ブロック・ストレージの計算について

Essbaseデータベース(キューブ)は、ユーザーが入力する値(入力データと呼ばれる)と入力データから導出される(計算される)値で構成されます。ブロック・ストレージの計算は、メンバーの集計および式に基づいてアウトラインに沿って実行でき、バッチ計算スクリプトを実行することによっても発生する可能性があります。

入力データと導出データの例として、様々な製品の地域売上高を入力し、それぞれの合計売上を計算するとします。

いくつかの地域のいくつかの製品について、売上原価の予算値および実績値を入力します。各地域の製品ごとに、予算値と実績値の差異を計算します。

キューブには、全製品の地域ごとの売上高および価格が含まれています。ある地域である製品の価格を5%引き上げた場合に、全体の利益がどうなるかを計算します。

Essbaseには、データベースの計算方法が2つあります。

  • アウトラインの計算

  • 計算スクリプトの計算

選択する方法は、実行する計算のタイプによって異なります。

ノート:

異なるプラットフォームで計算を実行すると、オペレーティング・システムの数学ライブラリの相違により、セル値の精度にわずかな差異が発生する場合があります。

ほとんどのコンピュータでは数値はバイナリで表現されるため、実数値は概算でのみ表されます。バイナリ・コンピュータでは小数点以下の無限のビット数を保持できないため、1/3 (0.3333...)のような分数を終点を持つ小数として表現できません。正確に表現できる実数値は、分母が2の累乗(0.50など)または10の累乗(0.10など)の分数のみです。浮動小数点数表現のIEEE標準754 (IEEE、1985)を参照してください。

アウトラインの計算

アウトラインの計算は、ブロック・ストレージ・キューブの最も単純な計算方法です。Essbaseでは、データベース・アウトラインでのメンバー間の関係およびアウトラインでメンバーに関連付けられている式に基づいて、計算が行われます。

たとえば、次のイメージは、Sample.BasicデータベースでのMarketディメンションのメンバー間の関係を示しています。New York、Massachusetts、Florida、ConnecticutおよびNew Hampshireの値が加算されて、Eastの値が計算されます。East、West、SouthおよびCentralの値が加算されて、Marketの合計値が計算されます。

図16-1 Marketディメンションのメンバー間の関係


Marketディメンションの階層は、米国の東部都市が地域Eastにロールアップされ、すべての地域(East、West、SouthおよびCentral)がMarketにロールアップされる方法を示しています。

親の値を取得するためにMarketの子メンバーが加算されるのは、メンバー集計演算子が(+)に設定されているためです。

次のイメージは、Sample BasicデータベースのScenarioディメンションを示しています。VarianceおよびVariance %メンバーは、それらに付加された式を使用して計算されます。

図16-2 VarianceとVariance %の計算


Varianceが式@VAR(Actual, Budget)を付加し、Variance %が式@VARPER(Actual, Budget)を付加したScenarioディメンションの階層。

メンバーの組合せによっては、通常のデータベース計算中ではなく、データを取得するときに計算した方が効率的になる場合があります。動的計算を使用して、取得時にデータを計算できます。「データ値の動的計算」を参照してください。

計算スクリプトの計算

Essbase計算スクリプトを使用すると、ブロック・ストレージ・データベースの計算方法を厳密に選択できます。たとえば、キューブの一部を計算したり、メンバー間でデータ値をコピーできます。

計算スクリプトには、一連の計算コマンド、等式および式が含まれています。たとえば、次の計算スクリプトは、New York地域のマーケティングの実績費用を5%増やします。

FIX (Actual, “New York”)
   Marketing = Marketing *1.05;
ENDFIX;

「ブロック・ストレージ・キューブの計算スクリプトの開発」を参照してください。