Java Enterprise System は、個別のソフトウェア製品やソフトウェアコンポーネントを単一のソフトウェアシステムとして統合化したものです。このシステムのコンポーネントに対するテストが実施されていて、各コンポーネント間の相互動作が保証されています。そうした統合は、次のようないくつかのシステムレベル機能によって実現されています。
これらの機能については、このマニュアルの後の章で説明します。ここでは、Java Enterprise System に統合されたさまざまなコンポーネントの説明に重点を置いています。これらの システムコンポーネントは、次の図に示すように、3 つの主要カテゴリに分類できます。
システムサービスコンポーネント: 分散型のエンタープライズアプリケーションをサポートする主な Java Enterprise System インフラストラクチャーサービスを提供します。
サービス品質コンポーネント: システムサービスコンポーネントおよび分散型アプリケーションコンポーネントの可用性、セキュリティー、スケーラビリティー、保守性、およびその他の要素を向上させます。
共有コンポーネント: 多くのシステムサービスコンポーネントおよびサービス品質コンポーネントを実行する環境を提供します。
いくつかの Java ES コンポーネントが分散型ソフトウェアソリューションをサポートする主なサービスを提供します。これらのシステムサービスには、ポータルサービス、通信サービスと共同作業サービス、アイデンティティーサービスとセキュリティーサービス、Web コンテナサービス、および J2EE アプリケーションサービスが含まれます。
これらの分散型サービスを提供するシステムサービスコンポーネントとそれらが提供するサービスを簡単に説明したのが、次の表です。各システムサービスコンポーネントはマルチスレッド対応のサーバープロセスであり、多数のクライアントをサポートします。コンポーネントの詳細については、「システムサービスコンポーネントの説明」を参照してください。
表 1–1 Java ES システムサービスコンポーネント
Java Enterprise System には、表 1–1 に示したシステムサービスコンポーネントのほかに、システムサービスコンポーネントが提供するサービスの品質を高めるためのコンポーネントがいくつか含まれています。また、サービス品質コンポーネントを使えば、カスタム開発されたアプリケーションサービスも改善できます。サービス品質コンポーネントは次のカテゴリに分類されます。
可用性コンポーネント
アクセスコンポーネント
管理コンポーネント
可用性コンポーネントは、システムサービスコンポーネントおよびカスタムアプリケーションサービスがほぼ連続的に稼動することを可能にします。Java Enterprise System に含まれる可用性コンポーネントおよびそれらのコンポーネントが提供するサービスを次の表に示します。コンポーネントの詳細については、「可用性コンポーネントの説明」を参照してください。
表 1–2 Java ES 可用性コンポーネント
コンポーネント |
提供される可用性サービス |
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Java Enterprise System の高可用性サービスとスケーラビリティーサービス、Java Enterprise System インフラストラクチャーの最上部で実行されるアプリケーション、およびサービスとアプリケーションの両方が配備されるハードウェア環境を提供します。 |
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障害発生時でも、アプリケーションのデータ、特にセッション状態データを利用可能にするデータストアを提供します。 |
アクセスコンポーネントは、システムサービスへのフロントエンドアクセスを可能にし、多くの場合、エンタープライズファイアウォールの外にあるインターネットからのセキュリティー保護されたアクセスを可能にします。そのようなアクセスを可能にすることに加えて、多くの場合、ルーティング機能も提供します。Java Enterprise System に含まれるアクセスコンポーネントおよびそれらのコンポーネントが提供するサービスを次の表に示します。コンポーネントの詳細については、「アクセスコンポーネントの説明」を参照してください。
表 1–3 Java ES アクセスコンポーネント
コンポーネント |
提供されるアクセスサービス |
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企業ファイアウォールの外からセキュリティーサービスを Directory Server に対して提供します。Directory Proxy Server は、ディレクトリアクセス制御と複数の Directory Server インスタンスに対するルーティングを提供します。 |
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Sun Java System Web Proxy Server |
Web コンテンツをキャッシュ、フィルタリング、および配信する機能を、送信インターネット要求と受信インターネット要求の両方に対して提供します。 |
Sun Java System Communications Express |
設定に応じて、Messaging Server、Calendar Server、および Directory Server への Web ベースのアクセスを提供します。 |
企業ファイアウォールの外から、内部ポータルを含む Portal Server のコンテンツやサービスへの、セキュリティー保護されたインターネットアクセスを提供します。 |
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Microsoft Outlook を使用するデスクトップクライアントに、Messaging Server と Calendar Server の両方に対するインタフェースを提供します。 |
管理コンポーネントは、システムサービスのための、設定や監視などの管理機能を提供します。Java Enterprise System に含まれる管理コンポーネントおよびそれらのコンポーネントが提供するサービスを次の表に示します。コンポーネントの詳細については、「管理コンポーネントの説明」を参照してください。
表 1–4 Java ES 管理コンポーネント
コンポーネント |
提供される管理サービス |
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Directory Server および Messaging Server の設定および管理を可能にするグラフィカル管理ツールを提供します。 |
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Messaging Server および Calendar Server 用のユーザーのプロビジョニングに必要となるスキーマを使って Directory Server を設定するためのスクリプトを提供します。 |
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Messaging Server および Calendar Server が必要とするユーザー属性を Directory Server のユーザーエントリ内に格納するための、コマンド行ツールと GUI ツールの両方を提供します。 |
Java Enterprise System には、多くのシステムサービスコンポーネントおよびサービス品質コンポーネントが依存する、ローカルにインストールされる共有ライブラリがいくつか含まれています。Java ES 共有コンポーネントは、同じホストコンピュータ上で稼働する Java ES コンポーネントにローカルサービスを提供します。
共有コンポーネントは、多くの場合、異なるオペレーティングシステム間の移植性を提供するために使用されます。Java Enterprise System 共有コンポーネントの例として、Java 2 Platform, Standard Edition (J2SETM プラットフォーム)、Netscape Portable Runtime (NSPR)、Network Security Services (NSS)、Network Security Services for Java (JSS) などがあります。完全な一覧については、「共有コンポーネント」を参照してください。
共有コンポーネントのインストールは、インストール対象のシステムサービスやサービス品質コンポーネントに応じて、Java ES インストーラによって自動的に行われます。