この章では Power ManagementTM の概要およびこのリリースの SolarisTM を使用する際にシステムに適用されるデフォルト機能について説明します。また、電源管理機能をカスタマイズする方法についても説明します。本書の後の章では、設定をカスタマイズする方法を詳細に説明します。
コンピュータの消費電力を削減することにより、電気料金だけでなくコンピュータ周辺の発熱を制御する労力も軽減できます。さらに、消費電力を削減することは、使用するハードウェアの寿命を延ばすことにもなります。
米国環境保護局 (EPA) によりコンピュータ製品の Energy Star® ガイドラインが制定されました。他の国でも同様の省電力ガイドラインが制定されています。これらのガイドラインに準拠するために、ハードウェア製品は電力を効率的に使用するように設計されています。
Solaris オペレーティング環境で提供される電源管理システムソフトウェアをハードウェアと組み合せて使用すると、全体的な消費電力を削減できます。ワークステーションによっては、ハードウェアに適用される Energy Star ガイドラインを満たすためにこのソフトウェアが必要な場合もあります。
Sun Microsystems 社は Energy Star のパートナーであり、梱包箱または製品自体に Energy Star のマークが付いている自社のハードウェア製品は、Energy Star の省電力ガイドラインに準拠しています。
電源管理ソフトウェアを使用すると、装置の電源管理および保存停止・復元再開の 2 つの方法で消費電力を削減できます。
装置の電源管理システムを使用すると、特定の機能を実行する際に必要とされない各装置が使用する電力量を自動的に削減できます。ディスクドライブ、モニター、アダプタだけでなく、CPU に対してもこの省電力機能が適用されます。コンピュータユーザーは、装置の電源管理機能の効果をすぐに実感できます。省電力機能が適用されてもシステム全体は動作しているため、装置からのサービス要求に応じることができます。これらの装置は、必要なときに数秒で元の状態に戻すことができます。
保存停止・復元再開機能は、作業時間を短縮するための機能で、現在の作業状態を失わずにシステムの電源切断、投入を行うことができます。この機能を使うと、システムの電源切断時にワークスペースやファイルが保存され、電源の再投入時に同じ状態が復元されます。たとえば、文書の編集中に作業を中断する際、保存停止機能を使用してシステムの電源を切断すると、作業状態が自動的に保存されます。その後、システムの電源を再投入すると、復元再開機能によって、元の作業状態が復元されます。電源管理システムソフトウェアによってシステムを自動的に停止するか、キーボードを使って手動で停止するかに関係なく、保存停止・復元再開機能により元の作業状態のチェックポイント情報が保存されます。
以下の方法で、システムの保存停止・復元再開機能を有効にできます。
Energy Star 2.0 対応のシステムでは、保存停止・復元再開機能が自動的に実行されます。
キーボードからの操作で、いつでも保存停止や復元再開を実行できます。具体的な手順は、第 4 章「保存停止・復元再開機能の使用」で説明します。
Dtpower ソフトウェアを使用すると、指定した時間に自動的に保存停止・復元再開機能を実行できます。
省電力機能による中断を許さない用途で使用されているシステムに対して、システムの電源管理を使用しないでください。保存停止・復元再開機能を使用するかどうかについては、第 4 章「保存停止・復元再開機能の使用」を参照してください。
すべてのSPARC ハードウェアで、電源管理システムソフトウェアの機能を使用できます。ただし、いくつかの機能は特定の種類のハードウェアでのみ有効です。電源状態のデフォルト設定のいくつかは、システムによって異なります。
ここでは、使用するハードウェアに対応した電源管理機能と、そのハードウェアで、このリリースの Solaris を最初に使用する際に適用されるデフォルト設定を調べる方法を説明します。
Solaris オペレーティング環境を実行する Intel ハードウェアは、電源管理機能に対応していません。
電源管理機能は、ハードウェアの省電力機能と Solaris オペレーティング環境で提供されるソフトウェアの両方を使って有効になります。システムの省電力モードの厳密な特性は、ハードウェア自体およびハードウェアの Energy Star への準拠に依存しています。システムが対応する Energy Star のバージョンを確認するには、prtconf -vp | grep energystar コマンドを使用します。
電源管理機能に対応したハードウェアでは、以下の機能を利用できます。
Energy Star 3.0 に対応した SPARCTM ハードウェアでは、低電力モードに移行することにより消費電力が削減されます。装置は低電力モードから自動的に元に復元再開されます。このハードウェアでは、モニター、フレームバッファー、およびディスクを停止することにより、アイドル状態の装置の消費電力を大幅に削減できます。その間もシステムは実行中ですぐに使用でき、ネットワークにも表示されます。cron プロセスまたはネットワークを介した外部からの要求によりシステムにタスクが発生すると、装置および他のハードウェアは数秒以内にフルパワーモードにスナップバックします。
バージョン 2.0 以前の Energy Star 2.0 に対応した SPARC ハードウェアには省電力モードに移行する機能が搭載されておらず、指定されたアイドル時間の後、システムは完全に停止します。ただし、モニターは例外で低電力モード機能により操作を続行することができます。システムを再起動する場合は、リブートに数分かかります。
Energy Star ガイドラインに準拠していないシステムでは、モニターの電源管理だけが実行されます。他のデバイスの電源管理は行われません。
ワークステーションで提供される電源管理機能は、SPARC アーキテクチャーによって異なります。表 1-1 に示すように電源管理機能のデフォルト動作は、システムによって異なります。
使用しているシステムアーキテクチャーを確認するには、uname -m コマンドを使用します。
使用しているサンのハードウェアが本書で説明されていない場合は、このリリースの Solaris の『Sun ハードウェアマニュアル』を参照してください。該当するハードウェアでの電源管理機能に関する追加情報が含まれている場合があります。
表 1-1 異なる SPARC アーキテクチャーにおける電源管理機能
電源管理機能 |
sun4m |
sun4u (Energy Star 2.0) |
sun4u (Energy Star 3.0) |
サーバー |
---|---|---|---|---|
ディスプレイの電源管理 |
可 |
可 |
可 |
可 |
ディスプレイの電源管理のデフォルト設定 |
有効 |
有効 |
有効 |
有効 |
装置の電源管理 |
不可 |
不可 |
可 |
不可 |
装置の電源管理のデフォルト設定 |
該当しない |
該当しない |
有効 |
該当しない |
保存停止・復元再開機能 |
可 |
可 |
可 |
不可 |
保存停止・復元再開のデフォルト設定 |
無効 |
有効 |
無効 |
該当しない |
自動停止機能 |
不可 |
可 |
可 |
不可 |
自動立ち上がり機能のデフォルト設定 |
該当しない |
有効 |
無効 |
該当しない |
通常、デフォルトの電源管理設定で十分ですが、変更する場合は Dtpower 電源管理ソフトウェアを使用します。
Dtpower のグラフィカルユーザーインタフェース (GUI) を使用すると、省電力スキーマを変更したり、装置 (モニターおよびディスクドライブを含む) およびシステムが省電力モードに移行するまでのアイドル時間を指定できます。
Dtpower GUI を使用すると、1 日の中で保存停止・復元再開機能 (Dtpower の自動停止を使って設定) を起動する時刻を設定することもできます。たとえば、通常の勤務時間後にだけ自動停止機能を起動することも可能です。sun4u アーキテクチャーのワークステーションでは、Dtpower ソフトウェアの自動立ち上がり機能を使用して、自動停止したシステムの電源を特定の時刻に投入することもできます。
システムの電源管理を行う最も簡単な方法は、Dtpower プログラムが提供する 3 種類の省電力スキーマのいずれかを選択することです。
標準 − 電源管理に対応した全装置の電源管理
最小 − モニターの電源管理のみ
電源管理なし − 電源を管理しない
これら 3 つのスキーマに加えて、電源管理スキーマをカスタマイズすることもできます。詳細は、第 3 章「電源スキーマのカスタマイズ」を参照してください。