commit

IDで指定された投機バッファを主バッファにコミットします。

void commit(int id)

commit関数は、指定されたidで識別される投機バッファのデータを主バッファにコピーする、特殊な関数です。指定した投機バッファに、主バッファで使用可能な領域より多くのデータが存在する場合、データはコピーされず、バッファの欠落カウントの値が増分されます。

バッファを複数のCPU上で投機的にトレースした場合、コミットされたCPU上の投機データはすぐにコピーされますが、その他のCPU上の投機データはしばらくしてからコピーされます。したがって、あるCPU上でcommitが開始されてから、投機バッファのデータがすべてのCPU上の主バッファにコピーされるまでには、少し時間がかかります。この時間が、クリーニング・レートで指定された時間より長くなることはありません。

コミットがアクティブの間、投機バッファへのその他のコールは次のように処理されます:

  • speculation: 投機バッファは、各CPUごとの投機バッファが対応する、CPUごとのプリンシパル・バッファにコピーされるまで使用できません。
  • speculatecommitdiscard: コールが破棄されるか、失敗します。

commitを含む節にデータ記録関数を含めることはできません。ただし、1つの節に複数のcommitコールを含めて、不連続のバッファをコミットできます。

例7-6 投機の使用方法

次の例は、投機の使用方法を示しています。投機の正しい動作には、すべての投機関数が一緒に使用されている必要があります。

投機はsyscall::open:entryプローブに対して作成して、投機のIDはスレッド・ローカル変数にアタッチします。open()システム・コールの最初の引数は、printf関数を使用して投機バッファにトレースされます。

syscall::open:returnプローブには、さらに3つの節が含まれています。それらの節の最初で、投機バッファにerrnoをトレースします。2番目の節の述語では、ゼロ以外のerrno値をフィルタ処理して、投機バッファをコミットします。3番目の節の述語では、ゼロのerrno値をフィルタ処理して、投機バッファを破棄します。

プログラムの出力は主データ・バッファに返されるため、open()システム・コールが失敗すると、プログラムは実質的にファイル名とエラー番号を返します。このコールが失敗しない場合は、投機バッファにトレースされた情報が破棄されます。

syscall::open:entry
{
  /*
   * The call to speculation() creates a new speculation. If this fails,
   * dtrace will generate an error message indicating the reason for
   * the failed speculation(), but subsequent speculative tracing will be
   * silently discarded.
   */
  self->spec = speculation();
  speculate(self->spec);

  /*
   * Because this printf() follows the speculate(), it is being
   * speculatively traced; it will only appear in the primary data buffer if the
   * speculation is subsequently committed.
   */
  printf("%s", copyinstr(arg0));
}

syscall::open:return
/self->spec/
{
  /*
   * Trace the errno value into the speculation buffer.
   */
  speculate(self->spec);
  trace(errno);
}

syscall::open:return
/self->spec && errno != 0/
{
  /*
   * If errno is non-zero, commit the speculation.
   */
  commit(self->spec);
  self->spec = 0;
}

syscall::open:return
/self->spec && errno == 0/
{
  /*
   * If errno is not set, discard the speculation.
   */
  discard(self->spec);
  self->spec = 0;
}