Sun Cluster 3.1 データサービス開発ガイド

SUNW.xfnts 障害モニター

リソースがノード上で起動した後、RGM は、PROBE メソッドを直接呼び出すのではなく、Monitor_start メソッドを呼び出してモニターを起動します。xfnts_monitor_start メソッドは PMF の制御下で障害モニターを起動します。xfnts_monitor_stop メソッドは障害モニターを停止します。

SUNW.xfnts 障害モニターは、次の処理を実行します。

xfonts_probe のメインループ

xfonts_probe メソッドは無限ループを実行します。ループを実行する前に、xfonts_probe は次の処理を行います。

xfnts_probe メソッドは次のようなループを実装します。


例 8–17

for (ip = 0; ip < netaddr->num_netaddrs; ip++) {
         /*
          * 状態を監視するホスト名とポートを取得する。
          */
         hostname = netaddr->netaddrs[ip].hostname;
         port = netaddr->netaddrs[ip].port_proto.port;
         /*
          * HA-XFS がサポートするポートは 1 つだけなので、
          * ポート値はポートの配列の最初の
          * エントリから取得する。
          */
         ht1 = gethrtime(); /* Latch probe start time */
         scds_syslog(LOG_INFO, "Probing the service on port: %d.", port);

         probe_result =
         svc_probe(scds_handle, hostname, port, timeout);

         /*
          * サービス検証履歴を更新し、
          * 必要に応じて、アクションを行う。
          * 検証終了時間を取得する。
          */
         ht2 = gethrtime();

         /* ミリ秒に変換する。*/
         dt = (ulong_t)((ht2 - ht1) / 1e6);

         /*
          * 障害の履歴を計算し、必要に応じて
          * アクションを実行する。
          */
         (void) scds_fm_action(scds_handle,
             probe_result, (long)dt);
      }   /* ネットワークリソースごと */
   }    /* 検証を永続的に繰り返す。*/

svc_probe 関数は検証ロジックを実装します。svc_probe からの戻り値は scds_fm_action に渡されます。そして scds_fm_action は、アプリケーションを再起動するか、リソースグループをフェイルオーバーするか、あるいは何もしないかを決定します。

svc_probe 関数

svc_probe 関数は、scds_fm_tcp_connect を呼び出すことによって、指定されたポートとの単純ソケット接続を確立します。接続に失敗した場合、svc_probe100 の値を戻して、致命的な障害であることを示します。接続には成功したが、切断に失敗した場合、svc_probe50 の値を戻して、部分的な障害であることを示します。接続と切断の両方に成功した場合、svc_probe0 の値を戻して、成功したことを示します。

次に、svc_probe のコードを示します。


例 8–18

int svc_probe(scds_handle_t scds_handle, 
char *hostname, int port, int timeout)
{
   int  rc;
   hrtime_t   t1, t2;
   int    sock;
   char   testcmd[2048];
   int    time_used, time_remaining;
   time_t      connect_timeout;


   /*
    * データサービスを検証するには、port_list プロパティに指定された、
    * XFS データサービスを提供するホスト上にあるポートとのソケット接続
    * を確立する。
    * 指定されたポート上でリスンするように構成されたXFS サービスが接続に
    * 応答した場合、検証が成功したと判断する。probe_timeout プロパティに
    * 設定された期間待機しても応答がない場合、検証が失敗したと判断する。
    */

    /*
     * SVC_CONNECT_TIMEOUT_PCT をタイムアウトの
     * 百分率として使用し、ポートと接続する。
     */
   connect_timeout = (SVC_CONNECT_TIMEOUT_PCT * timeout)/100;
   t1 = (hrtime_t)(gethrtime()/1E9);

   /*
    * 検証機能は、指定されたホスト名とポートを接続する。
    * 接続は、probe_timeout 値の 95% に達するとタイムアウトになる。
    */
   rc = scds_fm_tcp_connect(scds_handle, &sock, hostname, port,
       connect_timeout);
   if (rc) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to connect to port <%d> of resource <%s>.",
          port, scds_get_resource_name(scds_handle));
      /* 致命的な障害 */
      return (SCDS_PROBE_COMPLETE_FAILURE);
   }

   t2 = (hrtime_t)(gethrtime()/1E9);

   /*
    * 接続にかかる実際の時間を計算する。この値は、
    * 接続に割り当てられた時間を示す connect_timeout 以下
    * である必要がある。接続に割り当てられた時間をすべて
    * 使い切った場合、probe_timeout に残った値が当該関数に
    * 渡され、切断タイムアウトとして使用される。
    * それ以外の場合、接続呼び出しで残った時間が
    * 切断タイムアウトに追加される。
    */

   time_used = (int)(t2 - t1);

   /*
    * 残った時間(タイムアウトから接続にかかった時間を引いた値) を
    * 切断に使用する。
    */

   time_remaining = timeout - (int)time_used;

   /*
    * すべての時間を使い切った場合、ハードコーディングされた小さな
    * タイムアウト値を使用して、切断しようとする。
    * これによって、fd リークを防ぐ。
    */
   if (time_remaining <= 0) {
      scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_LOW,
          "svc_probe used entire timeout of "
          "%d seconds during connect operation and exceeded the "
          "timeout by %d seconds. Attempting disconnect with timeout"
          " %d ",
          connect_timeout,
          abs(time_used),
          SVC_DISCONNECT_TIMEOUT_SECONDS);

      time_remaining = SVC_DISCONNECT_TIMEOUT_SECONDS;
   }

   /*
    * 切断に失敗した場合、部分的な障害を戻す。
    * 理由: 接続呼び出しは成功した。これは、
    * アプリケーションが正常に動作していることを意味する。
    * 切断が失敗した原因は、アプリケーションがハングしたか、
    * 負荷が高いためである。
    * 後者の場合、アプリケーションが停止したとは宣言しない
    * (つまり、致命的な障害を戻さない)。その代わりに、部分的な
    * 障害であると宣言する。この状態が続く場合、切断呼び出しは
    * 再び失敗し、アプリケーションは再起動される。
    */
   rc = scds_fm_tcp_disconnect(scds_handle, sock, time_remaining);
   if (rc != SCHA_ERR_NOERR) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to disconnect to port %d of resource %s.",
          port, scds_get_resource_name(scds_handle));
      /* 部分的な障害 */
      return (SCDS_PROBE_COMPLETE_FAILURE/2);
   }

   t2 = (hrtime_t)(gethrtime()/1E9);
   time_used = (int)(t2 - t1);
   time_remaining = timeout - time_used;

   /*
    * 時間が残っていない場合、fsinfo による完全な
    * テストを行わない。その代わりに、
    * SCDS_PROBE_COMPLETE_FAILURE/2 を戻す。これによって、
    * このタイムアウトが続く場合、サーバーは再起動される。
    */
   if (time_remaining <= 0) {
      scds_syslog(LOG_ERR, "Probe timed out.");
      return (SCDS_PROBE_COMPLETE_FAILURE/2);
   }

   /*
    * ポートとの接続と切断に成功した。
    * fsinfo コマンドを実行して、
    * サーバーの状態を完全に検査する。
    * stdout をリダイレクトする。そうでない場合、
    * fsinfo からの出力はコンソールに送られる。
    */
   (void) sprintf(testcmd,
       "/usr/openwin/bin/fsinfo -server %s:%d> /dev/null",
       hostname, port);
   scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_HIGH,
       "Checking the server status with %s.", testcmd);
   if (scds_timerun(scds_handle, testcmd, time_remaining,
      SIGKILL, &rc) != SCHA_ERR_NOERR || rc != 0) {

      scds_syslog(LOG_ERR,
         "Failed to check server status with command <%s>",
         testcmd);
      return (SCDS_PROBE_COMPLETE_FAILURE/2);
   }
   return (0);
}

svc_probe は終了時に、成功 (0)、部分的な障害 (50)、または致命的な障害 (100) を戻します。xfnts_probe メソッドはこの値を scds_fm_action に渡します。

障害モニターのアクションの決定

xfnts_probe メソッドは scds_fm_action を呼び出して、行うべきアクションを決定します。scds_fm_action のロジックは次のとおりです。

たとえば、検証機能が xfs サーバーに正常に接続したが、切断に失敗したものと想定します。これは、サーバーは動作しているが、ハングしていたり、一時的に過負荷状態になっている可能性を示しています。切断に失敗すると、scds_fm_action に部分的な障害 (50) が送信されます。この値は、データサービスを再起動するしきい値を下回っていますが、値は障害の履歴に記録されます。

次回の検証でもサーバーが切断に失敗した場合、scds_fm_action が保持している障害の履歴に値 50 が再度追加されます。累積した障害の履歴が 100 になるので、scds_fm_action はデータサービスを再起動します。