Platinum MAAアーキテクチャでのGGHub配置の計画
停止時間をゼロ(RTO=0またはほぼゼロ)にし、データ損失をゼロまたはほぼゼロ(RPO=0またはほぼゼロ)にする極限の可用性を実現するには、通常、次に示すPlatinum MAAアーキテクチャが必要です。
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Oracle GoldenGateアーキテクチャには、障害(データベース、クラスタまたはサイト障害)の発生時にアプリケーションをただちにフェイルオーバーできるように、またはデータベースやアプリケーションのアップグレード時にスイッチオーバーできるようにするために、ソース・データベースとターゲット・データベースがあります。このアーキテクチャにより、障害シナリオやデータベースおよびアプリケーションのアップグレードの保守に対して、潜在的なRTOをゼロまたはほぼゼロにできます。
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各ソースおよびターゲット・データベースは、Exadataクラウド・システムにデプロイされるため、ローカルの障害は許容されるかほぼ瞬時にリカバリされます。
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各ソースおよびターゲット・データベースは、Data Guardファスト・スタート・フェイルオーバーを備えたスタンバイ・データベースとともに構成されているため、データベースに障害が発生すると数秒から数分で新しいプライマリ・データベースがアクティブ化されます。最大可用性保護モードのSYNC転送を利用すると、データ損失ゼロのData Guardフェイルオーバーが実現されます。
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ソースおよびターゲット・データベースの間にMAA GGhubを使用するGoldenGateレプリケーションを使用して構成されます。
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Data Guardのスイッチオーバーまたはフェイルオーバーによってプライマリ・データベースになるスタンバイが、自動的にターゲットのGoldenGateデータベースと再同期するように構成されます。データ損失ゼロのData Guardスイッチオーバーまたはフェイルオーバーが発生した場合は、GoldenGateの再同期により、分散データベース環境全体のデータ損失がゼロになります。
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GoldenGateの自動競合検出および解決を使用して構成されます。これは、Data Guardのフェイルオーバー操作の発生後に必要です。
MAAプライマリGGHubとスタンバイGGHubを配置する場所
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GGHubペア(プライマリおよびスタンバイGGHub)は、プライマリ・データベースおよびスタンバイ・データベースそれぞれと同じOCIリージョンに存在する必要があります。たとえば:
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プライマリ・データベースがAD1、リージョンAにあり、スタンバイ・データベースがAD2、リージョンAにある場合、GGHubペアはリージョンAに存在します。
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プライマリ・データベースがリージョンAにあり、スタンバイ・データベースがリージョンBにある場合、GGHubペアはリージョンAとリージョンBに分かれます。プライマリ(またはアクティブ)GGHubは、ターゲットのプライマリ・データベースと同じOCIリージョンに共同配置されている必要があります。
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パフォーマンスへの影響:
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プライマリ(またはアクティブ)GGHubは、ラウンド・トリップ待機時間が必ず4ミリ秒以下になるように、ターゲット・データベースと同じデータ・センターに存在する必要があります。(Replicatのパフォーマンス)
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プライマリ(またはアクティブ)GGHubは、GoldenGateのパフォーマンス低下が発生することのない、ソース・データベースから90ミリ秒未満に収める必要があります。(Extractのパフォーマンス)
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GoldenGate分散パス:
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ソースGGHubとターゲットGGHubが別々のリージョンにあり、OCIリージョン間の待機時間が90ミリ秒を超える場合は、GoldenGate分散パスが必要になります。
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Oracle Cloudでは、Oracle GoldenGateのソース・データベースとターゲット・データベースが同じリージョンに、または同じ国にある別々のリージョンに存在する場合は、待機時間が常に90ミリ秒未満になるため、GoldenGate分散パスを設定する必要はありません。
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同じOCIリージョン内に配置されたMAA GGHub
このシナリオでは、プライマリとスタンバイのデータベースは同じOCIリージョンに配置されるため、プライマリ(アクティブ)GGHubとスタンバイGGHubも同じリージョンに配置されます。
次のアーキテクチャ・コンポーネントは、次の図に示すように、複数のGGHubからなります。
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プライマリ・データベースおよび関連付けられたスタンバイ・データベースは、Oracle Active Data Guardファスト・スタート・フェイルオーバー(FSFO)によって構成されています。FSFOは、データ損失の最大許容度に応じて、ASYNCまたはSYNC REDO転送を使用するどのData Guard保護モードでも構成できます。
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プライマリGGHubアクティブ/パッシブ・クラスタ: 2ノード・クラスタに1つのみのGGHubソフトウェア・デプロイメントと構成があります。このクラスタには、Oracle Database 11g (11.2.0.4)以降のリリースをサポートできる、21c Oracle GoldenGateソフトウェア・デプロイメントが含まれています。
このGGHubでは、多数のプライマリ・データベースをサポートでき、GoldenGateプロセスがカプセル化されます。GoldenGate Extractによってソース・データベースからトランザクションがマイニングされ、GoldenGate Replicatによって同じ変更内容がターゲット・データベースに適用されます。GoldenGate証跡ファイルとチェックポイント・ファイルも、GGhub ACFSファイル・システムに存在します。
HAフェイルオーバー・ソリューションはGGhubに組み込まれています。このソリューションには、同じクラスタ内のパッシブ・ノードへの自動フェイルオーバーが含まれていて、ノード障害後にGoldenGateプロセスとアクティビティを再起動します。
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スタンバイGGHubアクティブ/パッシブ・クラスタ: 対称スタンバイGGhubが構成されています。ACFSレプリケーションは、すべてのGoldenGateファイルを保持するために、プライマリとスタンバイのGGHubの間に設定されています。
手動によるGGhubフェイルオーバー(ACFSフェイルオーバーを含む)は、プライマリGGhub全体が失われるというまれなケースで実行することになります。
図19-1 同じOCIリージョン内のプライマリおよびスタンバイGGHub

上の図は、次の手順でプライマリ・データベースAからプライマリ・データベースBにデータをレプリケートして、プライマリBからプライマリAに戻している様子を示しています。
- プライマリ・データベースA: プライマリAのLogminerサーバーは、プライマリGGHub ExtractプロセスにREDO変更を送信します。
- プライマリGGHub: Extractプロセスによって、変更が証跡ファイルに書き込まれます。
- プライマリGGHubからプライマリ・データベースB: プライマリGGHubのReplicatプロセスは、該当する変更をターゲット・データベース(プライマリB)に適用します。
- プライマリ・データベースB: プライマリBのLogminerサーバーは、プライマリGGHub ExtractプロセスにREDOを送信します。
- プライマリGGHub: プライマリGGHubのExtractプロセスによって、変更が証跡ファイルに書き込まれます。
- プライマリGGHubからプライマリ・データベースA: プライマリGGHubのReplicatプロセスは、該当する変更をターゲット・データベース(プライマリA)に適用します。
ソースとターゲットのデータベースが異なるOracle Databaseリリースであっても、1つのGGHubで複数のソース・データベースとターゲット・データベースをサポートできます。
表19-1 同じOCIリージョン内のGGHubの停止シナリオ、修復および冗長性のリストア
停止シナリオ | アプリケーションの可用性と修復 | 冗長性と初期状態の復元 |
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プライマリ・データベースA (またはデータベースB)の障害 |
影響: アプリケーション停止時間は、ほぼゼロです。GoldenGateレプリケーションは、新しいプライマリ・データベースの起動時に再開されます。
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プライマリまたはスタンバイGGHubの単一ノード障害 |
影響: アプリケーションに影響はありません。GoldenGateレプリケーションは、数分後に自動的に再開されます。 処置は必要ありません。GGHubに組み込まれたHAフェイルオーバー・ソリューションには、GoldenGateプロセスとアクティビティの自動フェイルオーバーと再起動が含まれます。レプリケーション・アクティビティは、GoldenGateプロセスが再度アクティブになるまでブロックされます。GoldenGateレプリケーションのブラックアウトは数分間続くことがあります。 |
ノードが再起動すると、アクティブ/パッシブ構成が再確立されます。 |
プライマリGGHubクラスタがクラッシュしてリカバリできない |
影響: アプリケーションに影響はありません。GoldenGateレプリケーションは、既存のGGHubの再起動後、または手動によるGGHubフェイルオーバー操作の実行後に再開されます。
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前のGGHubが最終的に再起動されると、ACFSレプリケーションは別の方向に自動的に再開されます。GGHubクラスタが損なわれた場合やリカバリ不能になった場合は、新しいスタンバイGGHubを再構築する必要があります。 |
スタンバイGGHubクラスタがクラッシュしてリカバリできない |
影響: アプリケーションまたはレプリケーションに影響はありません。
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N/A |
データ・センターまたは可用性ドメイン(AD1またはAD2)の全体的な障害 |
影響: アプリケーション停止時間は、ほぼゼロです。GoldenGateレプリケーションは、新しいプライマリ・データベースの起動時に再開されます。
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異なるOCIリージョン内に配置されたMAA GGHub
このシナリオでは、プライマリ・データベースとスタンバイ・データベースが別々のOCIリージョンに配置されているため、プライマリ(アクティブ)GGHubはプライマリ・データベースと同じリージョンに配置され、スタンバイGGHubはスタンバイ・データベースと同じリージョンに配置されます。
次のアーキテクチャ・コンポーネントは、次の図に示すように、複数のGGHubからなります。
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プライマリ・データベースおよび関連付けられたスタンバイ・データベースは、Oracle Active Data Guardファスト・スタート・フェイルオーバー(FSFO)によって構成されています。FSFOは、データ損失の最大許容度に応じて、ASYNCまたはSYNC REDO転送を使用するどのData Guard保護モードでも構成できます。
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プライマリGGHubアクティブ/パッシブ・クラスタ: この構成には、2つのOracle GoldenGateソフトウェア構成を備えた2ノード・クラスタがあります。プライマリGGHubはターゲット・データベースから4ミリ秒以下にする必要がありますが、2つのリージョン(PHXとASH)のネットワーク待機時間は5ミリ秒を超えるため、GGHubクラスタごとに2つのGGHub構成が作成されています。基本的に、プライマリGGHub構成は常にターゲット・データベースと同じリージョンにあります。
GGHubは、Oracle Database 11g以降のリリースをサポートできる、Oracle GoldenGate 21cソフトウェア・デプロイメントで構成されています。このGGHubでは、多数のプライマリ・データベースをサポートでき、GoldenGateプロセスがカプセル化されます。Extractによってソース・データベースからトランザクションがマイニングされ、Replicatによってそれらの変更内容がターゲット・データベースに適用されます。GoldenGate証跡ファイルとチェックポイント・ファイルも、ACFSファイル・システムに存在します。
GGHubクラスタに組み込まれているHAフェイルオーバー・ソリューションには、ノード障害発生後のGoldenGateプロセスおよびアクティビティの自動フェイルオーバーと再起動が含まれています。
それぞれのGGHub構成に、GoldenGateサービス・マネージャおよびデプロイメント、ACFSレプリケーションを使用するACFSファイル・システム、および別個のアプリケーションVIPが含まれています。
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スタンバイGGHubアクティブ/パッシブ・クラスタ: 対称スタンバイGGHubが構成されています。ACFSレプリケーションは、すべてのGoldenGateファイルを保持するために、プライマリとスタンバイのGGHubの間に設定されています。
手動によるGGHubフェイルオーバー(ACFSフェイルオーバーを含む)は、プライマリGGHub全体が失われた場合に実行することになります。
図19-2 異なるOCIリージョン内のプライマリおよびスタンバイGGHub

上の図は、次の手順でプライマリ・データベースAからプライマリ・データベースBにデータをレプリケートして、プライマリBからプライマリAに戻している様子を示しています。
- プライマリ・データベースA: プライマリAのLogminerサーバーは、データベースAのプライマリGGHubにあるASHリージョンのGGHub ExtractプロセスにREDO変更を送信します。
- プライマリGGHub: Extractプロセスによって、証跡ファイルに変更が書き込まれます。
- プライマリGGHubからプライマリ・データベースB: ASHリージョンのGoldenGate Replicatプロセスは、該当する変更をターゲット・データベース(プライマリB)に適用します。
- プライマリ・データベースB: プライマリBのLogminerサーバーは、データベースBのプライマリGGHubにあるPHXリージョンのGGHub ExtractプロセスにREDOを送信します。
- プライマリGGHub: Extractプロセスによって、証跡ファイルに変更が書き込まれます。
- プライマリGGHubからプライマリ・データベースA: PHXリージョンのGoldenGate Replicatプロセスは、該当する変更をターゲット・データベース(プライマリA)に適用します。
表19-2 異なるOCIリージョン内のGGHubの停止シナリオ、修復および冗長性のリストア
停止シナリオ | アプリケーションの可用性と修復 | 冗長性と初期状態の復元 |
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プライマリ・データベースA (またはデータベースB)の障害 |
影響: アプリケーション停止時間は、ほぼゼロです。GoldenGateレプリケーションは、新しいプライマリ・データベースの起動時に再開されます。
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プライマリまたはスタンバイGGHubの単一ノード障害 |
影響: アプリケーションに影響はありません。GoldenGateレプリケーションは、数分後に自動的に再開されます。 処置は必要ありません。GGHubに組み込まれたHAフェイルオーバー・ソリューションには、GoldenGateプロセスとアクティビティの自動フェイルオーバーおよび再起動が含まれます。レプリケーション・アクティビティは、GoldenGateプロセスが再度アクティブになるまでブロックされます。GoldenGateレプリケーションのブラックアウトは数分間続くことがあります。 |
ノードが再起動すると、アクティブ/パッシブ構成が再確立されます。 |
プライマリGGHubクラスタがクラッシュしてリカバリできない |
影響: アプリケーションに影響はありません。GoldenGateレプリケーションは、既存のプライマリGGHubの再起動後または手動によるGGHubフェイルオーバーの完了後に再開されます。
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スタンバイGGHubクラスタがクラッシュしてリカバリできない |
影響: アプリケーションまたはレプリケーションに影響はありません。
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N/A |
リージョン全体の障害 |
影響: アプリケーションの停止時間は、ほぼゼロです。GoldenGateレプリケーションは、新しいプライマリ・データベースの起動時に再開されます。
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