Solaris のシステム管理 (第 3 巻)

Solaris PPP がサポートするポイントツーポイント構成

Solaris PPP は、次の 4 つの種類のポイントツーポイント構成をサポートしています。

PPP リンクは、実質的にはローカルエリアネットワークと同じ種類の接続を提供しますが、ブロードキャスト機能だけはありません。次の各節では、上記の構成についてそれぞれ簡単に説明します。各構成の設定方法については、第 22 章「PPP 構成の計画」で説明します。

2 つの単独ホストをポイントツーポイントリンクで接続

PPP を使用すると、異なる場所にある 2 つのスタンドアロンマシンを接続するポイントツーポイントリンクを設定できます。これにより、事実上、この 2 つのマシンだけからなるネットワークが作成されることになります。これはエンドポイントが 2 つしかなく、したがって最も単純なポイントツーポイント構成と言えます。図 21-1 に示した一般的な構成でも、このホストツーホスト構成が使用されています。

可搬マシンをダイヤルインサーバーに接続

従来は、標準的なダイヤル呼び出し接続または一時接続の場合、ネットワークに接続できるのは ASCII 端末だけでした。Solaris PPP を用いれば、個々のマシンを PPP リンクの 1 つのエンドポイントとして構成することによって、それらのマシンを物理的に離れた場所にあるネットワークの一部とすることができます。この可搬接続は、頻繁に旅行するユーザーや在宅勤務のユーザーを含むネットワークの場合に、特に便利です。

図 21-2 に示す可搬コンピュータは、それぞれネットワーク上のエンドポイントシステムへのポイントツーポイントリンクを持っています。ネットワーク上のエンドポイントシステムを、ダイヤルインサーバーと言います。

図 21-2 可搬コンピュータと動的リンクを持つダイヤルインサーバー

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動的ポイントツーポイントリンクを持つダイヤルインサーバー

図 21-2 に示したネットワークのエンドポイントマシンは、動的ポイントツーポイントリンクを持つダイヤルインサーバーとして働きます。これをダイヤルインサーバーと呼ぶのは、リモートマシンがこのマシンにダイヤルインすることによってネットワークに入ることができるからです。サーバーは、あるマシンからダイヤルインの要求を受け取ると、必要時に提供するという方式でそのマシンに PPP リンクを割り当てます。

ダイヤルインサーバーは、動的ポイントツーポイントリンクまたはマルチポイントリンクを介してリモートホストと通信します。マルチポイントリンクについては、「マルチポイント通信リンク」で説明します。動的ポイントツーポイントには、ポイントツーポイント通信と同じ利点があります。つまり、リンク上で RIP を実行でき、ブロードキャストが使用可能になります。最も重要なのは、物理ネットワーク上の複数のマシンが、ダイヤルインサーバーとして機能することができるという点です。これはバックアップサーバーを構成できることを意味し、したがってサーバーの重複が可能となり、管理が容易になります。図 21-2 の各マシンはネットワークエンドポイントとは直接通信できますが、互いに直接通信することはできません。ダイヤルインサーバーエンドポイントを仲介として、相互に情報を受け渡しする必要があります。

2 つのネットワークをポイントツーポイントリンクで接続

PPP を使用すると、2 つのネットワークをポイントツーポイントリンクで接続し、各ネットワーク上の 1 つのシステムをエンドポイントとして機能させることができます。これらのエンドポイントは、図 21-1 に示したのと実質的に同じ方法で、モデムと電話回線を使用して互いに通信します。ただし、この設定では、エンドポイント、モデム、PPP ソフトウェアは、各物理ネットワークのルーターとして働きます。この種類の構成方式を使用して、地理的に広い範囲にわたるインターネットワークを構築できます。

図 21-3 は、異なる場所にある 2 つのネットワークをポイントツーポイントリンクで接続した構成を示しています。

図 21-3 PPP リンクで接続された 2 つのネットワーク

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この例では、エンドポイント A と B、それぞれのモデム、公衆電話回線、PPP ソフトウェアが、ネットワーク間のルーターとして働きます。これらのネットワークには、物理ネットワーク間のルーターとして機能する別のホストが存在することもあります。また、PPP ルーターとして機能するホストが追加のネットワークインタフェースボードを備えていて、同時に物理ネットワークのルーターとして機能する場合もあります。