Sun GlassFish Communications Server 2.0 管理ガイド

証明書および SSL の概要

この節では、次の項目について説明します。

デジタル証明書について

「デジタル証明書」(または単に証明書) とは、インターネット上の人物やリソースを一意に識別する電子ファイルです。さらに証明書は 2 つのエンティティー間の安全で機密保護された通信を可能にします。

個人により使用される個人証明書や SSL (Secure Sockets Layer) テクノロジでサーバーとクライアント間の安全なセッションを確立するために使用されるサーバー証明書など、さまざまな種類の証明書があります。SSL の詳細については、「SSL (Secure Sockets Layer) について」を参照してください。

証明書は「公開鍵暗号化」に基づき、意図した受信者だけが解読できるようデジタルの「鍵」 (非常に長い数値) のペアを使用して「暗号化」、または符号化します。そして受信者は、情報を「復号化」して解読します。

鍵のペアには公開鍵と非公開鍵が含まれます。所有者は公開鍵を配布して、だれでも利用できるようにします。しかし、所有者は非公開鍵を決して配布せず、常時秘密にしておきます。鍵は数学的に関連しているので、1 つの鍵で暗号化されたデータは、そのペアのもう 1 つの鍵でだけ復号化ができます。

証明書とはパスポートのようなものです。 所有者を識別し、その他の重要な情報を提供します。証明書は、「証明書発行局」(CA) と呼ばれる、信頼できるサードパーティーが発行します。CA はパスポートセンターに似ています。 CA は、証明書の所有者の身元を確認したあと、偽造や改ざんができないように証明書に署名します。いったん CA が証明書に署名すると、所有者は ID の証明としてこれを提出することで、暗号化され、機密保護された通信を確立できます。

もっとも重要な点は、証明書によって所有者の公開鍵が所有者の ID と結び付けられることです。パスポートが写真とその所有者についての個人情報を結び付けるように、証明書は公開鍵とその所有者についての情報を結び付けます。

公開鍵のほかに、通常、証明書には次のような情報が含まれています。

デジタル証明書は、X.509 形式の技術仕様で管理されます。certificate レルムのユーザー ID を検証するために、 certificate 認証サービスは X.509 証明書の共通名フィールドを主体名として使用して、X.509 証明書を検証します。

証明書チェーンについて

Web ブラウザは、ブラウザが自動的に信頼する一連の「ルート」CA 証明書で事前に設定されます。別の場所で発行されたすべての証明書は、有効性を検証するために「証明書チェーン」を備えている必要があります。証明書チェーンとは、最後が ルート CA 証明書で終わる、継続的な CA によって発行される一連の証明書です。

証明書が最初に生成される場合、それは「自己署名付き」証明書です。自己署名付き証明書とは、発行者 (署名者) が被認証者 (公開鍵が証明書で認証されているエンティティー) と同じものです。所有者は、証明書の署名要求 (CSR) を CA に送信するとき、その応答をインポートし、自己署名付き証明書が証明書のチェーンによって置き換えられます。チェーンの元の部分には、被認証者の公開鍵を認証する CA によって発行された証明書 (応答) があります。このチェーンの次の証明書は、CA の公開鍵を認証するものです。通常、これは自己署名付き証明書 (つまり、自らの公開鍵を認証する CA からの証明書) およびチェーンの最後の証明書です。

CA が証明書のチェーンに戻ることができる場合もあります。この場合、チェーンの元の証明書は同じ (キーエントリの公開鍵を認証する、CA によって署名された証明書) ですが、チェーン 2 番目の証明書が、CSR の送信先の CA の公開鍵を認証する、異なる CA によって署名された証明書です。そして、チェーンのその次の証明書は 2 番目の鍵を認証する証明書というように、自己署名付き「ルート」証明書に到達するまで続きます。こうして、チェーンの最初以降の各証明書は、チェーンの前にある証明書の署名者の公開鍵を認証します。

SSL (Secure Sockets Layer) について

「SSL」(Secure Sockets Layer) とは、インターネットの通信およびトランザクションのセキュリティー保護でもっとも普及している標準仕様です。Web アプリケーションは HTTPS (HTTP over SSL) を使用します。HTTPS は、サーバーとクライアント間のセキュアで機密保護された通信を確保するため、デジタル証明書を使用します。SSL 接続では、クライアントとサーバーの両方が送信前にデータを暗号化し、受信するとそれを復号化します。

クライアントの Web ブラウザがセキュアなサイトに接続する場合、次のように「SSL ハンドシェーク」が行われます

ハンドシェークの後、クライアントは Web サイトの ID を検証し、クライアントと Web サーバーだけがセッション鍵のコピーを持ちます。これ以降、クライアントとサーバーはセッション鍵を使用して互いにすべての通信を暗号化します。こうすると、通信は確実にセキュアになります。

SSL 標準の最新バージョンは TLS (Transport Layer Security) と呼ばれています。Communications Server は、SSL (Secure Sockets Layer) 3.0 および TLS (Transport Layer Security) 1.0 暗号化プロトコルをサポートしています。

SSL を使用するには、セキュアな接続を受け付ける各外部インタフェースまたは IP アドレスの証明書を、Communications Server が所持しておく必要があります。ほとんどの Web サーバーの HTTPS サービスは、デジタル証明書がインストールされるまで実行されません。keytool ユーティリティーを使って証明書を生成する」の手順に従って、Web サーバーが SSL 用に使用できるデジタル証明書を設定してください。

暗号化方式について

「暗号化方式」とは、暗号化と復号化に使用される暗号化アルゴリズムです。SSL および TLS プロトコルは、サーバーとクライアントでお互いを認証するために使用される多くの暗号化方式のサポート、証明書の送信、およびセッション鍵の確立を行います。

安全度は、暗号化方式によって異なります。クライアントとサーバーは異なる暗号化方式群をサポートできます。SSL および TLS プロトコルから暗号化方式を選択してください。クライアントとサーバーは安全な接続のために、双方で通信に使用可能であるもっとも強力な暗号化方式を使用します。そのため、通常は、すべての暗号化方式を有効にすれば十分です。

名前ベースの仮想ホストの使用

セキュアなアプリケーションに名前ベースの仮想ホストを使用すると、問題が発生する場合があります。これは、SSL プロトコル自体の設計上の制約です。クライアントブラウザがサーバーの証明書を受け付ける SSL ハンドシェークは、HTTP 要求がアクセスされる前に行われる必要があります。その結果、認証より前に仮想ホスト名を含む要求情報を特定できないので、複数の証明書を単一の IP アドレスに割り当てできません。

単一の IP すべての仮想ホストが同じ証明書に対して認証を必要とする場合、複数の仮想ホストを追加しても、サーバーの通常の SSL 動作を妨害する可能性はありません。ただし、証明書 (主に正式な CA の署名済みの証明書が該当) に表示されているドメイン名がある場合、ほとんどのブラウザがサーバーのドメイン名をこのドメイン名と比較することに注意してください。ドメイン名が一致しない場合、これらのブラウザは警告を表示します。一般的には、アドレスベースの仮想ホストだけが本稼働環境の SSL で広く使用されています。