第VI部: HTTP/SPNEGO認証
課題9: HTTP/SPNEGO認証の使用
HTTP SPNEGOとは
HTTP SPNEGOは、HTTP通信でNegotiate認証スキームをサポートしています。SPNEGOは、次のタイプの認証をサポートしています。
Web認証
Webサーバーは次のように応答します。
HTTP/1.1 401 Unauthorized
WWW-Authenticate: Negotiate
クライアントは、次のヘッダーを送信する必要があります。
Authorization: Negotiate YY.....
これにより、クライアントはサーバーの認証を受けます。
プロキシ認証
Webサーバーは次のように応答します。
HTTP/1.1 407 Proxy Authentication Required
Proxy-Authenticate: Negotiate
クライアントは、次のヘッダーを送信する必要があります。
Proxy-Authorization: Negotiate YY.....
これにより、クライアントはプロキシ・サーバーの認証を受けます。
この機能は、両方のタイプの認証をサポートしています。
HTTP/SPNEGO認証の使用方法
新規の機能に関連して新しく公開されたAPI関数はありません。ただし、正しく通信を行うには、いくつかの構成を行う必要があります。
Kerberos 5の構成
SPNEGOメカニズムはJGSSを呼び出し、JGSSは実際の作業を行うためにKerberos V5ログイン・モジュールを呼び出します。Kerberos 5を構成する必要があります。次のものが必要となります。
-
Kerberos構成を指定する手段。これは、Javaシステム・プロパティ
java.security.krb5.conf
を使用して実現できます。次に例を示します。java -Djava.security.krb5.conf=krb5.conf \ -Djavax.security.auth.useSubjectCredsOnly=false \ ClassName
使用するログイン・モジュールを示すJAAS構成ファイル。HTTP SPNEGOコードは、
com.sun.security.jgss.krb5.initiate
という名前の標準エントリを検索します。たとえば、次のようにファイル
spnegoLogin.conf
を指定できます。com.sun.security.jgss.krb5.initiate { com.sun.security.auth.module.Krb5LoginModule required useTicketCache=true; };
次のようにjavaを実行します。
java -Djava.security.krb5.conf=krb5.conf \ -Djava.security.auth.login.config=spnegoLogin.conf \ -Djavax.security.auth.useSubjectCredsOnly=false \ ClassName
ユーザー名およびパスワードの取得
他のHTTP認証スキームと同じように、必要に応じて、クライアントはカスタマイズされたjava.net.Authenticatorを指定してHTTP SPNEGOモジュールにユーザー名とパスワードを指定できます(つまり、資格キャッシュは使用できません)。オーセンティケータでチェックする必要がある認証情報は、getRequestingScheme()を使用して取得可能なスキームのみです。値は「Negotiate」である必要があります。
つまり、オーセンティケータ実装は次のようになります。
class MyAuthenticator extends Authenticator {
public PasswordAuthentication getPasswordAuthentication () {
if (getRequestingScheme().equalsIgnoreCase("negotiate")) {
String krb5user;
char[] krb5pass;
// get krb5user and krb5pass in your own way
....
return (new PasswordAuthentication (krb5user,
krb5pass));
} else {
....
}
}
}
ノート:
java.net.Authenticatorの仕様では、ユーザー名とパスワードを同時に取得するように設計されています。このため、JAAS構成ファイルにprincipal=xxx
を指定しないでください。
スキームの優先設定
クライアントは、システム・プロパティhttp.auth.preferenceを指定して、サーバーが特定のスキームを要求するかぎりそのスキームが常に使用されるように指定できます。このシステム・プロパティに対して「SPNEGO」または「Kerberos」を使用できます。「SPNEGO」は、GSS/SPNEGOメカニズムを使用してネゴシエーション・スキームに応答します。「Kerberos」は、GSS/Kerberosメカニズムを使用してネゴシエーション・スキームに応答します。通常、Microsoft製品に対して認証を行う場合に「SPNEGO」を使用できます。値「Kerberos」もMicrosoftサーバーに対して動作します。これは、ネゴシエーションは認識するがSPNEGOは認識しないサーバーに対してのみ使用する必要があります。
http.auth.preference
が設定されていない場合、選択される内部順序は次のようになります。
-
GSS/SPNEGO ->ダイジェスト -> NTLM ->基本
ネゴシエーションがサポートされる場合は常にGSS/SPNEGOが選択されるため、Kerberosはこのリストには示されていません。
フォール・バック
サーバーがNegotiateを含む複数の認証方式を提供している場合、前述のセクションで説明されている処理順序に従って、JavaはNegotiateスキームを試行します。ただし、このプロトコルが正常に確立されない場合(たとえば、Kerberos構成が正しくない、サーバーのホスト名がKDCプリンシパルDBに記録されていない、オーセンティケータによって指定されたユーザー名とパスワードが間違っているなど)、2番目に強力なスキームが自動的に使用されます。
ノート:
http.auth.preference
がSPNEGOまたはKerberosに設定されている場合、SPNEGOでは、失敗する場合でもネゴシエーション・スキームのみを試行すると見なされます。SPNEGOはその他のスキームにフォール・バックしません。プログラムはIOExceptionをスローし、HTTP応答から401または407エラーを受信したことを通知します。
HTTP/SPNEGO認証の例
Active Directory内のWindowsサーバーでIISサーバーを実行しているとします。このサーバー上のWebページは、統合Windows認証によって保護されるように構成されています。つまり、サーバーはネゴシエーションとNTLMの両方の認証を要求します。
保護されているファイルを取得するには、次のファイルを準備する必要があります。
RunHttpSpnego.java
import java.io.BufferedReader;
import java.io.InputStream;
import java.io.InputStreamReader;
import java.net.Authenticator;
import java.net.PasswordAuthentication;
import java.net.URL;
public class RunHttpSpnego {
static final String kuser = "username"; // your account name
static final String kpass = "password"; // your password for the account
static class MyAuthenticator extends Authenticator {
public PasswordAuthentication getPasswordAuthentication() {
// I haven't checked getRequestingScheme() here, since for NTLM
// and Negotiate, the usrname and password are all the same.
System.err.println("Feeding username and password for " + getRequestingScheme());
return (new PasswordAuthentication(kuser, kpass.toCharArray()));
}
}
public static void main(String[] args) throws Exception {
Authenticator.setDefault(new MyAuthenticator());
URL url = new URL(args[0]);
InputStream ins = url.openConnection().getInputStream();
BufferedReader reader = new BufferedReader(new InputStreamReader(ins));
String str;
while((str = reader.readLine()) != null)
System.out.println(str);
}
}
krb.conf
[libdefaults]
default_realm = AD.LOCAL
[realms]
AD.LOCAL = {
kdc = kdc.ad.local
}
login.conf
com.sun.security.jgss.krb5.initiate {
com.sun.security.auth.module.Krb5LoginModule required doNotPrompt=false useTicketCache=true;
};
サンプルのコンパイルおよび実行
-
RunHttpSpnego.java
をコンパイルします。 -
RunHttpSpnego.java
を実行します。java -Djava.security.krb5.conf=krb5.conf \ -Djava.security.auth.login.config=login.conf \ -Djavax.security.auth.useSubjectCredsOnly=false \ RunHttpSpnego \ http://www.ad.local/hello/hello.html
次の出力が表示されます。
Feeding username and password for Negotiate <h1>Hello, You got me!</h1>
実際に、Windowsコンピュータ上でドメイン・ユーザーとして実行している場合、または
kinit
コマンドをすでに発行してクレデンシャル・キャッシュを取得しているLinuxコンピュータ上で実行している場合、クラスMyAuthenticator
は完全に無視され、出力は単純になります。<h1>Hello, You got me!</h1>
これは、ユーザー名とパスワードが参照されないことを示しています。これはシングル・サインオンと呼ばれます。
また、次のように実行して、
java RunHttpSpnego http://www.ad.local/hello/hello.html
フォール・バックがどのように実行されるかを確認できます。この場合は、次のように表示されます。
Feeding username and password for ntlm <h1>Hello, You got me!</h1>