Solaris のシステム管理 (ネーミングとディレクトリサービス : DNS、NIS、LDAP 編)

1 台のクライアントに影響する NIS の問題

1 台か 2 台のクライアントだけで、NIS のバインドに関する問題を示す症状が発生している場合は、そのクライアントに問題があると考えられます。複数のクライアントが正しくバインドできない場合は、1 台以上の NIS サーバーに問題があると考えられます。「複数のクライアントに影響する NIS の問題」を参照してください。

ypbind がクライアントで実行されていない

1 台のクライアントに問題があっても、同じサブネット上のほかのクライアントは正常に機能しています。問題のあるクライアント上で、ls -l をたとえば /usr のような、多くのユーザーが所有するファイル (クライアント /etc/passwd ファイルにはないものも含む) を持つディレクトリで実行します。この結果の表示に、ローカルの /etc/passwd には、名前ではなく番号として入ってないファイルの所有者が含まれる場合には、NIS サービスがクライアントで機能していないことを示します。

通常これらの症状は、クライアント ypbind プロセスが実行されていないことを示します。NIS クライアントサービスが実行されているかを確認してください。


client# svcs network/nis/client
STATE          STIME    FMRI
disabled       Sep_01   svc:/network/nis/client:default

クライアントが無効である場合、スーパーユーザーとしてログインするか、同等の役割になり、NIS クライアントサービスを開始します。


client# svcadm enable network/nis/client

ドメイン名が指定されていないか間違っている

あるクライアントに問題があり、ほかのクライアントは正常に機能していますが、ypbind は問題のあるクライアント上で実行されています。クライアントのドメインの設定が間違っている可能性があります。

クライアント上で domainname コマンドを実行して、どのドメイン名が設定されているのかを調べます。


client7# domainname neverland.com

NIS のマスターサーバー上の /var/yp 内の実際のドメイン名と、出力を比較します。実際の NIS ドメインは、/var/yp ディレクトリ内のサブディレクトリとして表示されます。


Client7# ls /var/yp...
-rwxr-xr-x 1 root Makefile
drwxr-xr-x 2 root binding
drwx------ 2 root doc.com ...

マシン上での domainname の実行によって得たドメイン名が、/var/yp 内のディレクトリとして示されたサーバードメイン名と同じではない場合には、マシンの /etc/defaultdomain ファイルで指定されたドメイン名が間違っています。スーパーユーザーとしてログインするか、同等の役割になり、マシンの /etc/defaultdomain ファイルでクライアントのドメイン名を修正します。これによって、マシンを起動するたびに、ドメイン名が正しいかどうかが確認されます。ここでマシンをリブートします。


注 –

ドメイン名では大文字と小文字を区別します。


クライアントがサーバーにバインドされない

ドメイン名が正しく設定されていて ypbind が実行中でもコマンドがまだハングする場合には、ypwhich コマンドを実行してクライアントがサーバーにバインドされていることを確認してください。ypbind を起動したばかりのときは、ypwhich を数回実行します。通常、1 回目ではドメインがバインドされていないことが通知され、2 回目は成功します。

サーバーが使用できない

ドメイン名が正しく設定されていて ypbind が実行中のときに、クライアントがサーバーと通信できないというメッセージを受け取った場合には、いくつかの問題が考えられます。

ypwhich の表示に一貫性がない

ypwhich を同じクライアントで数回使うと、NIS サーバーが変わるので結果の表示も変わります。これは正常な状態です。NIS クライアントから NIS サーバーへのバインドは、ネットワークや NIS サーバーを使用中の場合は時間の経過に伴って変化します。ネットワークは、すべてのクライアントが受け入れ可能な応答時間を NIS サーバーから得られる点で安定した状態になります。クライアントのマシンが NIS サービスを得ている限りは、サービスの供給元は問題にはなりません。たとえば、NIS サーバーマシンがそれ自体の NIS サービスを、ネットワーク上の別の NIS サーバーから受けることもあります。

サーバーのバインドが不可能な場合

ローカルなサーバーのバインドが不可能な場合には ypset コマンドを使用すると、別のネットワークまたはサブネットの別のサーバーが使用可能な場合には、そのサーバーへのバインドが一時的に可能になります。ただし、-ypset オプションを使用するためには、ypbind-ypset または -ypsetme オプションのどちらかを指定して、実行する必要があります。詳細は、ypbind(1M) のマニュアルページを参照してください。


# /usr/lib/netsvc/yp/ypbind -ypset

別の方法については、「特定の NIS サーバーへのバインド」を参照してください。


注 –

セキュリティーの目的のために、-ypset-ypsetme のオプションの使用は、制御された状態でのデバッグだけに限定してください。-ypset-ypsetme のオプションを使用すると、セキュリティーが侵害される恐れがあります。これらのデーモンの実行中はサーバーのバインドをだれでも変更できるため、ほかのユーザーの作業に問題が生じたり重要なデータへの未承認のアクセスが認められたりするためです。これらのオプションで ypbind を起動する場合には、いったん問題を修正したら ypbind を終了して、これらのオプションを指定しないで再起動してください。

ypbind を再起動するには、サービス管理機能 (SMF) を使用します。


# svcadm enable -r svc:/network/nis/client:default

ypbind のクラッシュ

ypbind が、起動するたびにすぐにクラッシュする場合には、システムのほかの部分で問題を調べます。次のように入力して、rpcbind デーモンが存在するかどうか確認します。


% ps -e | grep rpcbind

rpcbind が存在しない、安定しない、あるいは動作に異常がある場合には、RPC のマニュアルを参照してください。

正常に機能しているマシンから、問題のあるクライアント上の rpcbind と通信ができる場合があります。正常に機能しているマシンから、次のように入力してください。


% rpcinfo client

問題のあるクライアント上の rpcbind に問題がない場合には、rpcinfo によって次のように出力されます。


program	version	netid	address	service	owner
...
100007	2	udp	0.0.0.0.2.219	ypbind	superuser
100007	1	udp	0.0.0.0.2.219	ypbind	superuser
100007	1	tcp	0.0.0.0.2.220	ypbind	superuser
100007	2	tcp	0.0.0.0.128.4	ypbind	superuser
100007	2	ticotsord	\000\000\020H	ypbind	superuser
100007	2	ticots	\000\000\020K	ypbind	superuser
...

使用中のマシンには異なる複数のアドレスがあります。それらのアドレスが表示されない場合は、ypbind によってそのサービスが登録できていません。マシンをリブートして再度 rpcinfo を実行します。ypbind プロセスがあり、NIS サービスを再起動するたびに変更される場合は、rpcbind デーモンが実行中であってもシステムをリブートしてください。