期間平均原価調整

値調整およびオープン原価上書きは、「期間平均原価調整の管理」タスクを使用して作成できる期間平均原価調整です。

期間平均原価は、ユーザーが作成した調整によって調整することも、請求書価格の変更などのビジネス・イベントに基づいて自動的に調整することもできます。次に示す期間平均原価調整を作成できます。

値調整: 調整として金額を指定することで、在庫価額を調整できます。この調整値は、期間平均原価の計算に使用されます。値調整の例としては、リベートを受け取って、すべての在庫数量に適用する必要がある場合があります。
オープン原価上書き: 期間のオープン残高に対して新しい原価を定義できます。前期間原価を使用しない場合は、その期間の期間平均原価を計算するために原価プロセッサが使用する必要があるオープン原価上書きを定義します。これは、新規処理済品目の原価を定義する場合にも役立ちます。オープン原価上書きを定義する際には、変更する原価要素を選択して、各原価要素に新しい原価を指定できます。オープン原価上書きを定義するユース・ケースの1つは、マイナスの在庫のために前期間原価が0にデフォルト設定される場合です。前期間原価として0を使用するのではなく、新しい原価を使用する必要があると考える場合があります。

原価組織、原価台帳、品目、評価ユニットおよび期間の組合せに対してオープン原価上書きおよび値修正を定義した場合、品目の期間平均原価を計算する算式は次のようになります:

Periodic Average Cost = [(opening cost override * prior period ending balance) + SUM (transaction cost * transaction quantity) + overheads + value adjustments] / (prior period ending balance + transaction quantity for this period)

調整を作成、更新および削除できるのは、対応する期間が「オープン」または「クローズ待ち」ステータスの場合のみです。また、対応する期間が「オープン」または「クローズ待ち」ステータスであっても、オープン原価上書きの処理後にオープン原価上書きを更新または削除することはできません。

「原価会計配分の作成」プロセスを実行して調整を作成および処理した後、「原価会計プロセスのレビュー」ページで警告やエラー・メッセージを含む処理結果を確認できます。「原価配分のレビュー」ページで、対応する会計仕訳を表示できます。また、「品目原価のレビュー」ページで、品目の更新済期間平均原価を確認できます。

ノート:

預託POの場合、すべての遡及価格設定が値調整とみなされ、取引移動中受入(TIR)で作成されます。これは、「原価会計配分」のレビュー・ページで確認できます。その後、この調整は「所有受入への転送」に伝播されます。ただし、このような伝播された調整は、「トランザクション原価のレビュー」ページに表示されません。

差異および自動調整

自動調整には次のものが含まれます。

請求書価格差異、荷揚原価、購買オーダーの価格変更などが原因の取得原価調整。
差異調整は、在庫価額がマイナスであるか、合計数量が0以下の場合に作成されます。

この表は、定期平均原価がマイナスでないことを確認するためのシナリオおよび対応する差異計算を示しています。

合計数量	在庫合計金額	差異計算	期間平均原価
> 0	> 0	差異なし	> 0
< 0	< 0	差異なし	> 0
> 0	< 0	在庫価額を0にするための差異利益	= 0
< 0	> 0	在庫価額を0にするための差異損失	= 0
= 0	> 0	在庫価額を0にするための差異損失	= 0
= 0	< 0	在庫価額を0にするための差異利益	= 0

この表は、次の期間平均原価計算式に基づいています。

合計数量 = (前期間終了残高 + この期間のトランザクション数量)

在庫価額合計 = [(前期間平均原価 * 前期間終了残高) + SUM (トランザクション原価 * トランザクション数量) + 間接費 + 調整]

差異は、定期平均原価が再計算されるたびに新たに計算されます。

品目の期間平均原価とは、原価組織、原価台帳および評価ユニットの組合せに対する特定期間の品目の平均原価のことです。これは、差異を考慮して期間平均原価を計算する算式です:

Periodic Average Cost = {[(prior period average cost * prior period ending balance) + SUM (transaction cost * transaction quantity) + overheads + value adjustments + periodic cost inventory value variance] / (prior period ending balance + transaction quantity for this period)} + unit cost adjustments

周期平均原価で差異がどのように計上されるかを理解するために、いくつかの例を見てみましょう。

サンプル: 数量が0より大きく、手持値が0より小さい

次のトランザクションを検討します。

日付	トランザクション	数量	原価	手持数量	手持価額
01-Feb	開始残高	100	10	100	1000
05-Feb	購買オーダー受入	50	15	150	1750
10-Feb	サプライヤ返品	-100	20	50	-250
28-Feb	差異				250
28-Feb	期間終了残高	50		50	0

期間平均原価= {[(10 * 100) + SUM ((15 * 50) + (20 * (-100))) + 250] / (100 + 50) - 100)}

期間平均原価= {[(1000) + SUM (750) - 2000) + 250] / (50)}

期間平均原価= {[1000 - 1250 + 250] / (50)} = 0

サンプル: 数量が0未満で、手持値が0より大きい

次のトランザクションを検討します。

日付	トランザクション	数量	原価	手持数量	手持価額
01-Feb	開始残高	100	10	100	1000
05-Feb	購買オーダー受入	50	15	150	1750
10-Feb	サプライヤ返品	-200	5	-50	750
28-Feb	差異				-750
28-Feb	期間終了残高	-50		-50	0

期間終了時の手持数量がマイナスの場合は、マイナスのコストが発生する可能性があります。原価がマイナスにならないように、原価が0になるように差異調整が作成されます。

期間平均原価= {[(10 * 100) + SUM ((15 * 50) + (5 * (-200))) + (-750)] / (100 + 50) - 200)}

期間平均原価= {[(1000) + SUM (750) - 1000) - 750] / (-50)}

期間平均原価= {[1000 - 250 - 750] / (-50)} = 0

サンプル: 数量が0で、手持値が0より大きい

次のトランザクションを検討します。

日付	トランザクション	数量	原価	手持数量	手持価額
01-Feb	開始残高	100	10	100	1000
05-Feb	購買オーダー受入	50	15	150	1750
10-Feb	ベンダー返品	-150	5	0	1000
28-Feb	差異				-1000
28-Feb	期間終了残高	0		0	0

期間平均原価= {[(10 * 100) + SUM ((15 * 50) + (5 * (-150))) + (-1000)] / (100 + 50) - 150)}

期間平均原価= {[(1000) + SUM (750) - 750) - 1000] / (0)} = 0

サンプル: 数量は0、手持価額は0未満

次のトランザクションを検討します。

日付	トランザクション	数量	原価	手持数量	手持価額
01-Feb	開始残高	100	10	100	1000
05-Feb	購買オーダー受入	50	15	150	1750
10-Feb	サプライヤ返品	-150	15	0	-500
28-Feb	差異				500
28-Feb	期間終了残高	0		0	0

期間平均原価= {[(10 * 100) + SUM ((15 * 50) + (15 * (-150))) + 500] / (100 + 50 - 150)}

期間平均原価= {[(1000) + SUM (750) - 2250) + 500] / (0)} = 0