4 Kubernetesの使用
この章では、Kubernetesを使用してコンテナ化されたアプリケーションを初めてデプロイ、管理およびスケーリングする方法について説明します。 この章では、環境内のコンテナとサービスの作成および管理を開始するために、kubectl
コマンドの基本的な使用方法について説明します。
kubectl
ユーティリティは、次のアップストリームのドキュメントに完全に記載されています:
ランタイム・エンジンについて
runc
は、コンテナ作成時のデフォルトのランタイム・エンジンです。 Kataコンテナを作成するために、kata-runtime
ランタイム・エンジンを使用することもできます。 Kataコンテナの詳細と作成方法は、コンテナ・ランタイムを参照してください。
ノードに関する情報の取得
クラスタ内のすべてのノードのリストおよび各ノードのステータスを取得するには、kubectl get
コマンドを使用します。 このコマンドは、Kubernetesでサポートされるあらゆる種類のリソースのリストを取得するために使用できます。 この例では、nodes
リソースは次のように示されます。
kubectl get nodes NAME STATUS ROLES AGE VERSION control.example.com Ready control-plane 1h v1.21.x+x.x.x.el8 worker1.example.com Ready <none> 1h v1.21.x+x.x.x.el8 worker2.example.com Ready <none> 1h v1.21.x+x.x.x.el8
kubectl describe
コマンドを使用して、リソースの詳細情報を取得できます。 リソースの名前を指定した場合、出力は、そのリソースのみに関する情報に制限されます。それ以外の場合は、すべてのリソースの完全な詳細も画面に出力されます。 たとえば:
kubectl describe nodes worker1.example.com Name: worker1.example.com Roles: <none> Labels: beta.kubernetes.io/arch=amd64 beta.kubernetes.io/os=linux kubernetes.io/arch=amd64 kubernetes.io/hostname=worker1.example.com kubernetes.io/os=linux Annotations: flannel.alpha.coreos.com/backend-data: {"VtepMAC":"fe:78:5f:ea:7c:c0"} flannel.alpha.coreos.com/backend-type: vxlan flannel.alpha.coreos.com/kube-subnet-manager: true flannel.alpha.coreos.com/public-ip: 192.0.2.11 kubeadm.alpha.kubernetes.io/cri-socket: /var/run/crio/crio.sock node.alpha.kubernetes.io/ttl: 0 volumes.kubernetes.io/controller-managed-attach-detach: true ...
ポッドでのアプリケーションの実行
1つの実行中のコンテナでポッドを作成するには、kubectl create
コマンドを使用します。 たとえば:
kubectl create deployment --image nginx hello-world deployment.apps/hello-world created
nginx
は、コンテナ・イメージに置き換えてください。 hello-world
は、目的のデプロイメントの名前に置き換えてください。 ポッドには、接頭辞としてデプロイメント名を使用した名前が付けられています。
ヒント:
デプロイメント、ポッドおよびサービスの名前は、DNS-1123ラベルと一致する要件に従います。 それらは、英数文字(小文字)または-
で構成されていて、先頭と末尾が英数文字になっていることが必要です。 正規表現で名前を検証する場合は、'[a-z0-9]([-a-z0-9]*[a-z0-9])?
'を使用します。 デプロイメントに無効な名前を使用すると、エラーが返されます。
Kubernetes内で新しいアプリケーションを実行する際に使用できる追加のオプション・パラメータは多数あります。 たとえば、起動する必要のあるレプリカ・ポッドの数を実行時に指定することも、ポッドのコンポーネントを簡単に識別できるようにするためにデプロイメントにラベルを適用することもできます。 使用可能なオプションの完全なリストを表示するには、kubectl run --help
を実行します。
新しいアプリケーション・デプロイメントで1つ以上のポッドが作成されたことを確認するには、kubectl get pods
コマンドを使用します:
kubectl get pods NAME READY STATUS RESTARTS AGE hello-world-5f55779987-wd857 1/1 Running 0 1m
kubectl describe
を使用して、ポッドの詳細ビューを表示します。これには、実行中のコンテナとベースとなるイメージ、およびポッドを現在ホストしているノードが含まれます:
kubectl describe pods Name: hello-world-5f55779987-wd857 Namespace: default Priority: 0 PriorityClassName: <none> Node: worker1.example.com/192.0.2.11 Start Time: Fri, 16 Aug 2019 08:48:33 +0100 Labels: app=hello-world pod-template-hash=5f55779987 Annotations: <none> Status: Running IP: 10.244.1.3 Controlled By: ReplicaSet/hello-world-5f55779987 Containers: nginx: Container ID: cri-o://417b4b59f7005eb4b1754a1627e01f957e931c0cf24f1780cd94fa9949be1d31 Image: nginx Image ID: docker-pullable://nginx@sha256:5d32f60db294b5deb55d078cd4feb410ad88e6fe7... Port: <none> Host Port: <none> State: Running Started: Mon, 10 Dec 2018 08:25:25 -0800 Ready: True Restart Count: 0 Environment: <none> Mounts: /var/run/secrets/kubernetes.io/serviceaccount from default-token-s8wj4 (ro) Conditions: Type Status Initialized True Ready True ContainersReady True PodScheduled True Volumes: default-token-s8wj4: Type: Secret (a volume populated by a Secret) SecretName: default-token-s8wj4 Optional: false QoS Class: BestEffort Node-Selectors: <none> Tolerations: node.kubernetes.io/not-ready:NoExecute for 300s node.kubernetes.io/unreachable:NoExecute for 300s Events: ....
ポッド・デプロイメントのスケーリング
実行している同じポッドのインスタンス数を変更するには、kubectl scale deployment
コマンドを使用します。 たとえば:
kubectl scale deployment --replicas=3 hello-world deployment.apps/hello-world scaled
ポッドのインスタンス数が適切にスケーリングされていることを確認できます。
kubectl get pods NAME READY STATUS RESTARTS AGE hello-world-5f55779987-tswmg 1/1 Running 0 18s hello-world-5f55779987-v8w5h 1/1 Running 0 26m hello-world-5f55779987-wd857 1/1 Running 0 18s
アプリケーションのサービス・オブジェクトの公開
通常、多くのアプリケーションはポッド内またはポッド間でのみ内部で通信する必要がありますが、Kubernetesクラスタの外部のクライアントがアプリケーションとインタフェースできるように、アプリケーションを外部で公開する必要がある場合があります。 これは、そのデプロイメントに対応するサービス定義を作成することで実現できます。
ノート:
LoadBalancer
サービスの前提条件:
Oracle Cloud Infrastructure Cloud Controller Managerモジュール(oci-ccm
)は、KubernetesアプリケーションのOracle Cloud Infrastructureロード・バランサを作成および管理するために使用されます。 したがって、次の例では、「アプリケーション・ロード・バランサ」の説明に従ってoci-ccm
モジュールのインストールが完了していることを前提としています。
サービス・オブジェクトを使用してデプロイメントを公開するには、使用するサービス・タイプを定義する必要があります。 次の例は、kubectl expose deployment
コマンドを使用してLoadBalancer
サービスを介してアプリケーションを公開する方法を示しています:
kubectl expose deployment hello-world --port 80 --type=LoadBalancer service/hello-world exposed
次の例に示すように、kubectl get services
を使用して、クラスタが実行されている様々なサービスをリストします。 LoadBalancer
サービスのEXTERNAL-IP
フィールドは、サービスの設定がまだ進行中の場合、最初は<pending>
として表示されます:
kubectl get services
NAME TYPE CLUSTER-IP EXTERNAL-IP PORT(S) AGE
hello-world LoadBalancer 10.102.42.160 <pending> 80:31847/TCP 3s
kubernetes ClusterIP 10.96.0.1 <none> 443/TCP 5h13m
ロード・バランサはOracle Cloud Infrastructureコンソールで確認できます。 最初は、コンソールでの状態は「作成中」と表示されます。
サービスの設定が完了するまで数分待ちます。 kubectl get services
コマンドを再度実行し、EXTERNAL-IP
フィールドにLoadBalancer
サービスに割り当てられたIPアドレスが移入されていることを確認します:
kubectl get services
NAME TYPE CLUSTER-IP EXTERNAL-IP PORT(S) AGE
hello-world LoadBalancer 10.102.42.160 192.0.2.250 80:31847/TCP 85s
kubernetes ClusterIP 10.96.0.1 <none> 443/TCP 5h15m
PORT(s)
フィールドには次のポートが含まれています:
-
ポート
80
:LoadBalancer
サービスにアクセスできるポート。 この例では、次のURLでサービスにアクセスします:http://192.0.2.250
-
ポート
31847
:NodePort
サービスに割り当てられたポート。NodePort
サービスを使用すると、次のようにURL形式worker_node:
NodePortを使用してアプリケーションにアクセスできます:http://worker1.example.com:31847/
ノート:
Kubernetesは、LoadBalancer
設定の一部としてNodePort
サービスを作成します。
curl
コマンドを実行して、サービスが正常に設定されたことを確認できます:
-
LoadBalancer
サービスの場合:curl http://192.0.2.250 <html> <head> <title>Welcome to this servicer</title> </head> <body> <h1>Welcome to this service</h1> ... </body> </html>
-
ワーカー・ノードごとに、次に示すように
curl
コマンドを実行して、NodePort
サービスを確認します:curl http://worker1.example.com:31847/ <html> <head> <title>Welcome to this servicer</title> ... </head> <body> <h1>Welcome to this service</h1> ... </body> </html>
サービスまたはデプロイメントの削除
オブジェクトはKubernetes内で簡単に削除できるため、環境をクリーンな状態に保てます。 kubectl delete
コマンドを使用して、オブジェクトを削除します。
サービスを削除するには、サービス・オブジェクトと削除するサービスの名前を指定します。 たとえば:
kubectl delete services hello-world service "hello-world" deleted
デプロイメント全体と、そのデプロイメントに対して実行中のすべてのポッド・レプリカを削除するには、次のようにデプロイメント・オブジェクトとデプロイメントの作成に使用した名前を指定します。
kubectl delete deployment hello-world deployment.extensions "hello-world" deleted
ネームスペースによる操作
ネームスペースは、リソースの使用を細かく分離することと、特定のユース・ケースに限定された環境を提供することを目的として使用できます。 Kubernetesでは、デフォルトでKubernetesのシステム・コンポーネントに対応するネームスペースと、それ以外のネームスペースが定義されていないデプロイメントに使用する標準ネームスペースが構成されます。
既存のネームスペースを表示するには、kubectl get namespaces
およびkubectl describe namespaces
コマンドを使用します。
kubectl
コマンドでは、リクエスト専用のネームスペースを設定しないかぎり、default
ネームスペースのリソースのみが表示されます。 したがって、Kubernetesシステムに固有のポッドを表示する必要がある場合は、--namespace
オプションを使用して、リクエストに対してネームスペースをkube-system
に設定します。 たとえば、単一のコントロール・プレーン・ノードのクラスタでは、次のようになります。
kubectl get pods --namespace=kube-system NAME READY STATUS RESTARTS AGE coredns-5bc65d7f4b-qzfcc 1/1 Running 0 23h coredns-5bc65d7f4b-z64f2 1/1 Running 0 23h etcd-control1.example.com 1/1 Running 0 23h kube-apiserver-control1.example.com 1/1 Running 0 23h kube-controller-control1.example.com 1/1 Running 0 23h kube-flannel-ds-2sjbx 1/1 Running 0 23h kube-flannel-ds-njg9r 1/1 Running 0 23h kube-proxy-m2rt2 1/1 Running 0 23h kube-proxy-tbkxd 1/1 Running 0 23h kube-scheduler-control1.example.com 1/1 Running 0 23h kubernetes-dashboard-7646bf6898-d6x2m 1/1 Running 0 23h
デプロイメント・ファイルの使用
ポッドとポッドに関連する要件の作成を簡単にするために、デプロイメントを構成する要素のすべてを定義するデプロイメント・ファイルを作成できます。 このデプロイメントでは、ポッド内にコンテナを生成するために使用するイメージおよびランタイムの要件と、構成が必要になるサービス形式のKubernetesネットワークとストレージの要件およびマウントする必要性があるボリュームを定義します。
デプロイメントの詳細は、次の場所を参照してください。
https://kubernetes.io/docs/concepts/workloads/controllers/deployment/