Solaris ボリュームマネージャの管理

RAID-5 ボリュームの概要

RAID レベル 5 はストライプ方式に似ていますが、パリティーデータがすべてのコンポーネント (ディスクまたは論理ボリューム) に分散されている点が異なります。コンポーネントに障害が発生した場合には、障害が発生したコンポーネント上のデータを、他のコンポーネント上に分散されているデータとパリティー情報から再構築することができます。Solaris ボリュームマネージャでは、「RAID-5 ボリューム」は RAID レベル 5 をサポートするボリュームを意味します。

RAID-5 ボリュームでは、ボリューム内の 1 つのコンポーネントに相当する記憶容量を使用して、冗長情報 (パリティー) を格納します。このパリティー情報には、残りの RAID-5 ボリュームのコンポーネントに格納されているユーザーデータに関する情報が含まれます。つまり、3 つのコンポーネントがあれば、1 つのコンポーネントに相当する領域がパリティー情報に使用されます。同じように、5 つのコンポーネントがある場合にも、1 つのコンポーネントに相当する領域がパリティー情報に使用されます。パリティー情報は、ボリューム内のすべてのコンポーネントに分散されます。ミラーと同様に、RAID-5 ボリュームではデータの可用性が向上しますが、ハードウェアのコストは最小限に抑えることができます。書き込み性能に対する影響は中程度です。ただし、RAID-5 ボリュームを ルート (/)、 /usr、および swap ファイルシステム、あるいはその他のすでに存在するファイルシステムに対して使用することはできません。

Solaris ボリュームマネージャは、既存のコンポーネントが置き換えられると、RAID-5 ボリュームの再同期を自動的に実行します。また、Solaris ボリュームマネージャは、システム障害やパニックが発生した場合、リブート時に、RAID-5 ボリュームを再同期します。

例 — RAID-5 ボリューム

図 14–1 に、4 つのディスク (コンポーネント) からなる RAID-5 ボリュームを示します。

最初の 3 つのデータセグメントは、コンポーネント A (飛び越し値 1)、コンポーネント B (飛び越し値 2)、およびコンポーネント C (飛び越し値 3) に書き込まれます。次のデータセグメントは、パリティーセグメントに書き込まれます。このパリティーセグメントは、コンポーネント D (P 1–3) に書き込まれます。このセグメントは、最初の 3 つのデータセグメントの排他的論理和からなります。次の 3 つのデータセグメントは、コンポーネント A (飛び越し値 4)、コンポーネント B (飛び越し値 5)、およびコンポーネント D (飛び越し値 6) に書き込まれます。次に、別のパリティーセグメントが、コンポーネント C (P 4–6) に書き込まれます。

データセグメントとパリティーセグメントをこのように書き込むことによって、データとパリティーの両方が、RAID-5 ボリュームを構成するすべてのディスクに分散されます。各ドライブは個別に読み取ることができます。パリティー情報により、いずれか 1 つのディスクが故障しても、データの安全性が保証されます。この例のディスクがそれぞれ 2G バイトだとすると、RAID-5 ボリュームの総容量は 6G バイトになります。ディスク 1 つ分の領域がパリティー用に割り当てられます。

図 14–1 RAID-5 ボリュームの例

これは RAID-5 ボリュームの例です。複数のコンポーネントを使用して、データセグメントとともにパリティーセグメントを書き込みます。

例 — RAID-5 ボリュームの連結 (拡張)

次の図に、当初 4 つのディスク (コンポーネント) から構成されていた RAID-5 ボリュームの例を示します。5 つ目のディスクがボリュームに動的に連結され、RAID-5 ボリュームが拡張されています。

図 14–2 RAID-5 ボリュームの拡張例

追加のコンポーネントを RAID-5 ボリュームに連結することによって、冗長性のある大型のボリュームが提供されています。

パリティー領域は、RAID 5-ボリュームの作成時に割り当てられます。パリティーには 1 つのコンポーネントに相当する領域が割り当てられますが、実際のパリティーブロックは、入出力を分散するためにすべてのオリジナルコンポーネントに分散されます。追加のコンポーネントを RAID-5 ボリュームに連結した場合、追加領域はすべてデータ用になります。新しいパリティーブロックは割り当てられません。ただし、連結されたコンポーネントのデータはパリティー計算の対象になるため、データは単一のデバイス障害から保護されます。

連結した RAID-5 ボリュームは長期間の使用には適しません。連結した RAID-5 ボリュームを使用するのは、大型の RAID-5 ボリュームを再構成できるようになるまでの間です。その後、データを大型ボリュームにコピーします。


注 –

RAID-5 ボリュームに新しいコンポーネントを追加すると、Solaris ボリュームマネージャは、そのコンポーネントのすべてのデータブロックを「ゼロ」にします。この処理は、パリティー情報によって新しいデータを保護するために実行されます。つまり、データが新しい領域に書き込まれると、Solaris ボリュームマネージャはそのデータをパリティー計算の対象とします。