この節では、Sun Cluster ソフトウェアのインストールの計画と準備のガイドラインについて説明します。Sun Cluster コンポーネントの詳細については、『Sun Cluster 3.1 の概念』を参照してください。
ソフトウェアのインストールを開始する前に、必要なライセンス証明書を用意しておきます。Sun Cluster ソフトウェアにはライセンス証明書は必要ありませんが、Sun Cluster ソフトウェアがインストールされる各ノードが、Sun Cluster ソフトウェア使用許諾契約書に準拠している必要があります。
ボリューム管理ソフトウェアやアプリケーションソフトウェアのライセンス必要条件については、該当する製品のインストールマニュアルを参照してください。
各ソフトウェア製品をインストールした後に、必要なパッチもインストールする必要があります。必須パッチの最新のリストについては、『Sun Cluster 3.1 ご使用にあたって』を参照するか、ご購入先にお問い合わせください。パッチを適用するうえでの一般的なガイドラインと手順については、『Sun Cluster 3.1 のシステム管理』の「Sun Cluster ソフトウェアとファームウェアのパッチ」を参照してください。
クラスタ構成によっては、Sun Cluster のさまざまなコンポーネントに多数の IP アドレスを設定する必要があります。クラスタ構成内の各ノードには、サブネットの同じセットのパブリックネットワーク接続が少なくとも 1 つ必要です。
次の表に、IP アドレスの割り当てが必要なコンポーネントの一覧を示します。使用する任意のネームサービスにこれらの IP アドレスを追加してください。また、Solaris ソフトウェアをインストールした後で、各クラスタノード のローカルの /etc/inet/hosts ファイルにもこれらの IP アドレスを追加します。
表 1–3 IP アドレスを使用する Sun Cluster コンポーネント
構成要素 |
必要な IP アドレス |
---|---|
サブネットあたり 1 つ |
|
アダプタあたり 2 つ (プライマリ IP アドレスに 1 つと、テスト IP アドレスに 1 つ) |
|
クラスタノード |
ノードおよびサブネットごとに 1 つずつ |
(Sun Fire 15000) |
ドメインごとに 1 つ |
1 |
|
論理アドレス |
サブネットごとの論理ホストリソースあたり 1 つ |
すべてのクラスタノードへのコンソールアクセスが必要です。クラスタコントロールパネル (CCP) ソフトウェアを管理コンソールにインストールする場合、クラスタノードと通信するために使用されるコンソールアクセスデバイスのホスト名を提供する必要があります。管理コンソールとクラスタノードコンソール間の通信には、端末集配信装置 (コンセントレータ) を使用します。Sun Enterprise 10000 サーバーは、端末集配信装置の代わりにシステムサービスプロセッサ (SSP) を使用します。 Sun FireTM サーバーはシステムコントローラを使用します。 コンソールアクセスの詳細については、『Sun Cluster 3.1 の概念』を参照してください。
論理アドレスを使用する各データサービスリソースグループには、論理アドレスへのアクセス元となる各パブリックネットワークに指定されているホスト名を設定する必要があります。リソースグループ計画に関する情報については、『Sun Cluster 3.1 データサービスのインストールと構成』を参照し、ワークシートについては『Sun Cluster 3.1 ご使用にあたって』を参照してください。データサービスとリソースの詳細については、『Sun Cluster 3.1 の概念』を参照してください。
この節では、インストール中に構成する Sun Cluster コンポーネントのガイドラインについて説明します。
『Sun Cluster 3.1 ご使用にあたって』の「クラスタ名とノード名のワークシート」に次の計画情報を追加してください。
クラスタ名は、Sun Cluster のインストールの際に指定します。クラスタ名は、インストール環境全体で一意にする必要があります。
『Sun Cluster 3.1 ご使用にあたって』の「クラスタ名とノード名のワークシート」に次の計画情報を追加してください。その他のほとんどのワークシートに関する情報は、ノード名ごとにまとめられています。
ノード名とは、Solaris オペレーティング環境のインストール中にマシンに割り当てる名前のことです。Sun Cluster のインストール中に、クラスタとしてインストールするすべてのノード名を指定します。
『Sun Cluster 3.1 ご使用にあたって』の「クラスタ名とノード名のワークシート」に次の計画情報を追加してください。
Sun Cluster ソフトウェアは、ノード間の内部通信にプライベートネットワークを使用します。Sun Cluster では、プライベートネットワーク上のクラスタインターコネクトへの接続が少なくとも 2 つ必要です。クラスタの最初のノードに Sun Cluster ソフトウェアをインストールするときに、プライベートネットワークアドレスとネットマスクを指定します。デフォルトのプライベートネットワークアドレス (172.16.0.0) とネットマスク (255.255.0.0) をそのまま使用するように選択するか、デフォルトのネットワークアドレスがすでに使用中の場合は別のアドレスを入力できます。
ノードをクラスタメンバーとして正常にインストールした後で、プライベートネットワークアドレスとネットマスクを変更することはできません。
デフォルト以外のプライベートネットワークアドレスを指定する場合は、次の条件を満たす必要があります。
アドレスの最後の 2 つのオクテットにはゼロを使用します。
RFC 1597 のネットワークアドレス割り当てガイドラインに従います。
InterNIC に問い合わせて RFC のコピーを入手する方法については、『 Solaris のシステム管理 (第 3 巻)』(Solaris 8) の「TCP/IP ネットワークの計画」を参照するか、『 Solaris のシステム管理 (IP サービス)』(Solaris 9) の「TCP/IP ネットワークの計画 (手順)」を参照してください。
デフォルト以外のネットマスクを指定する場合は、以下の条件を満たす必要があります。
少なくとも、プライベートネットワークアドレスに指定したすべてのビットをマスクします。
“ホール” がないようにします。
『Sun Cluster 3.1 ご使用にあたって』の「クラスタ名とノード名のワークシート」に次の計画情報を追加してください。
プライベートホスト名とは、プライベートネットワークインタフェースを介したノード間の通信に使用される名前のことです。プライベートホスト名は、clusternodenodeid-priv という命名規則に従って、Sun Cluster のインストール中に自動的に作成されます (nodeid は内部ノード ID の数値)。このノード ID 番号は、Sun Cluster のインストール中に各ノードがクラスタメンバーとなる際に、自動的に各ノードに割り当てられます。インストール後に、scsetup(1M) ユーティリティーを使用してプライベートホスト名を変更できます。
『Sun Cluster 3.1 ご使用にあたって』の「クラスタインターコネクトのワークシート」に次の計画情報を追加してください。
クラスタインターコネクトは、クラスタノード間のプライベートネットワーク通信にハードウェアパスを提供します。各インターコネクトは、2 つのトランスポートアダプタの間、トランスポートアダプタとトランスポート接続点の間、または 2 つのトランスポート接続点の間を接続するケーブルで構成されます。Sun Cluster のインストール中に、2 つのクラスタインターコネクトに対して以下の構成情報を指定します。
トランスポートアダプタ – ネットワークインタフェースのポートなどのトランスポートアダプタ用に、トランスポートアダプタ名とトランスポートの種類を指定します。構成が 2 ノードクラスタの場合は、インターコネクトを直接接続 (アダプタからアダプタ) するか、トランスポート接続点を使用するかも指定します。2 ノードクラスタが直接接続されている場合でも、インターコネクトのトランスポート接続点を指定できます。トランスポート接続点を指定すると、その後クラスタに別のノードを追加しやすくなります。
トランスポート接続点 – ネットワークスイッチなどのトランスポート接続点を使用する場合は、各インターコネクトのトランスポート接続点名を指定します。デフォルト名の switchN (N は、インストール中に自動的に割り当てられた数)を使用するか、他の名前を作成します。
さらに、接続点のポート名を指定するか、デフォルト名をそのまま使用します。デフォルトのポート名は、ケーブルのアダプタ側が接続されているノードの内部ノード ID 番号と同じです。ただし、SCI などの特定の種類のアダプタではデフォルトのポート名は使用できません。
3 つ以上のノードを持つクラスタでは、必ずトランスポート接続点を使用してください。クラスタノード間の直接接続は、2 ノードクラスタの場合だけサポートされています。
インストール後に、scsetup(1M) ユーティリティーを使用して、追加のプライベートネットワーク接続を構成できます。
クラスタインターコネクトの詳細については、『Sun Cluster 3.1 の概念』を参照してください。
『Sun Cluster 3.1 ご使用にあたって』の「パブリックネットワークのワークシート」に次の計画情報を追加してください。
パブリックネットワークはクラスタの外部と通信します。パブリックネットワーク構成を計画する際は、次のことを考慮してください。
パブリックネットワークとプライベートネットワーク (クラスタインターコネクト) には、別のアダプタを使用する必要があります。
すべてのクラスタノードに接続されているパブリックネットワークが少なくとも 1 つ存在する必要があります。
パブリックネットワーク接続は、ハードウェア構成の許容範囲であればいくつでも追加できます。
イーサネットアダプタの local-mac-address? 変数は、デフォルト値で true である必要があります。Sun Cluster 3.1 ソフトウェアは、イーサネットアダプタの、local-mac-address? の値として false をサポートしません。この必要条件は、local-mac-address? の値として false を必要とした Sun Cluster 3.0 から変更されています。
パブリックネットワークアダプタのバックアップグループの計画のガイドラインについてはIP ネットワークマルチパスグループも参照してください。パブリックネットワークインタフェースの詳細については、『Sun Cluster 3.1 の概念』を参照してください。
『Sun Cluster 3.1 ご使用にあたって』の「ディスクデバイスグループ構成のワークシート」に次の計画情報を追加してください。
すべてのボリューム管理ソフトウェアディスクグループを Sun Cluster ディスクデバイスグループとして構成する必要があります。このように構成することで、主ノードに障害が発生した場合でも、2 つ目のノードで多重ホストディスクをホストできるようになります。ディスクデバイスグループを計画する際は、次の点を考慮してください。
フェイルオーバー – 多重ポートディスクと、適切に構成したボリューム管理ソフトウェアデバイスをフェイルオーバーデバイスとして構成できます。ボリューム管理ソフトウェアデバイスの適切な構成には、多重ポートディスクやエクスポートしたデバイスを複数のノードでホストできるように、ボリューム管理ソフトウェア自体を正しく設定する作業が含まれます。テープドライブ、CD-ROM、単一ポートのディスクは、フェイルオーバーデバイスとして構成できません。
ミラー化 – ディスクをミラー化して、ディスクの障害からデータを保護する必要があります。ミラー化の方法については、Solstice DiskSuite/Solaris Volume Manager ソフトウェアのインストールと構成またはVxVM ソフトウェアのインストールと構成、およびボリューム管理ソフトウェアのマニュアルを参照してください。
ディスクデバイスグループの詳細については、『Sun Cluster 3.1 の概念』を参照してください。
『Sun Cluster 3.1 ご使用にあたって』の「パブリックネットワークのワークシート」に次の計画情報を追加してください。
ネットワークアダプタフェイルオーバー (NAFO) グループに代わるインターネットプロトコル (IP) ネットワークマルチパスグループは、パブリックネットワークアダプタの監視とフェイルオーバーを提供し、 ネットワークアドレスリソースの基盤構造です。マルチパスグループが 2 つ以上のアダプタで構成されている場合に 1 つのアダプタで障害が発生すると、その障害のあるアダプタ上のすべてのアドレスがマルチパスグループ内の別のアダプタにフェイルオーバーされます。このようにして、マルチパスグループのアダプタは、マルチパスグループ内のアダプタが接続するサブネットへのパブリックネットワーク接続を維持します。
マルチパスグループを計画する際は、次の点を考慮してください。
各パブリックネットワークアダプタは、マルチパスグループに属している必要があります。
イーサネットアダプタの local-mac-address? 変数の値は、true である必要があります。これは、Sun Cluster 3.0 ソフトウェア要件からの変更です。
マルチパスグループアダプタごとに、テスト IP アドレスを構成する必要があります。
同一マルチパスグループ内のすべてのアダプタ用のテスト IP アドレスは、単一の IP サブネットに属する必要があります。
テスト IP アドレスは高可用性でないため、通常のアプリケーションが使用しないようにします。
マルチパスグループの名前には、必要条件または制限がありません。
IP ネットワークマルチパスの詳細については、『 IP ネットワークマルチパスの管理』の「ネットワークマルチパスの導入 」を参照するか、『Solaris のシステム管理 (IP サービス)』の「ネットワークマルチパスの管理 (手順)」を参照してください。
Sun Cluster 構成では、定足数 (quorum) デバイスを使用して、データとリソースの整合性を保持します。クラスタがノードとの接続を一時的に失っても、定足数デバイスによって、クラスタノードがクラスタに再結合しようとしたときの amnesia や split-brain といった問題を防止できます。定足数デバイスは、scsetup(1M) ユーティリティーを使用して割り当てることができます。
定足数デバイスを計画する際は、次の点を考慮してください。
最定数 – 2 ノードクラスタには、少なくとも 1 つの共有ディスクが定足数デバイスとして割り当てられている必要があります。その他のトポロジの場合は、定足数デバイスはオプションです。
奇数の規則 – 2 ノードクラスタまたは定足数デバイスに直接接続されているノードペアで複数の定足数デバイスが構成されている場合、定足数デバイスが完全に独立した障害パスを持つように、奇数個の定足数デバイスを構成します。
接続– 定足数デバイスが接続できるノードは 2 つまでです。
定足数デバイスの詳細については、『Sun Cluster 3.1 の概念』を参照してください。