Sun Java System Calendar Server 6 2004Q2 配備計画ガイド |
第 1 章
Calendar Server についてこの章では、Sun JavaTM System Calendar Server 6 2004Q2 の概要、Calendar Server の配備が役立つビジネス上の理由、および配備プロセスについて説明します。
この章で説明する内容は次のとおりです。
Calendar Server の概要Sun Java System Calendar Server 6 2004Q2 (旧称 SunTM ONE Calendar Server) は、高性能な、インターネット標準ベースのカレンダサーバーで、中規模および大規模な企業から、さらに非常に大規模なインターネット、遠隔通信、およびエンタープライズのサービスプロバイダまで、各ユーザーの必要に対応したスケーラビリティを考慮し設計されています。ネイティブな Web ブラウザインタフェースまたはコネクタを使用して、Microsoft Outlook などの他のカレンダクライアントに接続することで Calendar Server は、家庭または職場のコンシューマにグループスケジュール機能および個人用のカレンダ機能を提供すると同時に、インターネットを介して他のユーザーとのカレンダ情報の共有を可能にします。ユーザーインタフェース (UI) をカスタマイズして、電子商取引用の Web リンク、バナー広告、ロゴ、またはカレンダサーバーユーザーのブランドなどを含めることができます。
Calendar Server は、オープンで相互運用可能かつ高性能な、業界最高レベルの時間管理およびリソース管理ソリューションです。そのスケーラビリティ、パフォーマンス、信頼性によって、ほかのソリューションに比べて低い総所有コストで、必要な機能を得ることができます。iCalendar 標準のネイティブサポートによって、ユーザーは簡単にインターネットで共有できる形式で予定をスケジュールすることができます。Java System Calendar Server は次のような標準規格とプロトコルを採用しています。
Calendar Server のアーキテクチャは、垂直方向 (システムごとの CPU の数を増大させる) と水平方向 (ネットワークにサーバーを追加する) の両方向で、柔軟性に富み、拡張可能で、スケーラブルなものです。その結果、Calendar Server は、さまざまなニーズに対応した設定が可能なサーバーから構成されるシステムと見なすことができます。スタンドアロンのカレンダサーバーとして単独で使用することもでき、さまざまなサービスをサーバー間で重複または分割させる、多くのインスタンスで設定することもできます。
Calendar Server は、プラグインを利用して外部のサービスを取得します。さらに、LDAP ベースおよびアイデンティティベースの配備もサポートしており、Sun JavaTM System Identity Server (旧称 SunTM ONE Identity Server)、Sun JavaTM System Portal Server (旧称 SunTM ONE Portal Server)、および Sun JavaTM System Instant Messaging (旧称 SunTM ONE Instant Messaging) と統合して追加の機能を提供します。
Calendar Server は次の利点を提供します。
- Web ベースのグループスケジュール機能、空き時間 - 予定ありの検索、および企業のディレクトリの検索
- 会議室、プロジェクタ、および他のリソースの Web ベースのリソーススケジュール機能
- XML ベースのカスタマイズ機能 (配色、ログイン、ユーザーインタフェース、ロゴ、ブランド設定など)
- XML または iCalendar 形式で配信される標準ベースの予定およびカレンダデータフィードのサポート。これによって通信機能が強化され、商取引リンクやバナー広告から新しい収入の可能性が提供される
- 他のディレクトリサービス用の API を含む、ネイティブ LDAP のサポート
- Microsoft Outlook や Evolution を含む追加のカレンダクライアントへのコネクタ。これによって、クライアントは Calendar Server 上でスケジュール機能を実行することができる
- ホストしているドメインのサポート
- システム管理、オンラインのバックアップと復元、およびデータベース全体のバックアップと復元の簡略化
- 仕事、家族、友人などの複数のカレンダのサポート
- 公開および非公開のカレンダのサポートのほか、公開、非公開、および機密の個々の予定のサポート
- カレンダの階層化表示のサポート。これによってユーザーは 2 つ以上のカレンダを 1 つの表示に統合でき、コミュニケーションや生産性を向上することができる
- 選択した受信者にアポイント、招待、およびアラームの電子メール通知が自動的に送信され、Java System Instant Messaging との統合でポップアップアラームが自動的に提供される
- 各カレンダで複数の所有者がサポートされ、プロジェクトチームやコミュニティグループでコミュニケーションが簡単になり生産性が向上する
- 一次所有者の代わりに行使する他者にカレンダの所有権を委譲する機能
- 日ごと、週ごと、月ごと、年ごと、および比較の各ビュー
- スケーラブルで、ネットワーク化された、サーバー間、クライアントサーバーアーキテクチャによって、何十万ものユーザーをサポート
- Secure Sockets Layer (SSL) 暗号化、LDAP 認証、認証プラグイン、および Java System Identity Server でアイデンティティ対応のシングルサインオン (SSO) をサポート
Calendar Server の概念の詳細については、次の Web サイトから入手できる『Sun Java System Calendar Server 管理ガイド』を参照してください。
Calendar Server によるビジネスニーズへの対応Calendar Server は、オープンで相互運用可能かつ高性能な、業界最高レベルの時間管理およびリソース管理ソリューションです。Calendar Server によって、ほかのソリューションに比べて低い総所有コストで、必要な機能を得ることができます。Calendar Server のアーキテクチャは、柔軟で拡張可能なので、垂直方向 (システムごとの CPU の数を増大させる) と水平方向 (ネットワークにサーバーを追加する) の両方向で拡張性があります。
次の表では、企業が Calendar Server から得られる利点を要約しています。
Calendar Server 配備の可用性を高める方法
Calendar Server には、SunTM Cluster サービスをサポートする高可用性オプションがあります。このオプションを使うと、一次システムが保守のためにオフラインになったり、障害のために停止する場合、二次 Calendar Server ホストがユーザーに対してサービスを提供します。
さらに、冗長コンポーネントを使用して、Calendar Server を高可用性設定で配備できます。この種の配備により、サービスの稼働時間を高レベルにすることができます。このように可用性の高い配備を行うには、サービスアーキテクチャの各コンポーネントで冗長性が必要になります。このようなコンポーネントには、二重のデータストアサーバー、二重のネットワークインタフェースカード、および二重のシステム記憶装置が含まれます。
注
このマニュアルでは、Calendar Server 用の高可用性配備で Sun Cluster を使用するための詳細を説明していません。この点については、Sun Cluster および Calendar Server のマニュアルを参照してください。
Calendar Server とともに Portal Server を使用する方法
Calendar Server を Portal Server とともにインストールすると、ポータルページでカレンダポートレットにアクセスできます。このポートレットでは、カレンダスケジュールおよびアドレス帳情報が提供されます。Portal Server との統合によって Portal Server と Calendar Express Web クライアント間のシングルサインオン機能に加え、他の Messenger Express と Communications Express クライアント間のシングルサインオン機能も可能になります。
Portal Server の次の 2 つのコンポーネントによって、基本的な Calendar Server の配備に機能を追加することができます。
- Portal Server Desktop: Portal Server にインストールされた Calendar Server によって、ユーザーは Calendar Express を起動できます。
- Sun JavaTM System Portal Server 6、Secure Remote Access: これにより、リモートエンドユーザーは、インターネットを介して Secure Remote Access 組織のネットワークやそのサービスに安全に接続できます。エンドユーザーは、Secure Remote Access ゲートウェイを介して、Web ベースの Portal Server Desktop にログインすることで Secure Remote Access にアクセスします。Portal Server に設定された認証モジュールで、エンドユーザーが認証されます。エンドユーザーのセッションが Portal Server との間で確立されると、エンドユーザーの Portal Server Desktop へのアクセスが有効になります。
配備プロセスについてCalendar Server の配備プロセスは、通常、次のフェーズから構成されます。
配備フェーズは固定的なものではなく、配備プロセスは反復して行われます。ただし次の各節では、配備フェーズをそれぞれ個別に説明しています。
配備とアーキテクチャの設計
通常、配備設計フェーズでは、要件分析フェーズで指定された配備シナリオに基づいて配備アーキテクチャを構築します。その目的は、配備シナリオで指定されたシステム要件を満たすように、論理構築ブロック (論理アーキテクチャ) を物理環境 (物理トポロジ) に配置することです。
この設計の 1 つの側面は、物理環境の大きさを調整して、ロード、可用性、およびパフォーマンスの各要件を満たすようにすることです。配備アーキテクチャでは、システムサーバーやアプリケーションコンポーネントを環境内の処理ノードに割り当てる際の、異なる処理ノードの能力やネットワークの帯域幅などの物理トポロジの詳細を考慮に入れます。
配備の目的
配備計画を開始する前に、次のことを確認してください。
次のようにいくつかの理由が考えられます。
- コストの削減: ユーザーごとの総所有コストが市販されている他のカレンダ製品を使用するより低くなります。
- 生産性の向上: カレンダユーザーは、自分の予定や作業を管理できるほか、組織の他の職員との会議やアポイントの予定を設定することができます。また、ユーザーはカレンダグループと、会議室や機器などのリソースを管理できます。さらに、カレンダを PDA などのモバイルデバイスや Microsoft Outlook と同期させることもできます。
- スケーラビリティおよび可用性の向上: Calendar Server は垂直と水平の両方向で拡張性があります。組織が拡大すると、サーバーをアップグレードしたり、さらにサーバーを追加したりすることによって簡単に設定をアップグレードできます。
- セキュリティの向上: Solaris システムに Calendar Server を配備する場合、組織は、Windows 環境で広く見られる多くのウィルスや他のセキュリティ上の危険性を防止できます。
- 高可用性 (HA) 設定: Sun Cluster などのクラスタソフトウェアとの統合によって、Calendar Server で高可用性サービスが行えるように設定できます。ソフトウェアやハードウェアの障害が発生すると、Calendar Server は二次サーバーへフェイルオーバーします。
Calendar Server 配備チーム
通常、Calendar Server の配備には、それぞれが異なる役割と責任を受け持つ何人かの人員が必要です。小規模な組織では、1 人でいくつかの役割を兼任することがあります。考慮すべき役割の中には次のものがあります。
- プログラムマネージャは、Calendar Server 配備全体を監督し、その成功や失敗に責任を持ちます。
- Calendar Server 管理者は、Calendar Server を管理するための毎日の管理業務を行い、さらに Calendar Server のインストールやアップグレードの責任者となる場合もあります。
- パフォーマンスエンジニアは、試験的配備および本稼動における配備の Calendar Server のパフォーマンスをテストおよび監視し、配備条件を満たしているかを確認します。
- 開発エンジニアリングでは、Calendar Server のアプリケーションやプラグインを記述し、必要に応じて、Calendar Server のユーザーインタフェース (UI) をカスタマイズします。
- マニュアルスペシャリストは、管理者やエンドユーザー向けにカスタマイズされたあらゆるマニュアルを執筆します。
- 教育およびトレーニングでは、実務講習と教材を開発します。
サポートスペシャリストは、試験的配備および本稼動における配備の両方をサポートします。
Calendar Server のエンドユーザー
エンドユーザーは、Calendar Express Web クライアント、Communications Express Web クライアント、または Sun JavaTM System Connector for Microsoft Outlook を使用することによって Calendar Server に接続できます。
サイトのエンドユーザーについて、次のことを確認します。
- サイトには、全部で何人の Calendar Server のエンドユーザーがいるか
- エンドユーザーはどのように Calendar Server、Calendar Express、Microsoft Outlook、またはクライアントの組み合わせに接続しているか
- 地理的な場所はいくつ含まれているか。エンドユーザーはすべて同じタイムゾーンにいるかまたは異なるタイムゾーンにいるか
- エンドユーザーは、毎日、同じ時間に Calendar Server にログインするか
- 配備では、ピーク使用時のアクティブなエンドユーザーは何人いるか
- エンドユーザーベースはどのくらいの速さで拡張するか
- Calendar Server エンドユーザーに特有のパフォーマンス要件は何か
- シングルサインオン (SSO) 要件は何か
- ユーザーの中に、Netscape Calendar 4.x から移行しているユーザーがいるか
- エンドユーザーは SunTM ONE Synchronization の使用を計画しているか
- エンドユーザー向けに UI のカスタマイズを計画しているか
- サイトにプロキシサーバーの使用を計画しているか
- サイトにロードバランス機能の使用を計画しているか
必要なエンドユーザーのパフォーマンス
エンドユーザーに特有のパフォーマンス要件は何でしょうか。たとえば次のようなものがあります。
配備で使用することを計画しているのはどのような設定でしょうか。Calendar Server の設定シナリオには、次のものが含まれます。
複数のフロントエンドサーバーの設定を計画している場合、どのようにエンドユーザーの分散を計画するでしょうか。
複数のバックエンドデータベースサーバーの設定を計画している場合、どのようにデータベースの分散を計画するでしょうか。たとえば、地理的に分散させることができます。
どのような拡張計画があるでしょうか。フロントエンドとバックエンドの両方についてはどうでしょうか。
開発およびカスタマイズ
ライフサイクルの要件分析段階で指定された論理アーキテクチャによって、ソリューションの実装に必要な開発作業の範囲が決定します。
API を使用してサービスを拡張する際や、たとえば企業のブランド設定を導入してルックアンドフィールをカスタマイズする際には、追加の作業が必要なこともあります。
ソリューションによっては、配備やカスタマイズにかなりのコストがかかり、新しいビジネスおよびプレゼンテーションサービスの開発が必要になる場合もあります。他のソリューションの場合、Portal Server デスクトップなどの既存のグラフィカルユーザーインタフェースをカスタマイズすることによって必要な機能の実現が可能な場合もあります。
製品 API の使用や製品機能のカスタマイズについては、適切なコンポーネント製品のマニュアルを参照してください。これには、次のマニュアルが含まれます。
プロトタイプとテスト
プロトタイプフェーズでは、テスト環境で配備アーキテクチャを実装することによって配備設計の試作品を作成します。前述のように (「開発およびカスタマイズ」を参照) 開発結果の新しいアプリケーションロジックおよびサーバーのカスタマイズを使用して、概念実証開発テストを行います。このフェーズには、分散アプリケーションのインストール、設定、および起動のほか、テスト環境に必要なあらゆるインフラストラクチャサービスが含まれます。
プロトタイプテストによって配備アーキテクチャの欠点が明らかになった場合、アーキテクチャを修正し、再度試作品を作り、テストを再び行います。この反復プロセスの結果、本稼動環境で配備可能な配備アーキテクチャが完成するはずです。
試験的配備には、配備の失敗や深刻な問題に遭遇した場合の、ロールバック計画も含める必要があります。この計画の一部として次のことを考慮します。
本稼動システムのロールアウト
本稼動ロールアウトフェーズでは、配備アーキテクチャを本稼動環境で実装します。このフェーズには、分散アプリケーションのインストール、設定、および起動のほか、本稼動環境で必要なあらゆるインフラストラクチャサービスが含まれます。通常、一部の配備から開始し、組織全体への実装に移行します。このプロセスでは試験的実行を行い、ロードとストレスを増大させるテストをシステムに課します。
ロールアウトフェーズの一部として、ユーザーのプロビジョニング、シングルサインオンの実装、パフォーマンス目標を満たすためのシステム調整などの管理タスクを行うことが必要な場合もあります。配備の検証および容量計画の実行もこのフェーズの一部です。容量計画は、その中でもシステムの監視が重要な役割を果たしますが、システム拡張の長期的なニーズに対応するために必要なものです。