Solaris のシステム管理 (第 2 巻)

プリンタの定義の設定

ネットワーク上でのプリンタの定義は、より効率的な印刷環境をユーザーに提供するための継続的な作業です。この作業によって、たとえばユーザーがプリンタの位置を見つけやすいようにすべてのプリンタのパラメタを設定したり、プリンタのクラスを定義して印刷要求への応答時間を短縮したりできます。

lpadmin コマンドを使用すると、すべての印刷定義を設定できます。一方、Solaris プリンタマネージャを使用すると、プリンタのインストールまたは変更時に印刷定義の一部だけを設定できます。表 3-1 は、印刷定義と、その定義を Solaris プリンタマネージャで割り当てることができるかどうかを示しています。

表 3-1 Solaris プリンタマネージャで設定される印刷定義

印刷定義 

Solaris プリンタマネージャで設定できるか 

プリンタ名

設定できる 

プリンタの説明

設定できる 

プリンタポート

設定できる 

プリンタタイプ

設定できる 

ファイル内容形式

設定できる。ただし lpadmin コマンドより機能は少ない

障害通知

設定できる。ただし lpadmin コマンドより機能は少ない

デフォルトプリンタ

設定できる 

バナーページの印刷

設定できる。ただし lpadmin コマンドより機能は少ない

プリンタへのユーザーアクセスの制限

設定できる。ただし lpadmin コマンドより機能は少ない

プリンタクラス

設定できない 

障害回復

設定できない 

プリンタ名

システムにプリンタを追加するときは、その「プリンタ名」を指定します。プリンタ名は、次の規則に従ってください。

サイトに合った命名規則を設定してください。たとえば、ネットワーク上で異なるタイプのプリンタを使用する場合は、プリンタ名の一部にプリンタタイプを含めると、ユーザーは適切なプリンタを選択しやすくなります。たとえば、PostScript プリンタは文字 PS で識別できます。ただし、サイトのプリンタがすべて PostScript プリンタである場合は、PS というイニシャルをプリンタ名の一部として含める必要はありません。

プリンタの説明

lpadmin -D コマンドまたは Solaris プリンタマネージャを使用すると、プリンタに説明を割り当てることができます。プリンタに割り当てる説明には、ユーザーがプリンタを識別できるような情報を含める必要があります。プリンタが設置されている部屋番号、プリンタのタイプやメーカー、印刷に問題がある場合に連絡する担当者名などを含めることができます。

次のコマンドでプリンタの説明を調べることができます。

$ lpstat -D -p printer-name

プリンタポート

プリンタのインストール時、またはその設定を後から変更するときに、lpadmin -p printer-name -v device-name コマンドまたは Admintool を使用して、プリンタの接続先となるデバイス、つまり「プリンタポート」を指定できます。

ほとんどのシステムが、2 つのシリアルポートと 1 つのパラレルポートを持っています。システムにポートを追加しないかぎり、3 台以上のシリアルプリンタおよび 2 台以上のパラレルプリンタを直接接続することはできません。

Solaris プリンタマネージャを使用すると、/dev/term/a または /dev/term/b を選択するか、「その他 (Other)」を選択してプリンタサーバーで認識されるポート名を指定できます。これらのオプションには、lpadmin コマンドと同じ柔軟性があります。

LP 印刷サービスは、標準プリンタインタフェースプログラムからの設定を使用してプリンタポートを初期設定します。プリンタインタフェースプログラムの詳細は、「印刷フィルタの管理」を参照してください。デフォルト設定で機能しないパラレルプリンタやシリアルプリンタがある場合は、「プリンタポート特性の調整」のポート設定をカスタマイズする方法を参照してください。


注 -

IA 搭載システムで複数のポートを使用している場合、デフォルトでは最初のポートだけが有効です。2 番目以降のポートはデフォルトでは無効です。複数のポートを使用するためには、追加の asy (シリアル) ポートや lp (パラレル) ポートごとに、デバイスドライバのポート構成ファイルを手作業で編集しなければなりません。IA ポート構成ファイルのパスは、次のとおりです。

/platform/i86pc/kernel/drv/asy.conf

/platform/i86pc/kernel/drv/lp.conf

IA 搭載システム上のシリアルポートとパラレルポートを構成する方法については、『Solaris 8 デバイスの構成 (Intel 版)』を参照してください。


プリンタタイプ

プリンタタイプとは、プリンタの種類を表す一般名です。プリンタタイプは、プリンタの様々な制御シーケンスが入っている terminfo データベースエントリを識別します。通常、プリンタタイプはメーカーのモデル名からとります。たとえば、DECwriter のプリンタタイプ名は decwriter です。ただし、共通プリンタタイプ PS はこの規則に従いません。PS は Apple LaserWriter I や Apple LaserWriterII プリンタなど、多くの PostScriptTM プリンタモデルのプリンタタイプとして使用されます。

lpadmin -T コマンドまたは Solaris プリンタマネージャを使用すると、プリンタタイプを指定できます。

Solaris プリンタマネージャを使用すると、メニューからプリンタタイプを選択するか、「その他 (Other)」を選択して terminfo データベース内でプリンタタイプを指定できます。この方法には、lpadmin コマンドと同じ機能があります。

terminfo データベース内のプリンタ名

各プリンタタイプに関する情報は、terminfo データベース (/usr/share/lib/terminfo) に格納されています。この情報には、プリンタの機能と初期設定制御データが含まれます。インストールするプリンタは、terminfo データベース内のエントリに対応していなければなりません。


$ pwd
/usr/share/lib/terminfo
$ ls
1  3  5  7  9  B  H  P  a  c  e  g  i  k  m  o  q  s  u  w  y
2  4  6  8  A  G  M  S  b  d  f  h  j  l  n  p  r  t  v  x  z
$ 

各サブディレクトリには、端末またはプリンタに関してコンパイル済みのデータベースエントリが入っています。各エントリは、プリンタまたは端末のタイプの頭文字別に編成されています。たとえば、Epson プリンタがある場合は、/usr/share/lib/terminfo/e 内を探すと、Epson プリンタの特定のモデルが見つかります。


$ cd /usr/share/lib/terminfo/e
$ ls
emots           ep2500+high   ep48            ergo4000      exidy2500
env230          ep2500+low    epson2500       esprit
envision230     ep40          epson2500-80    ethernet
ep2500+basic    ep4000        epson2500-hi    ex3000
ep2500+color    ep4080        epson2500-hi80  exidy
$ 

上記のように、Epson プリンタのエントリがあります。

NEC プリンタがある場合は、/usr/share/lib/terminfo/n ディレクトリ内を探すと、使用中の NEC プリンタモデルが見つかります。


$ cd /usr/share/lib/terminfo/n
$ ls
ncr7900        ncr7900iv      netronics      network        nuc
ncr7900-na     ncr7901        netty          netx           nucterm
ncr7900i       nec            netty-Tabs     newhp
ncr7900i-na    net            netty-vi       newhpkeyboard
$ 

上記のように、このディレクトリには、NEC のエントリが含まれています。