差異分析
会計モデリング
現金管理
資産と負債のモデリング
活動基準管理
営業およびマーケティング部門
製品の収益性
顧客のプロファイル作成
流通分析
営業実績および有効性
さらに、現在使用しているレポートやデータソースを調べ、ユーザーの現在の情報システムに対する考え(便利な点や不都合な点)を調べることができます。また、実行時のパフォーマンスに対する要望も調べることができます。
エンド・ユーザーが解答した質問の種類から、対応できるデータのソースを識別できます。データは、トランザクション・データベースやフラット・ファイルなど、多数の場所に分散している場合があります。社内に使用できるデータがない場合は、そのデータを入手できるかどうか、またはエンド・ユーザーによる要望の変更が必要かどうかを検討します。
論理データ・モデルは、エンド・ユーザーの要件や要望に対応している必要があります。この論理データ・モデルはデータをビジネス用語で表現するため、ユーザーは必要なデータを迅速に識別できます。
OLAPツールの場合は、ディメンション、メジャーなどを定義します。これによって、メタデータ・オブジェクトを物理的なデータソースにマップできます。
リレーショナル・ツールの場合は、既存のリレーショナル・データソースを使用して、アイテム、ユーザー定義アイテム、結合などを定義します。
データ・モデルを物理的なオブジェクトとしてデータベースに配置し、データをソースからロードする必要があります。
OLAPツールの場合、データ・ストアはアナリティック・ワークスペースになります。
リレーショナル・ツールの場合、データ・ストアは現行のOLTPシステム、またはデータ・ウェアハウス内のスター・スキーマになります。
ビジネス・インテリジェンス・データは原則として階層構造になっているため、様々なレベルでデータのサマリーを生成できます。パフォーマンス向上のために、一部のデータ(最も頻繁にクエリーを実行するデータが理想的)のサマリーを作成し、データ・メンテナンス・プロシージャとして格納します。
アナリティック・ワークスペースでは、サマリー・データは、基本レベル・データと同じアナリティック・ワークスペース・オブジェクトに格納されます。リレーショナル・スキーマでは、サマリー・データはマテリアライズド・ビューに格納されます。
Global社は、様々な直販店でコンピュータのハードウェアとソフトウェアを販売しています。Enterprises sells computer hardware and software in a variety of outlets.長年にわたって業界トップの座を維持してきましたが、ここ数年はハードウェアの価格が急激に低下しています。収益性を維持するには、経営戦略に少しの失敗も許されない状況です。
データ・ウェアハウスを作成するには、世界中の多様なソースに存在する情報を統合する必要があります。これによって、次のようなビジネス分析上の質問に答えるためのデータが得られます。
どの製品が利益が高いか?
顧客は誰か、顧客は何をどのように購入するのか?
どのアカウントが最も収益性が高いか?
各流通チャネルの業績は?
ビジネスに季節的な差異はあるか?
このような質問に答えるためには、次のような非定型分析と高度な分析計算を使用して、データの傾向を識別する必要があります。
Global社では、OracleBI Warehouse Builderを使用して、データ・ウェアハウス用のスター・スキーマを生成します。この会社が直面する問題は、データ自体ではなく、そのデータを操作するツールにあります。会社は、OracleBI Discoverer Plus OLAPとOracleBI Spreadsheet Add-Inを使用することで、営業マネージャが満足する結果が得られると確信しています。一方で、IT部門に対しては、OracleBI Beansを検討して、予測やwhat-if分析などの戦略的な要件に対するカスタム・ソリューションを求めようとしています。
Global社のアプリケーション開発チームは、アナリティック・ワークスペースの開発にAnalytic Workspace Managerの使用を予定しています。この開発チームは、論理モデルを設計した後、アナリティック・ワークスペースの管理責任をIT部門に引き継ぐ予定です。IT部門では、OracleBI Warehouse Builderを使用していきます。引継ぎが完了するまで、IT部門ではスター・スキーマを継続して配置します。
Global社はOracle Business Intelligenceのコンポーネントを数多く使用し、BIソリューションを実装します。
前提条件: 「ソフトウェア要件」に示すソフトウェアがインストールしてあること
前述のように、Global社はエンド・ユーザー要件とデータソースをすでに識別しています。Global社のアナリティック・ワークスペースを作成するには、次の手順を実行します。後の各項でその詳細を説明します。
Analytic Workspace Managerの「モデル・ビュー」を開き、次のオブジェクトを定義します。
アナリティック・ワークスペース
ディメンション
レベル
属性
階層
キューブ
メジャー
Analytic Workspace Managerは、論理モデルをスタンダード・フォームのメタデータとしてアナリティック・ワークスペースに格納すると同時に、モデルのインスタンス化に必要なすべてのオブジェクトを作成します。
ソース・データがスター・スキーマまたはスノーフレーク・スキーマ内に存在する場合は、論理マルチディメンション・モデルを迅速に定義できます。ディメンション・テーブルには、様々なレベルの値とその属性の列が格納されます。たとえば、Timeディメンション・テーブルには、週、四半期および年のサロゲート・キーを格納できます。サロゲート・キーは階層のレベルを表します(この場合は「カレンダ」階層と名前を付けることができます)。表示名、終了日および期間の各列は、Timeディメンションの属性です。各ファクト・テーブルがキューブで、ファクトが格納された列がメジャーです。これ以外のスキーマは、個別の分析が必要です。
論理オブジェクトをそのデータソースにマップするには、Analytic Workspace Managerの「モデル・ビュー」ナビゲータでマッピング・フォルダを選択します。ソース・テーブルをマッピング画面にドラッグ・アンド・ドロップすると、論理オブジェクトと適切な列の間に接続線を描画できます。メンテナンス・ウィザードによって、リレーショナル・データソースからアナリティック・ワークスペースにデータがロードされます。
各キューブに対して集計ルールを定義できます。このルールは、各ディメンションの集計演算子、および事前にサマリーを作成して格納するデータ部分を識別します。これによって、キューブ内のすべてのメジャーに対するデフォルトのサマリー生成ルールが用意されます。メンテナンス・ウィザードは、この集計ルールを実行して、格納する集計を生成します。
計算ウィザードを使用すると、全ユーザーに対して導出メジャーを容易に定義できます。これによって、アナリティック・ワークスペースの情報量が豊富になります。
ユーザーは、OracleBI Discoverer Plus OLAPおよびSpreadsheet Add-Inを使用して追加のユーザー定義アイテム(カスタム・メジャー)および保存済選択を定義できるため、アナリティック・ワークスペースでこれらをすべて定義する必要はありません。Discoverer Plus OLAPは、ユーザー定義アイテムおよび保存済選択をDiscovererカタログに格納するため、適切な権限を持つ他のユーザーもアクセスできます。
ユーザーがデータにアクセスするには、次のデータベース権限が必要です。
CONNECT QUERY REWRITE SELECT(アナリティック・ワークスペースが格納されているテーブルに対する)Oracle Enterprise ManagerまたはSQLを使用してユーザーおよびグループを定義し、これらの権限を割り当てることができます。
アナリティック・ワークスペースを使用する準備が完了した後は、Spreadsheet Add-InおよびOracleBI Discoverer Plusをインストールできます。また、Discovererポータルを備えたダッシュボードを設定できるため、上級ユーザーはレポートを公開できます。
高度な分析の開発には時間がかかります。OracleBI Beansを使用すると、予測、モデルおよびwhat-ifシナリオをアナリティック・ワークスペースに定義できます。一方で、分析者は、カスタム・メジャーを通じてすでに使用可能になっている豊富な分析も利用できます。
新規バージョンのAnalytic Workspace Managerについては、Oracle Technology Network(http://www.oracle.com/technology)を確認してください。前述の定義がグラフィカル・インタフェースでサポートされます。
Acme社は、世界中で様々な製品の注文に応じています。この会社には次の部門があります。
人事部門は、社員と施設に関する情報を追跡します。
受注部門は、様々なチャネルを通じて、自社製品の在庫と売上を追跡します。
製品メディア部門は、会社が販売する各製品の説明と詳細情報をメンテナンスします。
情報交換部門では、B2B(business-to-business)アプリケーションを通じて出荷を管理します。
Acme社は、世界中に赴任している役員やマネージャに、柔軟で複雑な設定が不要なクエリーと分析ツールを提供することを希望しています。このツールには、製品のエディションやスキーマ設計に関係なく、Oracleデータベースに格納されている大量のデータに対しクエリーを実行する機能が必要です。また、個別のトランザクションに関する毎日の分析から、組織全体の支出プロファイル履歴まで、幅広いクエリーが必要です。ただし、拡張分析や非定型分析に対する要件はありません。
Acme社は、クエリーと分析ツール用にOracleBI Discovererを選択しました。大多数のユーザーはWebブラウザのみを使用して、データを取得して各種のグラフ形式で検討したり、データをドリルしてピボットしたりできます。
OracleBI Discovererは、Acme社のビジネス・インテリジェンス要件を満たすために必要なすべてのコンポーネントを備えています。この会社は、すでにOracleデータベースにデータを保有しており、当面の目標は現在のデータの分析であるため、現時点ではETLツールは必要ありません。後日、OracleBI Warehouse Builderを使用して、スター・スキーマにETL済のデータを含むデータ・ウェアハウスを作成できます。
前述のように、Acme社は、すでにエンド・ユーザー要件を識別し、データ・ストアも存在しています。Acme社にDiscovererシステムを実装するには、次の手順を実行する必要があります。後の各項でその詳細を説明します。
前提条件: 「ソフトウェア要件」に示すソフトウェアがインストールしてあること
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関連項目: 各手順の実行方法の詳細は、『Oracle Business Intelligence Discoverer管理ガイド』を参照してください。 |
EULには、1つ以上のビジネスエリアを定義するメタデータが含まれています。ビジネスエリアとは、ユーザー固有のデータ要件に当てはまるテーブルまたはビューの概念上のグループ化です。ビジネスエリアは、EULにアクセスするユーザーまたはユーザー・グループのニーズを反映するように設定できます。
ユーザーの要件が識別されると、様々なユーザー・グループがアクセスする必要のある情報を把握できます。たとえば、あるユーザー・グループは販売情報にアクセスし、他のグループは製造情報にアクセスするなどです。
OracleBI Discoverer Administratorで、共通のビジネス目的を持つ情報を分類するためのビジネスエリアを定義します。次に、そのクラスの情報を保持するデータベース・テーブルおよびビューを指定します。さらに、テーブルおよびビューに関するメタデータおよび他の情報をビジネスエリアにロードします。
OracleBI Discoverer Administratorを使用してサマリー・テーブルを作成します。これによって、クエリー・パフォーマンスを最適化できます。また、OracleBI Discovererの自動サマリー管理、または既存サマリー・テーブルの登録を実行することもできます。
ユーザーがデータにアクセスして分析するには、ビジネスエリア設定および内容はデフォルトで十分です。ただし、OracleBI Discoverer Administratorではデフォルトの分析機能を拡張する多くの機能が提供されます。これによって、ユーザーは最も柔軟で理解しやすい方法でデータを表示できます。
ビジネスエリアを調整するために、次の操作を実行できます。
オプション条件と必須条件の作成による、フォルダに返される行数の絞込み
ユーザーによる複雑な計算作成が不要なユーザー定義アイテムの作成
データベースからのテーブルのロード時に結合されなかったフォルダを組み合せる結合の作成
結合およびリレーショナル構造をユーザーに対して完全に非表示にする、複合フォルダへのフォルダの結合
SQLによって返される結果セットを表すカスタム・フォルダの作成
データをわかりやすくするための、アイテム名、説明および他の書式設定情報の編集
値リスト、代替ソートおよびディテール・ドリルをサポートするアイテム・クラスの作成
ドリルダウン操作を簡素化する階層の作成
データにアクセスするためのユーザー要件に基づいて、ビジネスエリアにアクセス権限を付与できます。
OracleBI Discovererがデータベースのセキュリティに影響を及ぼすことはありません。ユーザーはOracleBI Discoverer内で、データベースのアクセス権限のない情報を参照できません。OracleBI Discovererのセキュリティと権限はすべて、データベース・セキュリティ機能に付加されて適用されます。