次に、インストールの構成要件およびコマンドの概要を示します。ここでは、インストール・プロセスの概要を示します。
Oracle Clusterwareのインストール・プロセスの概要だけでなく、システムに自動ストレージ管理(ASM)およびOracle Real Application Clusters(Oracle RAC)をインストールするための構成情報についても説明します。
詳細は、第2章の次の項を参照してください。
使用可能なメモリーを確認するには、次のコマンドを入力します。
# /usr/sbin/lsattr -E -l sys0 -a realmem # /usr/sbin/lsps -a
RAMの最小要件は1GB、スワップ領域の最小要件も1GBです。RAMが2GB以下のシステムでは、スワップ領域をRAMの2倍に設定することをお薦めします。RAMが2GBから8GBの間のシステムでは、RAMと同じサイズのスワップ領域を使用します。RAMが8GBより多いシステムでは、RAMのサイズの75%のスワップ領域を使用します。
Oracle Clusterwareファイルで使用できる領域を検証します。Oracle Clusterwareファイルを配置する場所に合わせて次のいずれかのコマンドを使用します。
GPFSの場合:
df -k
コンカレントVGのRAW論理ボリューム(HACMP)の場合: この例の変数lv_name
は、検証する領域を持つRAW論理ボリューム名です。
lslv lv_name
RAWハード・ディスクの場合: この例の変数rhdisk#
は、検証するRAWハード・ディスク番号であり、変数size_mb
は、検証するパーティション・サイズ(MB単位)です。
lsattr -El rhdisk# -a size_mb
Oracle Clusterwareファイルに対して標準の冗長性(2つのOracle Cluster Registry(OCR)パーティションおよび3つの投票ディスク・パーティション)を使用する場合は、Oracle Clusterwareファイル用に用意されている個々の物理ディスク上で1GB以上のディスク領域が使用可能である必要があります。Oracle Clusterwareファイルの各パーティションのサイズは256MBである必要があります。
Oracle Clusterwareホームには650MBのディスク領域が必要です。
df -k /tmp
/tmp
に400MB以上のディスク領域があることを確認してください。この領域を確保できない場合は、パーティション・サイズを大きくするか、または/tmp
内の不要なファイルを削除します。
詳細は、第2章の次の項を参照してください。
次に、ドメイン・ネーム・サーバー(DNS)または各クラスタ・ノードの/etc/hosts
ファイルに構成する必要があるアドレス要件を示します。
ノードごとに次の3つのネットワーク・アドレスが必要です。
パブリックIPアドレス
仮想IPアドレス(ノード障害が発生した場合にアプリケーションでフェイルオーバーに使用されます)
プライベートIPアドレス(Oracle ClusterwareおよびOracle RACでノード間通信に使用されます)
仮想IPアドレスには次の要件があります。
IPアドレスとホスト名は、現在未使用である(DNSに登録できるが、pingコマンドでアクセスできない)
仮想IPアドレスはパブリック・インタフェースと同じサブネット上にある
プライベートIPアドレスには次の要件があります。
プライベート・ネットワーク用に予約されているサブネット(10.0.0.0、192.168.0.0など)上に存在している必要がある
専用スイッチを使用するか、またはクラスタ・メンバー・ノードによってのみ到達可能な、物理的に分離されたプライベート・ネットワーク(高速NICの使用が望ましい)を使用する必要がある
Oracle ClusterwareおよびOracle RACの両方のプライベートIPアドレスに、同じプライベート・インタフェースを使用する必要がある
パブリックIPアドレスに登録されているサブネットと同じサブネットには登録できない
ネットワーク管理者からIPアドレスを取得したら、NICに対してパブリックIPアドレスおよびプライベートIPアドレスをsystem-config-network
ユーティリティを使用して割り当てるか、またはifconfig
を使用してそれらを手動で構成することができます。VIPアドレスは割り当てないでください。
すべてのIPアドレスをpingします。pingコマンドに対して、パブリックIPアドレスおよびプライベートIPアドレスの応答があります。VIPアドレスは応答しません。
詳細は、第2章の次の項を参照してください。
「Oracle Clusterwareをインストールするためのグループおよびユーザーの概要」
Oracle Databaseホームの作成方法については、第3章の次の項を参照してください。
「標準構成のオペレーティング・システム・グループおよびユーザーの作成」
「Oracle DatabaseおよびOracle ASM所有者の環境要件」
例として、oracle
という名前のOracleインストール所有者がいるとします。Oracle Clusterware用にOracleインストール所有者グループ(oinstall
)を作成する必要があります。Oracle Databaseをインストールする場合は、OSDBAグループ(dba
)を作成する必要があります。正確なグループ構成とユーザー構成を確認するために、id oracle
コマンドを使用します。次に、smit
を使用してoracleユーザーを作成するか、または次のコマンドを入力します。
# mkgroup oinstall # mkgroup dba # mkuser pgrp=oinstall groups=dba,oinstall oracle
Oracle Clusterwareのoracle
ユーザーの権限に、CAP_NUMA_ATTACH、CAP_BYPASS_RAC_VMMおよびCAP_PROPAGATEが指定されていることを確認します。
すでに設定されている権限を確認するには、root
で次のコマンドを入力します。この例では、Oracle Clusterwareのoracle
ユーザーはcrs
です。
# lsuser -a capabilities crs
権限を追加するには、次のコマンドを入力します。
# chuser capabilities=CAP_NUMA_ATTACH CAP_BYPASS_RAC_VMM CAP_PROPAGATE crs
oracleアカウントにパスワードを設定します。
passwd oracle
各クラスタのメンバー・ノードに対して、この手順を繰り返します。
詳細は、第2章の次の項を参照してください。
「Oracle Clusterwareホーム・ディレクトリの作成要件」
Oracle Databaseホームの作成方法については、第3章の次の項を参照してください。
Oracle Clusterwareのみをインストールする場合は、Oracle Universal Installer(OUI)でOracle ClusterwareおよびOracle Central Inventory(oraInventory
)のディレクトリを自動的に作成できます。ただし、root
として、Oracle Optimal Flexible Architecture(OFA)に準拠したパスを作成する必要があります。これによって、OUIがインストール中にそのディレクトリを選択できるようになります。OUIがパスをOracleソフトウェア・パスとして認識するには、u0[1-9]/appという形式にする必要があります。
次に例を示します。
mkdir –p /u01/app chown –R oracle:oinstall /u01/app
詳細は、第2章の次の項を参照してください。
OUIは、インストール中にssh
およびscp
コマンドを使用して、他のクラスタ・ノードに対してリモート・コマンドを実行し、そのクラスタ・ノードにファイルをコピーします。SSHを使用できない場合、OUIでは、rsh
コマンドとrcp
コマンドの使用に切り替えます。インストール中のセキュリティを強化するためにSSHを使用するには、インストール中に使用するssh
コマンドおよびscp
コマンドでパスワードが要求されないようにSSHを構成しておく必要があります。
SSHを構成するには、次のタスクを実行します。
次のコマンドを入力して、SSHが実行されているかどうかを確認します。
$ ps -ef │ grep sshd
SSHが実行されている場合、このコマンドの結果は1つ以上のプロセスID番号になります。インストールに使用するソフトウェア所有者(crs
、oracle
)のホーム・ディレクトリで、コマンドls -al
を使用して、.ssh
ディレクトリを所有し、そのディレクトリへの書込みが可能であるのはそのユーザーのみであることを確認します。
次に、ASMディスク、OCRパーティションおよび投票ディスク・パーティションを作成する手順の概要を示します。
詳細は、第4章の次の項を参照してください。
「サポートされる共有ファイル・システムでのOracle Clusterwareファイル用の記憶域の構成」
「RAWデバイスでのOracle Clusterwareファイル用の記憶域の構成」
必要に応じて、パーティションを作成します。 OCRおよび投票ディスクの場合、新規インストールでは280MBのパーティションを作成し、アップグレードでは既存のパーティション・サイズを使用します。パーティションを作成するには、次の手順を実行します。
必要なディスク・デバイスを確認または構成します。
ディスク・デバイスは、すべてのクラスタ・ノードで共有されている必要があります。
任意のノードで、root
ユーザーとして次のコマンドを入力し、使用するディスク・デバイスのデバイス名を確認します。
# lspv │ grep -i none
このコマンドによって、ボリューム・グループに構成されていないディスク・デバイスごとに、次のような情報が表示されます。
hdisk17 0009005fb9c23648 None
この例では、hdisk17
はディスクのデバイス名、0009005fb9c23648
は物理ボリュームID(PVID)です。
使用するディスク・デバイスにPVIDがない場合は、次のコマンドを入力してディスク・デバイスに割り当てます。
# chdev -l hdiskn -a pv=yes
注意: 既存のPVIDがある場合は、PVIDがchdev によって上書きされるため、このPVIDに依存するアプリケーションは失敗します。 |
他のそれぞれのノードで、次のコマンドを入力し、そのノードの各PVIDに関連付けられているデバイス名を確認します。
# lspv │ grep -i "0009005fb9c23648"
このコマンドの出力結果は、次のようになります。
hdisk18 0009005fb9c23648 None
この例では、ディスク・デバイスに関連付けられているデバイス名(hdisk18
)は、前述のノードのものとは異なります。
デバイス名がすべてのノードで同じである場合は、すべてのノードで次のコマンドを入力し、ディスク・デバイスのキャラクタRAWデバイス・ファイルの所有者、グループおよび権限を変更します。
OCRデバイスの場合:
# chown root:oinstall /dev/rhdiskn # chmod 640 /dev/rhdiskn
その他のデバイスの場合:
# chown oracle:dba /dev/rhdiskn # chmod 660 /dev/rhdiskn
使用するディスクのPVIDに関連付けられているデバイス名がいずれかのノードで異なる場合は、使用されていない共通の名前を使用して、各ノードのディスクに対して新しいデバイス・ファイルを作成する必要があります。
新しいデバイス・ファイルでは、そのディスク・デバイスの目的を示すような代替デバイス・ファイル名を選択します。データベース・ファイルでは、代替デバイス・ファイル名のdbname
を、手順1でデータベース用に選択した名前と置き換えます。
注意: かわりに、いずれのノードでも使用されない数字を含む名前(hdisk99 など)を選択することもできます。 |
すべてのノードで、ディスク・デバイスに新しい共通のデバイス・ファイルを作成するには、各ノードで次の手順を実行します。
次のコマンドを入力して、ディスク・デバイスを示すデバイスのメジャー番号とマイナー番号を確認します。n
は、このノードのディスク・デバイスのディスク番号です。
# ls -alF /dev/*hdiskn
このコマンドの出力結果は、次のようになります。
brw------- 1 root system 24,8192 Dec 05 2001 /dev/hdiskn crw------- 1 root system 24,8192 Dec 05 2001 /dev/rhdiskn
この例では、デバイス・ファイル/dev/rhdisk
n
はキャラクタRAWデバイスを示します。24
はデバイスのメジャー番号、8192
はデバイスのマイナー番号です。
次のコマンドを入力し、新しいデバイス・ファイル名、前述の手順で確認したデバイスのメジャーおよびマイナー番号を指定して、新しいデバイス・ファイルを作成します。
注意: 次の例では、キャラクタRAWデバイス・ファイルを作成するために、文字c を指定する必要があります。 |
# mknod /dev/ora_ocr_raw_256m c 24 8192
次のコマンドを入力して、ディスクのキャラクタRAWデバイス・ファイルの所有者、グループおよび権限を変更します。
OCRの場合:
# chown root:oinstall /dev/ora_ocr_raw_256m # chmod 640 /dev/ora_ocr_raw_256m
Oracle Clusterware投票ディスクの場合:
# chown oracle:dba /dev/ora_vote_raw_256m # chmod 660 /dev/ora_vote_raw_256m
次のコマンドを入力して、新しいデバイス・ファイルが正常に作成されたことを検証します。
# ls -alF /dev │ grep "24,8192"
このコマンドの出力結果は、次のようになります。
brw------- 1 root system 24,8192 Dec 05 2001 /dev/hdiskn crw-r----- 1 root oinstall 24,8192 Dec 05 2001 /dev/ora_ocr_raw_256m crw------- 1 root system 24,8192 Dec 05 2001 /dev/rhdiskn
複数のノードからディスク・デバイスに同時アクセスできるようにするには、ディスクで使用する予約属性のタイプに応じて、適切なObject Data Manager(ODM)属性を設定する必要があります。次の項では、論理名hdiskを使用してこのタスクを実行する方法について説明します。論理デバイス名については、ご使用のオペレーティング・システムのマニュアルを参照してください。
ディスクで使用する予約設定を確認するには、次のコマンドを入力します。n
はhdiskのデバイス番号です。
# lsattr -E -l hdiskn │ grep reserve_
このコマンドの結果として、reserve_lock
設定またはreserve_policy
設定が返されます。属性がreserve_lock
の場合は、設定がreserve_lock = no
であることを確認します。属性がreserve_policy
の場合は、設定がreserve_policy = no_reserve
であることを確認します。
必要に応じて、chdev
コマンドで次の構文を使用して設定を変更します。n
はhdiskのデバイス番号です。
chdev -l hdiskn -a [ reserve_lock=no │ reserve_policy=no_reserve ]
たとえば、デバイスhdisk4
の設定をreserve_lock=yes
からreserve_lock=no
に変更するには、次のコマンドを入力します。
# chdev -l hdisk4 -a reserve_lock=no
すべてのディスク・デバイスで設定が適切であることを確認するには、次のコマンドを入力します。
# lsattr -El hdiskn │ grep reserve
任意のノードで次のコマンドを入力し、使用する各ディスク・デバイスからPVIDを消去します。
# chdev -l hdiskn -a pv=clear
Oracle Clusterwareをインストールする際に、OCRおよびOracle Clusterware投票ディスクのパスを求められたら、適切なデバイス・ファイルへのパスを入力する必要があります。次に例を示します。
/dev/rhdisk10
詳細は、第6章の次の項を参照してください。
「CVUを使用したOracle Clusterware要件の検証」
インストール所有者ユーザー(oracle
またはcrs
)としてログインし、次のコマンド構文でクラスタ検証ユーティリティ(CVU)を起動して、Oracle Clusterwareをインストールするためのシステム要件を検証します。次の構文例のmountpoint
変数はインストール・メディアのマウント・ポイント、node_list
変数はクラスタ内のノード名(カンマで区切る)です。
/mountpoint/runcluvfy.sh stage -pre crsinst -n node_list
詳細は、第6章の次の項を参照してください。
「OUIを使用してOracle Clusterwareをインストールするための準備」
「OUIを使用したOracle Clusterwareのインストール」
SSH鍵がOracle Universal Installer(OUI)の実行元の端末セッションのメモリーにロードされていることを確認します。
インストール・メディアに移動し、OUIを起動します。次に例を示します。
$ cd /Disk1 ./runInstaller
Oracle Clusterwareのインストールを選択し、構成情報を指示どおりに入力します。
詳細は、第5章の次の項を参照してください。
Oracle ClusterwareとともにOracle RACをインストールする場合は、データベース・ファイルの管理にASMを使用することをお薦めします。