Oracle TimesTen In-Memory Databaseオペレーション・ガイド

並行性制御

トランザクションに独立性があることで、アクティブな各トランザクションは、他のアクティブなトランザクションがシステム内に存在していない場合と同様に動作できます。TimesTenでは、トランザクションの分離レベルとしてANSI SerializableおよびANSI Read_Committedの2つがサポートされています。

トランザクションの分離レベル

分離レベルがANSI Serializableの場合、各トランザクションは、読取りまたは書込みを行うすべてのデータ項目に対してロックを取得します。これらのロックは、トランザクションがコミットまたはロールバックされるまで保持されます。そのため、あるトランザクションで読み取られた行は、そのトランザクションが終了するまで、別のトランザクションから更新または削除することはできません。同様に、あるトランザクションによって挿入、更新または削除された行は、そのトランザクションが終了するまで、別のトランザクションからはアクセスできません。

リピータブル・リードが保証されます。つまり、同じ問合せを複数回実行するトランザクションで、毎回同じ結果セットが戻されることが保証されます。他のトランザクションで、戻された行に対してUPDATEまたはCREATE VIEWを実行することはできません。また、問合せ条件を満たす新しい行に対してINSERTを実行することもできません。

この分離レベルでは、読取りユーザーが書込みユーザーをブロックできます。また、書込みユーザーは、読取りユーザーおよび他の書込みユーザーをブロックできます。

分離レベルがANSI Read_Committedの場合、各トランザクションは、書き込む項目のみに対するロックを取得します。SELECT文、およびINSERT SELECT文のSELECTの部分によって読み取られる項目は、ロックされません。これが、TimesTenのデフォルトの分離レベルです。

この分離レベルでは、読取りユーザーは書込みユーザーをブロックしません。また、書込みユーザーも読取りユーザーをブロックしません。これは、読取りおよび書込みを行うデータ項目が同じである場合でも同様です。読取りユーザーおよび書込みユーザーがブロックを実行せずに同じ項目にアクセスできるようにするには、更新する項目のプライベート・コピーを書込みユーザーが作成します。これらのプライベート・コピーは、トランザクションがコミットされるとパブリックになります。また、トランザクションがロールバックされると破棄されます。したがって、実行中のトランザクションによって更新された項目を別のトランザクションで読み取ると、その項目の更新前の状態が取得されます。コミットされていない状態を取得することはできません。

この分離レベルでは、非リピータブル・リードが可能です。Read_Committedトランザクションで同じ問合せが複数回実行される場合は、更新操作を行うトランザクションのコミットの影響で、結果が異なることがあります。

TimesTenのすべてのデータ・アクセスでは、ロックまたはコピーが実行されて、独立性が確保されます。ただし、排他モード接続（『Oracle TimesTen In-Memory Database APIおよびSQLリファレンス・ガイド』のExclAccessに関連する項を参照）の場合は例外です。この場合は、データ・ストアへの他の接続が許可されないため、常に独立性が確保されます。アプリケーションでトランザクションの分離レベルを設定するには、SQLSetConnectOption ODBC関数をSQL_TXN_ISOLATIONフラグとともに使用するか、またはIsolation接続属性を設定します。

マテリアライズド・ビューを常に一貫性がある状態に保つために、すべてのビュー・メンテナンス処理はシリアライズ可能分離レベルで効果的に実行されます。これは、トランザクションがコミット読取り分離レベルの場合も同様です。これは、トランザクションで、ビュー・メンテナンス時に読み取られるすべてのデータ項目に読取りロックを設定することを意味します。ただし、これらのロックは、トランザクションが終了するまで保持されるのではなく、ビュー・メンテナンス処理をトリガーしたINSERT文、UPDATE文またはCREATE VIEW文が終了すると解除されます。

ロックの粒度

TimesTenでは、行レベル・ロックおよびデータ・ストア・レベル・ロックがサポートされています。

行レベル・ロックの場合は、通常、トランザクションで、アクセス対象の個々の行にロックが設定されます。ただし、表全体にロックを設定するとパフォーマンスが向上するとTimesTenが判断した場合は、表全体にロックが設定されます。行レベル・ロックはデフォルトです。このロックでは、並行性制御の粒度が最も細かくなるため、ほとんどのアプリケーションに最も適しています。行レベル・ロックを実行するには、ディスク・ロギングまたはディスクレス・ロギングが必要です。ロギングが無効になっている場合、このロックは使用できません。アプリケーションでは、オプティマイザ・フラグ（『Oracle TimesTen In-Memory Database APIおよびSQLリファレンス・ガイド』のttOptSetFlagに関する項を参照）を設定して、TimesTenで表ロックが選択されるような環境を制御できます。行レベル・ロックを使用するには、アプリケーションでLockLevel接続属性を1（デフォルト値）に設定するか、またはlockLevelパラメータがRowに設定されたttLockLevel組込みプロシージャをコールする必要があります。

データ・ストア・レベル・ロックの場合は、すべてのトランザクションで、データ・ストア全体に対する排他ロックが設定されます。これによって、データ・ストア内のアクティブなトランザクションの数は常に1つになります。データ・ストア・レベル・ロックは、ロック処理のオーバーヘッドが少ないため、通常は行レベル・ロックより高いパフォーマンスが得られます。ただし、このロックは、複数のトランザクションを同時に実行する必要がないアプリケーションにのみ適用されます。データ・ストア・レベル・ロックは、同時トランザクションでデータ・ストアにアクセスできない処理モードであるという点で、排他接続に類似しています（『Oracle TimesTen In-Memory Database APIおよびSQLリファレンス・ガイド』のExclAccessに関する項を参照）。ただし、データ・ストア・レベル・ロックが設定された共有接続では、データ・ストアへの複数接続が可能です（ただし、トランザクションを開始できるのは一度に1つの接続のみ）。これに対して、排他アクセスでは、データ・ストアへの複数接続が許可されません。データ・ストア・レベル・ロックを設定すると、同時トランザクションが許可されないため、すべてのトランザクションがANSIシリアライズ可能分離レベルで効率的に実行されます。ロギングが無効になっている場合は、データ・ストア・レベルを設定する必要があります。データ・ストア・レベル・ロックを使用するには、アプリケーションでLockLevel接続属性を0に設定するか、またはlockLevelパラメータがDSに設定されたttLockLevel組込みプロシージャをコールします。

異なるロック・レベルの併用

接続ごとに異なるロック・レベルを使用できます。ただし、データ・ストア・レベル・ロックを使用している接続が1つでも存在すると、並行性が低下します。パフォーマンスについては、『Oracle TimesTen In-Memory Database Java開発者およびリファレンス・ガイド』の最適なロック方法の選択に関する項を参照してください。TimesTen Cアプリケーションのチューニングについては、『Oracle TimesTen In-Memory Database C開発者およびリファレンス・ガイド』の最適なロック方法の選択に関する項を参照してください。