Solaris のシステム管理 (第 3 巻)

WebNFS サービスの動作方法

WebNFS サービスとは、あるディレクトリに置かれたファイルを、公開ファイルハンドルを使用してクライアントからアクセスできるようにするものです。ファイルハンドルは、NFS クライアントがファイルを識別できるようにカーネルが生成するアドレスです。公開ファイルハンドルの値はあらかじめ決まっているため、サーバーがクライアントに対してファイルハンドルを生成する必要はありません。定義済みのファイルハンドルを使用するというこの機能によって、MOUNT プロトコルが不要になってネットワークトラフィックが減り、クライアントにとっては性能が向上します。

デフォルトでは、NFS サーバーの公開ファイルハンドルはルートファイルシステムに対して設定されます。このデフォルトのため、サーバーに対してマウント権限を持っているすべてのクライアントに対して WebNFS アクセス権が与えられます。公開ファイルハンドルは、share コマンドによって任意のファイルシステムに切り替えることができます。

あるファイルシステムに対するファイルハンドルをクライアントが持っているとき、アクセスするファイルに対応するファイルハンドルを知るには LOOKUP を実行します。 NFS プロトコルでは、パス名の構成要素を 1 度に 1 つしか評価できません。したがって、ディレクトリ階層のレベルが 1 つ増えるたびに 1 回ずつ LOOKUP を実行します。公開ファイルハンドルからの相対パスに対して LOOKUP を実行する場合には、WebNFS サーバーは複数構成要素参照という方法によって 1 度にパス名全体を評価できます。複数構成要素参照を使用することにより、WebNFS サーバーはパス名の中のディレクトリレベルを 1 つずつファイルハンドルに変換しなくても目的のファイルに対するファイルハンドルを取得できます。

また、NFS クライアントは単一の TCP 接続上で同時に複数のダウンロードを行うこともできます。これにより、複数の接続を設定することによる余分な負荷をサーバーにかけずに、高速なアクセスが実現できます。Web ブラウザアプリケーションも複数ファイルを同時にダウンロードできますが、それぞれのファイルに独自の接続が確立されます。WebNFS ソフトウェアは接続を 1 つしか使用しないため、サーバーに対するオーバーヘッドを軽減できます。

パス名の中の最後の構成要素が他のファイルシステムに対するシンボリックリンクである場合、通常の NFS アクティビティによってあらかじめそのファイルへのアクセス権を持っていれば、クライアントはそのファイルにアクセスできます。

通常、NFS URL は公開ファイルハンドルからの相対位置として評価されます。パスの先頭にスラッシュを 1 つ追加すると、サーバーのルートファイルシステムからの相対位置に変更できます。次の例では、公開ファイルハンドルが /export/ftp ファイルシステムに設定されていればこの 2 つの NFS URL は同等です。


nfs://server/junk
nfs://server//export/ftp/junk

WebNFS セキュリティネゴシエーション機能の働き方

Solaris 8 リリースには、WebNFS クライアントが WebNFS サーバーと、選択されたセキュリティメカニズムについてネゴシエーションできるようにする新しいプロトコルがあります。この新しいプロトコルは、セキュリティネゴシエーションマルチコンポーネントルックアップを使用しています。これは、WebNFS プロトコルの以前のバージョンで使用されていたマルチコンポーネントルックアップの拡張版です。

WebNFS クライアントは、公共ファイルハンドルを使用して通常のマルチコンポーネントルックアップ要求を行うことにより、このプロセスを開始します。このクライアントには、サーバーがどのようにしてこのパスを保護しているかについての知識がないため、デフォルトのセキュリティメカニズムが使用されます。デフォルトのセキュリティメカニズムでは不十分な場合は、サーバーは AUTH_TOOWEAK エラーを返します。このメッセージは、そのデフォルトメカニズムが有効ではなく、クライアントはより強力なメカニズムを使用する必要があることを意味しています。

クライアントは、AUTH_TOOWEAK エラーを受信すると、サーバーに対してどのセキュリティメカニズムが必要か決定するように要求します。この要求が成功すると、サーバーは、指定されたパスに必要なセキュリティメカニズムの配列を返します。このセキュリティメカニズムの配列のサイズによっては、クライアントは完全な配列を得るためにさらに要求を出さなければならない場合があります。サーバーが WebNFS セキュリティネゴシエーションをサポートしていない場合は、この要求は失敗します。

要求が正常に受け入れられたら、WebNFS クライアントは、配列からの 1 番目のセキュリティメカニズムを選択します。クライアントはこの配列をサポートしていて、ファイルハンドルを取得するために選択されたセキュリティメカニズムを使用して通常のマルチコンポーネントルックアップ要求を発行します。このあとに続くすべての NFS 要求は、選択されたセキュリティメカニズムとファイルハンドルを使用して出されます。