Solaris のシステム管理 (第 3 巻)

IP アドレス指定スキーマの設定

サポートを予定しているマシンの数によって、このサイトでのネットワーク設定について、現段階で行ういくつかの決定事項が影響を受けます。組織によっては、1 つの階または 1 つのビルの中にある数十台のスタンドアロンマシンから成る小さいネットワークが必要な場合もあります。また、複数のビルに散在する 1000 以上のホストを持つネットワークの設定が必要な場合もあります。このような大きい配置の場合は、ネットワークをサブネットと呼ばれる小区分に分割することが必要になる場合もあります。予定されているネットワークのサイズは、次の事項に影響を与えます。

ネットワーク番号を入手し、IP アドレス指定スキーマを確立することは、ネットワーク管理の計画段階において、最も重要な作業の 1 つです。

ネットワーク番号の管理

所属している組織に複数のネットワーク番号が割り当てられているか、またはサブネットを使用している場合は、組織内でネットワーク番号を割り当てる総括責任者 (人または部門) を指名してください。この責任者が、割り当てられたネットワーク番号のプールを管理する権限を保持し、ネットワーク、サブネット、ホスト番号を必要に応じて割り当てます。問題の発生を避けるために、組織内に重複したネットワーク番号や無秩序なネットワーク番号が生じることのないように注意してください。IPv6 への移行を計画している場合は、第 15 章「IPv4 から IPv6 への移行」を参照してください。

IPv4 アドレス指定スキーマの設計

ネットワーク番号を受け取ったら、IPv4 アドレスのホスト部をどのように割り当てるかについて、計画を立てることができます。

表 5-1 は、IPv4 アドレス空間がどのようにネットワークアドレス空間とホストアドレス空間に分かれるかを示しています。どのクラスについても、「範囲」の欄は、ネットワーク番号の最初のバイトの 10 進数値の範囲を示しています。「ネットワークアドレス」は、IPv4 アドレスの中でネットワーク部の働きをするバイト数を示し、xxx が 1 バイトを表しています。「ホストアドレス」は、アドレスのホスト部を表すバイト数を示します。たとえばクラス A ネットワークアドレスの場合は、最初の 1 バイトがネットワーク番号で、残りの 3 バイトがホスト番号です。クラス C ネットワークの場合は、この関係が逆になります。

表 5-1 IPv4 アドレス空間の区分

クラス 

範囲 

ネットワークアドレス  

ホストアドレス 

A

1 〜 127  

xxx

xxx.xxx.xxx

B

128 〜 191  

xxx.xxx

xxx.xxx

C

192 〜 223  

xxx.xxx.xxx

xxx

IPv4 アドレスの最初のバイトの数値は、ネットワークがクラス A、B、C のどれであるかを示す値で、常に InterNIC が割り当てます。残りの 3 つのバイトの値の範囲は、どれも 0〜255 です。番号 0 と 255 は予約されています。ネットワーク管理者は、割り当てられているネットワーク番号に応じて、各バイトに 1〜254 の範囲内の番号を指定することができます。

表 5-2 は、IPv4 アドレスのどのバイトがインターネットから割り当てられ、ホストへの割り当てが可能な各バイトにどの範囲の値を指定できるかを示しています。

表 5-2 使用できる番号の範囲

ネットワーククラス 

バイト 1 の範囲 

バイト 2 の範囲 

バイト 3 の範囲  

バイト 4 の範囲 

A

0 〜 127 

1 〜 254 

1 〜 254  

1 〜 254 

B

128 〜 191 

インターネットにより事前割り当て 

1 〜 254 

1 〜 254 

C

192 〜 223 

インターネットにより事前割り当て 

インターネットにより事前割り当て 

1 〜 254 

ネットワークインタフェースへの IP アドレスの適用法

「ネットワークインタフェース」 で説明しているように、ネットワークに接続するには、コンピュータは少なくとも 1 つはネットワークインタフェースを持っている必要があります。各ネットワークインタフェースは、それぞれ一意な IP アドレスを持っていなければなりません。管理者がホストに与えた IP アドレスはそのホストのネットワークインタフェースに割り当てられます。このインタフェースは、一次ネットワークインタフェースと呼ばれることがあります。あるマシンに第 2 のネットワークインタフェースを追加した場合は、それにも一意な IP アドレスが必要です。「ルーターの構成」で説明したように、第 2 のネットワークインタフェースを追加すると、マシンの機能がホストからルーターに変わります。ホストに第 2 のネットワークインタフェースを追加し、しかもルーティング機能を無効にした場合は、そのホストはマルチホームホストとみなされます。

/devices ディレクトリには、各ネットワークインタフェースのデバイス名、デバイスドライバ、関連のデバイスファイルが入っています。ネットワークインタフェースのデバイス名には、たとえば le0 または smc0 などがあります。これらは、よく使用される 2 つの Ethernet インタフェースのデバイス名です。


注 -

本書では、Ethernet ネットワークインタフェースを持つマシンを想定して説明を進めます。別のネットワークメディアを使用する予定の場合は、そのネットワークインタフェースのマニュアルの中の構成に関する情報を参照してください。