Sun Cluster 3.1 データサービス開発ガイド

第 8 章 サンプル DSDL リソースタイプの実装

この章では、DSDL で実装したサンプルのリソースタイプ SUNW.xfnts について説明します。データサービスは C 言語で作成されています。使用するアプリケーションは TCP/IP ベースのサービスである X Font Server です。

この章の内容は、次のとおりです。

X Font Server について

X Font Server は、フォントファイルをクライアントに提供する、簡単な TCP/IP ベースのサービスです。クライアントはサーバーに接続してフォントセットを要求します。サーバーはフォントファイルをディスクから読み取って、クライアントにサービスを提供します。X Font Server デーモンはサーバーバイナリである /usr/openwin/bin/xfs から構成されます。このデーモンは通常、inetd から起動されますが、このサンプルでは、/etc/inetd.conf ファイル内の適切なエントリが (たとえば、fsadmin -d コマンドによって) 無効にされているものと想定します。したがって、デーモンは Sun Cluster だけの制御下にあります。

次に、X Font Server の構成ファイルについて説明します。

構成ファイル

デフォルトでは、X Font Server はその構成情報をファイル /usr/openwin/lib/X11/fontserver.cfg から読み取ります。このファイルのカタログエントリには、デーモンがサービスを提供できるフォントディレクトリのリストが入っています。クラスタ管理者は広域ファイルシステム上のフォントディレクトリの格納先を指定できます。こうすることによって、システム上でフォントデータベースのコピーを 1 つだけ保持すれば済むので、Sun Cluster 上の X Font Server の使用を最適化できます。広域ファイルシステム上のフォントディレクトリの格納先を指定するには、fontserver.cfg を編集して、フォントディレクトリの新しいパスを反映させる必要があります。

構成を簡単にするために、管理者は構成ファイル自身も広域ファイルシステム上に配置できます。xfs デーモンはデフォルトの格納先 (このファイルの組み込み場所) を変更するためのコマンド行引数を提供します。SUNW.xfnts リソースタイプは、次のコマンドを使用して、Sun Cluster の制御下でデーモンを起動します。


/usr/openwin/bin/xfs -config <location_of_cfg_file>/fontserver.cfg \
-port <portnumber>

SUNW.xfntsv リソースタイプの実装では、Confdir_list プロパティを使用して、fontserver.cfg 構成ファイルの格納場所を管理できます。

TCP ポート番号

xfs サーバーデーモンが通信する TCP ポートの番号は、一般に「fs」ポート (通常、/etc/services ファイルで 7100 と定義されている) です。ただし、xfs コマンド行で -port オプションを指定することにより、システム管理者はデフォルトの設定を変更できます。SUNW.xfnts リソースタイプの Port_list プロパティを使用すると、デフォルト値を設定したり、xfs コマンド行で -port オプションを指定できるようになります。RTR ファイルにおいて、このプロパティのデフォルト値を 7100/tcp と定義します。SUNW.xfntsStart メソッドで、Port_listxfs コマンド行の -port オプションに渡します。このようにすると、このリソースタイプのユーザーはポート番号を指定する必要がなくなります。つまり、デフォルトのポートが 7100/tcp になります。ただし、リソースタイプを構成するときに、Port_list プロパティに異なる値を指定することにより、別のポートを指定することも可能です。

命名規約

次の命名規則を覚えておけば、サンプルコード内で関数とメソッドを簡単に識別できます。

SUNW.xfnts の RTR ファイル

この節では、SUNW.xfnts の RTR ファイルで宣言されている、いくつかの重要なプロパティについて説明します。各プロパティの目的については説明しません。プロパティの詳細については、リソースとリソースタイププロパティの設定を参照してください。

次に示すように、Confdir_list 拡張プロパティは構成ディレクトリ (または、ディレクトリのリスト) を指定します。


例 8–1

{
        PROPERTY = Confdir_list;
        EXTENSION;
        STRINGARRAY;
        TUNABLE = AT_CREATION;
        DESCRIPTION = "The Configuration Directory Path(s)";
}

Confdir_list プロパティには、デフォルト値は設定されていません。クラスタ管理者はリソースを作成するときに、構成 ディレクトリを指定する必要があります。「TUNABLE = AT_CREATION」が指定されているので、作成時以降、この値を変更することはできません。

次に示すように、Port_list プロパティは、サーバーデーモンが通信するポートを指定します。


例 8–2

{
        PROPERTY = Port_list;
        DEFAULT = 7100/tcp;
        TUNABLE = AT_CREATION;
}

このプロパティにはデフォルト値が設定されているため、クラスタ管理者はリソースを作成するときに、新しい値を指定するか、デフォルト値を使用するかを選択します。「TUNABLE = AT_CREATION」が指定されているので、作成時以降、この値を変更することはできません。

scds_initialize の呼び出し

DSDL では、各コールバックメソッドがメソッドの開始時に scds_initialize(3HA) 関数を呼び出す必要があります。この関数は次の作業を行います。

scds_close 関数を使用すると、scds_initialize が割り当てたリソースを再利用できます。

xfnts_start メソッド

データサービスリソースを含むリソースグループがオンラインになったとき、あるいは、リソースが有効になったとき、RGM はそのクラスタノード上で Start メソッドを呼び出します。サンプルの SUNW.xfnts リソースタイプでは、xfnts_start メソッドが当該ノード上で xfs デーモンを起動します。

xfnts_start メソッドは scds_pmf_start を呼び出して、PMF の制御下でデーモンを起動します。PMF は、自動障害通知、再起動機能、および障害モニターとの統合を提供します。


注 –

xfnts_start は、scds_initialize を最初に呼び出します。これによって、いくつかのハウスキーピング関数が実行されます。詳細については、scds_initialize の呼び出し scds_initialize3HA のマニュアルページを参照してください。


起動前のサービスの検証

次に示すように、xfnts_start メソッドは X Font Server を起動する前に svc_validate を呼び出して、xfs デーモンをサポートするための適切な構成が存在していることを確認します。詳細については、xfnts_validate メソッドを参照してください。


例 8–3

rc = svc_validate(scds_handle);
   if (rc != 0) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to validate configuration.");
      return (rc);
   }

サービスの起動

xfnts_start メソッドは、xfnts.c で定義されている svc_start メソッドを呼び出して、xfs デーモンを起動します。ここでは、svc_start について説明します。

以下に、xfs デーモンを起動するためのコマンドを示します。


xfs -config config_directory/fontserver.cfg -port port_number

Confdir_list 拡張プロパティには config_directory を指定します。一方、Port_list システムプロパティには port_number を指定します。クラスタ管理者はデータサービスを構成するときに、これらのプロパティの値を指定します。

次に示すように、xfnts_start メソッドはこれらのプロパティを文字列配列として宣言し、scds_get_ext_confdir_list(3HA) と scds_get_port_list(3HA) 関数を使用して、管理者が設定した値を取得します。


例 8–4

scha_str_array_t *confdirs;
scds_port_list_t    *portlist;
scha_err_t   err;

   /* Confdir_list プロパティから構成ディレクトリを取得する。*/
   confdirs = scds_get_ext_confdir_list(scds_handle);

   (void) sprintf(xfnts_conf, "%s/fontserver.cfg", confdirs->str_array[0]);

   /* Port_list プロパティから XFS が使用するポートを取得する。*/
   err = scds_get_port_list(scds_handle, &portlist);
   if (err != SCHA_ERR_NOERR) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Could not access property Port_list.");
      return (1);
   }

confdirs 変数は配列の最初の要素 (0) を指していることに注意してください。

次に示すように、xfnts_start メソッドは sprintf を使用して、xfs 用のコマンド行を形成します。


例 8–5

/* xfs デーモンを起動するコマンドを構築する。*/
   (void) sprintf(cmd,
       "/usr/openwin/bin/xfs -config %s -port %d 2>/dev/null",
       xfnts_conf, portlist->ports[0].port);

出力が dev/null にリダイレクトされていることに注意してください。こうすることによって、デーモンが生成するメッセージが抑制されます。

次に示すように、xfnts_start メソッドは xfs コマンド行を scds_pmf_start に渡して、PMF の制御下でデータサービスを起動します。


例 8–6

scds_syslog(LOG_INFO, "Issuing a start request.");
   err = scds_pmf_start(scds_handle, SCDS_PMF_TYPE_SVC,
      SCDS_PMF_SINGLE_INSTANCE, cmd, -1);

   if (err == SCHA_ERR_NOERR) {
      scds_syslog(LOG_INFO,
          "Start command completed successfully.");
   } else {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to start HA-XFS ");
   }

scds_pmf_start を呼び出すときは、次のことに注意してください。

次に示すように、svc_pmf_startportlist 構造体に割り当てられているメモリーを解放してから戻ります。


scds_free_port_list(portlist);
return (err);

svc_start からの復帰

svc_start が正常終了したときでも、使用するアプリケーションが起動に失敗した可能性があります。そのため、svc_start はアプリケーションを検証して、アプリケーションが動作していることを確認してから、正常終了のメッセージを戻す必要があります。このとき、アプリケーションがただちに利用できない理由として、アプリケーションの起動にはある程度時間がかかるということを考慮しておく必要があります。次に示すように、svc_start メソッドは xfnts.c で定義されている svc_wait を呼び出して、アプリケーションが動作していることを確認します。


例 8–7

/* サービスが完全に起動するまで待つ。*/
   scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_HIGH,
       "Calling svc_wait to verify that service has started.");

   rc = svc_wait(scds_handle);

   scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_HIGH,
       "Returned from svc_wait");

   if (rc == 0) {
      scds_syslog(LOG_INFO, "Successfully started the service.");
   } else {
      scds_syslog(LOG_ERR, "Failed to start the service.");
   }

次に示すように、svc_wait メソッドは scds_get_netaddr_list(3HA) を呼び出して、アプリケーションを検証するのに必要なネットワークアドレスリソースを取得します。


例 8–8

/* 検証に使用するネットワークリソースを取得する。*/
   if (scds_get_netaddr_list(scds_handle, &netaddr)) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "No network address resources found in resource group.");
      return (1);
   }

   /* ネットワークリソースが存在しない場合は、エラーを戻す。*/
   if (netaddr == NULL || netaddr->num_netaddrs == 0) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "No network address resource in resource group.");
      return (1);
   }

次に示すように、svc_waitstart_timeoutstop_timeout 値を取得します。


例 8–9

svc_start_timeout = scds_get_rs_start_timeout(scds_handle)
   probe_timeout = scds_get_ext_probe_timeout(scds_handle)

サーバーの起動に時間がかかることを考慮して、svc_waitscds_svc_wait を呼び出して、start_timeout 値の 3 % であるタイムアウト値を渡します。次に、svc_waitsvc_probe を呼び出して、アプリケーションが起動していることを確認します。svc_probe メソッドは指定されたポート上でサーバーとの単純ソケット接続を確立します。ポートへの接続が失敗した場合、svc_probe は値 100 を戻して、致命的な障害であることを示します。ポートとの接続は確立したが、切断に失敗した場合、svc_probe は値 50 を戻します。

svc_probe が完全にまたは部分的に失敗した場合、svc_waitscds_svc_wait をタイムアウト値 5 で呼び出します。scds_svc_wait メソッドは、検証の周期を 5 秒ごとに制限します。また、このメソッドはサービスを起動しようとした回数も数えます。この回数がリソースの Retry_interval プロパティで指定された期限内にリソースの Retry_count プロパティの値を超えた場合、scds_svc_wait メソッドは失敗します。この場合、svc_start メソッドも失敗します。


例 8–10

#define    SVC_CONNECT_TIMEOUT_PCT    95
#define    SVC_WAIT_PCT       3
   if (scds_svc_wait(scds_handle, (svc_start_timeout * SVC_WAIT_PCT)/100)
      != SCHA_ERR_NOERR) {

      scds_syslog(LOG_ERR, "Service failed to start.");
      return (1);
   }

   do {
      /*
       * ネットワークリソースのIP アドレスとportname 上で
       * データサービスを検証する。
       */
      rc = svc_probe(scds_handle,
          netaddr->netaddrs[0].hostname,
          netaddr->netaddrs[0].port_proto.port, probe_timeout);
      if (rc == SCHA_ERR_NOERR) {
         /* 成功。リソースを解放して終了。*/
         scds_free_netaddr_list(netaddr);
         return (0);
      }

       /* サービスが何度も失敗する場合は、
        * iscds_svc_wait()を呼び出す。
        */
      if (scds_svc_wait(scds_handle, SVC_WAIT_TIME)
         != SCHA_ERR_NOERR) {
         scds_syslog(LOG_ERR, "Service failed to start.");
         return (1);
      }

   /* RGM のタイムアウトを待ってプログラムを終了する。*/
   } while (1);


注 –

xfnts_start メソッドは終了する前に scds_close を呼び出して、scds_initialize が割り当てたリソースを再利用します。詳細については、scds_initialize の呼び出しscds_close(3HA) のマニュアルページを参照してください。


xfnts_stop メソッド

xfnts_start メソッドは scds_pmf_start を使用して PMF の制御下でサービスを起動するので、xfnts_stopscds_pmf_stop を使用してサービスを停止します。


注 –

xfnts_stop は、scds_initialize を最初に呼び出します。これによって、いくつかのハウスキーピング関数が実行されます。詳細については、 scds_initialize(3HA) のマニュアルページを参照してください。


次に示すように、xfnts_stop メソッドは、xfnts.c で定義されている svc_stop メソッドを呼び出します。


例 8–11

scds_syslog(LOG_ERR, "Issuing a stop request.");
   err = scds_pmf_stop(scds_handle,
       SCDS_PMF_TYPE_SVC, SCDS_PMF_SINGLE_INSTANCE, SIGTERM,
       scds_get_rs_stop_timeout(scds_handle));

   if (err != SCHA_ERR_NOERR) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to stop HA-XFS.");
      return (1);
   }

   scds_syslog(LOG_INFO,
       "Successfully stopped HA-XFS.");
   return (SCHA_ERR_NOERR); /* 正常に停止。*/

svc_stop から scds_pmf_stop 関数を呼び出すときは、次のことに注意してください。


注 –

xfnts_stop メソッドは終了する前に scds_close を呼び出して、scds_initialize が割り当てたリソースを再利用します。詳細については、scds_initialize の呼び出しscds_close(3HA) のマニュアルページを参照してください。


xfnts_monitor_start メソッド

リソースがノード上で起動した後、RGM はそのノード上で Monitor_start メソッドを呼び出して障害モニターを起動します。xfnts_monitor_start メソッドは scds_pmf_start を使用して PMF の制御下でモニターデーモンを起動します。


注 –

xfnts_monitor_start は、 scds_initialize を最初に呼び出します。これによって、いくつかのハウスキーピング関数が実行されます。詳細については、scds_initialize の呼び出し scds_initialize(3HA) のマニュアルページを参照してください。


次に示すように、xfnts_monitor_start メソッドは xfnts.c に定義されている mon_start メソッドを呼び出します


例 8–12

scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_HIGH,
      "Calling Monitor_start method for resource <%s>.",
      scds_get_resource_name(scds_handle));

    /* scds_pmf_start を呼び出し、検証の名前を渡す。*/
   err = scds_pmf_start(scds_handle, SCDS_PMF_TYPE_MON,
       SCDS_PMF_SINGLE_INSTANCE, "xfnts_probe", 0);

   if (err != SCHA_ERR_NOERR) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to start fault monitor.");
      return (1);
   }

   scds_syslog(LOG_INFO,
       "Started the fault monitor.");

   return (SCHA_ERR_NOERR); /* モニターを正常に起動。*/
}

svc_mon_start から scds_pmf_start 関数を呼び出すときは、次のことに注意してください。


注 –

xfnts_monitor_start メソッドは終了する前に scds_close を呼び出して、scds_initialize が割り当てたリソースを再利用します。詳細については、scds_initialize の呼び出しscds_close(3HA) のマニュアルページを参照してください。


xfnts_monitor_stop メソッド

xfnts_monitor_start メソッドは scds_pmf_start を使用して PMF の制御下でモニターデーモンを起動するので、xfnts_monitor_stopscds_pmf_stop を使用してモニターデーモンを停止します。


注 –

xfnts_monitor_stop は、scds_initialize を最初に呼び出します。これによって、いくつかのハウスキーピング関数が実行されます。詳細については、scds_initialize の呼び出し scds_initialize(3HA) のマニュアルページを参照してください。


次に示すように、xfnts_monitor_stop メソッドは xfnts.c で定義されている mon_stop メソッドを呼び出します。


例 8–13

scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_HIGH,
      "Calling scds_pmf_stop method");

   err = scds_pmf_stop(scds_handle, SCDS_PMF_TYPE_MON,
       SCDS_PMF_SINGLE_INSTANCE, SIGKILL,
       scds_get_rs_monitor_stop_timeout(scds_handle));

   if (err != SCHA_ERR_NOERR) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to stop fault monitor.");
      return (1);
   }

   scds_syslog(LOG_INFO,
       "Stopped the fault monitor.");

   return (SCHA_ERR_NOERR); /* モニターを正常に停止。*/
}

svc_mon_stop から scds_pmf_stop 関数を呼び出すときは、次のことに注意してください。


注 –

xfnts_monitor_stop メソッドは終了する前に scds_close を呼び出して、scds_initialize が割り当てたリソースを再利用します。詳細については、scds_initialize の呼び出しscds_close 3HA のマニュアルページを参照してください。


xfnts_monitor_check メソッド

障害モニターがリソースが属するリソースグループを別のノードにフェイルオーバーしようとするたびに、RGM は Monitor_check メソッドを呼び出します。xfnts_monitor_check メソッドは svc_validate メソッドを呼び出して、xfs デーモンをサポートするための適切な構成が存在していることを確認します。詳細については、xfnts_validate メソッドを参照してください。次に、xfnts_monitor_check のコードを示します。


例 8–14

   /* RGM から渡された引数を処理し、syslog を初期化する。*/
   if (scds_initialize(&scds_handle, argc, argv) != SCHA_ERR_NOERR)
{
      scds_syslog(LOG_ERR, "Failed to initialize the handle.");
      return (1);
   }

   rc =  svc_validate(scds_handle);
   scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_HIGH,
       "monitor_check method "
       "was called and returned <%d>.", rc);

   /* scds_initialize が割り当てたすべてのメモリーを解放する。*/
   scds_close(&scds_handle);

   /* モニター検査の一環として実行した検証メソッドの結果を戻す。*/
   return (rc);
}

SUNW.xfnts 障害モニター

リソースがノード上で起動した後、RGM は、PROBE メソッドを直接呼び出すのではなく、Monitor_start メソッドを呼び出してモニターを起動します。xfnts_monitor_start メソッドは PMF の制御下で障害モニターを起動します。xfnts_monitor_stop メソッドは障害モニターを停止します。

SUNW.xfnts 障害モニターは、次の処理を実行します。

xfonts_probe のメインループ

xfonts_probe メソッドは無限ループを実行します。ループを実行する前に、xfonts_probe は次の処理を行います。

xfnts_probe メソッドは次のようなループを実装します。


例 8–17

for (ip = 0; ip < netaddr->num_netaddrs; ip++) {
         /*
          * 状態を監視するホスト名とポートを取得する。
          */
         hostname = netaddr->netaddrs[ip].hostname;
         port = netaddr->netaddrs[ip].port_proto.port;
         /*
          * HA-XFS がサポートするポートは 1 つだけなので、
          * ポート値はポートの配列の最初の
          * エントリから取得する。
          */
         ht1 = gethrtime(); /* Latch probe start time */
         scds_syslog(LOG_INFO, "Probing the service on port: %d.", port);

         probe_result =
         svc_probe(scds_handle, hostname, port, timeout);

         /*
          * サービス検証履歴を更新し、
          * 必要に応じて、アクションを行う。
          * 検証終了時間を取得する。
          */
         ht2 = gethrtime();

         /* ミリ秒に変換する。*/
         dt = (ulong_t)((ht2 - ht1) / 1e6);

         /*
          * 障害の履歴を計算し、必要に応じて
          * アクションを実行する。
          */
         (void) scds_fm_action(scds_handle,
             probe_result, (long)dt);
      }   /* ネットワークリソースごと */
   }    /* 検証を永続的に繰り返す。*/

svc_probe 関数は検証ロジックを実装します。svc_probe からの戻り値は scds_fm_action に渡されます。そして scds_fm_action は、アプリケーションを再起動するか、リソースグループをフェイルオーバーするか、あるいは何もしないかを決定します。

svc_probe 関数

svc_probe 関数は、scds_fm_tcp_connect を呼び出すことによって、指定されたポートとの単純ソケット接続を確立します。接続に失敗した場合、svc_probe100 の値を戻して、致命的な障害であることを示します。接続には成功したが、切断に失敗した場合、svc_probe50 の値を戻して、部分的な障害であることを示します。接続と切断の両方に成功した場合、svc_probe0 の値を戻して、成功したことを示します。

次に、svc_probe のコードを示します。


例 8–18

int svc_probe(scds_handle_t scds_handle, 
char *hostname, int port, int timeout)
{
   int  rc;
   hrtime_t   t1, t2;
   int    sock;
   char   testcmd[2048];
   int    time_used, time_remaining;
   time_t      connect_timeout;


   /*
    * データサービスを検証するには、port_list プロパティに指定された、
    * XFS データサービスを提供するホスト上にあるポートとのソケット接続
    * を確立する。
    * 指定されたポート上でリスンするように構成されたXFS サービスが接続に
    * 応答した場合、検証が成功したと判断する。probe_timeout プロパティに
    * 設定された期間待機しても応答がない場合、検証が失敗したと判断する。
    */

    /*
     * SVC_CONNECT_TIMEOUT_PCT をタイムアウトの
     * 百分率として使用し、ポートと接続する。
     */
   connect_timeout = (SVC_CONNECT_TIMEOUT_PCT * timeout)/100;
   t1 = (hrtime_t)(gethrtime()/1E9);

   /*
    * 検証機能は、指定されたホスト名とポートを接続する。
    * 接続は、probe_timeout 値の 95% に達するとタイムアウトになる。
    */
   rc = scds_fm_tcp_connect(scds_handle, &sock, hostname, port,
       connect_timeout);
   if (rc) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to connect to port <%d> of resource <%s>.",
          port, scds_get_resource_name(scds_handle));
      /* 致命的な障害 */
      return (SCDS_PROBE_COMPLETE_FAILURE);
   }

   t2 = (hrtime_t)(gethrtime()/1E9);

   /*
    * 接続にかかる実際の時間を計算する。この値は、
    * 接続に割り当てられた時間を示す connect_timeout 以下
    * である必要がある。接続に割り当てられた時間をすべて
    * 使い切った場合、probe_timeout に残った値が当該関数に
    * 渡され、切断タイムアウトとして使用される。
    * それ以外の場合、接続呼び出しで残った時間が
    * 切断タイムアウトに追加される。
    */

   time_used = (int)(t2 - t1);

   /*
    * 残った時間(タイムアウトから接続にかかった時間を引いた値) を
    * 切断に使用する。
    */

   time_remaining = timeout - (int)time_used;

   /*
    * すべての時間を使い切った場合、ハードコーディングされた小さな
    * タイムアウト値を使用して、切断しようとする。
    * これによって、fd リークを防ぐ。
    */
   if (time_remaining <= 0) {
      scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_LOW,
          "svc_probe used entire timeout of "
          "%d seconds during connect operation and exceeded the "
          "timeout by %d seconds. Attempting disconnect with timeout"
          " %d ",
          connect_timeout,
          abs(time_used),
          SVC_DISCONNECT_TIMEOUT_SECONDS);

      time_remaining = SVC_DISCONNECT_TIMEOUT_SECONDS;
   }

   /*
    * 切断に失敗した場合、部分的な障害を戻す。
    * 理由: 接続呼び出しは成功した。これは、
    * アプリケーションが正常に動作していることを意味する。
    * 切断が失敗した原因は、アプリケーションがハングしたか、
    * 負荷が高いためである。
    * 後者の場合、アプリケーションが停止したとは宣言しない
    * (つまり、致命的な障害を戻さない)。その代わりに、部分的な
    * 障害であると宣言する。この状態が続く場合、切断呼び出しは
    * 再び失敗し、アプリケーションは再起動される。
    */
   rc = scds_fm_tcp_disconnect(scds_handle, sock, time_remaining);
   if (rc != SCHA_ERR_NOERR) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to disconnect to port %d of resource %s.",
          port, scds_get_resource_name(scds_handle));
      /* 部分的な障害 */
      return (SCDS_PROBE_COMPLETE_FAILURE/2);
   }

   t2 = (hrtime_t)(gethrtime()/1E9);
   time_used = (int)(t2 - t1);
   time_remaining = timeout - time_used;

   /*
    * 時間が残っていない場合、fsinfo による完全な
    * テストを行わない。その代わりに、
    * SCDS_PROBE_COMPLETE_FAILURE/2 を戻す。これによって、
    * このタイムアウトが続く場合、サーバーは再起動される。
    */
   if (time_remaining <= 0) {
      scds_syslog(LOG_ERR, "Probe timed out.");
      return (SCDS_PROBE_COMPLETE_FAILURE/2);
   }

   /*
    * ポートとの接続と切断に成功した。
    * fsinfo コマンドを実行して、
    * サーバーの状態を完全に検査する。
    * stdout をリダイレクトする。そうでない場合、
    * fsinfo からの出力はコンソールに送られる。
    */
   (void) sprintf(testcmd,
       "/usr/openwin/bin/fsinfo -server %s:%d> /dev/null",
       hostname, port);
   scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_HIGH,
       "Checking the server status with %s.", testcmd);
   if (scds_timerun(scds_handle, testcmd, time_remaining,
      SIGKILL, &rc) != SCHA_ERR_NOERR || rc != 0) {

      scds_syslog(LOG_ERR,
         "Failed to check server status with command <%s>",
         testcmd);
      return (SCDS_PROBE_COMPLETE_FAILURE/2);
   }
   return (0);
}

svc_probe は終了時に、成功 (0)、部分的な障害 (50)、または致命的な障害 (100) を戻します。xfnts_probe メソッドはこの値を scds_fm_action に渡します。

障害モニターのアクションの決定

xfnts_probe メソッドは scds_fm_action を呼び出して、行うべきアクションを決定します。scds_fm_action のロジックは次のとおりです。

たとえば、検証機能が xfs サーバーに正常に接続したが、切断に失敗したものと想定します。これは、サーバーは動作しているが、ハングしていたり、一時的に過負荷状態になっている可能性を示しています。切断に失敗すると、scds_fm_action に部分的な障害 (50) が送信されます。この値は、データサービスを再起動するしきい値を下回っていますが、値は障害の履歴に記録されます。

次回の検証でもサーバーが切断に失敗した場合、scds_fm_action が保持している障害の履歴に値 50 が再度追加されます。累積した障害の履歴が 100 になるので、scds_fm_action はデータサービスを再起動します。

xfnts_validate メソッド

リソースが作成されたとき、および、リソースまたは (リソースを含む) リソースグループのプロパティが管理アクションによって更新されるとき、RGM は Validate メソッドを呼び出します。RGM は、作成または更新が行われる前に、Validate メソッドを呼び出します。任意のノード上でメソッドから失敗の終了コードが戻ると、作成または更新は取り消されます。

RGM が Validate メソッドを呼び出すのは、管理アクションがリソースまたはグループのプロパティを変更したときだけです。RGM がプロパティを設定したときや、モニターがリソースプロパティ StatusStatus_msg を設定したときではありません。


注 –

PROBE メソッドがデータサービスを新しいノードにフェイルオーバーする場合、Monitor_check メソッドも明示的に Validate メソッドを呼び出します。


RGM は、他のメソッドに渡す追加の引数 (更新されるプロパティと値を含む) を指定して、Validate メソッドを呼び出します。xfnts_validate の開始時に実行される scds_initialize の呼び出しにより、RGM が xfnts_validate に渡したすべての引数が解析され、その情報が scds_handle パラメータに格納されます。この情報は、xfnts_validate が呼び出すサブルーチンによって使用されます。

xfnts_validate メソッドは svc_validate を呼び出して、次のことを検証します。

次に示すように、svc_validate は戻る前に、割り当てられているすべてのリソースを解放します。


例 8–24

finished:
   scds_free_net_list(snrlp);
   scds_free_port_list(portlist);

   return (rc); /* 検証結果を戻す。*/


注 –

xfnts_validate メソッドは終了する前に scds_close を呼び出して、scds_initialize が割り当てたリソースを再利用します。詳細については、scds_initialize の呼び出しscds_close(3HA) のマニュアルページを参照してください。


xfnts_update メソッド

プロパティが変更された場合、RGM は Update メソッドを呼び出して、そのことを動作中のリソースに通知します。xfnts データサービスにおいて変更可能なプロパティは、障害モニターに関連したものだけです。したがって、プロパティが更新されたとき、xfnts_update メソッドは scds_pmf_restart_fm を呼び出して、障害モニターを再起動します。


例 8–25

  /* 
   * 障害モニターがすでに動作していることを検査し、動作している場合、
   * 障害モニターを停止および再起動する。scds_pmf_restart_fm() への
   * 2 番目のパラメータは、再起動する必要がある障害モニターの
   * インスタンスを一意に識別する。
   */

   scds_syslog(LOG_INFO, "Restarting the fault monitor.");
   result = scds_pmf_restart_fm(scds_handle, 0);
   if (result != SCHA_ERR_NOERR) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to restart fault monitor.");
     /* scds_initialize が割り当てたすべてのメモリーを解放する。* 
      scds_close(&scds_handle);
      return (1);
   }

   scds_syslog(LOG_INFO,
   "Completed successfully.");


注 –

scds_pmf_restart_fm への 2 番目のパラメータは、複数のインスタンスが存在する場合に、再起動する障害モニターのインスタンスを一意に識別します。この例の場合、値 0 は障害モニターのインスタンスが 1 つしか存在しないことを示します。